『僕等がいた 前篇』:2012、日本

釧路第一高校2年生の高橋七美は、新学期早々の学力テストで8点を取った。屋上で頭を抱えていた彼女は、新しくクラスメイトになった矢野元晴と出会った。彼は1年の時にクラスの3分の2の女子が好きになったと噂の男だった。出会った瞬間、七美は矢野に心を惹かれた。それ以来、彼女は矢野を目で追ってしまうようになった。親友のタカちゃんと水ちんから「矢野が好きなのでは」と勘繰られた七美は、「眼中に無い」と慌てて否定した。それを聞いていた矢野に嫌味を言われた七美は、「アンタなんか大嫌い」と泣いた。
学級委員の七美は合唱コンクールの曲を決めようとするが、クラスメイトのウッシーやマモルたちは協力してくれず、教室を出て行ってしまう。すると矢野は後を追い、出て行った全員を連れ戻してくれた。合唱の練習中、ピアノ伴奏を担当していた山本有里が急に倒れた。矢野が「また貧血か」と歩み寄ると、彼女は「触らないで」と手を振り払う。それでも矢野は構わずに有里を抱き上げ、七美に同行を促して彼女を保健室へ連れて行った。
矢野は七美から「山本さんと仲いいの?」と訊かれ、「中3の時から同じクラス。なんで?」と質問で返す。七美が「山本さんってみんなと混じんないし。一人っ子?」と七美が尋ねると、彼は「姉ちゃんいたよ」と答える。「過去形?」と七美が疑問を呈すると、矢野は「去年の夏、死んだ」と言い、交通事故で死んだことを話す。七美は帰りのバスで竹内と一緒になり、矢野から有里の姉・奈々について聞いたことを語る。竹内は「もっと弱さ見せてくれてもいいと思うんだよな。友達なんだし」と言う。
七美は有里のことを話しているつもりだったが、竹内は別の人物について語っていた。論点がズレていることに気付いた七美の質問を受けた竹内は、自分が矢野のことを話していることを告げる。七美は竹内から、奈々が矢野の元カノだったことを聞かされた。後日、教室でタカちゃんたちが「西高の卒業アルバムを手に入れた」と騒ぎ、奈々の写真をチェックする。その時は輪に入らなかった七美だが、後でクラスメイトがいなくなってから、こっそりアルバムを開こうとする。
教室に矢野が入って来たので、七美は慌てて誤魔化した。だが、矢野は平然とした態度で歩み寄り、アルバムを開いて奈々の写真を指差す。七美は「一目惚れ。彼氏から奪ったんだ」と奈々のことを話す矢野を眺め、「私、矢野のこと好きかも」と口にする。我に返った彼女は「気にしないで」と笑って取り繕うが、矢野は軽い口調で「じゃ付き合う?」と持ち掛ける。しかし七美から本当に好きなのかと追及された彼は、「ごめん、分かんない」と告げて教室を去った。
合唱コンクールの後、七美はタカちゃんと一緒に、仲間たちが待つファミレスへ行く。すると、そこでは矢野と竹内が中学時代の親友であるアツシたちと話していた。アツシたちが有里について「葬式の時だって泣きもしないで冷めてた」「事故ったのは自業自得だって言ってた」となどと悪く言うのを耳にした七美は、「人のことをそういう風に言うのは良くないんじゃないかな」と注意した。すると矢野は、「ホームルームじゃないんだから、出しゃばるな」と七美を批判した。
七美が「バカ」と怒って店を出て行くと、矢野が追い掛けて来た。七美が「勘違いだった、私が言ったこと。見る目無かった」と言うと、矢野は「やっぱお前もその程度なんじゃん」と告げる。七美は「アンタと一緒にしないでよ」と泣き出し、「バカ、アホ、お前の母ちゃんデベソ」などと悪態をつく。矢野はフッと笑い、「すげえ低次元。でも、オレの母ちゃんはデベソじゃないよ。オレのお袋は淫売。それにオレの彼女はクソ女」と述べた。そして彼は、奈々が事故に遭った時、前の男と一緒だったことを明かした。
次の日、七美は竹内から、矢野が母・庸子の結婚に伴って小5で札幌から引っ越してきたこと、その時は初婚だったことを聞く。庸子は矢野を産んだ時、未婚だった。相手が結婚していたからだ。竹内は七美に、庸子が不倫相手を見返すために矢野を産んだこと、今は初婚の夫とも別居中であることを話した。夏休み、水ちんから祭りに誘われた七美は、矢野も来るのではないかと期待して出掛ける。祭りの会場で竹内と遭遇した七美は、「矢野なら来ないよ。奈々の命日」と告げられた。
竹内は七美に、「学校にいるんじゃないかな。たぶん屋上」と教える。七美が屋上へ行くと、そこに矢野がいた。矢野は「別にあいつのこと思ってたわけじゃないし。あいつは最悪」と強がった。七美は「最悪って分かってても、好きでたまらない時ってあるよね。矢野がすごく好きだった人はもういないけど、今、矢野のことをすごく好きな人間がここにいる。それでプラマイゼロになんないかな」と語り、彼の手を握った。「だから一人だなんて思わないでね」と言う七美に、矢野は竹内が送ってくれた彼女の写メールを見せた。矢野は「俺、高橋のこと好きだよ」と言い、七美とキスをした。
その日から、2人の交際は始まった。そんな中、有里は七美に「あいつのこと信じちゃダメだよ。高橋さんはお姉ちゃんの代用品」と冷たい口調で告げた。矢野と買い物に出掛けた七美は、ジュエリーショップの店長をしている竹内の姉・文香と出会った。文香は七美が気に入った指輪の購入を矢野に勧める。値段が3万5千円だったので、矢野は「誕生日、まだだったよな」と誤魔化した。店を出た後、七美は矢野に「なんか欲しい物無いの?」と問い掛けた。すると矢野は、「約束が欲しい。絶対オレから離れないって、裏切らないっていう確かなもの」と述べた。七美は「私は死なないよ。矢野より先に死なないし、絶対裏切ったりしない。約束する」と告げた。
次の日、矢野は母の留守中に七美を家へ招き、部屋で肉体関係を持とうとする。だが、庸子が戻って来たので、2人は慌てて勉強していたように装った。庸子が「お客様よ」と言うので矢野が外に出ると、有里が立っていた。「死んだらもうおしまいなんだ」と冷淡に言う彼女に、矢野はうんざりした表情で「何が目的?復讐?嫌がらせ?」と訊く。有里が矢野を責めようとしているところへ七美が立ちはだかり、「やめて、なんで今さらそんな話するの」と有里に告げた。
七美が「大切な人を失って辛いのは山本さんだけじゃない。矢野だった苦しんだんだよ」と言うと、有里は「そう。それで私の前で泣いたの。矢野のこと、アンタなんかより私の方がずっと知ってる」と述べた。七美が「知らなくても信じてる。矢野を苦しめるようなことは言わない。矢野のこと、憎んでるの?」と言うと、有里は「安心しなよ。別に何も無いから、私たち」と冷笑して去った。七美が「気にしちゃダメだよ」と言うと、矢野は「もう、こういうことするな。もう今日は帰れ」と矢野は険しい顔で告げた。
後日、七美はバスで竹内と一緒になり、矢野に避けられていることを打ち明けた。「どうしたら矢野の心に近付けるかな。矢野を一人占めしたい」と、彼女は寂しそうに漏らした。竹内は矢野の家を訪れ、「日曜から話してないそうじゃん」と告げる。矢野が「あいつ、オレが山本となんかあったんじゃないかって勘繰るんだよ」と言うと、竹内は「あったじゃん」と言い、2人が手を繋いで山本家へ行くのを目撃した時のことを話す。矢野が「線香上げに行ってたんだ」告げると、竹内は「後悔すんぞ。そうやって、はぐらかして、逃げてばっかだと、誰かが高橋をかっさらっても知らねえぞ。肝心な時に肝心なこと言わないと、目の前の大事なもん失うぞ」と忠告した。
翌日の下校時、矢野はタカちゃんや水ちんと一緒にいる七美に気付いたが、そのまま通り過ぎてバスに乗り込んだ。その様子を見ていた竹内は「昨日のあれ、最後通告だったのに。後悔するって」と矢野に言い、バスには乗らずに学校へ戻った。彼は七美に声を掛け、土手へ散歩に出掛けた。七美が「時々、虚しくなる。何をやっても届かないんじゃないかなって」と悩みを吐露すると、竹内は「何かあったら、いつでも言えよ」と優しく告げた。
七美が帰宅すると、郵便受けに小さな紙袋が吊ってあった。中を見ると、ジュエリーショップで彼女が欲しがった指輪が入っていた。彼女は急いで矢野を捜しに行き、彼を見つける。七美が目を潤ませながら「好きだ、バカ」と言うと、矢野は「誕生日、少し早いけどやるよ」と少し乱暴な口調で言う。七美は彼に強く抱き付き、「離れない。約束したから。矢野の苦しみ、半分ちょうだい」と口にした。
七美は誕生日の9月27日、矢野から「2人きりになれる場所へ行こう」とデートに誘われた。当日、七美は待ち合わせ場所に行くが、約束の時間になっても矢野は来なかった。母が倒れて搬送された有里から連絡を受け、病院へ向かっていたからだ。病院に駆け付けた矢野から電話で事情を知らされた七美は、「なんで矢野が行かなきゃいけないの?どうして今日なの?」と責めるように言う。家に帰るよう矢野が促すと、彼女は「帰らない。ずっと待ってる。矢野が来るまでずっと」と告げ、電話を切ってしまった…。

監督は三木孝浩、原作は小畑友紀 小学館『月刊ベツコミ』連載、脚本は吉田智子、製作は市川南&豊島雅郎&小林昭夫&都築伸一郎&藤島ジュリーK.&畠中達郎、製作統括は塚田泰浩、企画プロデュースは荒木美也子&春名慶&臼井央、プロデューサーは川田尚広&山崎倫明、プロダクション統括は金澤清美、撮影は山田康介、美術は花谷秀文、録音は矢野正人、照明は川辺隆之、編集は坂東直哉、音楽は松谷卓、音楽プロデューサーは杉田寿宏。
主題歌『祈り〜涙の軌道』 Mr.Children、作詞:桜井和寿、作曲:桜井和寿、編曲:小林武史&Mr.Children。
出演は生田斗真、吉高由里子、高岡蒼甫(現・高岡奏輔)、本仮屋ユイカ、麻生祐未、須藤理彩、小松彩夏、柄本佑、滝裕可里、緑友利恵、円城寺あや、長部努、藤井貴規、柊子、森元芽依、中村朝佳、青木大徳、高島大幹、那須庄一郎、片山享、池澤あやか、山崎紘菜、秋月成美、松島純菜、川村亮介、井村空美、片桐茂貴、林崎希望、飯島綾、藤原克行、徳山可菜子、細谷拓弥、伊藤菜摘、高瀬雄史、高畑亜実、久保拓巳、田川菜穂、加賀龍太郎、丹羽美樹、添田義晃、日村昌子、橘清一、中川麻衣子、草島伸晃、林淳子ら。


月刊ベツコミで連載されていた小畑友紀の人気漫画を基にした2部作の前篇。
監督は『ソラニン』『管制塔』の三木孝浩、脚本は『Life 天国で君に逢えたら』『岳 -ガク-』の吉田智子。
矢野を生田斗真、七美を吉高由里子、竹内を高岡蒼甫(現・高岡奏輔)、有里を本仮屋ユイカ、庸子を麻生祐未、文香を須藤理彩、奈々を小松彩夏、アツシを柄本佑、タカちゃんを滝裕可里、水ちんを緑友利恵、有里の母を円城寺あやが演じている。

原作は大人気の漫画だから、実写映画化したくなるのは分からんでもない。
ただ、実写化するに際して難しい問題が1つあって、それは「高校生から社会人へ」という時間移動が物語の途中で用意されていることだ。
漫画やアニメなら何の問題も無いが、実写化する場合、配役の部分で少々難しい。
時間移動と言っても、「十数年の歳月が」というわけではない。そうなると、高校生の時と別の俳優を起用するのは違うだろう(ちょうどいい年齢差でそっくりの俳優でもいれば話は別だが)。

同じ人間が高校生と社会人の両方の時代を演じるとなれば、その俳優の年齢をどこに合わせるのかってのを考える必要がある。
その真ん中辺りに位置する年齢の俳優を起用するのがベターではないかと思うが、この映画の製作サイドは、社会人の方に合わせて来た。
っていうか、そっちに合わせたとしても、吉高由里子はともかく、生田斗真と高岡蒼甫の実年齢は、かなり上だ。
その配役は、ちょっと厳しいんじゃないかと思うんだが。

これが「30代から40代へ」とか「40代から50代へ」といった時間移動であれば、それほど問題は無かったかもしれない。
しかし「高校生から社会人へ」となると、まるで意味が違ってくる。
それは、高校時代のシーンで制服を着用する必要があるからだ(まあ私服の学校もあると思うが、この作品では制服の高校だ)。
そこを深く考えていない配役のせいで、生田斗真たちの制服姿はコスプレにしか見えない。
吉高由里子のセーラー服姿なんて、もはやイメクラだよ。

それと、吉高由里子って良くも悪くも個性の強い人で、どんな作品、どんな役柄でも、自分の色を強く出してしまう(もしくは無意識の内に出てしまう)女優だ。役に成り切るというより、役を自分に寄せて来るタイプの女優なので、イメージの確立されたキャラクターを演じさせるのは向かない。
この作品でも、原作を読んでいて「ちっとも七美じゃない」と感じる人は少なくないんじゃないかな。
まあ原作付きの作品を実写化する場合、そういう問題は多かれ少なかれ付きまとうものではあるんだが。
それに、吉高由里子に「イメージと違う」と感じた人は、生田斗真や高岡蒼佑に対しても「違う」と感じる可能性が高いしね。

冒頭、七美のクラスの女子たちは「1年の時にクラスの3分の2の女子が好きになったって」と矢野のことを噂している。
でも、そんなにモテモテの男子生徒であれば、他のクラスにまで噂は広まって来るだろうし、彼の顔を見に行く女子生徒も殺到するはずだ。
だから、矢野を今まで全く知らなかったような感じで、彼について話しているというのは、どうにも不自然だ。
むしろ、なんで知らないのかと。

七美が矢野と出会って彼を見送るシーンで、「あのまま彼を放っておけば壊れてしまいそうに見えた」というモノローグが入る。
でも、放っておけば壊れてしまいそうには、まるで見えないんだよね。
その2人が出会うオープニングのシーンだけで、この映画の薄っぺらさが分かる。
一目惚れが全てダメだとは言わないが、ほぼナレーションで気持ちを説明しちゃってるのは、いかがなものかと思うよ。

七美はちっとも魅力的に思えない。むしろ、疎ましい女に見える。
彼女は常に自分本位なのだ。
有里の悪口を言ったアツシたちを注意したり、有里に責められている矢野を庇ったりするのは、「矢野のための行動」に見えるけど、実は違う。
そういった行動を取る時、七美は「矢野に好かれたい」ってことしか考えていない。
それに矢野の立場から見れば、そういう行動は余計なお節介でしかない。

七美が自分で「矢野を一人占めしたい」と言っているように、彼女を突き動かしているのは愛ではなく、独占欲という欲だ。
まだ彼女は高校生だから、そういう未熟さ、視野の狭さ、自分本位な考え方も含めて、若さとして好意的に捉えてあげるべきなのかもしれない。
でも私は、それを受け入れられるほど物分かりのいい大人には成り切れない。
向こうがガキなら、こっちも負けないぐらいガキなのよ。

誕生日デートに矢野が来られなかった時、彼が電話で事情を説明すると、七美は激しい口調で責める。有里の母親の検査結果が出るまで付き添うことを矢野が語り、帰宅するよう促すと、「帰らない。ずっと待ってる。矢野が来るまでずっと」と言う。
それは「付き添うのはやめて、すぐに待ち合わせ場所に来て」という圧力だ。
どんだけ身勝手な女なのかと。
そういう時に泣いて相手の男を非難するってのは、ハッキリ言って最低の女だよ。

有里の母親が軽い病気や怪我なら、すぐに待ち合わせ場所へ駆け付けてもいいかもしれない。だけど、かなり深刻な状態なのだ。だから矢野は、意識が回復するまで待とうと考える。
それって、人間として何も間違っちゃいない。
でも、そういう行動を取って待ち合わせ場所に行かなかった矢野に対して、七美は「裏切るなって言って、裏切ってるのは矢野の方じゃない」「やっぱり私に無理。奈々さんのこと、忘れられないんだね」と責めるようなことを言う。
たまったもんじゃないよ。どうすりゃいいんだよ。

元恋人の母親が病院に運び込まれて、その恋人の妹(しかも過去に肉体関係がある)から電話で来てほしいと頼まれて、そりゃ行くだろ。
その母親が意識も戻らない状態で、検査結果を待たなきゃならないとなったら、そりゃ待つだろ。
それを待たずに、さっさとデートに出掛けるような男の方が、どうかしてるよ。
だから、そこに関しては、矢野は何も悪くない。
ただ七美がワガママなだけだ。

そもそも、冷静になって考えてほしいんだけどさ、奈々が死んだのって去年の夏なのよ。
「失恋したから、次の恋を見つけて吹っ切る」というのは分かるよ。でも矢野は、ただ失恋したわけじゃなくて、恋人が交通事故で死んでいるのよ。
それから1年しか経っていないのに、そりゃ引きずるのは当然でしょ。
それを「早く気持ちの整理を付けろ」とプレッシャーを掛けるのは、あまりにも酷ってもんだよ。
むしろ、恋人が死んで1年しか経たないのに、簡単に他の女と付き合える男の方が、人としてどうかと思うよ。

(観賞日:2013年8月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会