『TRUTH 〜素晴らしき真実』:1996、日本

1996年5月、ガデラ共和国。大都テレビの報道マン羽済は、報道記者である沢田に協力するよう指示されてやって来た。ところが沢田はいきなり持ってきた製作費を軍の大佐とのギャンブルに継ぎ込み、その上にわざと負けてしまう。
南海の楽園と呼ばれるガデラ共和国は独立から20年に渡って平和が続いていたが、1年ほど前から先住民ラジャ族がレジスタンス活動を開始し、国境近くのガルマ山に立てこもっていた。わずか数十名のレジスタンスだったが、政府軍との激しい戦いに堂々と渡り合っていた。
レジスタンスにはビッグボスと呼ばれる強力なカリスマ性を持ったリーダーがいるらしい。しかし、彼らの目的が分からない。また、ガルマ山はもうすぐ隣国のバルキアに返還されることになっており、そこに激しい攻撃を続ける政府軍の意図も見えない。
沢田はビッグボスの正体が元自衛官の村井だと確信していた。何とかビッグボスに会おうと試みる沢田。一方、政府軍が子供を銃殺しようとしたのを阻止した羽済は捕らえられてしまう。取材クルーへの退去命令と共に羽済は釈放された。しかし沢田は退去命令を無視し、ガルマ山に向かった…。

監督は渡辺武、原案&脚本は小野喜世仁、企画は石井和彦、製作は市村将之&石川博&酒井俊博&鈴木ワタル、プロデューサーは井手正義&五十嵐智之&吉田晴彦、音楽はTORSTEN・RASCH。
出演は萩原聖人、柄本明、六平直政、プラカイカン・コップ、石橋蓮司、ケシェコンケンド他。


テレビ局の報道部でさえ、沢田の取材対象や目的が知らされていない。そんなバカなことがあり得るのだろうか。テレビ局が入社1年目の羽済を1人で危険な地域に行かせ、しかも多額の製作費を現金で持たせるのもヘンだ。

レジスタンスの目的や政府軍の意図が分からないと言いながら、後で全て「こういう理由だ」と説明する沢田。最初から全て知ってるんだよな。
ガルマ山のふもとにある政府の監視施設を爆弾を使って突破する沢田達。どう考えても日本には帰れないと思うが、そこまでする意味が分からない。

沢田は大佐にワイロを渡し、捕虜になったラジャ族を騙してビッグボスの居場所を聞き出そうとする。完全に犯罪行為である。羽済が軍に捕まっても、何もせずに見捨ててしまう。鬼畜である。死体を一か所に集めて写真を撮影する。ヤラセである。

やたらビッグボスに会いたがって、サブリーダー格の男には戦いの目的さえ質問しようとしない沢田。いったい、沢田が何を目的としていたのか分からない。
沢田だけではない。全ての登場人物の行動がメチャクチャなのである。

B級アクション映画ならともかく、これは戦場報道マンを描いたシリアスな話のはず。その割には薄っぺらい嘘が多すぎる。
そもそも、舞台を架空の国に設定する意味がない。物語のテイストを考えればリアリティが必要だったはずで、だったら実在の地域を舞台にすべきだった。

内戦の真実を追究するハードな物語と思ったら、無理がありすぎるシナリオに困ってしまうという作品だった。どこに素晴らしき真実があるんだろう。最初から最後までウソばっかりなのに。
出演した役者の皆さん、本当にご愁傷様です。

 

*ポンコツ映画愛護協会