『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』:2023、日本
芭流覇羅(バルハラ)の半間修二や羽宮一虎たちは、東京卍會の面々を襲撃して激しい暴行を加えた。彼らは制圧した面々の特攻服を奪い、目の前で燃やした。芭流覇羅が去ろうとすると、襲われた1人がバールで芭流覇羅の男を突き刺した。タケミチは現在に戻ってヒナと再会し、リベンジに成功したと思っていた。冴えない生活は何も変わっていなかったが、それでも彼はヒナとデートに出掛けて喜んだ。ヒナは思い出の場所に車でタケミチを連れて行き、そこで高校時代に振られたことを話した。
タケミチは自分が振られたという記憶していたので困惑し、「ちょっと時間を頂戴」と公衆トイレに逃げ込んだ。彼が戻るとヒナの姿は無く、周囲を捜索する。タケミチは半間とすれ違い、「車、乗ってねえじゃん。まとめて殺っちまおうと思ってたのに」という呟きを耳にした。タケミチが駐車場に行くと、ヒナは車の運転席にいた。タケミチが近付こうとすると、後方から1台の車がヒナの車に突っ込んだ。2台の車は炎上し、タケミチは慌ててヒナを助け出そうとする。しかしヒナは下半身が動かなくなっており、タケミチを突き飛ばした。その直後に大爆発が起き、タケミチは爆風で吹き飛ばされた。
タケミチは再び10年前に戻ろうとするが、ナオトは「無理なんです。結局、運命は変えられない」と漏らす。彼は突っ込んだ車の運転手も死亡していること、それが敦であることを教えた。タケミチは「元を正さないとダメだ」と言い、自分が東京卍會のトップになると語る。ナオトは東京卍會が凶悪化した理由について調べ、現在のドラケンが死刑囚だと知った。タケミチは彼と共に拘置所を訪れ、ドラケンと面会した。ドラケンは今の東京卍會を反社組織だとと評し、「俺があいつを止められなかった」と悔しそうに告げた。
ドラケンは「稀咲を殺す」と強い憎しみを吐露し、タケミチも稀咲に命を狙われていると教えた。彼はタケミチに、稀咲はマイキーの大事な物を全て奪うつもりだと話す。ドラケンは稀咲と結託していた刑事に撃たれ、商業ビルで仲間5人を殺害した犯人として逮捕されていた。タケミチは10年前に戻り、マイキーとドラケンに連れられて参番隊隊長の任命式に赴いた。彼は顔見知りの隊員たちから、パーちんが芭流覇羅を刺して年少にいるので代わりの隊長が必要なのだと聞かされた。
そこに新しい参番隊隊長として現れたのは稀咲で、隊員たちが騒然とすると三ツ谷隆は「詫びを入れて元メビウスのメンバーを連れて来た。筋は通してる」と説明した。タケミチが我慢できずに稀咲を殴り付けると、そこへ壱番隊隊長の場地圭介がやって来た。稀咲が入ることを聞いた彼が怒ると、ドラケンは「メビウスとの決戦にいなかったテメエは集会出禁っつったろ」と声を荒らげた。場地はマイキーに反発し、東京卍會を辞めて芭流覇羅に行くと宣言した。
場地が去って集会が終了した後、タケミチはマイキーと2人になった。マイキーは東京卍會の創設メンバーが自分とドラケン、三ツ谷、パーちん、場地の5人だと語り、「場地を芭流覇羅から連れ戻してくれ」と頼む。タケミチが「稀咲を東京卍會から外してほしい」と条件を出すと、マイキーは即答で承諾した。マイキーと別れたタケミチは、落ちていた写真に気付いて拾う。それは東京卍會の創設メンバーが渋谷のスクランブル交差点で撮った集合写真だが、メンバーは5人ではなく6人だった。
翌日、タケミチは学校で敦&山岸&マコトと会い、芭流覇羅は誰もトップを知らず「首の無い天使」と呼ばれていること、ナンバー2が半間でナンバー3が一虎であることを知った。そこへ一虎が現れ、タケミチに「芭流覇羅に行こう」と告げた。タケミチが案内された場所では、場地が入会の踏み絵として壱番隊副隊長の松野千冬を暴行していた。半間を見たタケミチは、ヒナが死ぬ直前にすれ違った男だと気付いた。半間は証人喚問と称し、タケミチに場地が集会で何を話したのか尋ねる。タケミチが「芭流覇羅に行く。東卍は敵だ」と言っていたことを話すと、一虎は「場地は戦力になる」と入会を後押しした。
場地はタケミチから「創設メンバーなのに、なんで東卍を裏切るんですか」と訊かれ、一虎も創設メンバーだと教える。彼はタケミチに、2年前の出来事を語った。一虎は場地に、バイクショップからバイクのバブを盗み出そうと持ち掛けた。場地は難色を示すが、「マイキーに喜んでもらうため」と言われて承諾した。2人は店に忍び込んでバブを持ち出そうとするが、店主の真一郎に見つかった。場地は彼がマイキーの兄だと知っており、顔を見て驚いた。しかし一虎は何も知らず、ボルトクリッパーで真一郎を殴り殺した。
一虎は場地からマイキーの兄だと知らされ、激しく動揺した。一虎は「マイキーが悪いんだ。マイキーを殺す」と言い出し、場地は彼を抱き締めて落ち着かせようとする。彼は「どんな地獄が待ってても、最後まで俺が一緒だから」と言い、警察を呼んで連行された。一虎が庇ったおかげで、場地は年少に入らずに済んでいた。「一虎が出所するのを待っていた」と場地が話すと、半間は彼を歓迎した。一虎はタケミチに、「マイキーに伝えろ。10月31日、廃車場で決戦だと」と告げる。タケミチから話を聞いたマイキーは、自分の誕生日に真一郎がバブをプレゼントするつもりで整備していたことを語った…。監督は英勉、原作は和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社「週刊少年マガジン」KC)、脚本は橋泉、製作は大多亮&高橋雅美&高見洋平、プロデューサーは岡田翔太&稲葉尚人、ラインプロデューサーは片平大輔、プロデューサー補は石渡宏樹、撮影は江崎朋生、照明は三善章誉、録音は加来昭彦、美術は佐久嶋依里&加藤たく郎、編集は相良直一郎、アクションコーディネーターは諸鍛冶裕太、音楽は やまだ豊、主題歌『グラデーション』はSUPER BEAVER。
出演は北村匠海、吉沢亮、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、間宮祥太朗、高良健吾、永山絢斗、村上虹郎、高杉真宙、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、堀家一希、藤堂日向、高橋里恩、田中偉登、今村謙斗、山口大地、堀丞、長田拓郎、アシダユウキ、阿邊龍之介、今田竜人、岡田地平、齋藤隼之介、篠田一斗、松原大貴、三木一輝、村上和也、山崎朋弥、赤名竜之輔、浅見和哉、上野凱、大川航、真丸、鈴木武、長谷川大、長谷部光祐、浜島大将、福居惇平、南北斗、吉川颯人、吉田興平、吉田大輝、武田一馬、樽田泰宏、山中雄輔、渡邉龍太郎、米玉利佑樹、田中柊羽ら。
和久井健の漫画『東京卍リベンジャーズ』を基にしたシリーズ第2作。
監督の英勉、脚本の橋泉は、いずれも前作からの続投。
タケミチ役の北村匠海、マイキー役の吉沢亮、ドラケン役の山田裕貴、直人役の杉野遥亮、ヒナタ役の今田美桜、稀咲役の間宮祥太朗、キヨマサ役の鈴木伸之、三ツ谷役の眞栄田郷敦、半間役の清水尋也、敦役の磯村勇斗、パーちん役の堀家一希、山岸役の藤堂日向、マコト役の高橋里恩は、前作からの続投。
真一郎を高良健吾、場地を永山絢斗、一虎を村上虹郎、千冬を高杉真宙が演じている。
溝高5人衆の中でタクヤだけが登場しないのは、演じていた田川隼嗣が2021年で芸能界を引退したから。敦の車が突っ込んでからヒナが死ぬまでのシーンは、時間を掛けて丁寧に描いている。たぶん「悲劇として盛り上げ、観客の涙を誘おう」という狙いなんだろうけど、タケミチを見つけた時の半間と同じぐらい「ダルいなあ」と感じる。
「敦の車が突っ込んで大爆発でヒナが死亡」でいいよ。「炎上してからタケミチが助けようと駆け寄り、ヒナが足の感覚が無いことを伝え、タケミチが抱き締めて愛を告白し」みたいなやり取りで、衝突から爆発まで2分半ぐらい使う必要なんて無いわ。
あとヒナが突き飛ばした直後に大爆発ってのは、タイミングが良すぎると感じるぞ。
そして必死で助けようとしているタケミチを、足の感覚が無くて瀕死状態のヒナが車の外まで突き飛ばせるのも、都合が良すぎると感じるぞ。マイキーは場地を集会出禁にしており、任命式に現れると「何、勝手に来て暴れてんだよ」と咎める。それなのに場地が反発して芭流覇羅へ行くと、今度はタケミチに連れ戻してくれと頼む。
随分と身勝手だな。
自分で東京卍會から遠ざけるようなことをしておいて、向こうが「じゃあ抜ける」と言い出したら「それも許さない」って、メチャクチャじゃねえか。
それに、「まだ正式メンバーでもない上、場地と何の関係も無いタケミチに頼むなよ」と言いたくなるぞ。創設以来の大切な仲間だと思っているなら、自分で動けよ。「それを言っちゃあ、おしめえよ」ってことなのかもしれないけど、実は東京卍會を巡る様々な問題って、マイキーがリーダーとして賢明な判断を下していれば大半は防げたんじゃないかと思っちゃうんだよね。
場地の一件もそうなんだけどさ、神格化されているマイキーって、実はポンコツじゃないか。
稀咲がクズ野郎なのは見え見えなのに、周囲の反発を押し切って参番隊隊長に指名するのもアホすぎるし。
稀咲を上手くコントロールしたり抑え込んだり出来るならともかく、全て向こうの思い通りにやられちゃうわけだし。タケミチは場地から一虎も東京卍會の創設メンバーだと聞いて驚くが、こっちは何の驚きも感じない。
タケミチは「なぜ創設メンバーが裏切るのか」と疑問を呈しているが、こっちは「創設メンバーが裏切ることなんて普通にあるだろ」としか感じない。
東京卍會のメンバーが固い絆で結ばれているとか、創設メンバーが裏切るなんて絶対に有り得ないとか、そういう印象を植え付けることが出来ていないからだ。
予想外の驚きを与えたいなら、「本来なら、こうあるべき」というベーシックを観客に確信させておく必要がある。
その土台が築けていないので、何の意外性も感じ取れないのだ。場地から一虎も東京卍會の創設メンバーだとタケミチに教えた後、創設して集合写真を撮影した当時の回想シーンが挿入される。
しかし、「予想外の驚き」を観客に与えるための描写としては、タイミングが遅い。
それを抜きにしても、「創設メンバーの固い絆」をアピールするために描写としては全く足りていない。
真一郎を殺す事件までの「俺たちは、はしゃいでいた」ことを描く部分は、屁の突っ張りにもならない。映画の尺を稼ぐための道草にしかなっていない。場地は一虎が真一郎を殺した時、「何やってんだよ」と声を荒らげる。一虎が「見られたんだからしょうがねえだろ」と告げると、彼は「そういうことじゃねえよ」とマイキーの兄であることを教える。
会話の内容としては、何も破綻は無い。
ただ、場地の言葉を聞く限り、まるで「相手が真一郎じゃなかったら殺しても構わない」みたいな解釈になっちゃうのよね。
「見られたから殺した」という一虎の主張は、その時点で間違っているわけで。
だから、「そういうことじゃねえよ、じゃねえよ」と言いたくなるのよね。あとさ、「バイクを盗もうとしたのはマイキーに喜んでもらうためなので、マイキーは複雑な思いを抱えている」みたいな描き方になっていて、何となく「一虎にも同情の余地はある」みたいな形にしてあるんだよね。
だけど、どうであろうと、やったことは泥棒と殺人なのよ。
しかも、これっぽっちも「止むを得ない泥棒と殺人」じゃないので、その時点で同情の余地なんて無いのよ。
「マイキーのためだった」ってのは、情状酌量の材料としては完全に不適格だからね。一虎は殺した相手がマイキーの兄だと知った途端に「マイキーが悪いんだ。マイキーを殺す」と言い出すが、どういう思考回路なのか。
「捕まって年少に入っている間に、どんどん考えが歪んでいく」というわけでなくて、いきなり「マイキーは敵。殺す」という感覚なのね。
幾らパニクっているからって、あまりにもデタラメすぎやしないか。
しかも、「殺した直後は錯乱状態だったが、時間が経って冷静さを取り戻す」ってわけでもないのよね。
なぜだか、そのまま「マイキーを殺す」という情念を燃やすって、どういうことだよ。タケミチはマイキーに一虎の言葉を伝えた後、どうすればいいか悩む。彼は千冬に声を掛けられ、「場地が自分を殴ったのは芭流覇羅に入るためだけでなく、他の理由もあるはずだ」と言われて手を組む。
ここで「半間たちに指示を出している奴がいるはずだ。そいつは何者なのか」という考えに至り、それを調べる流れになる。
だけど、こっちはとっくの昔に、半間が稀咲と組んでいることを知っているのよね。
なので、「芭流覇羅のトップは稀咲」と知ったタケミチたちが驚愕しても、「いや分かってたから」と冷めた気持ちになる。ジャンル的にミステリーじゃないのは言うまでも無いし、謎解きに主眼は無いかもしれないよ。
ただ、「実は」という種明かしのシーンは、明らかに観客にも驚きを与えようとする演出なのよね。
その後で「現在のドラケンから芭流覇羅のトップはマイキーだと聞かされる」という展開があるので、その前の「実は」には、そんなに大きな効果が無くても別にいいかもしれない。
ただ、それならそれで、もう少し上手い見せ方があったんじゃないかと。「血のハロウィン編」は「運命」と「決戦」の2部作になっており、それぞれ上映時間は90分と96分。この「運命」はエンドロールを除くと、本編は約86分。
シリーズ第1作の上映時間は120分だったので、大幅に短くなっている。
コンパクトにまとめるのは悪いことじゃないけど、この映画の場合は「1本で済む中身を2本に分けたら両方が90分台になった」というだけだ。
むしろ、2本に分けるため、中身に比べると上映時間を引き延ばしていると言ってもいいぐらいだ。そこには、「1本じゃなくて2本にした方が、もっと稼げるじゃねえか」という分かりやすい商売根性が関係している。
そういう「志無き前後編」が上質な映画に仕上がったケースを、不勉強な私は1本も知らない。
逆に「やっぱりポンコツだったね」という作品なら、すぐに思い浮かぶ。
例えば『進撃の巨人』とか、『進撃の巨人』とか。
ともかく、2本1パックの作品なので、この前編では何も区切りが付いていない。クライマックスは無く、見せ場になるようなシーンも 無く、「全ては後編まで待ってね」という形になっている。(観賞日:2024年8月18日)