『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』:2016、日本

関大助は修学旅行のバス移動で、松浦に席を交代してもらった。その理由は、通路を挟んで向かい側に座る手塚ひろ美と話すためだった。だが、いざ席を移動すると、大助は緊張して上手く話すことが出来なかった。後ろの席では男子生徒が地獄について話したり、気分の悪くなった和田じゅんこを馬鹿にしたりしていた。そんな中、バスは突如として道路を飛び出し、崖下へ転落した。大助が気付くと、そこは地獄だった。地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」のキラーKが、メンバーのCOZYと邪子を引き連れて演奏した。
まるで状況を把握できていない大助に、キラーKは地獄だと教える。まるで信じない大助に、キラーKはバスが谷底へ転落したことを話す。大助が見上げると、まだバスは転落の途中だった。バスが谷底へ落ちた後、テレビのニュース番組では1名の生存者がいると報じられる。自分以外は地獄へ来ないことについて大助が触れると、キラーKは天国へ行ったのだろうと告げた。なぜ自分だけ地獄なのかと不満を口にした大助に、キラーKたちは現世での悪行のせいだろうと告げた。
具体的な悪行について、キラーKたちは大助に説明する。大助は貸しスタジオ「スタジオぱんだ」でアンプの上に置いた缶ジュースをこぼしたり、アンプのコードを巻かずに返却したりしていた。大した罪ではないと反論する大助は、キラーKの正体がスタジオ従業員の近藤だと気付いた。するとキラーKは、恋人に「死神」とあだ名を付けたことを指摘して憤慨した。それはクレープ屋台で働く亀井なおみのことだが、大助は全く悪びれる様子も見せなかった。
キラーKは大助を地獄農業高校へ連れて行き、教師の牛頭や馬頭に会わせた。大助の死因は自殺となっていたが、彼は全面的に否定した。彼はSNSで自殺を匂わせていたが、それは太宰治が好きなひろ美を意識してのことだった。軽音楽部に入ったのも、好意を持ってもらうためだった。大助はひろ美に接近するため、ストーキング行為にも及んでいた。彼は修学旅行で女子の脱衣所を盗撮し、その映像をエサにして松浦に席を交代してもらっていた。夜中に女子の部屋へ忍び込んだ時には、キスしようとして未遂に終わっていた。
バスで移動中、大助はひろ美からバナナを貰った直後、「昨夜、部屋に来たよね」と耳元で告げられた。激しく動揺した彼はバナナを喉に詰まらせ、窒息死したのだった。自殺じゃないことは判明したが、大助はキスもせずに死んだことを嘆く。するとキラーKは、えんま校長の面接で気に入られたら輪廻転生できることを教えた。転生できる種類は6種類で、その内の1つは人間道だ。転生のチャンスは7回だけであり、それで人間道に戻れなかった場合はキラーKのような角が頭に生えてくるようになっていた。
ひろ美とのキスを実現するため何とか人間に戻ろうとする大助だが、アピールする彼に校長が通告したのは畜生道だった。スタジオぱんだのトイレで現世に戻った大助は、インコの姿になっていた。なおみに気付かれた大助はスタオから飛び去り、自宅へ戻った。母のよしえが捕まえてキスしようとしたので、大助は慌てて逃げ出した。再び自宅へ舞い戻った彼は携帯電話を発見し、ひろ美に気持ちを打ち明けるメールを送信した。
大助は自分の家族にペットとして飼われ、寿命を終えて地獄へ戻った。地獄では4日しか経っていなかったが、現世では7年の換算だった。ひろ美について大助が尋ねると、邪子は「死んでるよ」と口にする。「天国へ行ってるかも」と大助が言うと、キラーKは地獄から天国へ行った者が1人もいないことを教えた。しかし人間に生まれ変わった者は存在することを、キラーKは話す。地獄ロックバトルロイヤルで鬼ミュージシャンと対決し、勝利すれば人間として現世に「メジャーデビュー」できるのだ。
ロックバトルに参加できるのは高校生だけであり、キラーKはプロデューサーに専念しようと考えていた。大助は彼のバンドに誘われるが、「1人でも無理なのに3人なんて無理」と指摘し、「それに俺は、手塚ひろ美さかに会いたいだけだから」と冷たく断った。彼は農作業に励み、2度目の面接に臨む。だが、校長が彼に通告したのは畜生道だった。大助はザリガニとして現世に戻り、トイレの外へ出た。そこへ老婆が通り掛かり、大助はザリガニとしての寿命を終えた。
地獄へ戻った大助は、地獄農業高校の部活動についてキラーKから教わる。彼は軽音部の顧問を務めていたが、大助は改めてバンド活動に興味が無いことを告げる。彼はキラーKに、なおみに息子がいることを教えた。するとキラーKは激しく動揺し、それは自分の息子だと言う。彼は音楽で食べて行くのが夢だったが、才能の無さを知った。なおみは彼のために尽くし、夜の仕事でも稼いだ。彼女は店の客に頼み、ゲーム音楽の仕事を持ち込んでくれた。しかし才能の無さに気付かれることを恐れたキラーKは、「妥協したくない」と断った。なおみは彼を責めなかったが、何も言わずに同棲中の部屋から姿を消した。
キラーKは部屋に残されたキーホルダーを見て、なおみが妊娠していることを知った。突如としてキラーKの脳内にはメロディーが浮かび、彼はスタジオへ駆け込んで『天国』と名付けた曲をCDに録音した。自転車を走らせた彼は、なおみからの電話を受けて曲が出来たことを知らせた。踏切に補助輪が挟まってで立ち往生している男児に気付いたキラーKは、慌てて助けに向かう。しかし転倒している間に男児は脱出し、そこへ電車が走って来た。キラーKは自殺とみなされ、地獄へ落ちたのだった。
キラーKは人間として転生しようとするが、不可能な状態だった。本人は全く覚えていなかったが、彼は既に7度も転生していたのだ。そのため、彼は鬼として校長に仕えることを余儀なくされたのだった。COZYと邪子は、あと1度で転生が終わりだった。キラーKの曲に心を動かされた大助は、自分が現世に戻ってなおみと息子に聴かせると誓った。彼はギターを弾き始めるが、その演奏は下手だった。大助は練習して面接を受けるが、あまりにも下手な演奏だったので畜生道を通告された。
オットセイとして現世に戻った大助は、水族館のショーに出演する。観客として現れた1人の女性を見た彼は、大人になったひろ美だと確信する。大助は彼女に向かってジャンプするが、椅子に激突して死んだ。地獄へ戻った大助は、なおみと息子についてキラーKから質問された。大助はスタジオが焼肉屋になっていたこと、なおみが店主を務めていたことを知らせる。彼はオットセイとして『天国』を歌ったが、まるで伝わっていない様子だった。
大助の前に、ガールズバンド「デビルハラスメント」を率いるじゅんこが現れた。じゅんこは大助に片想いしており、彼がひろ美ばかり見ていることにも気付いていた。じゅんこは見事なギター演奏を披露し、キラーKは「バンドに入ってくれ」と頼む。「そりゃないよ」と走り去った大助は、大人になった松浦と再会する。松浦はバスの転落事故で生き残ったが、不倫で地獄へ落ちていた。彼と話した大助は、生存者が1名ではなかったこと、ひろ美も生き残ったことを知る。
浮かれた大助は、すぐに面接へ行く。しかし畜生道を言い渡され、犬の姿で転生した。彼が思い出の公園へ出向くと、ひろ美を思わせる女子高生がフルートを吹いていた。それは別人だったが、ひろ美が現れて彼女に声を掛ける。その女子高生は、ひろ美の娘だったのだ。父との関係で悩んでいる娘に、ひろ美は高校時代に好きだった男子のことを話す。それは大助のことだった。しかし好きだと気付いた時には遅かったため、隣にいる人を大切にしようと考えてパパと結婚したのだと彼女は娘に語った…。

監督・脚本は宮藤官九郎、製作は長澤修一&市川南&藤島ジュリーK.&井上肇&畠中達郎&長坂まき子&高橋誠&宮本直人、エグゼクティブ・プロデューサーは豊島雅郎&上田太地、プロデューサーは臼井央&長坂まき子、ライン・プロデューサーは坂本忠久、撮影は相馬大輔、照明は佐藤浩太、録音は藤本賢一、美術(地獄)は桑島十和子、美術(現世)は小泉博康、編集は宮島竜治、VFXスーパーバイザーは道木伸隆、スタイリストは伊賀大介、衣裳は荒木里江、特殊メイク・造形は中田彰輝、音楽プロデューサーは安井輝、音楽は向井秀徳、主題歌はKYONO。
出演は長瀬智也、神木隆之介、宮沢りえ、古田新太、尾野真千子、森川葵、桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、烏丸せつこ、田口トモロヲ、片桐仁、皆川猿時、シシド・カフカ、清、Char、野村義男、ゴンゾー、木村充揮、みうらじゅん、快速東京、マーティ・フリードマン、ROLLY、瑛蓮、荒川良々、坂井真紀、中村獅童、平井理央、三河悠冴、藤原季節、吉村界人、船崎良、小平大智、山崎じゅり、北香那、健作、岡本拓朗、上神出海鼠、三島ゆたか、橋本拓也、藤倉みのり、菅原永二、下村愛、山田杏奈、益田愛子、矢柴俊博、福本晟也ら。


『少年メリケンサック』『中学生円山』の宮藤官九郎が監督&脚本を務めた作品。
キラーKを長瀬智也、大助を神木隆之介、大人のひろ美を宮沢りえ、校長を古田新太、なおみを尾野真千子、ひろ美を森川葵、COZYを桐谷健太、邪子を清野菜名、松浦を古舘寛治、和田を皆川猿時、修羅をシシド・カフカ、鬼姫を清、牛頭を烏丸せつこ、馬頭を田口トモロヲ、鬼野を片桐仁、よしえを坂井真紀、我慢汁を中村獅童、神を瑛蓮、仏を荒川良々が演じている。
他に、鬼ギタリスト役でChar、ジゴロック挑戦者役で野村義男&ゴンゾー、唄うたいの小鬼役で木村充揮、MOJA・MJ役でみうらじゅん、地獄の軽音楽部役で快速東京、じゅんこA役でマーティ・フリードマン、じゅんこB役でROLLYが出演している。

いかにもクドカン作品らしく、無駄に豪華でバリエーション豊かな面々が顔を揃えている。役者だけでなく、Charや野村義男、木村充揮やマーティ・フリードマン、ROLLYや快速東京といったミュージシャンも多く出演している。
出演者が楽しんでいるだろうなあってことは、充分すぎるほど伝わって来る。
ただし、それが映画としての面白さには繋がっていないので、ただの内輪受けになっている。
有名人たちが、はしゃいで浮かれまくっているだけで、完全に上滑りしている。
ザックリ言っちゃうと、予算と時間を掛けた贅沢な学芸会だ。

いかにもクドカン作品らしく、モラルという概念は完全に破壊されている。何しろ冒頭のバス転落事故からして、完全に茶化した形で描写しているのだ。
人の死を茶化すのが、絶対にダメだとは言わない。人の死や殺人を笑いの中で表現するのは、コメディーだったら許されることだ。
ただし本作品におけるバス転落事故は、そういう扱いをしちゃダメな出来事だと感じるのだ。
大助の死に関しては、「バナナを喉に詰まらせた窒息死」ってことが後から判明するし、それは主人公のキャラを考えても「マヌケな死」として扱っても構わない。しかし一緒にバスで移動していた28名が転落事故で死亡しているのは、茶化しちゃダメなヤツでしょ。

それと、大助が死んだ直後なのに弟の辰則がオナニーしているってのも、まるで笑えないよ。「中学生だからな、関係ないか」と大助は受け入れているけど、そういう問題じゃないぞ。中学生でも、兄貴が死んだ直後に平気でオナニーするのはクズだぞ。
っていうか、この映画で笑える箇所なんて、ほとんど見当たらないんだよな。
ブラック・コメディーになっているわけではなく、単純に不快で笑えない描写が多いだけだ。
登場人物は無闇やたらと騒ぎまくり、アッパーな状態が続くけど、その熱狂はこちら側まで伝染しない。むしろ、すっかり気持ちを冷めさせてしまう。

キラーKはロックバトルについて、「高校生じゃないからプロデューサーに専念する」と言う。だが、なぜ高校生じゃないと参加資格が無いのかは全く分からない。
そもそも「ロックバトルで鬼ミュージシャンに勝ったら人間として現世に戻れる」という設定自体がデタラメではあるが、それは別に構わない。だけど、デタラメでもいいから「なぜ高校生じゃないとダメなのか」という理由は用意しておくべきだ。
そこを用意しないのは、手抜きしているとしか思えない。
ハチャメチャでアナーキーな世界観を用意するならするで、そういう方向性のディティールは丁寧に構築しようよ。

大助が水族館で出会うひろ美は37歳になっているので、森川葵じゃなく宮沢りえが演じるのは理解できる。
ただ、そのせいで「大助は大人になったひろ美だと確信し、人間として再会することへのモチベーションを高めるけど、こっちはピンと来ない」という問題が生じている。
そこは「大助が確信しているんだから本人で間違いない」と感じるべきなのかもしれないけど、何でも笑い繋げようとしているし悪趣味なテイストも強いので、「実はひろ美じゃなかった」というワルノリもあるんじゃないかと余計な疑いを持っちゃうのよね。
あと、何より大助が惚れていたのは森川葵なので、そのままで進めた方がいいよなあと。

前半の内から地獄ロックバトルについての説明があるのだから、さっさと「大助がキラーKのバンドに加入し、そのバトルに勝つために特訓を積んで」という展開に入ってしまえばいい。
ところが、大助は全く興味を示さず、あっさりと断ってしまう。「一度は断るが、結局は参加する」という手順は用意されているが、大助がバンドをやる気になるのは映画開始から1時間以上も経過してからのことだ。
おまけに、バンドをやると決めたものの、それはロックバトルとは関係が無い。なぜか1人でギターを弾いて、えんま校長の面接を受けるのだ。
それはバンドをやっていることにならないだろ。

大助はバンドをやると決めるが、ギターの演奏が下手だとキラーKに指摘される。「練習するから教えてくれ」と大助は言うが、彼が特訓を積む様子は描かれない。
面接のシーンでは指に豆が出来ているが、それは「下手な演奏の弁明」として使っているだけだ。
それ以降のシーンでも、彼がロックバトルに勝利するため必死で努力するような様子は全く描かれていない。
コメディーだから、シリアスなテイストで努力の様子を描く必要は無いよ。だけど「大助の変化や成長」を示す意味でも、努力の形跡は見せるべきじゃないかと。

バンドメンバーとしての大助に限らず、彼の成長は最後まで皆無に等しい。
成長しないだけでなく、彼は反省もしない。軽く詫びるシーンはあるが、自身の軽薄な行動や差別的な発言に対する心からの反省や謝罪は無い。無責任で自己中心的な性格は、最後まで変わらない。
そもそもバスの転落事故が起きたのは、故意ではなかったものの、バナナを喉に詰まらせた大助が運転手に寄り掛かったからだ。しかし、そのことについて彼は何も罪悪感を抱かないのだ。
それだけでも、充分にクズと言っていいだろう。

キラーKはなおみと息子が火事で天国へ行ったことを知った後、大助&COZY&邪子に「お前らを天国に送り込むための、地獄の特訓だ」と告げる。それに対して、大助たちはやる気を見せている。
だけど大助たちは、人間として現世に行きたがっていたんじゃないのか。なぜ誰も「いや天国じゃなくて現世に行きたいんですけど」とは言わないのか。
で、何も言わなかった大助が天国へ行くために行動するのか、ロックバトルに勝つために練習するのかと思いきや、なぜか校長の面接を受けてギターを演奏する。
どういうことだよ。

「地獄のロックバトル」という趣向と、「様々な姿で何度も転生する」という仕掛けを無造作に同じ鍋へブチ込んでいるもんだから、見事に分離している。この2つを上手く絡ませよう、融合させようという作業を、何も用意していないのだ。
しかも、ただ混ざり合わないだけでなく、肝心の「大助がひろ美に会って気持ちを伝えようとする」という話を邪魔している。
その要素は実質的に、途中で片付けている。ひろ美が娘に好きだった男子のことを話し、それを大助が聞いているシーンで、もう終わっているのだ。
あと「肝心の」と書いたけど、実際は「肝心」と呼べるほど軸として太いわけでもないし。

キラーKは「地獄のHコードを制すればジゴロックに勝てる」と言うが、彼がそのコードを弾いた途端、えんま校長は激怒する。ところが、なぜか直後にロックバトルロイヤルの開催を宣言する。
その戦いはバンド対決ではなく、なぜか楽器ごとの対決。でも演奏で競うのかと思いきや、なぜか途中から暴力による戦いになる。
その対決を見ていた校長は、なぜか全員を畜生道に落とす。
努力して腕前が上達する描写など全く無かった大助だが、なぜかジゴロックでは急に超絶技巧を披露する。

何もかもがデタラメで支離滅裂なので、登場キャラクターがロックを演奏するシーンになっても高揚感に乏しく、流れを妨げている障害と化している。
っていうか、じゃあロックをパフォーマンスするシーンを全てカットすればスッキリして面白くなるのかというと、そういうわけでもない。
それ以外の部分も、全て雑音だらけになっている。支離滅裂な言動を繰り返す連中が、脈絡の無い展開の中で騒ぎまくる。
シュールでもなく、クレイジーなパワーが炸裂しているわけでもなく、学生ノリの悪ふざけ映画である。

(観賞日:2018年1月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会