『ビー・バップ・ハイスクール』:1985、日本

かつては進学校だった私立愛徳高校だが、生徒数の減少を受けて偏差値の低い生徒も入学させたため、今では質の低下が甚だしい。そんな愛徳高校の中でも、特に目立つ存在なのが加藤浩志と中間徹の2人である。留年して2年生を繰り返すことになった浩志と徹は、年下のクラスメイト・泉今日子が不良グループに絡まれているところを助けてやった。
浩志と徹は、クラスメイトの兼子信雄から舎弟分にしてくれと頼まれ、即座に断った。だが、ツッパリの格好をした転校生・横浜銀一と赤城山忠治の前で、信雄は勝手に浩志と徹の舎弟を名乗り、彼らを挑発する。さらに、実は偽者のツッパリだった横浜と赤城山までもが、浩志と徹の舎弟になろうとして近付いてきた。
浩志と徹はツッパリ仲間の三原山順子の提案で、信雄らに対して「不良になる特訓に合格すれば舎弟にする」と告げる。浩志と徹は、信雄らに対し、他の学校のツッパリ・前川新吾にケンカを売らせる。だが、浩志と徹が悪友の前川と組んで仕掛けたイタズラだった。結局、浩志と徹は信雄らを舎弟分として受け入れた。
愛徳高校に入学したばかりの大前均太郎は、あっという間に1年生を制圧した。中学時代から浩志と徹の噂を聞いていた大前は、2人には関わらないでおこうと考える。だが、彼は浩志と徹が留年したとは知らず、2年生を制圧しようと動き出す。大前は相手が何者か知らず、浩志と徹にサッカーの試合でケンカを仕掛けた。しかし結局はケンカに敗れ、2人の舎弟分となった。
浩志と徹は、立花商業の菊氷からケンカを売られた。互いのグループが集まって乱闘になるが、刑事の鬼島が駆け付けたために逃亡する。浩志らと菊氷の一味は、互いに相手グループの男を人質に取り、倉庫で再び戦うことになった。しかし菊氷の恐ろしい噂を聞いた浩志と徹は泥酔した状態で彼を呼び出し、酒を飲ませてケンカの約束をうやむやにしてしまった。
浩志と徹は、惚れている今日子の誕生パーティーに招かれた。ところが今日子の両親に陰口を言われているのを耳にした2人は、商売用の酒を飲んで大暴れする。今日子とは住む世界が違うと感じた浩志と徹は、今まで以上にケンカに明け暮れるようになった。しかし、戸塚水産高校の不良を叩きのめしたことで、2人は鬼島も一目置いている中村竜雄&虎雄兄弟から狙われる…。

監督は那須博之、原作はきうちかずひろ、脚本は那須真知子、プロデューサーは黒澤満&紫垣達郎、企画は長谷川安弘、撮影は森勝、編集は山田真司、録音は橋本文雄、照明は野口素胖、美術は大嶋修一、音楽は渡辺博也、音楽プロデューサーは高桑忠男&市川道利、主題歌は中山美穂。
出演は清水宏次朗、仲村トオル、中山美穂、地井武男、宮崎ますみ、一色彩子、岩本多代、阿藤海、原泉、草薙幸二郎、本間優二、木村健吾、小沢仁志、田中春男、石井富子、小鹿番、森一馬、古川勉、鎌田伸一、瀬山修、石井博泰、神谷潤、八巻保幸、小林啓志、木下秀樹、土岐光明、松田幸児、高井雅代、小田木望、山岸もえ、梅野浩、阿部雅彦、富士原恭平、SALLYら。


『週刊ヤングマガジン』に連載された、きうちかずひろの同名漫画を基にしたシリーズ第1作。
浩志を清水宏次朗、徹を仲村トオル、今日子を中山美穂、鬼島を地井武男、順子を宮崎ますみ、信雄の姉・晶子を一色彩子、今日子の母を岩本多代、愛徳の教師・馬場を阿藤海(現・阿藤快)、戸塚水産の教師・浅田を木村健吾、竜雄を小沢仁志、今日子の父を小鹿番、信雄を古川勉、大前を鎌田伸一、前川を瀬山修、菊永を石井博泰、横浜を八巻保幸、赤城山を小林啓志、虎雄を木下秀樹が演じている。

冒頭、浩志と徹が不良グループとケンカを繰り広げる中で、中山美穂が歌う「いかにもアイドルですよ」という爽やかな歌が流れる。
ミスマッチという言葉など知らないかのような、オープニングである。
出演者の歌を使うのはプログラム・ピクチャーなら当然だが、それにしても普通、もう少し使用曲と流すシーンの雰囲気のマッチングは考えるものだろう。

素人や素人に毛の生えたような面々を起用しているので、脇を固めるベテラン俳優を除き、出演者の芝居は著しく低い。
まあ、ツッパリの世界を描いているとはいえ、基本的にはアイドル映画なので、芝居の質を求める方が間違いだろう。
監督と脚本家も、どういう作品かを理解して割り切っているのか、それとも、そういう持ち味なのか、軽くて浅い演出やシナリオに終始している。
ハッキリ言ってしまえば、明らかに手を抜いている(手を抜いていないとすれば、そちらの方が大きな問題だ)。

例えば序盤、信雄が冷凍車に突っ込んで魚をくわえて戻ってくるというシーンがある。
もちろん、ギャグシーンである。
そのシーン1つを取っても、キレが全く無い。
例えば「突っ込む信雄の顔のアップ→閉じる扉→驚く浩志と徹」といった感じで細かくカットを割り、スピーディーに見せてもいいものを、そこまでのシーンと大した変化も付けずにダラーッと見せる。

前半からサッカーのシーンを持ってくる辺りも、やる気の無さを感じさせる。
不良の日常風景を描くのに、体操着を着せるのである。
学ランでの行動描写が充分に描かれた後だったとか、これがシリーズの4作目ぐらいでマンネリ化しているとか、そういうことなら1万歩譲って許すとしても、1作目の前半約30分の段階で、普通は有り得ない展開だ。
しかも殴り合ったりはしているものの、曲芸のようなプレーも披露しつつ、普通にサッカーボールを蹴ったりするのだから。

菊永が登場するシークエンスでは、最終的にどうなったのか、うやむやの内に終わってしまう。
一応はコミカルな結末に持って行こうとしているのだが、そこはキッチリとオチを付けるべきトコロだろう。モンティ・パイソンのように、「パンチ・ラインには頼らない」という意味でオチを放棄しているわけでもないのだし。
中村竜雄&虎雄兄弟は、「誰もが恐れるほどの存在」という設定として登場する。
しかし2人が登場して間もなく担任教師が現れると、それまでバリバリに怖そうな振る舞いをしていた彼らが、おとなしくなってしまう。
それは、明らかに要らないシーンだろう。
せっかく恐ろしい存在として登場させたキャラなのに、すぐに恐ろしさを薄めてしまうメリットが何も無い。

浩志と徹が竜雄&虎雄にビビって逃げるというのは、キャラ的にどうなんだろうか。
先輩や刑事に腰が低いのはともかく、同じ高校生が相手なら、誰に対しても怖がらない方がいいんじゃないかと思ってしまう。
たとえ竜雄&虎雄にビビらなくても、ほとんど同じようにストーリーを進めていくことは出来るのだし。
本当ならば、今日子が竜雄&虎雄に殴られたのを浩志と徹が知った後は、一気にシリアスモードでクライマックスに突入すべきだろう。
ところが、そこで「浩志と徹が今日子と一緒にホンワカとした雰囲気の中で小旅行を楽しむ」というシーンを挟んでしまう。
普通に考えれば阿呆すぎる構成だが、前述したように監督も脚本家も、やる気が無くて手を抜いたんだろう。

 

*ポンコツ映画愛護協会