『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』:2014、日本
「万能鑑定士Q」の看板を掲げる凜田莉子は、レストラン経営者の山田聡からチラシ鑑定の依頼を受けた。山田はイオナフーズという会社が主催する試食会に店を使いたいと頼まれ、貸出料が良かったので簡単に承諾した。しかしマルチではないかという疑いを抱き、莉子に鑑定を依頼したのだ。チラシを見た莉子は、すぐに画像編集ソフトでバナナの色を加工していることを指摘した。山田から試食会にも参加してほしいと求められた彼女は、その仕事を引き受けた。
週刊角川の記者である小笠原悠斗は、編集長の荻野甲陽から叱責されてばかりいた。担当するはずだった仕事が後輩の島田に移っても受け入れる小笠原を見て、荻野はますます腹を立てた。荻野は小笠原に試食会の取材を命じ、これでも駄目なら俳句雑誌に異動させると告げた。会場入りした小笠原は、莉子が山田にイベントの違和感を説明する言葉を耳にした。興味を抱いた小笠原が盗み聞きしていると、莉子は調理工程が変だと山田に告げた。
莉子は料理の作業が別の音を打ち消すために行われているのではないかと感じ、2階に何があるのか山田に質問した。美術品のギャラリーだが休館日だと知らされた莉子は、警察を呼ぶよう指示して2階へ走った。すると美術品が盗まれており、莉子は逃亡する覆面の犯人と激突する。莉子を追って来た小笠原が犯人を捕まえようとしたため、美術品は床に散らばった。犯人は逃走するが、莉子は最も大事だと見抜いた簪を拾い上げた。警察が現場検証に到着する中、ギャラリーのオーナーである朝比奈尚幸が礼を述べに莉子の元へ来た。簪について問われた莉子が詳しい知識を披露すると、朝比奈は感心した様子を見せた。
次の日、小笠原は莉子の店を訪れて取材を依頼するが、あっさりと断られた。莉子は小笠原が編集長に叱られたことも、入社5年目であることも見抜いていた。そこへ朝比奈が現れ、モナ・リザの鑑定を莉子に依頼する。彼はルーヴル美術館アジア圏代理人であることを明かし、モナ・リザの来日に合わせて警備強化のために現地の臨時学芸員を集めていることを説明する。臨時学芸員に推薦したいと言われた莉子は驚くが、その話を受けることにした。
莉子はルーヴル美術館で実施される学芸員試験に挑むため、パリへ渡った。小笠原は荻野から取材費の支出を却下され、自腹を切って莉子に同行した。ルーヴル美術館に到着した莉子と小笠原は、学芸員のオディロン・ボワイエによる試験内容の説明を聞く。莉子はフランス語が分からないため、小笠原は携帯電話の翻訳機能を使って内容を伝えた。展示してある7枚のモナ・リザの真贋を見極める試験に挑んだ莉子は、その全てが贋作であり、ポスターの絵だけが本物であることを言い当てた。
合格した莉子がレストランで小笠原と食事をしていると、もう1人の日本人合格者である流泉寺美沙が声を掛けて来た。美沙は東京芸術大学の非常勤講師兼特別研究員で、国立民族学博物館の共同研究員でもあった。美沙は日本でラファエロ展が開催された時も、臨時学芸員に選ばれていた。莉子と美沙は帰国後、ルーヴルから指名されたリシャール・ブレの講義を受けることになっていた。莉子がフランス語を理解できないと知った美沙は、講義が全てフランス語で行われることを教えた。
軽井沢合宿は取材が許されず、小笠原は厳重に警備されている屋敷を外から眺めることしか出来なかった。ブレは莉子と美沙に、直感を磨く訓練を行わせる。1枚だけ本物を混ぜた12枚の絵から、まず莉子が偽物だと思う2枚を選ぶ。そこから美沙が贋作だと思う1枚を選び、それを外す。これを繰り返し、偽者を排除していくという訓練だ。莉子の通訳を強いられた美沙は「講義の内容が頭に入って来ない」と苛立ち、明日からは自分で何とかするよう告げた。
小笠原は講義の取材を断念し、莉子の素性について調査することにした。叔母の江来香織と会った彼は、莉子が昔は頭が悪かったこと、波照間島の高校時代は担任教師の喜屋武友禅が上京後の生活を心配するほどだったことを聞かされる。しかしリサイクルショップで働き始めた莉子は、店長から感受性を生かした記憶術を学んだことによって大きく変わったのだ。莉子は何冊かの事典を熱心に読み込み、たった一晩でフランス語を完全にマスターした。
小笠原は荻野に執筆中の記事を読んでもらい、取材続行の承認を貰った。莉子はパソコンのモニターに表示された新聞記事に目を留めた。それは、モナ・リザの瞳にダ・ヴィンチのイニシャルであるLとVの小さな文字が隠されているという記事だった。そこにブレが来たので、莉子は記事の内容について尋ねた。するとブレは「そういう噂だ」と言い、フランス語の新聞記事を見せた。そこには、瞳の文字を調べた鑑定家たちは脳の後頭葉に著しい機能低下が見られたと記されていた。ブレは莉子に、「解剖学に詳しかったダ・ヴィンチが、脳に異変を起こす仕掛けを隠していてもおかしくない」と語った。
訓練が続く中、莉子は瞳の文字が気になって仕方が無かった。最終試験を終えた直後、彼女は倒れ込んでしまった。店に戻った莉子は調子を崩し、鑑定の能力を失ってしまう。小笠原が店を訪れると閉店の張り紙があり、莉子は行方をくらましていた。美沙と会った小笠原は、莉子が学芸員の資格を失ったことを知らされた。小笠原は自分でカードを作って訓練と同じことを繰り返し、ある事実に気付いた。莉子が帰郷した情報を掴んだ小笠原は、波照間島と向かった。彼は莉子と会い、訓練に隠された真実を教えた…。監督は佐藤信介、原作は松岡圭祐「万能鑑定士Qの事件簿」シリーズ(角川文庫刊)、脚本は宇田学、企画プロデュースは平野隆、エグゼクティブプロデューサーは濱名一哉、Coエグゼクティブプロデューサーは池田宏之、プロデューサーは下田淳行&辻本珠子、アソシエイトプロデューサーは山田昌伸&原公男、ラインプロデューサーは及川義幸、撮影監督は河津太郎、美術監督は斎藤岩男、録音は横野一氏工、編集は加藤ひとみ、VFXスーパーバイザーはツジノミナミ、音楽は羽深由理&大間々昴、音楽プロデューサーは志田博英。
出演は綾瀬はるか、松坂桃李、初音映莉子、村上弘明、角替和枝、ピエール・ドゥラドンシヤン、橋本じゅん、村杉蝉之介、児嶋一哉 (アンジャッシュ)、前野朋哉、相島一之、榮倉奈々、阪田マサノブ、小林一英、土平ドンペイ、川屋せっちん、菊田大輔、小橋川よしと、大迫一平、北上史欧、宮沢大地、荒木誠、スギウチタカシ、和田サトシ他。
松岡圭祐の小説“Qシリーズ”第9巻『万能鑑定士Qの事件簿IX』を基にした作品。
監督は『GANTZ』『図書館戦争』の佐藤信介。
脚本は劇団PEOPLEPURPLE主宰の宇田学が担当。佐藤信介が演出を手掛けたTVドラマ『ラッキーセブン』で脚本を担当した1人だが、映画は今作が初めてとなる。
莉子を綾瀬はるか、小笠原を松坂桃李、美沙を初音映莉子、朝比奈を村上弘明、香織を角替和枝、ブレをピエール・ドゥラドンシヤン、荻野を橋本じゅん、山田を村杉蝉之介、喜屋武を児嶋一哉 (アンジャッシュ)が演じている。
リサイクルショップの店員役で、榮倉奈々が1シーンだけ出演している。冒頭シーンから色々と引っ掛かる部分が多い。
まず、ホームページに「なんでも鑑定」「万能」と書いてあるのを見て、そんな人物に山田が依頼を持ち込むのは違和感が強い。そういう宣伝文句を目にしたら、まずは「怪しい」と感じないかね。店の信用にも関わる重大な案件なのに、そんな相手に仕事を頼むかね。
そもそも「チラシが気になるから調べてもらいたい」と考える人が、その作業を「鑑定」として捉えるだろうか。
そこは、「小笠原は莉子を知らないけど、その筋では有名人」という設定にして、山田も莉子の噂を知った上で依頼している形にした方が良かったんじゃないか。莉子がチラシをパッと見ただけで不審な点を指摘し、修正された内容を詳しく説明することで、彼女の能力をアピールしようとしているのは良く分かる。
しかし、ちっとも「凄い能力」という印象を受けない。むしろ、「なんかバカバカしい」と感じてしまう。
その理由は、推理のきっかけとなるポイントや推理の内容が、あまりにも飛躍しているからだ。
それに、「画像編集ソフトで修正している」ってのは莉子の推測であり、そこは全く根拠を示していないしね。原作付きの映画だから仕方が無いんだけど、そもそも莉子の能力を、あまりにも広く設定しすぎているんじゃないかと感じるんだよね。
あらゆるジャンルの知識が豊富なだけじゃなくて、暗記する能力にも長けていて、さらには洞察力も優れているという設定なんだけど、そうやって能力の幅を広げていることによって、キャラクターがボンヤリしてしまい、むしろ魅力を弱くしているようにも感じるのだ。
でも、そこを大幅に改変すると、原作から逸脱しちゃうんだよな。
だけど、そういうキャラクター造形なら、「美術品の鑑定人になって云々」という筋書きではなく、「事件解決のために警察に協力する」という話にしちゃった方が良かったんじゃないかと思うのよね。
ぶっちゃけ、今回の筋書きだったら、「美術関連の知識が異常に豊富で観察眼がある」というだけのキャラクターにした方が締まりが出るのよね。他の能力に関してはバッサリと削ってしまった方が、こっちとしても見やすい形になるのよ。前半の内に莉子はパリへ飛んでルーヴル美術館で学芸員試験を受けるのだが、そのシーンって実は全く要らないのよね。
日本で試験が実施される形にすれば、それでも成立してしまうわけで。
ルーヴル美術館へ行く展開を用意することで、スケールの大きさやゴージャス感を出したかったのかもしれないけど、そうやって話の大きさをデカくしたことが、その舞台に似合わない中身の薄っぺらさと安っぽさを余計に際立たせる皮肉な結果となっている。
先に「ルーヴル美術館でのロケーションをセールスポイントにする」という企画内容があって、それに合わせた話を作ろうとしたけど至らなかった、という印象を受けるぞ。莉子がルーヴルでモナ・リザの真贋を見極める試験に挑むシーンは、彼女の能力をアピールするために重要なポイントだ。だから、どんな方法で彼女の能力を表現するのかと思っていたら、ただ7枚の絵を順番に見る様子を淡々と描くだけ。
で、合格になった後、全て贋作と言い当てた根拠について問われると「何となく違うと感じた」と言うだけ。
いやいや、そこは豊富な知識や鋭敏な洞察力で見極めろよ。そして違いに関するウンチクを語れよ。
「何となく」でいいなら、もはや記憶術なんて無用の長物だろ。フランス語が分からない莉子を朝比奈が臨時学芸員に推薦し、フランス語が分からないのに莉子が引き受け、通訳も付けずにパリへ渡るという展開は、かなり引っ掛かるモノになっている。
そういうことも含めてコメディーとして描かれているならともかく、そうじゃないので、ただバカっぽいだけになっている。
また、講義は軽井沢で行われるのに、全てフランス語オンリーってのも引っ掛かる。日本での展示に向けた講義なんだから、日本語の通訳が付くとか、そういう対応を取るべきじゃないのかと。
そこをフランス語オンリーにしているのは「莉子が一晩でフランス語をマスターする」という展開を描くための段取りなんだけど、さすがに一晩でフランス語をマスターするのは「凄い」と言うより「バカバカしい」という印象になっちゃうわ。この映画は全てをリアリティーに基づいて描くべき内容じゃなくて、だから荒唐無稽があるのは大いに結構だ。でも、そこの見せ方が良くない。配分を間違えていると言うよりも、見せ方の問題が大きい。
ここまでヒロインの能力を突飛で幅広い設定にするのなら、それに見合うぐらいケレン味たっぷりの飾り付けをした方が良かったんじゃないかと思うのよ。それによって世界観を構築し、勢いやパワーで観客を引き込むべきではなかったかと。
でも実際には工夫に乏しいため、ヒロインのバカっぽさが浮いてしまって陳腐になる。
フランス語を覚えるシーンでは、初めて「事典の文字が浮かび上がる」というケレン味のある表現を持ち込んでいるけど、そういうのを見せるのが遅い。しかも、その程度では全く足りないし。小笠原の調査によって、莉子は過去に勤務していたリサイクルショップの店長に記憶術を教えてもらったことが判明する。
だけど、それで豊富な知識を蓄えていることの説明は付くけど、洞察力が鋭いことの説明にはならないでしょ。洞察力の方は、どうやって会得したのか。そこは全く説明が無い。
だったら、いっそのこと記憶術の説明もカットしちゃった方がいいんじゃないか。中途半端に「こういう理由がありまして」と説明するから、残った部分が気になってしまうわけで。
最初から説明が無ければ、「こういうキャラだから」ってことで成立させることも可能でしょ。リサイクルショップの店長が登場するわけでもないんだから、バッサリでもいいんじゃないかと。莉子は冒頭でチラシの不正を瞬時に見抜き、レストランでも犯人一味の作戦を簡単に看破しているのに、「モナ・リザの瞳の文字が脳に異変を起こす」という記事のインチキに気付かないのは変だぞ。
お前の鋭敏な洞察力は、どこへ行ったのかと言いたくなる。
訓練の不正に気付かないのも同様だ。その方法だと1人が真贋を分かっていれば成立するってことに、なぜ気付かないのか。
少なくとも「何か変だ」ってことぐらいは、最初の段階で気付くべきだろ。そういうのを見抜く力があるからこその「万能鑑定人」だろうに。で、ポスターを貼る動きを見た小笠原が「あの動きは」と漏らし、合宿会場を盗撮した映像を確認し、カードを作って訓練と同じ作業を繰り返し、「片方が真贋を分かっていれば成立する内容であり、莉子に鑑定能力を失ったと思い込ませるために美沙やブレたちが仕掛けた罠」ってことを見抜く。
だけど、それはキャラの動かし方として間違っている。
そりゃあ、やりたいことは分かるのよ。小笠原を単なるボンクラじゃなくて、役に立つ仕事をさせたいってのはね。
ただ、この話では、そういうのはダメなのよ。この映画に関しては、ヒロインが窮地に陥っても、自分で突破しないとダメなのよ。
ヒロインの窮地を相棒が救う展開を作りたいのなら、この映画がヒットしてから続編でやればいい。それに、後で小笠原がトラックで本物を運ぶ悪党に気付いて追跡する展開があるんだし、それだけでも充分だと思うぞ。
っていうか訓練の不正に関しては、そこで莉子が窮地に陥っていること自体がアウトでしょ。
そういう悪党の仕掛けを軽く看破して、万能鑑定士Qと呼ばれるヒロインがいかに万能であるかを見せ付けるべきでしょ。その程度で簡単に鑑定能力を失うような奴が、万能を名乗っちゃダメでしょ。「莉子と美沙が協力して真贋を見抜く力を鍛える」という訓練のシーンには、かなりの時間を掛けている。
その上で「実は莉子を陥れるための作戦でした」ってことが明らかになった時に、「そのために長々と時間を使ったのかよ」と思ってしまう。
もっと問題なのは、そこまで手間と時間を賭けて、莉子を臨時学芸員から外さなきゃいけない必要性の乏しさを感じるってことだ。
莉子が臨時学芸員として採用されても、ブレたちの計画は遂行できたんじゃないかと思うんだよね。正体を見抜かれた美沙は、莉子に「目的はモナ・リザの本物を盗み出すことではなく、本物をルーヴルに返して嘘を正すことである」と説明する。かつて盗難に遭ったモナ・リザは返却されたことになっているが、実は返却されたのも贋作だったというのが彼女の説明だ。
犯人の末裔である偽者のブレが、本物を持っていたと彼女は話す。さらに彼女は本物の裏側にある文字が偽物とは全く違うことを告げ、盗難事件の1年以上前の新聞に掲載されている事実だと語る。
それに対して莉子は、「本物を盗む計画を立てていた詐欺師のマルケスが、記者を買収して事前に捏造記事を書かせた」と言い、詳しい説明を語る。
で、その説明が正解のように扱われているけど、それって何の根拠も無い莉子の推測でしかないのよ。
そこはハッキリとした根拠を示さないとダメなトコでしょうに。そうじゃないと「莉子は騙されていて、莉子は真実を言っている」という風には受け取れないぞ。犯人グループは追って来た小笠原を捕まえ、莉子たちに電話で「これから絵を燃やす」と通告する。莉子は「小笠原と別れてから20分で通話時間が47秒。高速エレベーターの音がする」ということから、「車で20分以内で行ける40階以上の高層ビル」を調べるよう刑事たちに頼んで地図にマークを付ける。
しかし全て調べるのは時間が掛かりすぎると言われ、どのビルか絞り込むため帝光ホテルへ向かう。美沙のボタンを見て、それを付け替えたのが帝光ホテルだと見抜いたからだ。
で、保管されている客室のゴミを調べて情報を掴むのだが、膨大なゴミの中から手掛かりを見つけ出すのに必要な時間を考えると、全てのビルを調べた方が良くないか。火が出たら外からでも分かるし、間違いなく誰かが消防車を呼ぶはずだし。
っていうか、あの建物はスプリンクラーとか付いてないのかよ。ブレは手下から準備が出来たと言われると、小笠原の処遇に関して「考えがある。連れて行こう」と言う。どんな考えがあるのかと思っていたら、小笠原を縛って、目の前でモナ・リザの足元に置いた薪に灯油を掛けて火を放つ。で、小笠原を同じ部屋に放置したまま立ち去る。
えっと、アンタの考えってのは「絵を燃やして同じ部屋に小笠原を放置する」ってことだったのかい。
そんなことのために、わざわざ連れて行った意味がワシにはサッパリ分からんよ。
あと、絵に直接火を放つのではなく、足元に薪を置いて、そこに灯油を掛けて燃やすという手順を取る意味も分からんよ。完全ネタバレになるが、ブレが小笠原の眼前で燃やしたのも贋作だ。だから好意的に解釈するなら、「小笠原を連れて行ったのは、絵を燃やす現場を目撃させ、本物が消失したと証言させて捜査を欺くため」ということになる。
だけど小笠原を目撃者にしなくても、「本物を燃やした」と思い込ませることは既に出来ているはずなのよね。
っていうか目撃者にするつもりなら、そのまま焼死するかもしれない状況に置いちゃマズいはずだし。
だから、そう解釈しても、やはり小笠原を連れて行ったブレの行動は理解不能だ。港でブレの一味が逮捕された後、刑事たちが本物を見つけ出そうとすると、朝比奈が慎重な取り扱いを求める。
実際、ちゃんと注意しておかないと刑事たちは看板を荒っぽく解体しそうな雰囲気だったんだけど、それは無理があるだろ。相手はモナ・リザだぞ。乱暴に扱って破損でもしたら、国際問題になるんだぞ。
あと、莉子が「私たちに選ばせて下さい。私と彼女(美沙)で一枚を選びます。それだけは慎重に解体して下さい」と言うんだけど、ポスターの画質って本物の絵に比べれは粗いはずだから、真贋の判断は彼女たちじゃなくて朝比奈のレベルでも普通にやれると思うのよね。
そこは「莉子と美沙が協力して」というドラマで感動的に盛り上げるために用意された強引な段取りだけど、ちっとも盛り上がらないよ。そこも本物を選んだ根拠は何も示されないし。
そもそも、そこに感動の要素を持ち込もうとしていることからして冷めるわ。(観賞日:2015年11月17日)