『夏美のホタル』:2016、日本

写真学科の飯田がコンテストのグランプリを獲得し、同級生は居酒屋で祝宴を開いた。河合夏美も恋人の相羽慎吾と共に参加するが、本気で祝福する気持ちは湧かなかった。慎吾は才能の無さを痛感し、同棲中の部屋で「俺が実家に帰るって言ったらどうする?」と夏美に質問した。彼の実家は二百年も続く酒蔵で、彼は継ごうかどうか迷っていた。夏美は応援できず、苛立った口調で「それでいいの?」と問い掛けた。翌朝、慎吾が目を覚ますと、夏美は姿を消していた。
夏美はバイクを走らせ、千葉県君津市の久留里を訪れた。彼女は山奥の川で写真を撮影し、テントを張って野宿した。翌朝、バイクで下山した夏美は、バス停の脇にある個人商店『たけ屋』に立ち寄った。店主の福井恵三は杖を突いて現れ、夏美はパンと水を購入した。近所に住む小学生の拓也と妹のひとみが店へ来て、「地蔵さん、おはよう」と恵三に挨拶した。拓也とひとみは恵三の手を取って店を出ると、彼に見送られてバスに乗り込んだ。
恵三は夏美の名前を聞くと、少し考え込むような態度を見せた。「上がっていってよ」と誘われた夏美は家に入り、恵三の母であるヤスエがスイカを出してくれた。夏美はホタルを撮りに来たこと、向こうの川岸で探したが見つからなかったことを語った。恵三は川は増水する危険があるから家へ泊まるよう勧めるが、夏美は遠慮して商店を後にした。再び川へ赴いた彼女はトンネルを抜け、奥地へと足を進めた。すると「雲月庵」という札が掲げてある建物があったが、中に人がいたので夏美は慌てて逃げ出した。
テントに戻った彼女は、幼い自分と父の写っているアルバムの写真を眺めた。そこへ拓也とひとみが来て、テントに上がり込んだ。2人は夏美に、恵三が一緒にホタルを探しに行こうと言っていることを伝えた。ヤスエも同行し、夏美たちは竹藪の向こうへ向かう。ヤスエは夏美に、恵三が建築現場の事故で足を悪くしたことを語った。一行は川へ行くが、ホタルは現れなかった。夏美は恵三たちに、幼い頃に父と良くホタルを見たことを話す。亡くなった父に会いたくなり、ここへ来てホタルが見れたらいいと思ったのだと彼女は語った。
夏美は恵三の家で夕食を御馳走になり、「やっぱり泊めてもらうことって出来ないかなって。みんなの写真を、もっと撮りたいなって」と言う。恵三とヤスエは快諾し、夏美を宿泊させた。翌朝、夏美の携帯が鳴り、彼女は電車の最寄り駅まで慎吾を迎えに出向いた。「ここがお父さんと来たとこ?まだこだわってんだ」と慎吾に言われた夏美は、「そういうわけじゃないけど。慎吾が答えを出したように、私も考えたかった」と話す。
夏美は慎吾を商店へ連れて行き、彼も一緒に泊めてもらえないかと恵三に頼む。夏美は別の部屋だと言い、滞在費用は払うと慎吾は告げる。恵三は承諾し、夏美は慎吾を家へ上がらせた。夏美と慎吾が写真を撮りに出掛けて商店へ戻ると、雲月庵の主人である仏師の榊山雲月がいた。雲月が「家賃は幾ら払うんだ。まさかタダ飯食らおうってんじゃないだろうな」と言うと、ムッとした夏美は「お言葉ですが、話は付いてるんです。空き部屋の掃除と店番、もちろん食費も払いますし」と告げた。ヤスエは夏美に、雲月が5年ほど前に雲月庵へ来たこと、恵三の唯一の友人であることを語る。恵三が結婚していたのか夏美が訊くと、彼女は「ずっと前のことだけど」と答えた。
翌日の夜、恵三から家を継ぐのか問われた慎吾は、まだ悩んでいると話す。彼は夏美を外へ連れ出し、「一緒に新潟へ行かない?」と言う。「それってプロポーズってこと?」と確認された慎吾は戸惑いを示し、「それは後々、しっかりと」と言う。夏美は何も言わず、商店へ戻った。次の日、慎吾が店番をしていると雲月が買い物に来て、「この家は年寄りが2人だけで暮らしてるんだ。お前たち、役に立ってやれよ」と告げた。
夏美は父である忠男の写真を取り出し、バイクの後ろに乗せてもらって久留里へ来た時のことを振り返る。「レーサーだったんでしょ。なんで辞めちゃったの?」という彼女の問い掛けに、、忠男は「どうしてかな。怖くなっちゃったのかな」と答えた。その夜、夏美は浴衣に着替え、恵三たちと話す。雲月はバツイチだと知った夏美に、恵三は養育費を払うのが大変だと彼が言っていることを、それを羨ましく思っていることを語る。
夏美は恵三と雲月に「父親ってどういうものか分からなくて」と言い、父が既に他界していることを明かす。彼女が「毎日休みなく働いて。突然、病気で。そんなんで幸せだったのかなあって」と口にすると、雲月は「俺は家族より仕事を取った男だからなあ」と言い、恵三は「家族のために働けるなんて幸せだよ。俺は子供に養育費すら送ってやれなかったもんな」と述べた。「別れたことを後悔してるのか」と雲月が問い掛けると、彼は「後悔はしてない。けど息子に、俺の子供に生まれてきてくれてありがとうと言ってやれなくて。それが心残りで」と語った。
次の日、タンポポを眺めていた恵三は夏美に「ホントにタンポポが好きなんだね」と言われ、「タンポポは花が終わっても、たくさんの命を空に飛ばすことが出来るんだよ」と話す。夏美が慎吾に何か話そうとした時、恵三が急に倒れて動かなくなった。夏美が慌てて救急車を呼び、病院に担ぎ込まれた動脈瘤破裂と診断された。恵三は意識不明に陥り、雲月は別れた妻に連絡するようヤスエに促した。ヤスエは「ウチの問題に口を挟まないでくれ」と声を荒らげ、その提案を拒否した。夏美も家族に連絡するよう頼んでみるが、ヤスエは頑固な態度を崩さなかった。
慎吾は「やっぱり俺らが口を挟む問題じゃない。帰ろうか」と告げると、夏美は苛立って「そうやって、すぐに諦めるんだ。そりゃプロになれるはずないよね」と言う。彼女は慎吾に、「お父さん、たぶん私のためにレーサー辞めたんだよ。お父さんから夢を奪っちゃったんだよ。だから慎吾が私のために写真を諦めようとしてるなら、そんなの絶対に嫌だから」と語った。夏美は雲月庵を訪れ、雲月に仕事の内容を尋ねる。雲月は一木造りだと話し、わずかな失敗が全てを台無しにすると述べた。
夏美は「分かるような気がします」と言い、フィルムで撮っていることを語る。結果が出ていないこと、本当に撮りたいものか悩んでいることを彼女が話すと、雲月は「才能ってのは覚悟のことだ。覚悟がなきゃ結果も出ねえよ」と語った。恵三の意識が回復し、ヤスエから連絡を受けた夏美と慎吾は病院へ駆け付けた。彼は「みんながいるから、もう充分だ。聞こえたんだよ、母ちゃんの声が」と言い、息子の公英に会いたいかと問い掛けるヤスエの声が聞こえていたことを話した。
恵三は笑顔を浮かべ、「公英には、もう新しいお父さんがいる。呼ばないでくれて良かったよ」と告げる。ヤスエは店に戻ると、医師から油断できる状態ではないと言われたことを夏美と慎吾に打ち明けた。夏美が恵三の改めて家族に連絡できないかと持ち掛けると、息子の嘘を見抜いていたヤスエは承諾する。彼女は公英と恵三の妻である美也子に連絡することを決め、夏美と慎吾に同行を頼んだ。美也子は承諾し、新しい父親を気遣って一度は断った公英も病院にやって来た…。

監督は廣木隆一、原作は森沢明夫『夏美のホタル』(角川文庫刊)、脚本は片岡翔&港岳彦、製作は松本光司&井上義久&堀内大示、プロデューサーは田中清孝&柴原祐一、共同プロデューサーは宇田川寧、撮影は花村也寸志、照明は北岡孝文、録音は深田晃、美術は丸尾知行、編集は菊池純一、音楽は石橋英子、音楽プロデューサーは杉田寿宏。
主題歌 Uru「星の中の君」作詞:Hidenori/Uru、作曲・編曲:Hidenori/トオミヨウ。
出演は有村架純、工藤阿須加、吉行和子、光石研、小林薫、淵上泰史、村上虹郎、中村優子、若林瑠海、岩崎未来、大庭愛未、安部一希、小川朝子、野川慧、日暮丈洋、新名基浩、池田良、北村ゆり、橋本美和、古谷佳也、三島ゆう、高木悠衣、山口リカ、本井良尚、吉岡太郎、古澤恵、湯舟すぴか、真辺照太、柴田達成、水野峻、鷲見敦ら。


これまでに『津軽百年食堂』や『虹の岬の喫茶店』(『ふしぎな岬の物語』)、『ライアの祈り』も映画化されている森沢明夫の同名小説を基にした作品。
監督は『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』の廣木隆一。
脚本は『きいろいゾウ』『鬼灯さん家のアネキ』の片岡翔と『空人』『蜜のあわれ』の港岳彦による共同。
夏美を有村架純、慎吾を工藤阿須加、ヤスエを吉行和子、恵三を光石研、雲月を小林薫、忠男を淵上泰史、公英を村上虹郎、美也子を中村優子、拓也を若林瑠海、ひとみを岩崎未来が演じている。

この映画には「その道の専門家」が何人も登場するのだが、そこのディティールには大いに難がある。
誰一人として、その道の専門家としての説得力を持っていないのだ。
まず夏美は、とてもプロのカメラマンを目指す学生には見えない。
ホタルを撮影するために使っている道具も、その撮影方法も、ちっとも専門家らしさが感じられない。ただのカメラが好きな大学生で、インスタに載せるための写真でも撮影しているのかという感じだ。

まだ夏美はプロじゃないけど、「だから甘い部分や間違っている部分もある」ってのを言い訳にしているわけでもないだろう。実際、そういうことへの言及が劇中にあるわけではないし。
私はカメラに詳しいわけじゃないから、ひょっとするとプロの世界だと「これで正解」ってことなのかもしれないよ。ただ、少なくとも素人目には、疑問を抱いてしまうキャラ描写だ。
説得力を出すために、彼女の撮った写真を何度か挿入するような演出も無いし。
夏美は自分のカメラについて「綺麗さよりも奥深さが出る」と説明しているけど、何しろ彼女の写真も他の写真も全く登場しないから違いが分からないし。

夏美は風景写真を専門にしているのかと思ったら、人間も撮っている。
特にこだわりは無いらしいが、そこも「プロを目指す学生」という印象が弱くなっている一因だ。
どういう方向性で「自分の個性」を出そうとしているのか、何をテーマにして撮ろうとしているのか、そういうことが全く見えてこない。なんでもかんでも、とにかく適当に撮りまくっているようにしか見えないのよ。
あと、杖を突きながら歩く恵三に後ろからカメラを構えてバシャバシャとシャッターを切るのは、本人もヤスエも全く気にしちゃいないけど、かなり失礼な行動に思えるぞ。

夏美の父である忠男は元プロのレーサーなのに、幼い娘をバイクの後部座席に乗せて出掛けるってのが、ちょっと信じ難い行動に思える。
ただのバイク好きならともかく、プロのバイクレーサーだったら、それがいかに危険な行為かってことぐらい分かるはず。
もう充分に成長した娘ならともかく、まだ幼いのよ。ヘルメットを被らせていても、2ケツは危険でしょ。
っていうか、ただのバイク好きでも、その程度の意識は持つだろ。
しかも彼は、友人を事故で亡くして引退したという設定なのよ。だったら、なおさら事故の危険性は強く認識しているはずでしょ。

雲月は仏師という設定だが、家には木彫仏や石仏も見当たらないし、作業をしているシーンは終盤まで無い。
夏美の写真にしろ雲月の仏像にしろ、ラストで登場させるために、そこまでは控えたのかもしれない。でも、ラストで写真や仏像が初めて登場しても大した効果は発揮されていないし、まあ失敗だね。
あと、雲月は「家族より仕事を取った」と話しているが、そもそも仏師ってのが特殊すぎる仕事なので、台詞だけで「家族より仕事を取った」と言われてもピンと来ない。
「作業に没頭するせいで家庭を疎かにした」ってことなら、彼が仏像作りに打ち込む様子を描かないと説得力が無いんじゃないか。だけど、たまに商店へ来る程度で、隠居みたいな生活を送っているようにしか見えないのよ。

他の面でも、色々と雑な作業を感じるトコロが多いのよ。
例えば序盤、夏美は山奥へ行き、テントを張って野宿する。
これは「ホタルを撮影しようとして夜通し待っていた」というシーンなのだが、その時点では全く分からない。ただ単に「野宿している」というだけにしか見えない。
後で恵三&ヤスエと話す時にホタルを探していたことが語られるけど、そこが「後からの説明」になっているメリットは全く無いわけで。その場で分かった方が絶対にいいわけでね。

拓也とひとみが商店へ来た時、座っていた恵三の手を取って外まで引っ張っていき、そこからバス停へ走り、バスに乗るという行動は奇妙に思える。
わざわざ手を引っ張ってまで外へ連れ出しておいて、特に何も無いのよ。ただ単に、バスに乗る前に少し喋るだけなのよ。
それなら、店の中で喋るだけで充分でしょ。
「恵三がバスに乗る2人を見送る」という絵が欲しかったってのは分かるのよ。っていうか、そこは「外に出た恵三がバイクに気付く」という手順に繋げたかったんだろう。
だけど、「恵三が自ら外へ出て2人を見送る」ってことならともかく、拓也とひとみが引っ張り出すのは不自然でしょ。

その後、恵三から「上がっていってよ」と誘われた夏美が「じゃあ、ちょっとだけ」と家に入るのも、これまた不自然だ。
もちろん即答でOKするわけではなく「狭いウチだけど、休んでいってよ」に対しては「大丈夫です」と断るのだが、「スイカがあるから食べてってよ」でOKしちゃうのだ。
これが「食い意地が入っているヒロイン」という設定で、なおかつコメディーだったら、何の問題も無いのよ。
でも、淡々と進めているシリアスなテイストの話だと、そこでの夏美の行動は段取り芝居が甚だしい。

夏美が雲月庵で雲月の後ろ姿を見た時、慌てて逃げ出すのも不可解な行動だ。
別に何かを勝手に探っていたわけでもないし、ただ外から中の様子を少し窺っていただけだ。だったら、「すみません」とでも声を掛ければいいでしょ。
人見知りでコミニュケーション能力が著しく低いのならともかく、そうじゃないわけで。
商店では初対面の男から誘われてホイホイと家に上がり込んでいた奴が、そこでは「後ろ姿を見て逃走する」という行動を取るのは、どうもキャラに一貫性が無いように思える。
ホタルを探しに来たのなら、そこに住んでいる雲月は詳しいかもしれないんだから、質問してもいいだろうに。

夏美が小さい頃に父と良くホタルを見に来たことを語った後、カットが切り替わると「夜の川辺で幼い夏美と父がホタルを発見する」という回想シーンが挿入される。
しかし、何しろ夜だし周囲に照明が無いので、暗くて2人の顔が良く見えない。このシーンで2人の顔が見えにくいってのは、かなりの痛手だ。
ホタルが飛んでいることを表現するためには、真っ暗であることが必須条件となる。しかし困ったことに、それと引き換えに失っている物も大きいのである。
その1シーンだけで短く回想を済ませるんじゃなくて、まだ明るい内の様子も含めて幼少期の回想を入れた方が良かったんじゃないか。
あと、現在のシーンに戻ると夏美が「この景色だけで充分です」と言って写真を撮るけど、夜で暗いから景色なんか分からんよ。

夏美は自分が恵三の家で泊めてもらうたけでなく、慎吾も一緒に泊めてくれと頼む。
慎吾は費用を払うと言うけど、そういう問題じゃないでしょ。っていうか、なぜ慎吾まで泊まるのかワケが分からんよ。
あまりピンと来ないけど、夏美の方には「写真を撮る」という一応の目的もある。だけど慎吾に関しては、ただ夏美に会いに来ただけでしょ。ちょっと話したら、その日の内に帰ればいいでしょ。
そのまま居座るに至る経緯や理由が、サッパリ見えて来ないぞ。

夏美は泊めてもらう理由として、「みんなの写真を撮りたい」と説明する。その言葉を実践するため、彼女は恵三&ヤスエ&拓也&ひとみの写真を撮っている。
それは別にいいのだが、引っ掛かるのが「他の住人が誰も登場しない」ってことだ(山奥の雲月を加えても5人)。
拓也&ひとみの親でさえ、全く姿を現さない。まるで、その村には恵三&ヤスエ&拓也&ひとみしか暮らしていないかの如くなのだ。
でも、そんなことは有り得ないわけで。
そこでリアリティーを欠如させる意味は何も無いので、単に「不可解な状況」でしかない。

慎吾は夏美にプロポーズする際、「正直、しんどくない?結果出すために必死になって、そのために写真撮ってるみたいで」と言う。
夏美が何も答えずに商店へ戻るのは、「それが図星だったので腹が立った」ということなんだろう。そのことは、段取りとしては理解できる。しかし、それに見合うドラマがキッチリと描かれているわけではない。
そもそも夏美が村で写真を撮っている様子からは、「結果を出すために必死になっている」という様子は全く見られないでしょ。
だったら、そこへ来る前の彼女はどうだったのかというと、友人のお祝いに参加しているシーンしか無いので、「結果を出すために焦っている」という様子は、これまた段取りでしか伝わらないし。

夏美は慎吾が帰ろうかと言い出した時、「そうやって、すぐに諦めるんだ。そりゃプロになれるはずないよね」と酷い言葉を浴びせる。ちなみに、後から反省したり謝罪したりすることも無い。
慎吾が帰ろうかと提案したのは「親子の問題なので、無闇に他人が口を出さない方がいいかも」ってことだから、そんなに糾弾されるような考えでもない。むしろ、気遣いと言ってもいいぐらいだ。
で、そんな言葉を浴びせた後、夏美は「慎吾が私のために写真を諦めようとしてるなら、そんなの絶対に嫌だから」と言い出すが、「いや違うからね」と言いたくなる。
慎吾が実家を継ごうと考えたのは才能の無さを実感したからであって、夏美とは関係ないぞ。長く交際していた上に同じ学科の同級生でもあるのに、そんなことにも気付いていなかったのかと。トンチンカンなこと言ってんじゃないよ。
そもそも、「夏美のために慎吾が写真を諦める」って、どういう理屈なのかサッパリ分からん。夏美が妊娠したわけでもないんだし。

最初の段階では、「夢を追い求めるが、結果が出ないので焦りを覚えているヒロインが、田舎の人々と交流することで気持ちや生き方に変化が生じる」というドラマを描くつもりなのかと思った。
ところが、途中で「ヒロインは父がレーサーを辞めたのは自分のせいだと認識しており、幸せを奪ったことへの罪悪感を抱いている」という設定が明らかになり、最終的には「真実が判明し、過去から解放される」という着地になっている。
だったら、前述した「夢を追っているけど焦っている」という要素は要らなくないかと。
そこの要素と、父への罪悪感を巡る話って、まるで上手く絡み合っていないでしょ。
そもそも「夢に向かって頑張っていたけど迷走中」という話なんて、最初から薄弱な上に、いつの間にか忘れ去られているし。

(観賞日:2018年6月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会