『トリガール!』:2017、日本

第一志望の大学に落ち鳥山ゆきなは、仕方なく雄飛工業大学に入学した。しかし大学へ向かうバスに乗っていたのが眼鏡の男子学生ばかりだったので、彼女は我慢できなくなって途中で降りた。すると競技用自転車の男性が猛スピードで現れ、バスを追い越した。男性が両手を広げて天を仰ぐ後ろ姿に、ゆきなは目を奪われた。彼女は講義に赴くが、周囲が眼鏡男子ばかりなのでウンザリした。すると島村和美という女子が話し掛け、「女子は私たちだけみたいだね」と告げた。
ゆきなは和美から入学の動機を問われ、第一希望の建築科に落ちたことを話す。そもそも建築科を志望したのも「何となくカッコいい」という適当な理由であり、和美の「流されて生きてきたんだね」という指摘は当たっていた。和美は雄飛工業大学を選んだ理由を質問されると、人力飛行サークル『Team Birdman Trial』に入ることが目的の1つだと話す。Team Birdman Trialの部員から勧誘された和美は喜び、ゆきなも見学に同行した。
ゆきなはTeam Birdman Trialについて何も知らず、琵琶湖で開催される年に一回の鳥人間コンテスト選手権に出場するサークルだと和美が説明した。ゆきなはOBのペラ夫に話し掛けられ、不気味さを感じた。サークルのメンバーも眼鏡男子ばかりで、ゆきなは立ち去ろうとする。しかしイケメン部長の高橋圭から「いい体付きをしてる。一緒に飛ばないか」と誘われた彼女は、即座に入部を決めた。ゆきなは一浪している上に4月生まれで、既に20歳になっていた。
サークルはパイロット班だけでなく様々な班で構成されており、和美は広報班に入った。ゆきなは他のパイロット候補とエアロバイクを漕ぐトライアルを受けるが、余裕の態度ででダントツの結果を残した。彼女は高校時代、片道20キロの道のりで自転車で通学していたのだ。ゆきなはパイロットに選ばれ、高橋と一緒に自転車を買いに出掛ける。10万円のマウンテンバイクが気に入った彼女は購入し、それを使って通学するようになった。
ゆきなは高橋と2人でパイロットになるのだと思っていたが、和美から「雄工大の狂犬」の異名を持つ坂場大志がいることを聞かされる。しかし坂場はサークルに全く来ていないので、ゆきなは顔も知らなかった。ゆきなは高橋とペラ夫から、チームの目的が「琵琶湖の多景島にいる住職が轟二郎に瓜二つ」という噂を確認することだと教えられた。ゆきなは「今日の夜、ちょっと付き合ってくれない?」と高橋に言われ、デートだと浮かれる。しかし高橋の目的は、ゆきなを居酒屋で飲んでいる坂場と会わせることだった。
高橋が新しいパイロットとしてゆきなを紹介すると、坂場は「女なんか無理」と告げる。ゆきなは憤慨し、坂場を馬鹿にする言葉を口にした。高橋は坂場に、このままだと自分とゆきながパイロットになることを告げた。坂場は高橋の思惑通り翌日の練習に復帰し、その能力を見せ付けた。ゆきなは自分がダシにされたと知って腹を立て、高橋に声を掛けられても無視して練習に参加しなくなった。ペラ夫は彼女に、昨年の大会で坂場がミスを犯して全く記録が伸びなかったこと、それが原因で何も無い場所を飛ぶことが怖くなった彼が練習に出なくなったことを語った。
ゆきながカラオケで歌いまくっていると、チームのメンバーから次々に戻って来るよう誘うメールが届いた。高橋は彼女に電話を掛け、テストフライトを見に来ないかと持ち掛けた。坂場が電話を代わるが、ゆきなを挑発するような言葉を浴びせて切った。ゆきなは自転車を走らせ、フライトの現場へ赴いた。高橋と坂場を乗せた人力飛行機は浮上し、ゆきなは和美と抱き合って興奮した。しかし怯えた坂場がミスを犯したせいで高橋が足を捻挫し、しばらく休養せざるを得なくなった。
責任を感じた坂場は、再び練習に顔を出さなくなった。ゆきなは居酒屋へ出向くと、酒に逃げている坂場を説教した。坂場は酒に付き合うよう要求し、ゆきなは酔い潰れた。退院した高橋が「何が何でも俺は飛ぶよ」と言うと、チームに戻った坂場は「お前とは飛べない。俺はこいつと2人で飛ぶ」とゆきなを指名した。坂場は高橋にサポート役へ回ってほしいと頼むが、大会まで2ヶ月を切っていたこともあり、副部長の古沢や横原たちは強硬に反対した。
高橋はゆきなに、「もしも飛行が禁止された危険区域に入ったらどうする?」と質問した。ゆきなが「落とします。自分の手で終わらせる。パイロットはそれも受けて飛ばなきゃならないと思うからです」と答えると、高橋はサポート役を承知した。ゆきなと坂場は特訓を開始するが、常に口論を繰り返した。坂場が山頂を目指す自転車練習を指示すると、ゆきなは挑発的な態度を取った。彼女は無理してスピードを上げ、坂場から「ペースを落とせ」と言われても従わなかった。
ゆきなは山道の途中で疲れ果て、そのまま倒れ込む。坂場が「もうダメか」と問い掛けると、彼女は「見りゃ分かるでしょ」と吐き捨てる。坂場は「お前が1ヶ月で覚えたのは、その程度か。連れにでも迎えに来てもらえ」と言い、ゆきなの自転車を持ち去った。和美が迎えに来ると、ゆきなは坂場への不満を口にした。すると和美は、ゆきなより先に坂場からの電話があったこと、その後もマメに状況確認してきたことを話す。アパートへ戻ったゆきなは自転車に付いているキーチェーンを見て、バスを追い越した男が坂場だと知った…。

監督は英勉、原作は中村航『トリガール!』(角川文庫)、脚本は高橋泉、製作は村田嘉邦&小石川伸哉&堀内大示&中山良夫、企画・プロデュースは松本整&宇田川寧、プロデューサーは大畑利久&薮下維也&吉川真理&亀井利之、アソシエイト・プロデューサーは宮城希、撮影は小松高志、照明は蒔苗友一郎、録音は岩丸恒、美術は塚本周作、編集は相良直一郎、衣裳は白石敦子、音楽は遠藤浩二、音楽プロデューサーは杉田寿宏。
主題歌『空も飛べるはず』作詞:草野正宗、作曲:草野正宗、歌:ねごと。
出演は土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、池田エライザ、矢本悠馬、前原滉、佐生雪、ナダル(コロコロチキチキペッパーズ)、羽鳥慎一、轟二郎、ひこにゃん、橋本雄大、野島健矢、中村昌樹、山田卓、小平大智、西洋亮、師岡広明、吉原拓弥、中山義紘、松井りな、渡辺美映子、多根照人、多根靖人、菅原童夢、藤巻沙耶、水瀬慧人、渡辺賢明、松ヶ瀬愛、倉松すみれ、藤井俊輔、石橋大将、青山卓也、枝松まさや、佐々木大輔、大林亮太、伊渡直哉、浦野知也、奥山新斗、門前康太、川口拓也、川村翔吾、堂前賢太、柳井健太、堀越拓也、如月勇太、河野竜太、小林聖、和地泰平、冨田浩児、阿野修也、深川幸輝、片岡祥平、野口響ら。


母校である芝浦工業大学をモデルにした中村航の同名小説を基にした作品。
監督は『貞子3D2』『ヒロイン失格』の英勉。
脚本は『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』の高橋泉。
ゆきなを土屋太鳳、坂場を間宮祥太朗、高橋を高杉真宙、和美を池田エライザ、古沢を矢本悠馬、横原を前原滉、メガネ女子を佐生雪、ペラ夫をナダル(コロコロチキチキペッパーズ)が演じている。
轟二郎似の住職として轟二郎が出演しており、ひこにゃんや羽鳥慎一も登場する。

まず配役の段階で断言できるのは、「ナダルが要らない」ってことだ。
映画やTVドラマにお笑い芸人を使うことは少なくないが、どんな役に誰を起用するのかってのは慎重に考える必要がある。この映画の場合、ナダルがナダル以外の何者でもないし、ハッキリ言って邪魔だ。
たぶんコメディー・リリーフ的に使っているんだろうけど、そもそも本作品にコメディー・リリーフの必要性が乏しい。
しかも、そこの笑いは「ナダルである」ということに全て頼っているのだが、皮肉なことに「ナダルである」ことが邪魔なのだ。

ナダルはコメディー・リリーフというだけでなく、それなりに重要な情報を発信する役目も任されている。例えば昨年の大会で坂場がミスしたことや、それが原因で飛べなくなったことを説明するのも彼の仕事だ。
しかし、ナダルはコントの時と同じような喋り方をするのだが、何を言っているのか聞き取りにくい。
また、その台詞回しがノイズになって、言っている内容が頭に入って来ない。それに、マジで伝達されるべき情報までもが、ふざけた形になってしまう。
とにかくナダルの起用はデメリットしかないのだ。

高橋が居酒屋で坂場に会わせた後、ゆきなが「坂場を呼び出すためのダシに使われた」と憤慨するのは当然だ。それが彼女の思い込みならともかく、事実なのだ。
それなのに高橋は悪びれる様子も無く、だからもちろん謝罪もしない。こいつは何となく好感の持てるような奴にしてあるけど、実際はサイテーな野郎なのだ。このポジションに何の魅力も持てないのは、かなりキツい。
ただ、こいつに限らず、出てくる連中で魅力のある奴などいない。ゆきなにしろ坂場にしろ、これっぽっちも魅力を感じない。
それは「好感が持てない」ってことじゃなくて、総じて薄っぺらいのだ。

ゆきなは高橋と坂場のテストフライトが浮上した時に興奮しまくっているが、そこに全く同調できない。ただテストで浮上しただけで、なぜそこまで喜べるのかと首をかしげたくなる。
チームの面々が必死に苦労してきた様子は、何も描かれていないしね。
それは観客が見ていないだけじゃなくて、ゆきなだって見ていないはずで。
今まで鳥人間コンテストの存在すら知らなかった上、大会に向けたチームの努力を何も知らない奴が、ただテストで飛行機が浮上しただけで、そこまで喜べるものだろうか。

英勉が監督に起用されたのは、これまでに『ハンサム★スーツ 』や『高校デビュー』といったコメディー作品を手掛けて来たことからの判断だろう。
ただ、この人は良くも悪くも、軽薄なコメディーしか作ることが出来ない。
しかし本作品はコメディーの要素だけでなく、熱血スポ根モノの要素も重要になる。そこの部分が、この映画には決定的に欠けている。
魂を燃えさせてくれるドラマ、感動や興奮を喚起してくれる情熱、そういった物が見えて来ないのだ。

本気で熱血しなきゃいけないようなシーンでも、ゆきなと坂場の口論がコメディーパートと同じように続いてしまう。マジで感動的に盛り上げるべきシーンでも、ふざけたりスカしたりしてしまう。
コメディーと熱血スポ根モノの相性が悪いってわけではない。むしろ、この2つは相性がいいと言った方がいい。
上手くやれば、「ずっと笑っていたのに、なぜか熱くなっている」という風に描くことも出来るはずなのだ。
しかしコメディーと熱血スポ根モノの配合を、この映画は大きく間違えている。

チームワークがほとんど見えないってのも、この映画の大きな欠点だ。
鳥人間コンテストってのは、パイロットの2人さえ協調性があれば遠くまで飛べるわけではない。裏方である飛行機作りのメンバーたちも、ものすごく重要な役割を担っている。チームのメンバー全員が全力で取り組み、時間と手間を費やして質のいい飛行機を作ってこそ、結果に繋がるのだ。
だが、そんな他の班の面々の血と汗の努力は、まるで見えて来ない。作業の様子が何度か挿入されるが、イメージカットや捨てゴマのような扱いだ。
最初に「メガネ男子」として一括りにされていた各班のメンバーは、最後まで「メガネ男子の集団」という状態から脱却しないまま終わる。

(観賞日:2018年11月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会