『NANA2』:2006、日本

小松奈々、愛称ハチはタクシーに乗り、ナナとの待ち合わせ場所である新宿アルタ前へ向かっていた。タクシーを降りて歩いていくと、 屋外にライブのステージが組まれている。今からブラストのゲリラライブが行われるのだ。午後7時、ステージの照明が付き、ブラストの メンバーであるナナ、ノブ、シン、ヤスが登場した。集まった人々が歓声を上げる中、ブラストのライブが始まった。
3ヶ月前。七夕の日に、ハチは短冊を飾った。ノブは「打倒トラネス!!」と書き、「そりゃ願い事じゃなくて決意だよ」とナナに指摘 された。ハチは呑気な様子で、「アタシは早く彼氏が欲しい」と口にした。彼女はトラネスのギタリスト、タクミに好意を持っている。 ナナは「タクミのことは諦めろ、女癖が悪いらしいぞ」と忠告するが、ハチは全く意に介さなかった。ヤスはみんなに、対バンの話が来て いることを明かした。その日、みんなは夜更けまで盛り上がった。
翌日、飲み潰れたハチが目を覚ますと、もう昼を過ぎていた。急いでバイトしている出版社に行くが、編集長からクビを宣告された。帰宅 する途中、ハチはタクミから声を掛けられた。ハチはタクミが宿泊している豪華なホテルに招かれ、スイートルームに通された。寝室で タクミを待っている時、ナナから電話が入った。友達の家だと嘘をつき、ハチはタクミと関係を持った。翌朝、タクミはメールアドレスと 電話番号を書き残して姿を消していた。
トラネスのツアー最終日、ハチはナナの恋人であるベーシストのレンと一緒に、タクミがアパートに来るだろうと考えた。張り切って料理 を作ったハチだが、ナナから「来ないんじゃないの」と淡白に言われ、ガッカリした。ノブとシンは、ツアーの打ち上げ会場に足を向けた。 タクミが「菜々とやった」と言うのを聞き、カッとなって掴み掛かろうとする。しかし「打ち上げをぶち壊すな」と言われ、怒りを抑えて 引き下がった。シンはタクミに酒を浴びせて立ち去った。
レンに「キレるな、お前が悪い」と諌められたタクミは、「大事な用を思い出した」と会場を去った。彼はハチの元へ行き、彼女を強く 抱き締めた。その様子を目撃したナナは、激しいショックを受けた。ノブはシンから「取り返しなよ」と言われるが、「どうしようもない だろ」と返した。タクミはハチから大勢の恋人がいるのだろうと言われ、「彼女なんかいない、寂しい人生だよ」と漏らした。タクミは ハチに優しい言葉を掛け、「ずっと俺のものでいてよ」と告げた。
ナナがファミレスにいると、ヤスがやって来た。「ハチを応援してあげたいけど、よりによってなんでタクミなの」と吐露するナナに ヤスは「いつまでもクヨクヨしている場合じゃない」と告げた。ハチはスーパーで働き始めた。ナナはハチに、スカウトされたことを 明かした。業界最大手のガイアレコードが今度のライブを見に来て、デビューさせるかどうか決めるのだという。
ナナは「しばらくレンの所へ行く。ゆっくり出来る機会は無いから、一緒にいようと思って」と告げた。翌朝、ハチが目覚めると。もう ナナの姿は無かった。ナナのいない2週間、ハチはバイトを詰め込み、ブラストの練習には必ず顔を出した。その間、タクミからの連絡は 一度も無かった。時々、メールを送ったが、返事は無かった。帰り道、ナナが夏祭りの大花火大会のポスターに目を留めたので、ノブは 「みんなで行く?」と誘った。ハチに告白しようとするノブだが、言い出せずに立ち去った。
ブラストのライブが行われ、ガイアレコードのプロデューサーを務める川野高文が訪れた。彼は「カリスマ性が備わっているし、演奏も 申し分ない」と、ブラストを高く評価した。アパートでは、ハチが料理を作って待っていた。そこへナナから、「ガイアの人とメシを食い に出ることになった」と電話が入る。ハチは打ち上げの準備をしたことを隠し、「気にせず行って来て」と告げた。電話を切った後、ハチ は「ナナにとって、アタシはもう要らないのだろうか」と寂しさを感じた。
その夜遅くに帰宅したナナは、冷蔵庫にハチが作ったケーキがあるのを見つけた。翌日、ハチがバイトから戻ると、ノブ、シン、ヤスが ケーキを食べながら迎えた。シンは気を利かせて、ハチとノブが飲み物を買いに行くように促した。ノブはハチに告白し、「お前とタクミ のことは知ってる」と口にした。ハチは、「ホントはタクミのこと、誰にも知られたくなかった。そしたら、なんにも無かったことにして、 今まで通り。そんなズルいことばっかり考えてる」と漏らした。
ノブはハチに、「俺には、お前を力ずくで奪うなんてできねえよ。お前は俺とタクミの板挟みになって苦しむから。どう頑張ってもタクミ に勝てないから。それでも、あいつと別れて俺の女になるっていうなら、意地でもお前を幸せにしてやる。お前の気持ちにケリが付いたら、 俺んとこ来てよ。ずっと信じて待ってる」と告げた。ハチは、ノブの強い愛に心を動かされた。
翌日、ハチはタクミに「話したいことがある」とメールを送った。すぐに電話が入った。「会って話せないかな」と言うと、「ミックスの 最中でさ。しばらくスケジュールがビッチリで予定が立たない」とタクミは告げた。「ガキでも出来た?」とタクミが訊くので、すぐに ハチは「違うよ」と否定する。するとタクミは、「良かった、ビビらせんなよ」と軽く笑った。腹立たしさを覚えたハチは、「もう連絡 して来なくていい。さよなら」と言って、電話を切った。
ハチはウキウキした気分で、ノブがバイトしているレコード店を訪れた。ハチはノブの部屋へ行き、関係を持った。翌朝、アパートに 戻るとナナがいた。ナナは「ノブとは同じ価値観で話せるでしょ」と告げた。ハチは嬉しそうに、「ノブのこと、めちゃくちゃ好きに なったみたい」と言う。タクミが電話を掛けても、ハチは着信拒否にしていた。
花火大会の日、東京には台風が上陸した。暴風雨で大会は中止だが、ノブはナナからの電話で「ハチを迎えに来い。浴衣姿、見たくないか」と と言われる。ノブは花火セットを購入し、アパートを訪れた。ナナは週の半分ぐらいをレンの部屋で過ごしていたが、彼が多忙なので、 あまり会うことは出来ない。だが、余計な話までしなくて済むので、それでいいとナナは思っていた。
バイト中に倒れたハチは、医師から妊娠していることを告げられた。「出産する場合は2週間後に再検診を、中絶の場合は一日も早い方が いい」と、その女医は言った。アパートに戻って休んでいると、タクミがやって来た。つわりの症状で妊娠を知ったタクミは、「シャレに なってねえよ」と口にする。ハチは「責任を感じる必要は無いから。彼氏の子かもしれないし。帰って、もう来ないで」と告げた。すぐに タクミは、彼氏がノブのことだと察知し、ハチに確認した。
タクミはノブに電話を掛けた。ハチが「ノブには言わないで」というのを無視し、「奈々にガキが出来た。どっちの子か分からないけど、」 奈々産むのなら俺は認知して面倒を見てやろうと思っている。お前はどう思う?」と告げた。あまりの動揺で、ノブは言葉が出なかった。 一緒にいたナナが電話を代わると、タクミは「こっちへ来てくれ」と告げた。ナナもハチの妊娠を知った。
タクミはハチをベッドに運び、「父親が誰でも、母親は間違いなくお前なんだから、しっかりしろよ」と元気付けた。ノブが来たので、 タクミは「選ぶのは奈々だ。父親は2人もいらねえだろ」と言って席を外した。ノブが「弁解してくれよ。嘘でも信じるから」と言っても 、ハチは「ごめんね」と告げて泣くばかりだった。一方、ナナはヤスに「ノブ、ちゃんと避妊してたって」と語った。
翌朝、ハチが目を覚ますと、タクミはベッドの傍らで眠り込んでいた。ハチは「タクミだけが、こんなカラッポでどうしようもないアタシ を知っている、許してくれる」と感じた。「レコーディングに入る前に、決意を聞かせて」と言うタクミに、ハチは「タクミの子として 産んで育てたい」と答えた。タクミは「結婚するか?だって隠し子はマズいだろ。相手が一般人ならマスコミもそんなに騒がないしさ」と 言う。そこへナナが戻ったので、タクミはハチと結婚することを告げた。
タクミは「すぐにでも新居を探して奈々を引っ越しさせるから、新しいルームメイトを探してくれ」と言った。するとナナは「ちょうど 良かったよ、どうせ私もレンのトコ、引っ越すつもりだったし」と口にする。それを聞いたタクミは、「お前らの関係は、過去のことから 洗われたら格好のネタだぞ。会うなとは言わないから、慎重に行動しろ」と警告した。
ナナからハチの結婚を教えられたノブは、「もう昨日で、終わったなあと思ってたし。でも俺、当事者なのに、なんでカヤの外なんだ? あいつにとって、そんなに頼りない存在だったのかな」と漏らした。ナナは「頼りなくなんかないよ」と泣きながらノブに抱き付いた。 ナナが酔い潰れて部屋で眠り込んだので、ノブはレンに電話を掛けて迎えに来るよう頼んだ。すると目を覚ましたナナが「パパラッチに 狙われてんだよ。しばらく会わないって伝えて」と言い、部屋を後にした。
アパートに戻ると、ハチは置き手紙を残して消えていた。手紙には、「ナナと暮らした半年間のこと、生涯忘れません。あたしにとっての ヒーローはナナだけだよ」と書いてあった。そこにレンが現れ、泣いているナナに「これは別れの手紙じゃなくて、熱烈なラブレターだ。 会いに行ってやれよ。ヒーローとは、そういうもんだ」と告げた。ナナはタクミのマンションへ行くが、受付で「そのような居住者は おりません」と追い払われた。
シンはハチに電話を掛け、「元気かなあと思って。また花火やろうよ」と持ち掛けた。ハチが「あたしは裏切り者だから、もうみんなに 会わす顔が無いの」と言っても、シンは穏やかに「僕は何があってもハチの味方だよ」と告げた。翌朝、ワイドショー番組でレンとナナの 熱愛が報じられた。芸能評論家は、ナナの売名行為ではないかとコメントした。この騒ぎを受けて、すぐにガイアからCDデビューの話が 届いた。ナナは、このスキャンダルに乗じてデビューすることに強い意欲を燃やした…。

監督&脚本は大谷健太郎、原作は矢沢あい、製作は信国一朗、プロデューサーは中沢敏明&久保田修、共同プロデューサーは川崎隆、 アソシエイトプロデューサーは東信弘、エグゼクティブプロデューサーは濱名一哉、撮影は清久素延、編集は掛須秀一、録音は 横野一氏工、照明は川辺隆之、美術は磯田典宏&野口隆二、音楽は上田禎、音楽シーン監督は渋谷和行、音楽スーパーバイザーは安井輝。
出演は中島美嘉、市川由衣、玉山鉄二、田辺誠一、美保純、姜暢雄、丸山智己、本郷奏多、成宮寛貴、伊藤由奈、水谷百輔、能世あんな、 高山猛久、ベンガル、村松利史、宍戸留美、池田鉄洋、山内あゆ、中村まこと、今奈良孝行、村杉蝉之介、辻修、中村靖日、 土田英生、森田ガンツ、佐藤真弓、小林健一、原金太郎、木村靖司、佐々木光弘、中村英児、大沢直樹、横溝千恵ら。


矢沢あいの漫画『NANA』を基にした映画のシリーズ第2作にして完結編。
ナナ役の中島美嘉、タクミ役の玉山鉄二、ヤス役の丸山智己、ノブ役の成宮寛貴、レイラ(トラネスのヴォーカル)の伊藤由奈、ナオキ(トラネスのドラム) の水谷百輔は、前作から続投。
前作でハチを演じた宮崎あおい、レンの松田龍平、シンの松山ケンイチは降板。
それぞれ市川由衣、姜暢雄 、本郷奏多に交代している。他に、川野を田辺誠一、産婦人科医を美保純が演じている。

ナナとハチの物語ではあるのだが、少なくとも前作では、完全に「ハチがいてこその作品」になっていた。
そのハチの役者が交代するというのは、大きなダメージだ。
本当ならば、もう宮崎あおいが降板した時点で、この続編企画は潰すべきだったのだ。
だが、TBSとしては、それは許されないことだ。前作が40億円を越える興行収入を上げる大ヒットとなり、それを受けて始動した安易な 続編企画だ。
金儲けのためには、役者が降板したぐらいでは中止に出来ないのである。

前作の批評で、私は「人懐っこいが他者への依存度が強く、明るいが余計なことまで喋って神経を逆撫でし、ウザがられるタイプのハチが、 観客にはウザがられないようになっているのは、宮崎あおいの演技力のおかげ」と書いた。
今回、同じ事を市川由衣が出来ているかというと、まるで出来ていない。
ただ、市川由衣だけを責めるのは、ちょっと酷だと思うんだよなあ。
確かに、宮崎あおいと演技力を比較すれば、市川由衣は劣る。だけど、この映画がダメになった最大の要因って、彼女にあるん だろうか。
そもそも今回のハチって、キャラとして問題があるんじゃないか。前回もウザい奴だったが、今回は、ますます拍車が掛かっている。
ちっとも応援したい気持ちになれないぞ。無節操だし、アホすぎるし。
ここまで共感できないキャラになってしまうと、仮に宮崎あおいが続投していたとしても、果たして共感できるキャラに転化できたか どうかは難しいんじゃないか。

どうやらハチのキャラ造形は原作通りらしいんだけど、でも原作にはファンが大勢いて、ハチをウザいとは思っていないはずだよな。 だとしたら、こんなハチをウザいとは感じさせないような、上手い描き方をしているんだろう。
私は、具体的にどうやればハチが本作品でウザく感じずに済むか、その方法を思い付かない。
一つだけ思い付いたのは「ハチのキャラ造形を変える」ということだが、それは違うんだよな、たぶん。

ハチは飲みすぎて寝過ごし、遅刻してクビを言い渡される。そんな自業自得でクビになった様子が、コミカルなテイストで描かれる。
その後でシリアスに「たった一つでいい、ナナみたいに夢中で走り出せるものが私にもあればいいのに」とモノローグを語られても、全く 共感できない。
っていうか、夢中になれるものが無くて、何も無い自分に焦っているとか、ダメな自分にメゲているとか、そういう描写は無いので、ピン と来ないし。
モノローグだけで全てを説明しようとして、そこにドラマが追い付いていない感じ。

タクミに誘われて付いて際、「カラッポの私には、ナナを取り巻く世界がみんな輝いて見えた」と語るが、カラッポの自分を情けなく 感じている、自分もカラッポを抜け出したい、という飢餓的な欲求、渇望が、まるで表現されていないのに、モノローグだけ語られても なあ。
で、誘われて部屋に行き、すぐに肉体関係を持つ。
なんて尻軽な女なんだ。
「輝いている場所にいたかった」ということなんだろうけど、そもそも本作品だけを見ている限り、タクミが「輝いている世界」として 見えないのよ。
そりゃあ前作でタクミが売れっ子なのは示されているが、本作品では道に立っているのに周囲でキャーキャーも無いし。
こいつが人気者ということを、ハチに声を掛けるシーンか、それまでにアピールしておくべきではなかったか。

ノブから告白されると、すぐにハチの気持ちは彼へと完全に傾いている。
軽いよなあ。ケータイ小説のヒロインかと思うぐらい、軽くて薄い女だよ。
で、タクミに電話を掛けて「連絡してこなくていい。さよなら」と告げると、「これで終わったんだ、やっと目が覚めたよ」とモノローグ を語る。
なんだよ、ずっと好きだった男を簡単に断ち切れる、その淡白すぎる感覚は。
他の男から言い寄られたら、もうそっちがいるから、相手にしてくれない方は切っても大丈夫だっていう考え方か。そういう感覚にしか 見えないぞ。
タクミが「頼りないよね、ナナは。もう20歳なのに、寂しいとすぐ男とヤッちゃうし」と言っているが、その通りだよな。

で、すぐにナナはウキウキしてノブの元へ行き、その日の内に肉体関係を持つ。
軽いなあ。
まあ、すぐにやっちゃうノブもノブだけどね。
真面目で純粋だというのが周囲のノブに対する評価だけど、そんな展開を見せられたら、「お前もタクミと大して変わらんな」という印象 になってしまうぞ。
で、ハチは「ノブのこと、めちゃくちゃ好きになったみたい」とナナに言うが、そりゃ早すぎるよ。どういう神経してんだ、この女は。
ハチはノブに告白されてすぐ関係を持つってことは、ホントに好きかどうか分からんぞ。
っていうかさ、もっと迷えよ、そして悩めよ。
タクミをずっと好きだったのなら、しばらく連絡が無かったぐらいで簡単に切るなよ。優しいノブとの間で揺れ動けよ。暴風雨の中でも 花火セットを買って駆け付けてくれるようなノブの優しさに触れて、少しずつ傾いていく流れを作れよ。で、まだ揺れ動く中で妊娠発覚に しろよ。簡単に、タクミとの関係に決着を付けるなよ。

ハチは医者から妊娠を告げられるが、まあ避妊しなけりゃ妊娠ぐらいするわな。
その辺りもケータイ小説のヒロインみたいだな。
それは置いておくとして、セックスから妊娠までが、ものすごく早くないか。そのスパンだと、「ノブかタクミか、どっちか」という ミステリーは成立しない。タクミだとしても、ちょっと早すぎるぐらいだぞ。
劇中の時間経過が、良く分からないところで、どこかでワープしているのかもしれないが、それは見ている限りは分からないし。
っていうか、その後でナナが「ノブは避妊していた」とか言い出すが、そういう問題じゃねえよ。
っていうか、そんなことに言及するのは筋書きとして違うんじゃないか。

ハチはアパートを訪れたタクミに「帰って、もう来ないで」と言い放つが、あまにもタクミに冷淡すぎやしないか。
そんなにタクミって、ヒドいことしてるかな。
まあ連絡ゼロってのはヒドっちゃあヒドいけど、他の女と遊びまくってる様子も無いし、ハチが会いに行ったのに邪険に扱ったりという こともない。
ただ連絡が無かったというだけで(あとは妊娠に関するデリカシーの無い言葉もあったけど)、こいつを「ヒドい男」と認定するのは、 ちとネタ不足だろう。

妊娠を知ったノブに「弁解してくれよ。嘘でも信じるから」と言われても、ハチは泣きじゃくるだけ。
そんなハチに、だんだんイライラしてくる。
で、翌朝、「タクミだけが、こんなカラッポでどうしようもないあたしを知っている、許してくれる」と、タクミにまた戻ってしまう。
やっぱり軽いよ、この女。
「隠し子はマズいだろ。相手が一般人ならマスコミもそんなに騒がない」という理由で求婚したタクミに喜んで付いていく感覚に、 サッパリ付いていけないよ。
「あたしはナナやノブが思うほど純粋じゃない」とモノローグで言うが、確かにその通り。ただバカなだけだ。

終盤、スキャンダルが報道されるまで、ナナの物語は全く無いのよね。ずっとハチの男関係が綴られている。
ブラストのデビューは決まるけど、その流れはほとんど描かれていない。
それはどうなのよ。
そうなると、ナナの存在が微妙なことになっちゃうぞ。ハチとの友情で存在をアピールしてくしかないけど、そこもナナが男ばかり見てる し、厳しいなあ。
で、スキャンダルが発覚すると、今度はハチの存在が完全にカヤの外。どうでもいい存在になっちゃうのよね。

スキャンダルに乗じてデビューすることにナナが乗り気なのは、ある意味では大人になったと言えるのかもしれないが、違和感を 覚える。
「世の中必ずしも正義が勝つとは限らない」とヤスは言うが、それでも正義を求めて必死に戦おう、もがこうとする姿勢が、ブラストには あるべきじゃないのか。
そこでブラスト(や他のバンド)と差別化を図るべきじゃないのか。
安易な売名行為に、ナナがホイホイと乗ってしまうのは、どうもなあ。

「流されて生きることは、そんなにバカじゃないよ。前へ進めるなら」とナナはモノローグを語るが、いいのか、それで。
で、ハチがタクミと結婚して、それでホントに「おしまい」でいいのか?
それで完結編って、どうもスッキリしねえなあ。
なんかモヤモヤしたまま終わってる感じ。
ナナの方の話も、一つの区切りが付いたような感じはしないし。

(観賞日:2009年12月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会