『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』:2008、日本

1979年、ある田舎町。高校生のママチャリと友人の西条、孝昭、井上、千葉くんは道路で自転車に乗り、その時を待っていた。彼らは イタズラを仕掛けることに情熱を燃やすグループで、職員室にワックスを塗って先生を転倒させたり、バーバー吉田の電飾の一部を消して 「ババー吉田」に変えたり、熊の出没危険区域で熊のキグルミを来たりと、様々なことをやってきた。
ママチャリたちが道路で待っていると、呼び集めた仲間がやって来た。向こうから車が走ってきたので、彼らは千葉くんの合図で一斉に 自転車を漕ぎ始めた。行く手には、ネズミ捕りの駐在さんが待ち構えている。始まりは、数日前に遡る。同じ道でバイクに乗っていた西条 が、駐在さんの取り締まりに遭ったのだ。そんな田舎道でネズミ捕りをしていた駐在さんに怒った西条は、「仕返しする」と誓った。それ を聞いたママチャリは、仕返しの手口を思い付いた。
ママチャリと仲間たちは、車と同じスピードで機械の前を走行するイタズラを繰り返した。取り締まることの出来ない駐在さんの様子を 見て、彼らはほくそ笑んだ。そこでママチャリは、今度は大勢で同じことをやろうと考えた。それが冒頭のシーンだ。だが、駐在さんは 応援の警官隊を呼んでいた。ママチャリたちは捕まり、担任の寺島先生が交番へ来て駐在さんに謝罪した。駐在さんは、「自転車は軽車両 だからスピード違反をすれば捕まる」と冷徹に告げた。
ママチャリは、金属製品でネズミ捕りの機械を妨害する作戦を思い付く。彼と仲間は、楽器や鎧など、金属製の物品を持って道路へ向かう。 駐在さんに追い掛けられて逃げ出すが、ママチャリは吹奏楽部から借りたチューバが重すぎて速く走れない。百万もする楽器なので捨てる わけにもいかず、あっさりと捕まった。仲間も捕まり、また寺島先生が交番に来て頭を下げた。
ママチャリが考えた次の作戦のため、西条は中学からの後輩である金持ちの息子・ジェミニーを呼び寄せた。夜、ママチャリたちは自転車 からロケット花火を発射し、追ってくる駐在さんを攻撃した。だが、ジェミニーがドラゴン花火も混ぜており、またママチャリたちは 捕まった。彼らはプロレスの覆面で顔を隠していたが、正体はバレバレだった。彼らは「今度は車でネズミ捕りの前を通ってやろうか」と 考えるが、免許が無い。辻村さんがダブリで免許を持っていると判明したが、何となく頼みづらかった。
作戦会議の場所が、喫茶店に変更となった。だが、そこは大人たちの入る場所なので、ママチャリたちは緊張する。ジェミニーだけは余裕 の態度だった。次の作戦は、SM雑誌を交番の机やロッカーに忍ばせ、それを一般市民に目撃させて駐在さんの評判を貶めるというものだ。 注文を持って来た女性・加奈子を見たママチャリたちは、その美しさに心を奪われた。翌日もママチャリが喫茶店へ行くと、仲間は勘違い したオシャレに身を包んで据わっていた。喫茶店に通い詰めた結果、ママチャリたちは金が無くなった。
ママチャリは仲間たちに、「喫茶店の女性に恋をした。この作戦が成功したら告白する」と宣言した。彼は駐在さんの外出中に交番へ 忍び込み、SM雑誌を隠し始めた。そこへ加奈子が現れ、「主人に御用でした?」と尋ねた。彼女は駐在さんの妻だったのだ。駐在さんが 戻ってきたので、ママチャリは「公園でSM雑誌を見つけたから届けに来た」と苦しい嘘をついた。
別の日、ママチャリは駐在さんが若い女と親密そうに歩く様子を目撃した。浮気だと思い込んだママチャリは、いきなり飛び掛かった。 だが、その女性は加奈子の妹・美奈子だった。美奈子は東京で星を研究している女子大生で、星が良く見えると姉から勧められ、夏休みの 間、この町で過ごすことにしたのだ。ママチャリと一緒にいた井上は、美奈子に恋をした。
ママチャリたちは公園で人が倒れているという嘘で駐在さんを誘い出し、掘っておいた落とし穴に落とした。だが、みどり屋の焼きそばに 大量の胡椒を投入されるという逆襲を食らった。夏休みに学校で行われた原付バイク講習に、駐在さんがやって来た。ママチャリたちは トリモチをバイクのシートに塗るイタズラを仕掛けたが、駐在さんは平然とバイクから降りた。彼は西条を指名して「試しに乗ってみて」 と言い、隠してあった別のバイクを見せた。トリモチを塗ったのは、そっちのバイクだった。
ママチャリたちは電気屋で万引きに疑われる騒ぎを起こし、駐在さんをおびき寄せた。ママチャリが持っていた大きなバッグを開けた 駐在さんは、強烈に臭い雑巾の匂いで卒倒しそうになった。ママチャリ、西条、井上の3人になった時、駐在さんは「そろそろ終わりに しないか」と声を掛け、焼き鳥店に誘った。ママチャリたちは断るが、加奈子と美奈子が先に行っていると聞き、「ご一緒します」と態度 を変えた。しかし駐在さんは3人をパトカーで山の上に連れて行き、置き去りにして去った。
西条がバイク事故を起こして入院した。ランニングをしている女子テニス部員のスカートの中を覗こうとして、運転を誤ったのだ。西条は 見舞いに来たママチャリたちに、隣町の花火大会で使われる花火を盗み出そうと持ち掛けた。そうやって駐在さんを困らせようというのだ。 しかし孝昭や井上たちは、「盗みはマズい。退学になる」と及び腰だった。
仲間が病院を去った後、ママチャリは一人で戻った。そこで彼は、西条が入院中の小学生・前園ミカと話しているのを盗み聞きした。 西条はミカに、「この病院から打ち上げ花火が見えたら、手術を受けると約束してくれ」と持ち掛けていた。西条は心臓の病を患うミカの ために、花火を打ち上げようと考えたのだ。それを知ったママチャリは、花火盗人作戦を練り上げた…。

監督は塚本連平、原作はママチャリ、脚本は福田雄一、製作は宇野康秀、プロデューサーは森谷雄、エグゼクティブプロデューサーは 星野有香&河井信哉、企画プロデューサーは山崎雅史&大前典子、製作エグゼクティブは依田巽、撮影は瀬川龍、編集は平川正治、録音は 南徳昭、照明は原由巳、美術は太田喜久男、劇中イラストはキン・シオタニ、音楽プロデュースは志田博英、 主題歌『旅立ち』はFUNKY MONKEY BABYS。
出演は市原隼人、佐々木蔵之介、麻生久美子、石野真子、竹中直人、石田卓也、加冶将樹、賀来賢人、脇知弘、冨浦智嗣、小柳友、 豊田エリー、成嶋こと里、倉科カナ、水沢奈子、宇田学、森崎博之、坂井真紀、根岸季衣、志賀廣太郎、ガッツ石松、安藤玉恵、片桐はいり、 酒井敏也、宮地雅子、掟ポルシェら。


同名の人気ブログを基にした作品。
作者のブログネームは「くろわっ」さんだったが、原作が書籍化された際には「ママチャリ」というペンネームに変更されている。
ママチャリを市原隼人、駐在さんを佐々木蔵之介、加奈子を麻生久美子、ママチャリの母を石野真子、花火師の親方を竹中直人、西条を 石田卓也、孝昭を加冶将樹、井上を賀来賢人、千葉を脇知弘、ジェミニーを冨浦智嗣、辻村を小柳友、美奈子を豊田エリー、ミカを 成嶋こと里が演じている。

もう監督が『ゴーストシャウト』『着信アリ2』の塚本連平という時点で期待値はゼロだったが、実際に観賞して、全く 裏切られなかった。
ようするに、ダメな仕上がりだったということだ。
これで3作連続で駄作を作ったので、塚本連平は演出のセンスが無いと断定してもいいだろう。
まあ3作いずれも、脚本の出来映えも酷いんだけど、それは免罪符にならない。

時代設定が1979年になっているのは原作通りだが、その必要性が全く感じられない。
当時の世相や風俗が全く登場しないわけではないが、それは物語にほとんど影響を与えない。
「喫茶店は大人の場所だから緊張する」という箇所だけは物語に関わってくるが、ママチャリたちが喫茶店で緊張するシーンが無くなった としても、あまり支障は無い。
1979年にこだわる意味合いが感じられないし、ママチャリたちは「いかにも現在の青年」って感じだし、現代の設定にした方が良かったん じゃないか。

前述したように、演出だけじゃなくて脚本もダメ。まとまりも落ち着きも無くて、とっ散らかっている。
マイナスの相乗効果で、ダメな映画に仕上がっている。
「なぜ、そのタイミングでそのシーンなの?」とか、「エピソードとエピソードの繋ぎ方は、それでいいの?」とか、首を傾げたくなる 箇所のオンパレード。テンポも悪いし、ギャグも上滑り。
ただ乱雑でガチャガチャしているだけにしか感じない。

ネズミ捕りにイタズラを仕掛けたママチャリたちが駐在さんと応援の警官隊に追い掛けられるシーンをスロー映像で見せているが、とても 序盤とは思えない。
ようするに、演出として違うんじゃないかってことだ。
それに、ママチャリたちと駐在さんの全面戦争を煽るには、まだ早いだろう。まずは、駐在さんが何かに対して厳しく注意したり取り 締まったりする様子を幾つか連続で提示し、それに反抗したママチャリたちがクールに懲らしめられ、そこで初めて「何ちゃら作戦だ」と 本格的なバトルに突入した方がいい。
最初に、ママチャリたちがイタズラ大好きグループだという設定をもっとキッチリとアピールしておき、それから駐在さんとの戦争に突入 すべきだろう。イタズラばかりしていることが一応は説明されているが、サラッと短く処理されている。
仲間を集めてネズミ捕りに突入するシーンを頭に持って来る構成も解せない。順を追って描いた方が良かったんじゃないか。

こめかみに怒りのマークが入るなど、所々で漫画やアニメを意識したような演出が入るが、これも上手くいっていない。
漫画やアニメ的な演出がダメということではなく、その使い方に失敗している。
それと、ママチャリが加奈子に恋をした後は(っていうか、その前からそうなんだけど)、どういうモチベーションで駐在さんとの戦争を 続けているのか、良く分からないんだよなあ。
ママチャリたちの行動に、気持ちが付いていかない。

原付講習のエピソードの後、ママチャリが西条と出会った頃のエピソードが挿入される。
だけど、「そのタイミング?」と思ってしまう。
しかも、何かオチがあるのかと思ったら、ただ西条のいい人ぶりをアピールしただけで終わる。
井上が美奈子と星を見るエピソードも似たようなもので、そのタイミング、その繋げ方でいいのかと疑問を覚える。締め方もグダってるし。
加奈子がレディースだったことをママチャリに語るエピソードも、その入り方、タイミング、描き方は、それでいいのかと首をかしげたく なる。いちいち粗いんだよな。
あと、ミカは心臓が悪くて入院しているが、前半、金属製品の作戦でママチャリが捕まった時、手錠を外してくれたのは彼女だよな。その 時は普通に外を歩いていたのに、なんで入院しているのか。

この映画の脚本って、幾つもの点が雑に並んでいる状態なんだよね。
それが一本のラインにならない。
エピソードを串刺し式にした構成ではあるけれど、だからといって、点と点が繋がらないのはキツい。
幾らスケッチ集であっても、やはり全体の流れが生じるような感じにしてくれないと。
1つの点が終わる度に、いちいち話が停止するような印象になっている。

(観賞日:2009年8月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会