『NECK ネック』:2010、日本

小学生の真山杉奈と古里崇史は、仲の良い幼馴染だ。その日、杉奈は母が夜勤だったため、崇史の家で泊まることになった。崇史は怖がり なのに、お化けの絵ばかり描いている。「どうして」と杉奈が尋ねると、「怖いのと嫌いなのは違う」と答える。夜、寝る時間になっても 、崇史は懐中電灯を付けて宇宙の図鑑を読み続けた。杉奈が夜中に目を覚ますと、崇史は懐中電灯を付けたままで眠り込んでいた。
杉奈は崇史の足を引っ張って起こし、何もしなかったフリで布団に戻った。崇史が慌てていると、杉奈は「体、ガクンとなったやろ。 知ってる?死んだ人が足を引っ張ってるんやで。ベッドの下っていつも暗いから、死んだ人が集まりやすいんや。ゴム手袋をした人が迎え に来るんやで」と脅かした。さらに彼女は、崇史が眠ってからクローゼットに隠れ、電飾の仕掛けを使って怖がらせる。しかし電飾は異様 に輝き、コンセントを抜いても消えない。
杉奈が怯えていると、急に電飾は消えた。その直後、布団の中で何かが動き出したのに杉奈は気付く。ゴム手袋の腕が布団から飛び出して 崇史の足を引っ張るので、杉奈はクローゼットから飛び出した。彼女が崇史を助けると、ゴム手袋の腕は消えた。杉奈たちは崇史の両親が 寝ている部屋に飛び込み、今の出来事を話す。だが、ゴム手袋のお化けが出たという話など、もちろん信じてもらえない。崇史の父は、 杉奈に「怖いと思っとるから、怖いもんが出るんや」と告げた。
翌日、杉奈は友人のゆかりを誘い、お化けを見るために廃墟へ出掛けた。嫌がるゆかりを強引に引っ張ると、彼女が抵抗して手に軽い怪我 を負った。泣き出した彼女が廃墟から走り去るのを、通り掛かった崇史が目撃した。杉奈は「もうええ。ゆかりちゃんなんか絶交や」と 冷たく言う。すると崇史は「ゆかりちゃん、もうすぐ転校するんやで。仲直りせんて後悔するで」と告げた。その夜、杉奈は入浴剤を 入れた浴槽に浸かり、電気を消してみた。すると濁った湯の中から、髪の長いお化けが出現して首を絞められた。
年月が過ぎ、杉奈は大学院生になっていた。大学では人気ホラー作家・越前魔太郎の小説『冥王星O』が大人気で、研究会もあるほどだ。 昼食の時間、食堂に現れた杉奈に、青島教授や准教授がペコペコと低姿勢で媚を売った。分析を手伝ってほしいというのが、彼らの頼みだ 。杉奈は「そもそも私の研究じゃないんですよ」と冷たく言い、たくさんの食事を御馳走になる。そんな彼女の姿を、理工学部2年で アメフト部員の首藤友和が眺めていた。彼は杉奈に惚れているのだ。
首藤はアメフト部員の小池から「やめとけよ、真山杉奈だけは」と警告されるが、その気持ちは変わらない。彼は杉奈を追い掛け、デート を申し込んだ。すると彼女は、「アンタ、怖がりか」と質問してきた。首藤が「いえ、全然」と答えると、杉奈は冷淡に去ろうとする。 そこで首藤は慌てて、「お化け、ちょー怖いっす」と嘘をついた。杉奈は笑顔になり、「今夜、研究室においで」と誘ってきた。
その夜、研究室を訪れた首藤は、大きな木箱に入れられ、首だけを外に出した状態にされた。杉奈はホラー映画のDVD5本を用意して おり、それをテレビで流した。そして「期待してるで」と告げると、電気を消して部屋を出て行った。首藤がホラー映画を見終わった頃、 戻ってきた杉奈は箱の中を改める。そこに何も無いのを確認すると、彼女はガッカリする。首藤が「トイレ、行ってきていいですか」と 尋ねると、彼女は「いいで。どうせ実験は失敗みたいやし」と告げた。
首藤がトイレを出た後、勝手に蛇口が動いて水が出たが、彼は全く気付かなかった。部屋に戻った彼は、杉奈から今のが物理実験だった ことを知らされる。木箱からお化けが生まれるのが、彼女の仮説だという。首藤が入っていたのは単なる木箱ではなく、杉奈はそれを 「ネックマシーン」と呼んでいた。杉奈は首藤に、ライフワークとして研究している理論があることを語る。それは「怖いことを考える から、お化けが生まれる」というものだ。
杉奈は幼少時代に風呂場で体験した出来事を語った。その時のお化けは、ゆかりと同じ怪我が手にあった。だから杉奈は、そのお化けを 「ゆかりちゃん」と呼んでいた。首の部分で視界を分断することによってお化けを製造するというのが、杉奈の唱えるネック理論だ。彼女 に「やっぱり首くんも役立たずか」と言われ、首藤は「怖がらせ方が間違ってるんじゃないですか。首から下を怖がらせなきゃいけないん ですよね。ホラー映画に集中したら、箱の中のことなんて考えないんじゃないですか」と語る。そして彼は、「怖がらせる方法なら、その 道のプロに頼むというのは」と提案した。
『冥王星O』の映画化を受け、魔太郎の仕事部屋にテレビの取材クルーがやって来た。魔太郎は極度の怖がりなので、室内には何枚もの 魔除けの護符が貼ってある。レポーターの質問を受ける魔太郎の様子を、編集者の赤坂英子や助手の香織、アルバイトの真央たちが見て いる。魔太郎は映画を見ていなかったが、適当に話を合わせた。レポーターは「この世には本当のことが1つだけある。それは本当のこと なんて何もないって事だ」という言葉で番組を締め括った。
首藤は杉奈を魔太郎に会わせるため、寺へ案内した。「彼は魔除けの護符が無いと怖くて仕事が出来ないらしい、それでウチの寺に貰いに 来る」と、首藤は説明する。一方、魔太郎は赤坂と共に、墓地を歩いていた。赤坂は映画の出来栄えに不満を漏らす。魔太郎が彼女に愛を 告白しようとしていると、杉奈と首藤が現れた。杉奈は魔太郎が崇史だと気付き、嬉しそうに駆け寄る。崇史は慌てて逃げ出すが、首藤が タックルで捕まえた。
崇史は杉奈からゴム手袋お化けが嘘だったと聞かされ、腹を立てる。彼女のせいで、今もベッドで眠れず、布団を被ることも出来ず、電気 を消して寝ることも出来ないのだ。杉奈は「だけど、お化けはホント」と言い、風呂場の出来事を語る。彼女からネック理論実験への協力 を求められ、崇史は承諾した。後日、崇史は用意した実験場所に杉奈、首藤、赤坂を連れていく。そこは山本壮平という人形師が制作に 使っていた山荘だが、奇妙なことが起きて、今は無人だという。
崇史は杉奈たちに、山本に起きた出来事を語り始めた。ある時、東京の個展に出展していた人形が山荘に戻ってきたが、覚えの無い緑目の 人形が1体混じっていた。その日から山本は、急にたくさんの人形を作れるようになった。その一方、急に体調を崩したり、寝込むように なった。そんなある日、仲間の岡田から心配する電話が掛かって来た。すると彼は困惑したように、「女の人の声が聞こえますけど。 すごい怒ってるんですけど」と告げた。山本が「混線ですかね」と言うので、岡田は「掛け直してみます」と電話を切った。
しばらくして、岡田から山本に再び電話が入った。すると岡田は、それまでに何度も電話を掛けていたこと、掛ける度に女の声で怒られた ことを話す。岡田は何か恐ろしいことが起きていると確信し、「今、そっちへ向かってますから」と告げた。岡田が到着すると、山本が 眼前で倒れ込んだ。岡田は「夜中に人形作ってませんか。ダメですよ。夜中に作った人形の中には、暗くなると動き出す奴がいるって 言いますからね」と告げた。
家にあった全ての人形を焼いて岡田が帰った晩、緑目の人形が山本の前に出現し、「私の人形、どこ」と詰め寄った。山本は焼却炉に人形 を突っ込み、処分しようとする。だが、地面から人形の腕が幾つも出現し、彼に襲い掛かった。そんな出来事があったことを、崇史は3人 に語った。やがて4人は、今は人形屋敷と呼ばれている山本の仕事場に到着した。立ち入り禁止だが、4人は勝手に入った。
崇史は実験会場に使う山本の作業部屋へ3人を案内し、用意しておいた高性能の新型ネックマシーンを披露した。彼は杉奈にマシーンへ 入るよう促し、セッティングを完了させる。そして彼女だけを部屋に残し、3人は電気を消して外に出る。崇史はマイクを通じ、「実は 山本さんの話には続きがあるんや」と杉奈に言う。その頃、風呂場では勝手に蛇口が開いて、湯が浴槽に注ぎ込まれていた。やがて湯は 溢れ出し、そこから髪の長いお化けが出現した。
崇史は杉奈に、「人形たちに襲われてなお、山本さんは生きていた。だけど人形を作ることが出来なくなった。ある夜、誰もいないはずの 作業部屋から妙な物音が聞こえてきた。部屋に行くと自分そっくりの男が人形の首を磨いていた。その後、彼は電話で岡田にその出来事を 話して失踪したと。7年後、彼は法的に死亡認定を受けた。ここには色々な人がやって来て人形を捨てて行く。それ以外の人は誰も 近付かない」と話す。そして杉奈が怖がっているところへ、仮面を被って出現した。
杉奈が震えていると、崇史は仮面を外して笑い、「俺の人生をメチャメチャにした罰や。お化けなんているはずないんや」と告げた。一方 、赤坂は音に気付いて風呂場へ行き、浴槽が湯で満ちているのを目撃した。溢れた湯が線を描き、廊下を伝っている。それを辿った赤坂は 、裏口から外に出た。同じ頃、実験部屋では、崇史がリモコンを動かしていないのに、マシーンのランプが勝手に点滅を始めた。
崇史が狼狽していると、杉奈が「私の部屋になんか触ってる」と口にした。直後、ネックマシーンが激しく揺れ出した。「助けて」という 杉奈の叫びを耳にした首藤が急いで駆け付けるが、扉が開かない。マシーンが停止して、中から緑目の人形が飛び出した。人形は崇史を 鋭く凝視し、襲い掛かって首を絞めた。ようやく扉が開き、首藤が崇史を助けた。すると今度は他の人形たちが起き上がの、首藤を襲撃 した。杉奈たちが部屋を出ると、山荘に置かれていた甲冑も襲い掛かって来た…。

監督は白川士、原案は舞城王太郎、脚本は江良至&藤平久子、製作は豊島雅郎&水口昌彦&松田誠&百武弘二&吉羽治、企画・ プロデューサーは山田雅子、撮影は中堀正夫、照明は牛場賢二、プロダクションスーパーバイザーは上原英和、美術は佐々木記貴、録音は 横溝正俊、編集は石川浩通、縁目人形デザイン製作・操演は小池俊幸&植松淳、音楽はAudio Highs、音楽プロデューサーは安藤岳。 主題歌『今夜はMAGIC BOX』MAGIC PARTY、作詞:AIRI、作曲:本田光史郎、編曲:本田光史郎&松岡モトキ。
出演は相武紗季、溝端淳平、栗山千明、平岡祐太、温水洋一、鈴木一真、細川茂樹、板東英二、板尾創路、佐藤二朗、渡部豪太、小松彩夏 、河西智美、吉本菜穂子、今奈良良行、yoshi、江藤大我、鷲津秀人、森山貴文、大澤まりを、井出卓也、寺本純菜、花岡拓未、 未来穂香ら。


人気作家・舞城王太郎の書き下ろし原案を基にした作品。
杉奈を相武紗季、首藤を溝端淳平、赤坂を栗山千明、崇史を平岡祐太、岡田を温水洋一、山本を鈴木一真、青島を板東英二、レポーターを 板尾創路、准教授を佐藤二朗、小池を渡部豪太、香織を小松彩夏、真央を河西智美(AKB48) が演じている。
監督の白川士は主にTVドラマの演出を手掛けてきた人物で、これが初の長編映画。
一部で「初監督」となっているデータもあるが、2004年に山本和夫と共同で監督を務めた『恋愛白書』が一応は単館公開されている。
まあ実質的にはDVD作品なので、カウントしないってことなのね。

この映画、「胸キュン・ホラー」という新ジャンルに挑んだ作品らしい。
もちろん公開に合わせて勝手に作り出したジャンルだが、まるで定着しなかった。
「公開当時、『ラブ★コン』『ハンサム★スーツ』の製作チームによる作品」という宣伝がされていたが、実際には企画・プロデューサー の山田雅子が3作全てに携わっているだけでしょ。
それはチームじゃくて、個人でしょ。
まさかワシが知らないだけで、山田雅子ってのは団体名だったりするのか。

杉奈と崇史は方言を喋っている。どこの方言か良く分からなかったんだけど、どうやら福井弁らしい。
で、この2人に方言を喋らせている意味って何なのか。
地方らしさが物語に必要ってわけでもないんだし。
台詞回しが不自然になっているし、方言を喋らなきゃいけないというハードルが増えることで、ただでさえ演技力に問題があるのに、 ますます芝居の質が落ちているんじゃないか。

まず冒頭に杉奈と崇史の幼少時代のシーンを配置しているが、ここがダラダラと長すぎる。ゴム手袋お化けが出て来る夜のシーンだけでも 既に間延びしているのに、さらに廃墟へ行くシーン、浴槽からお化けが現れるシーンと続けてしまう。
ゴム手袋お化けも、ゆかりちゃんも、浴槽のお化けも、後の展開に繋がって来るけど、だからって、なんで最初に多くのことを少女時代の 出来事で説明しようとしたのか。そこに17分ぐらい使っちゃうって、どう考えても構成ミスだよ。
最初に現在の杉奈を登場させて、それから回想の形で、何度かに分割して、ゴム手袋お化け、ゆかりちゃんとの関係、風呂場のお化けと いった情報を少しずつ提示して行けば良かったんじゃないのか。
あと、そこを一気に見せてしまうことで、少女時代の杉奈が、すげえ強引で自分勝手で嫌な奴に見えちゃう。
そこで彼女に感情移入できないのってマズいでしょ。
お化けにビビってんのに嫌な奴に見えるんだぜ。それって、よっぽどだぞ。

杉奈はゴム手袋お化けを見て本気で怖がっていたのに、翌日になって、お化けを見るために廃屋へ出掛けている感覚が解せない。
そりゃあ、キャーキャー言いながらお化け屋敷に入るとか、そういう「怖いもの見たさ」の感覚って、特に女性は多くの人が持っている 気質だとは思うよ。
ただ、この映画においては、そういうところで納得することが出来ないんだよ。
単に整合性が取れていないか、もしくは杉奈が極度の健忘症か何かなのかと感じてしまう。

あと、「杉奈がお化けを見たがっている」というのも分かりにくいんだよな。「それまでは見たいなんて思わなかったけど、崇史の父親 の言葉で、お化けを見たいと思うようになった」ということなのか。
出来れば最初から「お化けを見たがっている」というキャラで登場した方がいいし、崇史の父の言葉がきっかけで彼女の意識がガラリと 変化したってのも分かりにくい。メリハリの問題だ。
あと、そういうことなら、崇史の父の言葉があった後、現在のシーンに移って、「それがきっかけで、杉奈は大学院でお化けを見る研究を している」という流れにすれば良かったんじゃないの。
それと、杉奈と崇史の幼少時代のシーンから入ると、こっちとしては、成長した杉奈が登場した後、相手役として登場するのは成長した 崇史だと思ってしまうんだよな。
だけど違う男が出て来るから、なんか歪な構成だと感じてしまう。

食堂のシーンで、杉奈が食べている向こうで白衣の学生たちが並んでおり、運んできた食事が杉奈の前に全て並べられてガックリすると いうシーンがあるが、何の意味があるのかサッパリ分からない。
たぶん喜劇として用意されているんだろうけど、何が面白いのやら。
そもそも、杉奈がたくさんの飯を食べるという設定にしている意味も、全く感じられない
。それが後の展開に繋がって来るとか、それを何度かネタにして笑いを取りに行くとか、そういうわけでもないし。
それに青島教授や准教授って、そのシーンだけで出番は終わりだし、何のために登場したのかサッパリ分からない。

杉奈が研究室に首藤を誘った後、シーンが切り替わると、夜の研究室で首藤が木箱に入っている。
いきなり箱に入っているのを見せることで、インパクトを狙ったのかもしれないが、そこに効果は無い。
むしろ「なんで木箱に入るまでの経緯を見せないのか」という部分の不満が大きい。
そこは「首藤が期待して部屋に行ったら奇妙な箱が置いてあって、そこ入るよう言われて、戸惑いながらも杉奈に従って」という流れを 見せた方がいい。
あと、5本のDVDを、どうやって首藤は全て見たのか。
木箱からは首しか出ていないから、途中でDVDをデッキから入れ替える行動は不可能なはずなのに。

前述した「胸キュン・ホラー」というのは、どうやらホラーとコメディーと恋愛劇をミックスしたようなジャンルのようだ。
しかし、まあ見事なぐらいの「虻蜂取らず」状態。
ホラーとしては怖くないし、コメディーとしては笑えないし、恋愛劇としては何の中身も無い。
コメディーに関しては、演技も演出も、どっちも悪い。
演出としてはテンポやカメラワーク、演技としては間の取り方やリアクションなどがダメ。
恋愛劇に関しては、杉奈が首藤に惹かれるようなきっかけや、心の距離を近付けるための流れは何も無かったのに、なぜか最終的 にはカップルになっている。

ホラーとコメディーとロマンスが虻蜂取らずというだけでなく、それ以外の部分でも話にまとまりが無い。
後半に入ると、人形師の体験を回想まで入れて説明しているけど、そこに恐怖のポイントを置いてしまうと、もはやネック理論や ネックマシーンといった仕掛けの意味が無くなってしまう。
そういうのを全て取っ払っても、「山荘で何か怖いことが起きるかも」という話は作れてしまうからだ。
そういう「いわくつきの場所」とか「過去に起きた恐怖現象」に頼らず、現在の状況と、そこにいる面々だけを使って怖い話を構築すべき だったのだ。

山本の体験について崇史が語るシーンで、7分ぐらい使ってるんだぜ。
杉奈が「こんな関係ないとこで、本気で怖がらせてどうするんよ」と言ってるけど、その通りだよ。
まあ怖くは無いけど。
そんで、後になって、それは全て崇史の作り話だということが明らかにされるが、もう脱力するだけだね。そういう肩透かしは邪魔な だけだなあ。
そこまでの話が微塵も面白くなかったこともあって、ちょっとイラッとしたぞ。

前半と後半が上手く繋がっていない。
本来なら、前半の内に発生した怖い現象が、後半にも繋がっていかなきゃいけないはずなのよ。
でも新型ネックマシーンによる実験って、完全に別物として行われているでしょ。
そして、そこで発生する「人形が動き出す」という現象は、前半で密かに起きていた「蛇口が勝手に開いて水が出る」という現象とは、何 の関連性も無い。
っていうか、そもそも前半の段階で、誰も怪奇現象を怖がってないし。そもそも蛇口の出来事だけだしね。
ホラーとしては、怖がらせる意識が薄すぎるでしょ。

前半と後半で繋がりを持たせるなら、例えば前半の実験で何も出現しなかったと思っていたけど、実は首藤が想像した物体が密かに出現 していて、それが研究室から外に出て人を襲うという流れにするとかさ。
一応、山荘でも「風呂場の蛇口が開いて湯が出る」という展開があって、それは前半の「蛇口が開いて水が出る」という現象と関連して いるんだけど、そっちよりも人形が動き出す現象がメインだし。
しかも、蛇口から水や湯が出る現象は、ネックマシーンとは何の関係も無いし。

終盤は人形が襲ってくるホラーになるが、まあ怖くないよね。
だからって、恐怖描写が喜劇に転化されているわけでもない。
そこまで行き着くような面白味も無い。ホラーとしても、ホラー・コメディーとしても、中途半端なだけ。
終盤になってゆかりちゃんお化けを絡めているけど、上手く絡んでいない。
緑目人形と仲間たちが襲ってくる展開に、余計な異物が紛れ込んでいる印象を受ける。

ゆかりをお化けとして後半にも登場させるのなら、そこだけに恐怖の対象を絞った方がいい。
ゆかりちゃんが味方になって甲冑お化けを退治してくれるとか、そういうのもバカバカしいだけ。
そこの展開を削れば、序盤の「杉奈がゆかりと廃墟に行く」「風呂場でゆかりのお化けに遭遇する」というシーンも要らなくなるわけで。
だから、バッサリと削ぎ落とせばいいと思っちゃうんだよな。

杉奈たちが人形に襲われて危機に陥った時、赤坂が「助けて、冥王星O!」と叫んだら、彼女のイメージした冥王星Oが登場して悪霊を 退散させるという展開も、あまりにも唐突すぎて唖然とさせられる。
これが例えば深夜枠のドラマだったら、ふざけたノリの強いドラマとして、まあアリかなあとも思ったかもしれない。
だけど、劇場映画としてお客さんから金を取るのは、マズいんじゃないかな。

(観賞日:2012年4月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会