『ナースのお仕事 ザ・ムービー』:2002、日本
若葉会総合病院に勤務するナースの朝倉いずみは、ドジばかり繰り返している。外科医の高杉健太郎と結婚したいずみは、新婚旅行に行く気満々だ。しかし高杉が「忙しいので、そんな暇は無い」と言ったため、いずみは怒って離婚を宣言する。
主任ナースの尾崎翔子は、新しく赴任してきた婦長の矢口俊子から仕事のやり方を否定され、総婦長の根本雅子に相談する。いずみの先輩ナース・大島冴子は外科部長の浜野雄一と結婚しており、2人目の子供を妊娠している。後輩ナースの赤木まどかは、手術を控えた肝臓移植手術患者・沖田総一郎に好意を抱き、彼の世話を焼く。
元患者の猿渡剛が若葉会総合病院に現れ、再入院させてほしいと頼んできた。入院していた時に翔子に優しく世話をしてもらい、それが忘れられないというのだ。しかし、当然のことちながら、彼の頼みが受け入れられるはずも無い。
だが、どうしても諦めきれない猿渡は、マシンガンを乱射して外科病棟のナースステーションを占拠した。現場で指揮を執る熊野刑事に、猿渡は再入院を要求する。他のナースと共に人質となったいずみだが、豪華な弁当を差し入れさせるなど、その状態を楽しむ。
数時間後、警察が強行突入して猿渡を逮捕するが、いずみが誤射されて重傷を負ってしまった。だが、外科部長の浜野は、沖田の手術を担当することになっている。そこで、いずみの執刀は、新米外科医の高杉が担当することになった…。監督&脚本は両沢和幸、製作は亀山千広、企画は大多亮&関一由&尾越浩文、プロデューサーは大賀文子&両沢和幸&三田美奈子&棚橋裕之、エクゼクティブプロデューサーは宅間秋史、撮影は北山善弘、録音は渡辺敏博、照明は赤津淳一、美術は荒川淳彦、美術プロデューサーは関口保幸、美術総合プロデューサーは暮田志郎、音楽は鴨宮諒、音楽プロデューサーは向井達也、音楽協力は桑名裕子、主題歌は朝倉いずみwithナースのお仕事。
出演は観月ありさ、松下由樹、神田うの、藤木直人、石原良純、ウド鈴木、根岸季衣、原田龍二、蟹江敬三、吉行和子、伊藤かずえ、岡田浩暉、国分佐智子、春田純一、上原多香子、林知花、千葉涼平、橘慶太、緒方龍一、土屋久美子、小林美江、森下能幸、まいど豊、瀬戸陽一朗、内田健介、福井謙二、城ケ崎祐子、青嶋達也、内田健介、小林健、大西武志、水森コウ太、三川雄三、大久保運、津村和幸、三浦義徳、望月明広ら。
シリーズ化されたフジテレビの人気ドラマを映画化した作品。
いずみを観月ありさ、翔子を松下由樹、まどかを神田うの、高杉を藤木直人、浜野を石原良純、猿渡をウド鈴木、沖田を原田龍二、熊野を蟹江敬三、根本を吉行和子が演じている。『ナースのお仕事』のテレビ版で作り上げた世界観をそのまま映画化するために、TVシリーズと同じスタッフで撮影したそうだ。しかし、何も内容やスケールや映像まで、テレビと同じサイズにすることは無かった。いや、すべきではなかった。
ただ、これは推測だが、どうやったとしても、『ナースのお仕事』を映画サイズにすることは無理だったと思う。土台、あれはテレビだからこそ視聴率が稼げた内容であって、そのまま持ってくれば映画にならないし、だからといってスクリーン用に大幅にアレンジすると世界観が壊れるだろうし、映画化の企画自体が無謀だったのだ。ハッキリ言って、これは映画化するような内容ではない。テレビで、それも2時間枠ではなく、1時間枠で充分だ。充分すぎる。それを無理に110分に引き伸ばし、おまけにスクリーンに持って来るから、にっちもさっちもどうにもブルドッグになってしまう。
この映画は、コメディーとして作られている。しかし、観客を笑わせようというより、出演者がひたすらハシャギまくっているだけだ。出演者が楽しんでいる様子を見て、観客も楽しい気持ちになれたら、それはそれで成立している。でも、そうじゃない。この映画は、「お前ら、いつまでも勝手にやってろよ」という気持ちにさせてくれる。この映画は、基本的にコントを繋げて1本にしたような構成になっている。どうやら、ベタな笑いを見せたいらしい。だが、ベタってのは、かなりのセンスとテクニックが無ければ悲惨な状態になってしまう。これは、演出やカット割りなどでは補い切れない。
前述したように無理に薄い内容を引き伸ばしているのだが、そのくせ、使えるトコを使っていなかったりする。例えば猿渡が偶然にもマシンガンを入手する過程を描けば、そこで1つ笑いも作れるだろう。ところが、そういう所は描かず、「なぜか最初から車にマシンガンを積んでいました」という無理のありすぎる展開を持って来る。既に新米では無くなっているいずみの自由気ままな振るまいが、ちょっと疎ましく思えてしまう。頑張ろうとしてヘマを繰り返すのなら微笑ましく見ることも出来ようが、そうじゃないからね。ただナースとしての感覚が無いだけ。むしろ、彼女に振り回される翔子の方が、ヒロインに適しているキャラクターではないかと思ってしまう。
聞く所によれば、この映画はテレビ版の第3シリーズの第50話という位置付けで作られているらしい。
なるほど、それならば、この内容でも理解できる。
だが、私は声を大にして言いたい。
「だったら映画じゃなくて、テレビのスペシャル版として作れ」と。