『東京リベンジャーズ』:2021、日本

マイキーと稀咲鉄太は車に乗り、立体駐車場でヤクザを全裸にして追い回していた。彼らはヤクザをひいて怪我を負わせ、車を降りた稀咲は「この辺りのシマは東京卍會が仕切る」と宣言した。花垣タケミチはテレビのニュースで、学生時代に交際した橘ヒナタと弟の直人が死亡したことを知った。2人はダンプカーがビルに突っ込んだ事故に巻き込まれて死んでおり、運転手は逃亡していた。テレビや新聞では、半グレ集団と暴力団の抗争に巻き込まれたのだと報じていた。
ネットカフェのバイトを終えたタケミチは、地下鉄のホームで何者かに突き落とされた。列車が迫って来る中、タケミチは全く動けずに固まった。次の瞬間、彼は2010年の高校時代にタイムスリップしていた。姿は高校2年生に戻っており、タケミチの周りには当時の仲間である溝高5人衆の敦、山岸、マコト、タクヤがいた。彼らは舐められているからという些細な理由で、渋谷工業の2年に喧嘩を売りに行く途中だった。タケミチは従兄のマサルから渋谷工業で番長をしていると聞いており、万が一の時は止めてもらう予定だった。
タケミチは自分が死んで走馬灯の中にいると思ったまま、敦たちと行動を共にした。溝高5人衆は渋谷工業3年のキヨマサと仲間たちに見つかり、因縁を付けられた。キヨマサは東京卍會に所属しており、タケミチは焦った。敦は強がって喧嘩を売るが、タケミチはキヨマサの一味に叩きのめされて奴隷化したことを思い出す。タケミチは仲間に逃げるよう促すが、キヨマサの一味に激しい暴行を受けた。彼はキヨマサから逃れるために転校したが、その後も謝り続ける人生が続くことになったのだった。
タケミチはヒナタを訪ね、傷を手当してくれる彼女を見て涙を流した。「10年後には死んでいる」と彼が話すと、ヒナタは10年後も一緒にいてほしいと告げた。公園へ移動したタケミチは、不良たちに絡まれている直人を目撃した。タケミチは不良たちに「消えろ、ガキが」と喧嘩を売り、ブランコを蹴り付けた。しかし戻って来たブランコが背中に当たって倒れ込み、無様な姿を晒した。彼は直人ならヒナタを守れると気付き、10年後に起きる出来事を説明した。
タケミチは10年後の7月1日を覚えておくよう直人に言い含め、次の走馬灯へ行くと告げた。タケミチが直人と握手すると、2020年に戻った。彼は駅で保護されており、自分が列車にひかれずに助かったことを知る。そこへ直人が現れたので、タケミチは驚いた。直人は10年前にタケミチが未来を予言したこと、それを信じて刑事になったことを話す。彼の説明を聞いて、タケミチは今までの出来事が走馬灯ではなくタイムリープしていたのだと理解した。直人は事故で死なず、ホームから突き落とされたタケミチを救っていた。
直人はタケミチに、自分は無事だったがヒナタは救えなかったと話した。彼は東京卍會が10年前と違って大きく勢力を拡大していること、総長であるマイキーと稀咲の出会いが発端になっていることを、タケミチに説明する。直人はマイキーと稀咲が10年前の7月に出会っていることを語り、それを止めるようタケミチに頼む。直人は自分たちが握手すればタイムリープできると言い、また過去へ戻るようタケミチに促した。タケミチは怖気付いて嫌がるが、直人が説き伏せた。
タケミチが2010年に戻ると、キヨマサが仕切る喧嘩賭博が行われていた。敦が我慢できずキヨマサに襲い掛かろうとすると、タケミチは過去を思い出して制止する。タケミチはキヨマサにタイマンを持ち掛け、自分が勝てばマイキーに会わせるよう要求した。キヨマサは余裕で承諾し、一方的にタケミチを叩きのめした。しかしタケミチが何度も立ち上がって来るので、彼は腹を立てて金属バットを持ち出した。そこへマイキーと副総長のドラケンが現れたので、一同は慌てて頭を下げた。
マイキーはタケミチを気に入り、「今日から俺のダチな」と告げた。彼は喧嘩賭博の主催がキヨマサだと知り、蹴りを浴びせて失神させた。その夜、タケミチはヒナタと花火大会を見物し、手を握ろうとする。しかし視線を向けると、隣はヒナタから直人に入れ替わっていた。2020年に戻ったタケミチは、タイムリープで過去へ戻っている間は体が仮死状態になることを直人から聞かされた。さらに直人は、10年前の同じ日の同じ時間に戻ること、過去で経過したのと同じ時間が現在でも経過することを教えた。
タケミチがマイキーと知り合ったことを話すと、直人は彼の殺害を依頼した。タケミチは驚くが、直人は稀咲に会う前にマイキーを殺せばヒナタは死なずに済むのだと告げた。2010年に戻ったタケミチが学校にいると、マイキーとドラケンがやって来た。彼らは絡んで来た不良グループを軽く蹴散らし、遊びに行こうとタケミチを誘う。彼らが学校を出ようとすると、ヒナタが現れた。彼女はマイキーがタケミチを連れ去るつもりだと誤解し、平手打ちを浴びせて「私がタケミチくんを守る」と力強く告げた。タケミチがヒナタを守る態度を見せると、マイキーとドラケンは軽く笑う。彼らは全く怒っておらず、ヒナタは誤解に気付いて謝罪した。
マイキーとドラケンはタケミチに、不良の世界を作るので一緒に来ないかと持ち掛けた。タケミチは東京卍會の集会に誘われ、夜になって参加する。マイキーとドラケンが来る前に、キヨマサはタケミチへの敵意を剥き出しにした。そこへマイキーとドラケンが現れ、キヨマサを追放した。ドラケンはパーちんの友人が暴走族「愛美愛主(メビウス)」の長内信高と揉めた件について話した。マイキーは愛美愛主を潰すと宣言し、7月13日のむさし祭りが決戦だと告げた。同じ頃、稀咲はキヨマサに接触していた。
2020年に戻ったタケミチは、マイキーは悪い奴じゃないのかもしれないと直人に語る。彼は現在のマイキーと会って話したいと告げるが、直人は難しいと言う。しかしタケミチは敦が東京卍會の幹部になっていることを知り、彼がオーナーを務めるクラブへ赴いた。敦はビルの屋上でタケミチと会い、自分が稀咲の奴隷と化していること、命令を受けて線路に突き落としたことを告白した。さらに彼は、ドラケンが死んでからマイキーが変わってしまったと話した。
敦はタケミチが過去に戻れるのではないかと推測しており、「あの頃に戻れるなら、みんなを助けてくれ」と言い残して飛び降りた。遺体に駆け寄ろうとするタケミチを直人が必死で制止し、その様子を離れた場所から稀咲が観察していた。タケミチはドラケンを救えば未来を変えられると確信し、彼の死について調べるよう直人に依頼した。直人はチーム同士の抗争に巻き込まれて死んだことを話すが、タケミチは詳細な情報を要求した。しかし直人が不用意に握手したため、タケミチは2010年に飛んでしまった。
タケミチは直人に会うため、橘家へ赴いた。するとヒナタは、直人が修学旅行でハワイに行っていることを告げる。タケミチは彼女と話し、むさし祭りが明日であることを知った。ドラケンがメビウスに殺されると確信したタケミチは、決戦を止めようと考えた。彼はマイキーやドラケンたちと会い、抗争の中止を進言した。しかし具体的な理由を説明することが出来ず「悪い予感がするから」とだけ告げたため、マイキーはタケミチの要求を拒否した。そこへメビウスの連中が乗り込んで来たため、予定より早く戦いが始まってしまう…。

監督は英勉、原作は和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社「週刊少年マガジン」連載中)、脚本は橋泉、製作は石原隆&池田宏之&松本智、プロデューサーは岡田翔太&稲葉尚人、ラインプロデューサーは石渡宏樹、撮影は江崎朋生、照明は三善章誉、録音は加来昭彦、美術は佐久嶋依里&加藤たく郎、編集は相良直一郎、アクション監督は諸鍛冶裕太、音楽は やまだ豊、主題歌『名前を呼ぶよ』はSUPER BEAVER。
出演は北村匠海、吉沢亮、山田裕貴、間宮祥太朗、杉野遥亮、磯村勇斗、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、堀家一希、清水尋也、湊祥希、藤堂日向、高橋里恩、田川隼嗣、戸田昌宏、篠原ゆき子、前原瑞樹、谷田歩、篠原悠伸、伸哉、高野光希、高谷心也、中村祐志、バーガー長谷川、松嵜翔平、アシダユウキ、阿蘇尊、阿邊龍之介、今田竜人、岡田地平、加藤千尚、木田佳介、コーシロー、齊藤隼之介、篠田一斗、四ノ宮舞久、高屋智裕、土佐寛、松嶋健太、松原大貴、宮田竜介、村上和也、両角周、竜太朗、山崎朋弥、川崎勇人、新井敬太、一條恭輔、稲葉年哉、上田耀介、小田直哉、塩崎竜海、武田一馬、樽田泰宏、富山バラハス、長岩健人、永沼伊久也ら。


和久井健の漫画『東京卍リベンジャーズ』を基にした作品。
監督は『ぐらんぶる』『映像研には手を出すな!』の英勉。
脚本は『羊とオオカミの恋と殺人』『朝が来る』の橋泉。
タケミチを北村匠海、マイキーを吉沢亮、ドラケンを山田裕貴、稀咲を間宮祥太朗、直人を杉野遥亮、敦を磯村勇斗、ヒナタを今田美桜、キヨマサを鈴木伸之、三ツ谷を眞栄田郷敦、パーちんを堀家一希、長内を湊祥希、山岸を藤堂日向、マコトを高橋里恩、タクヤを田川隼嗣が演じている。

タケミチは2010年に戻ると、「自分は死んで走馬灯の中にいる」と確信する。
でも、そこに無理を感じてしまう。
そりゃあ簡単に「タイムスリップした」とは思えないだろうけど、そう思えない奴が肌感覚として「自分は死んで走馬灯の中にいる」と確信できないのも、なんか引っ掛かるのよね。
「何が起きているのか良く分からず混乱が続く」という状態の方が、腑に落ちる。
「荒唐無稽な漫画だから」ってことで受け入れるべきなんだろうけど、「荒唐無稽な漫画」的にも「タイムスリップ」と解釈してくれる方が腑に落ちるわ。

直人はタケミチに過去へ戻るよう要求し、「方法は2人の握手」と言う。彼は10年前にタケミチと握手した時の現象を見ているので、それがタイムリープの方法だと確信しているわけだ。
でも、タケミチは直人との握手で現在へ戻って来たけど、過去へタイムスリップしたのは列車にひかれそうになった時だ。
ってことは、過去へ戻るのは握手じゃなくて危機的状況に陥った時かもしれないでしょ。
実験や計算を経たわけでもないのに、「方法は2人の握手」と断言できる根拠は何なのかと。

直人はタケミチに「過去へ戻ってマイキーと稀咲の出会いを阻止してほしい」と依頼すると、すぐに握手して過去へ送り出す。タケミチも深く考えず、すぐにタイムリープする。
だけど、過去へ戻れる期限が迫っているとか、ヒナタを救える期限があるとかじゃないんだから、そんなに慌ててタイムリープさせる必要は無いだろ。
まずは東京卍會に関する詳しい情報や10年前の状況をタケミチに学ばせて、目的を阻止するための具体的な方法を考えてから行動に移った方がいいだろ。
実際、タイムリープしてからのタケミチは「目的を果たすため」という意識を完全に忘れており、何も考えず衝動的に動いているだけじゃねえか。

あと、直人がヒナタを救うためにタケミチに任せる仕事が、「それってホントに正解なのか」と言いたくなる。
彼の理屈だと、次のようになる。
まず、ヒナタを救うためにはダンプの突入を阻止する必要がある。ダンプの突入を阻止するには東京卍會の勢力拡大を食い止める必要がある。東京卍會の勢力拡大を食い止めるためには、その発端であるマイキーと稀咲の出会いを阻止する必要がある。だからマイキーと稀咲の出会いを阻止するため、タケミチを過去に送り込むという理屈だ。
でも、そのバタフライ・エフェクトって、かなり遠くないか。もうちょっと手間や時間を掛けずに、未来を変えてヒナタの死を防ぐ方法を模索した方が良くないか。

マイキーはキヨマサが喧嘩賭博の主催者だと知って粛清するのだが、その方法が「側転しながら顔面に蹴りを浴びせる」というモノ。
それ、すんげえダサいぞ。
派手で見栄えのするアクションにしたかったのは分かるし、マイキーの凄さやカリスマ性をアピールしたかったのも分かる。だけど無駄な動きが多いだけで、完全に選択するアクションを間違えているとしか思えない。
そんな無駄な動きをしたせいで、口にくわえていたドラ焼きを落としているし。可愛さアピールのつもりかもしれないが、「ただのバカじゃん」と呆れるだけだ。
長内を軽く倒す時のジャンプキックも、なんかカッコ悪い。

あと、そこではマイキーが「敵のボスを一撃で簡単に倒す」という圧倒的な力の差を見せ付けたのに、クライマックスとなる戦いでは苦戦するのよね。
幾ら相手が多いとは言え、マイキーだけじゃなくて東京卍會のメンバーもいるんだから、そこまでの苦戦は不可解だ。
最初の騙し討ちでダメージを受けているものの、ドラケンだっているんだし。
しかも、マイキーは長内と実質的にタイマン状態の中で、刺されたドラケンに近付くことも出来ないんだよね。
なんかパワーバランスがおかしいぞ。

タケミチはヒナタと会って「直人がハワイへ行っている」と聞いた後、むさし祭りでドラケンが殺されると確信する。だから、その直後に彼が走り出すのは、もちろん「メビウスとの抗争を止めるため」のはずだ。
ところがシーンが切り替わると、マイキーとドラケンが病院に入る様子が描かれ、それを見ているタケミチの姿が映し出される。
これ、どういうことなのかサッパリ分からない。
なぜタケミチは、その病院に行ったのか。
「マイキーとドラケンを偶然にも目撃し、後を追って病院に辿り着いた」という流れだとしても、その経緯をバッサリとカットしているため、タケミチが急に変な場所へ瞬間移動したような印象になっている。

タケミチが直人に任された使命を果たして未来を変えるために何をやるのかというと、ほとんど何もしていない。彼は東京卍會とメビウスの衝突を止められていないし、その後の騙し討ちも阻止できていない。ドラケンが刺されるのも、防げていない。
最後の最後にキヨマサをノックアウトして、ようやく主人公らしい仕事が出来ている。
あと、「不良漫画にタイムリープの要素を組み合わせる」というアイデアで作られた漫画だから、主人公が不良グループの抗争に積極的に関与する内容になるのは仕方が無いだろうとは思うのよ。ただ、周囲の面々には無いタケミチだけの人生経験が活用されることも無ければ、自分だけが知っている未来の知識や道具が役に立つことも無いんだよね。
なので、「タイムリープで過去に戻った」という設定はホントに必要なのかと思ってしまう。

最終的にはドラケンか助かり、現代に戻ったタケミチが生きているヒナタの元へ駆け付けてハッピーエンドという形にしてある。最初からシリーズ化を想定して製作していることは間違いないが、この1作だけでも成立するようになっている。
公開する際に2部作や3部作と発表しているわけじゃないから、「1話完結」の結末にしてあるのは観客に対して誠実な姿勢とは言える。
ただし弊害も生じていて、それは「雑魚のキヨマサを倒しただけでハッピーエンドが訪れている」ってことだ。
まだメビウスが完全崩壊したわけじゃないし、黒幕の稀咲は生きているし、現在の東京卍會がどうなったのかも分からないままだ。だから表面的にはハッピーエンドで物語を終わらせているけど、冷静に考えると「何も終わっちゃいないぞ」ってことに気付くんだよね。

(観賞日:2023年2月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会