『バカヤロー!2 幸せになりたい』:1989、日本

第1話は旅行代理店に勤める男の話。風邪気味の体を押して頑張っているが、妻と娘からは日曜出勤が多いと不平を言われる。家族サービスで夏休みのニューカレドニア旅行のチケットを予約するが、上司が勝手にチケットの権利をお得意様に譲ってしまう。
第2話はコンビニで働く男の話。若くて美人の常連客に惚れて勝手に値引きするが、次の中年客には値引きしなかったことで怒られる。相棒はマンガを読んでばかりで仕事をしない。ある日、男は勤務中に妄想を膨らませ、その中で客が様々なトラブルを起こしていく。
第3話は新居に引っ越してきた若夫婦の話。2人は訪れた隣人から、持っている電気製品が全て古いことを指摘される。2人は早速秋葉原に出掛け、店員に勧められるまま新製品に買い換える。しかし隣人が連れて来た電気屋に、それらが既に古いタイプであることを指摘される。
第4話はもうすぐ27歳になるOLの話。彼女は自分より若い女性の結婚式に出席し、結婚願望を膨らませる。しかし付き合っている同僚は結婚に消極的な態度だった。彼女は彼と別れ、会社を辞めた。しばらくして彼女は就職活動を始めるが、面接で不快な思いをさせられる…。

監督は本田昌広(第1話)&鈴木元(第2話)&岩松了(第3話)&成田裕介(第4話)、脚本&製作総指揮は森田芳光、企画&製作は鈴木光、プロデューサーは宮島秀司&三沢和子、製作担当は小宮慎二、撮影は栢原直樹(第1話、第4話)&浜田毅(第2話、第3話)、編集は冨田功、録音は宮本久幸、照明は安河内央之(第1話、第4話)&渡辺孝一(第2話、第3話)、美術は寒竹恒雄(第1話、第4話)&細石照美(第2話、第3話)、音楽は土方隆行、音楽プロデューサーは梶原浩史。
第1話の出演者は小林稔侍、風吹ジュン、橋爪功、逗子とんぼ、相田寿美緒、高森えりか、十貫寺梅軒ら。第2話の出演者は堤真一、金子美香、太田光、田中裕二、光石研、イッセー尾形、島崎俊郎、ベンガルら。第3話の出演者は藤井郁弥、荻野目慶子、尾美としのり、竹中直人、柄本明ら。第4話の出演者は山田邦子、香坂みゆき、辻村真人、市山登、桜金造、水野久美、加藤善博ら。


1988年の『バカヤロー!私、怒ってます』に続く、“バカヤロー!”シリーズ第2弾。
4話で構成されたオムニバス映画。
タイトルは順に、『パパの立場もわかれ』『こわいお客様がイヤだ』『新しさについていけない』『女だけトシとるなんて』となっている。

各話で監督が違うというのが、このシリーズのスタイル。
脚本&製作総指揮は、前作と同じく森田芳光が担当している。
第2話で主演している堤真一は、これが映画初出演。
第4話では主人公が母親に見せられる見合い写真に、大森一樹監督や伊武雅刀が映っている。

第1話は、タイトルからすれば父親が家族に怒りをぶつける形になるべきだろう。
だが、むしろ家族よりも上司の方が腹の立つ存在だ。
それに、実際に最後に怒りがぶつけられるのは上司だ。
しかも最後に「バカヤロー!」と叫ぶような爆発力が無く、爽快感に欠ける。

第2話もタイトルと内容に食い違いがあって、恐い客に怒る形になっていない。
次第にストレスを溜めていく流れは無い。
終盤で妄想に逃げて一気に盛り上げようとして観客を置き去りにする。
客をひいきする主人公に全く感情移入できず、第1話と別の意味でスカッとしない。

第3話でも主人公が追い詰められていく感じが弱く、最後の爆発も弱い。
もっと周囲がイヤな人々として描かれるべきだ。
そして、もっと主人公が新製品の扱いに苦労する様子を描くべきだ。
“新製品を知らない”ということを描くだけでは弱い。
終盤は、単なる悲しきノスタルジーになっている。

第4話では、序盤は“婚期”という部分で進めて行くように思わせておきながら、終盤に入ると“就職差別”という部分で怒る形になっている。
視点が最初からボンヤリしていて、さらに流れの中でポイントがズレていく。
年齢よりも性別だけをポイントにして、「女性に対する就職差別の話」として描いた方が良かったのではないだろうか。まあ、それだけで面白くなるかどうかは知らんけど。

 

*ポンコツ映画愛護協会