『ブルークリスマス』:1978、日本

京都で開催された国際科学者会議は、宇宙科学の権威である城北大学の兵藤光彦教授の発言で紛糾した。国防省の沖退介は、友人の原田と共に特殊部隊に転属になって北海道へと向かった。国営放送JBCでは、新しい大河ドラマの主役に新人女優の高松夕子が抜擢された。
巷では、ヒューマノイドというアメリカのバンドがビートルズ以来と言われるほどの大人気となっていた。ボーカルのアランには超能力があるという噂があった。JBC報道部の南一矢には、週刊誌記者である友人の木所から連絡があった。木所は密かに夕子と付き合っていた。
南は木所から、夕子のことを相談される。木所は彼女の血が青かったというのだが、南は本気にしない。兵藤は会議の後から失踪しており、南は報道局長から調査を指示される。どうやら兵藤は血液学を研究する前畑教授から、青い血についてのレクチャーを受けていたらしい。
南は報道局長に調査内容を報告し、夕子が青い血だという話を聞いたことを告げる。局長から報告を受けたJBCの上層部は、夕子を大河ドラマから降板させようとする。そこで沖が夕子のカバンに麻薬を忍び込ませる。警察によって夕子は逮捕され、そして自殺した。
兵藤がアメリカのUFO調査機関ブルーノートにいるらしいという情報から、南はアメリカに飛んだ。捜索の末に兵藤と接触した南は、UFOの宇宙光線を浴びた人の血が青くなっていることを教えられる。しかし兵藤は連れ去られ、南も政府筋からの圧力でヨーロッパへ転勤になる。
沖は青い血の人間を次々と抹殺する仕事を続けていた。政府は青い血の人間を一握りだけ捕まえずに残しておき、彼らの反乱を煽ることで世間に「青い血の持ち主は危険だ」という意識を植え付けてから抹殺しようとしていた。そんな中、沖は恋人の西田冴子が青い血の持ち主だと知る…。

監督は岡本喜八、脚本は倉本聰、製作は嶋田親一&垣内健二&森岡道夫、撮影は木村大作、編集は黒岩義民、録音は田中信行、照明は小島真二、美術は竹中和雄、効果は東宝効果集団、音楽は佐藤勝、主題歌はCHAR。
出演は勝野洋、竹下景子、仲代達矢、岡田英次、八千草薫、沖雅也、岡田裕介、高橋悦史、新井春美、大谷直子、田中邦衛、中谷一郎、大滝秀治、中条静夫、神山繁、芦田伸介、島田正吾、小沢栄太郎、岸田森、稲葉義男、松本克平、今福正雄、永井智雄、潮哲也、天本英世、村松克巳、大木正司、杉田康、草野大悟ら。


これはホラー映画ではない。
サスペンス映画でも、ミステリー映画でもない。
SF映画でも、悲しい人間ドラマでもない。
これは、UFOや異星人の存在を確信している倉本聰が、「UFOや異星人を信じなさい。超常現象を恐れずに受け入れなさい」と訴えるプロパガンダ・フィルムである。

なぜか、UFOの光線を浴びた人は血が青くなる。
なぜか、各国の政府はそれを恐れる。
なぜか、全て殺してしまおうとする。
なぜか、JBCは青い血というだけで夕子を大河ドラマから降板させようとする。
なぜか、それだけのために麻薬所持の罪まで着せてしまう。

なぜか、アメリカの政府組織は兵藤と南が話をしている様子を見届ける。
なぜか、話が終わった後で兵藤を連れ去り、南も連れ去ろうとする。
なぜか、重大な秘密を知ってしまった南を政府筋は殺さない。
なぜか、民衆は疑心暗鬼になって“青い血の持ち主”狩りを始めたりはしない。

この作品は、理由の説明をことごとく拒否してしまう。
なぜなら、これは超常現象を扱った作品だからだ。
超常現象に理由の説明など要らないのである。
そこにある事象を、真っ直ぐな心で見つめることが大切なのである。
そして、純粋な気持ちで信じ込むことが大切なのである。

青い血の持ち主は、もっと色が青くなってもおかしくない。
しかし、見た目は全く変わらない。
それは超常現象である。
政府の行動がマヌケに見えてくるのも、それは超常現象である。
見ている内にバカバカしつと眠気が襲ってくるが、それも超常現象である。

この手の作品としては、例えばアメリカの人気TVシリーズ『Xファイル』がある。
だが、あの作品とは比較にならないほど、この映画は強烈なモノがある。
ひょっとすると、この作品は倉本聰にとっての最高傑作かもしれない。
もちろん別の意味で。

 

*ポンコツ映画愛護協会