『バカヤロー!3 へんな奴ら』:1990、日本

第1話は高速道路の渋滞に巻き込まれた男が主人公。妻と娘を乗せて、帰省していた妻の実家から自宅へ戻る途中の男。ドライブインでトイレに行こうとしたが大行列が出来ており、あきらめて運転を再開。しかし大渋滞に巻き込まれ、小便を必死で我慢することになってしまう。
第2話はショーパブで働く女が主人公。姉が離婚して子供を連れて実家に戻ってくることになった。主人公は優しく接しようと務めるが、姉は子連れ離婚を理由にしてワガママ放題を繰り返し、両親は姉を甘やして言うことを何でも聞いてしまう。
第3話は転職情報誌を発行している会社の営業課長が主人公。営業課から半年で6人もの退職者が出ていることで、上司から注意を受ける。主人公は辞めた社員を訪れ、退職理由を聞いて回る。社員の親睦を深めるため、彼は部下を熱海へ連れて行く。
第4話の舞台は大黒銀座という下町の商店街。酒屋や魚屋など、商店街で店を営んでいる大人達は、近付いてきたクリスマス商戦の策を練る。しかし、子供達は店を手伝う気など全く無く、商品を勝手に持ち出して遊びに出掛けてしまう…。

監督は鹿島勤(第1話)&長谷川康夫(第2話)&黒田秀樹(第3話)&山川直人(第4話)、脚本&製作総指揮は森田芳光、企画&製作は鈴木光、プロデューサーは青木勝彦&三沢和子、撮影は仙元誠三、編集は冨田功、録音は橋本文雄、照明は渡辺三雄、美術は菊川芳江(第1話&第3話)&及川一(第2話&第4話)、音楽は和泉宏隆(第1話)&堀井勝三(第2話)&近藤達郎(第3話)&JIMSAKU(第4話) 、音楽プロデューサーは梶原浩史。
第1話の出演者は平田満、原日出子、長江健次、村上里佳子、石井恒一、伊藤克信、佐藤恒治ら。第2話の出演者は清水美砂、松本伊代、川津祐介、松原智恵子、勝俣州和、石丸謙二郎ら。第3話の出演者は中村雅俊、角野卓造、時任三郎、長江英和、岡本夏生、関口誠人、七瀬なつみ、鈴木京香、小須田康人、佐藤佑介ら。第4話の出演者は永瀬正敏、咲輝、田山真美子、室井滋、長塚京三、鰐渕晴子、毒蝮三太夫、奥村公延、高田文夫ら。


森田芳光が脚本と製作総指揮を務める“バカヤロー!”シリーズ第3作。
4話で構成されたオムニバス映画。
タイトルは順に、『こんな混んでどうするの』『過ぎた甘えは許さない』『会社をナメるな』『クリスマスなんか大嫌い』となっている。

第1話は、主人公の家族以外の面々が、主人公の苛立ちをアップさせていく要因としてほとんど機能していない。
「小便がしたい」という一点に頼るのではなく、カーラジオや前の車、家族の様子などが主人公の神経を逆撫でするような展開にした方が良かった。

第2話は、「甘えたがりで中身は醜悪」な姉を演じる松本伊代の存在が光る。
しかし、スローテンポで描くほど時間は無いのだから、もっとハイスピードで進行すべき。主人公が怒りを爆発させる場面でカタルシスを与えようとせず、ヌルいハッピーエンドにするのは最悪。

第3話は下から煽るアングルなど、カメラアングルに凝っている。
奇妙なパンク男や棒読みっぽいキャラを登場させ、間の抜けた可笑しさも感じさせる。
しかし主人公がイライラを募らせていくような感じは弱く、最後には安易に「いい話」として締めてしまうのもいただけない。いただけないというか、ダメじゃん。

第4話は集団を描こうとしたのが失敗。
ハッキリとした1人の主人公がおらず、誰に感情移入すればいいのか分からない。
子供達の「バカヤロー!」は、単なるガキのワガママだから全く共感できないし。
テーマから外れた内容を、強引にテーマに合わせようとしている感じだ。

シリーズのテーマを考えれば、本来は観客が主人公に感情移入して、「分かるなあ、その気持ち」という形になって、主人公の怒りの爆発にカタルシスを覚えるという流れになっているべきだと思う。
しかし、そうなっていないのだから、何をか言わんやである。

 

*ポンコツ映画愛護協会