『天気の子』:2019、日本
東京に雨が降り続く中、中学3年生の天野陽菜は入院する母親の傍らにいた。陽菜が窓の外を見ると、空から一筋の光が差し込んでいた。病院を出た陽菜は、光が繋がる廃ビルの屋上へ向かう。陽菜は屋上の鳥居をくぐり、晴れるよう願った。すると周囲の雨粒が止まり、陽菜の体は宙に浮かんだ。東京に向かうフェリーに乗っていた高校1年生の森嶋帆高は激しい雨が到来するというアナウンスを聞き、甲板へ出た。大雨に喜んでいた彼は、フェリーが大きく傾いたのでバランスを崩して足を滑らせた。須賀圭介という男に救われた帆高は、食事とビールを御馳走する羽目になった。
下船した帆高は東京へ来た理由を須賀に問われ、実際は家出だが「親戚に会いに来た」と嘘をついた。須賀は取締役社長を務める会社の名刺を渡し、困ったことがあれば連絡するよう告げて帆高と別れた。帆高はネットカフェでカップ麺の夕食を取り、学生証が無くても可能なバイトについてネットで質問する。帆高は風俗店のボーイなら出来るという答えを見つけるが、実際に巡ってみると全て断られた。彼が風俗店が入るビルの入り口で佇んでいたが、スカウトマンの木村に注意される。木村は立ち去ろうとする帆高の足を引っ掻けて転倒させ、その姿を嘲笑した。
帆高は倒れたゴミ箱から散乱したゴミを集め、袋に包まれた荷物を発見した。ハンバーガーショップでジュースを飲みながら包みを開いた彼は中身が拳銃だと知って驚くが、オモチャだろうと考えた。しばらく店にいるとアルバイト店員の陽菜が現れ、ハンバーガーを差し出す。彼女は帆高が3日連続で夕食にジュースしか注文していないことを知り、内緒でハンバーガーをプレゼントしたのだ。帆高は須賀の名刺を取り出し、彼の会社へ行ってみることにした。
帆高はバスで移動している時、女子にモテモテの凪という小学生を見た。彼が名刺にあった住所を訪れると、そこは小さなスナックの地下1階だった。事務所には夏美という女性がいて、須賀から新しいアシスタントだと聞いていることを告げる。須賀の愛人だと推理した帆高が関係性を尋ねると、夏美は「君の想像通りだよ」と笑った。そこへ須賀が来て、月刊誌『ムー』の記事を請け負っていることを話す。彼は目撃談や体験談をまとめて記事を執筆するのだと説明し、「100%の晴れ女」というネタを扱うよう告げた。
帆高は須賀から、既に入っている取材へインターンとして同行するよう促した。帆高は夏美に同行し、占いおババの話を聞く。「天候系の力は使い過ぎると神隠しに遭う」といった説明を、帆高は呆れながら記事にした。須賀が住み込み&飯付きでの採用を持ち掛けると、彼は快諾した。事務所での生活が続く中、帆高は陽菜が木村と仲間の男にスカウトされている姿を目撃した。彼は陽菜の腕を掴んで逃げるが、すぐに追い付かれた。木村に捕まって殴られた帆高は、鞄から拳銃を取り出した。発砲した彼は、本物だと知って驚いた。
木村と仲間が固まっている隙に、陽菜は帆高を連れて逃亡した。しかし木村と話が付いていた彼女は激昂し、帆高を激しく責めた。帆高が落ち込んでいると、陽菜はバイトをクビになってお金が必要だったのだと説明した。彼女は帆高が家出少年だと気付いており、「せっかく東京に来たのに、ずっと雨だね」と言う。陽菜は鳥居がある廃ビルの屋上へ帆高を連れて行き、「今から晴れるよ」と告げる。彼女が祈りを捧げると、途端に空は晴れ上がる。帆高は彼女が噂の晴れ女であること、そして来月で18歳であることに驚いた。
各地では水の塊のような物体が空から降って来る現象が多発しており、夏美はネットに上がっている写真を帆高に見せた。「記事にすれば金が稼げる」と帆高が言うと、夏美は呆れて「圭介に似て来た」と指摘する。須賀は義母の間宮夫人に娘の萌花との面会を求めるが、冷淡に拒まれる。「あの子は喘息持ちなのに、貴方は煙草を吸う」と指摘された彼は、禁煙したと話す。しかし間宮夫人は「そんなイメージなのよ」と述べ、態度を変えなかった。
帆高は日菜が暮らすアパートを訪れ、彼女が弟と2人暮らしだと知る。家出の理由を問われた帆高は、地元も親も息苦しくなったと答える。彼は日菜に、晴れにしてほしい人の依頼を受ける仕事を提案した。2人が依頼を受けるサイトを作成していると、日菜の弟が帰宅した。その顔を見た帆高は、バスで見た小学生だと気付いた。サイトをアップすると、すぐにフリーマーケットのスタッフから依頼が届く。日菜が祈ると雨が止み、スタッフは感謝して2万円を差し出した。
その後もサイトには次々に依頼が届き、日菜は帆高と共に仕事をこなした。日菜は狭い範囲の短い時間であったが、確実に空を晴れさせた。神宮外苑の花火大会からも依頼が届き、日菜は見事に空を晴れさせた。彼女は多くの人から感謝されることに対する充実感を帆高に語り、礼を述べた。一方、夏美は就職活動に励むが、どこからも快い返事は貰えていなかった。須賀は様々な会社に記事を売り込むが、芳しい返事は得られていなかった。夏美は須賀を誘い、晴れ女の取材に赴くことにした。
花火大会の写真が出回って依頼が殺到し、帆高は既に受けた仕事を済ませたら一時休業することを決めた。日菜は立花冨美という老女の依頼を受け、空を晴れさせた。冨美が晴れにしてほしいと頼んだのは、亡き夫の初盆のためだった。初盆の意味を知った日菜は、自分の母が亡くなったのも昨年だと話す。須賀と夏美は気象神社を訪れ、神主から天気の巫女について話を聞く。神主は2人に、「天気の巫女は天と人を結ぶ特別な存在だが、悲しい運命がある」と述べた。
刑事の安井と高井は帆高が木村に拳銃を向けている写真を入手し、捜索に乗り出していた。帆高は日菜が来週で18歳になることを思い出しプレゼントについて凪に相談した。凪が「指輪がいい」と助言したので、帆高は素直に従って指輪を購入した。晴れを望む最後の依頼人は須賀で、娘の萌花と公園で遊ぶためだった。帆高は須賀に娘がいること、夏美が姪であることを初めて知った。夏美は日菜に須賀が妻を亡くしていることを教えた後、気になっていることを話した。
凪は帆高に気を利かせ、日菜を送って行くよう勧めた。帆高は日菜と2人で歩きながら、指輪を渡そうとする。日菜は彼に何か明かそうとした瞬間、突風に見舞われた。雨粒に囲まれた彼女の体は高く浮き上がり、すぐに地上へ戻って来た。日菜は体の一部が透けるが、帆高は全く気付かなかった。日菜は帆高にアパートまで送ってもらい、1年前の出来事を話す。そして彼女は、ビルの鳥居をくぐった出来事がきっかけで晴れ女になったのだろうと述べた。
高井と佐々木巡査がアパートに来たので、日菜は帆高を隠れさせた。高井から帆高の写真を見せられた日菜は、何も知らないと嘘をついた。高井は帆高に話を聞きたいこと、家出少年で両親から行方不明者届が出ていることを語った。佐々木は日菜が子供だけで暮らしていることは問題だと説明し、翌日に児童相談所の人間と再訪することを告げた。高井と佐々木が去った後、帆高は須賀から電話で呼び出された。須賀は事務所にも刑事が来たこと、未成年者誘拐事件で警察が捜査していることを話し、紙幣を差し出した。彼は娘と会うために大事な時期なのだと告げ。もう事務所には来ないよう帆高に頼んだ。
帆高がアパートへ戻ると、日菜は凪と逃げるための荷作りを始めていた。「実家に戻った方がいいよ。ちゃんと帰る場所があるんだから」と日菜が言うと、帆高は「俺、帰らないよ。一緒に逃げよう」と告げる。東京に大雨特別警報が発令される中で帆高たちは宿泊場所を探すが、ホテルを利用するには身分証の提示が必要だった。季節外れの雪が降り出す中、3人は警官に見つかった。日菜が祈ると、停車していたトラックに雷が落ちた。警官が驚いている隙に、3人は逃走した。
帆高たちは身分証を必要としないラブホテルにチェックインし、3人の時間を楽しく過ごした。凪が眠りに就いた後、帆高は日菜に指輪をプレゼントした。日菜は夏美から「晴れ女が人柱になって消えることで、狂った天気が元に戻る」と聞いたことを話すが、帆高は信じない。そこで日菜は、自分の体が消えつつあることを彼に見せた。就寝した帆高が目を覚ますと、日菜は姿を消していた。帆高たちの居場所を突き止めた高井と佐々木は、部屋に乗り込んだ。佐々木は凪を保護し、帆高は高井に連行される。外が晴れているのを知った帆高は、日菜が人柱になったのだと確信した…。原作・脚本・監督は新海誠、製作は市川南&川口典孝、企画・プロデュースは川村元気、エグゼクティブプロデューサーは古澤佳寛、プロデューサーは岡村和佳菜&伊藤絹恵、キャラクターデザインは田中将賀、キャラクターデザイン・作画監督は田村篤、美術監督は滝口比呂志、音響監督は山田陽、音響効果は森川永子、絵コンテは新海誠、演出は徳野悠我&居村健治、色彩設計は三木陽子、CGチーフは竹内良貴、撮影監督は津田涼介、編集は新海誠、音楽プロデューサーは成川沙世子、音楽はRADWIMPS。
声の出演は醍醐虎汰朗、森七菜、小栗旬、倍賞千恵子、本田翼、吉柳咲良、平泉成、梶裕貴、野沢雅子、柴田秀勝、神木隆之介、上白石萌音、成田凌、悠木碧、谷花音、島本須美、香月萌衣、木村良平、花澤香菜、佐倉綾音、市ノ瀬加那、荒木健太郎、與猶茉穂、桑原彰、武田祐介、羽鳥慎一、ルナ、石橋武宜、岩本計介、川添佳帆、原直子、藍川和伽、生田ひかる、井上愛海、内野明音、梅田修一朗、江越美紀、越後屋コースケ、大南悠、岡美里、金田愛、川東冬芽、観世智顕、菊池康弘、北原沙弥香、倉冨祐一郎、合田慎二郎、神山裕紀、小薬英斗、佐伯伊織、酒井有夏、坂本あすみ、佐々木祐介、新祐樹、鷲見昴大、関根有咲、関根すみれ、武田太一、高橋伸也、田島章寛、田端佑佳奈、虎島貴明、中村源太、中務貴幸、新田大地、丹羽正人、根来彰子、長谷川暖、塙真奈美、坂泰斗、広瀬さや、深見航也、福原かつみ、前迫有里紗、松川裕輝、松原知也、南来華、武蔵真之介、本山かおり、吉川薫、吉田丈一郎、吉田優奈、ラヴェルヌ知輝ら。
『君の名は。』の新海誠が原作・脚本・監督を務め、再び川村元気やRADWIMPSと組んだ長編アニメーション映画。
帆高の声を醍醐虎汰朗、陽菜を森七菜、須賀を小栗旬、冨美を倍賞千恵子、夏美を本田翼、凪を吉柳咲良、安井を平泉成、高井を梶裕貴、占いおババを野沢雅子、神主を柴田秀勝が担当している。
前作『君の名は。』で瀧の声を担当した神木隆之介、三葉役の上白石萌音、克彦役の成田凌、早耶香役の悠木碧、四葉役の谷花音が、同じ役でゲスト出演している。多くの企業に出資してもらっているようで、日清のカップヌードルやマクドナルド、サントリーのボスやカルビーのポテトチップスなどのプロダクト・プレイスメントが次から次へと出てくる。
広告表記を消化するためだけに用意されているとしか思えないシーンもある。
映像の中に何気なく商品や企業名を紛れ込ませるのではなく、「それを宣伝していますよ」ってのが露骨に分かるようなケースも少なくない。
『ウェインズ・ワールド2』で茶化されていたようなバカバカしい形で、堂々と宣伝しているわけだ。帆高はフェリーで「激しい雨が予想されている」というアナウンスを耳にすると、急いで甲板へ向かう。そして空を見上げ、大雨が降ると浮かれる。
でも、なぜ彼が大雨を喜ぶのかサッパリ分からない。傘も持っていないんだから、雨が降るのは何の得も無いだろうに。
その雨は単なる「大雨」で終わらず、巨大な水の塊みたいな物が甲板に「ドンッ」ってな感じで落下する。
でも、それが異常な現象として話題になるとか、帆高や須賀が「今のは何だったのか」と不思議に思うとか、そんなことは全く無い。巨大な水の塊が落下したせいでフェリーは大きく傾き、帆高は転倒して足を滑らせる。
すると須賀が腕を掴んで助けるのだが、どうして彼が近くにいたのかは謎。大雨の予想で他には誰もいなかったのに、須賀も大雨が嬉しかったのか。
あと、フェリーが大きく傾いて帆高が転倒しているぐらいなんだから、その近くにいた須賀も普通に立っていることさえ難しいはずでしょ。
で、助けた途端に空は一気に晴れるが、これまた「異常な現象」として取り上げられることは無い。帆高は困ったら何でもかんでもスマホを使い、ネットに書き込んで答えを得ようとするうな奴だ。それなのに、東京で生き抜くための計画や所持金の支出については全て手帳に細かく書いている。
そういうのはスマホのメモ機能を使わないのね。
そんな帆高はゴミ箱にあった包みを見つけた時、なぜかその場で中身を確認せずにマクドナルドへ持ち込む。
拳銃を見つけた彼はオモチャだと考えるが、なぜか捨てずに持ち歩く。帆高は所持金が少ないので節約しようとしており、だからマクドナルドでハンバーガーを注文することも出来ない。でもマクドナルドには入って、そこで飲み物だけは毎日注文している。
でも自販機の方が安く済むだろ。
っていうか水分を摂取するだけなら、公園の水飲み場にでも行けばいいわけで。
「節約しなきゃ」と言っているのに、金の使い方が変だわ。「帆高はバカだから良く分かっていない」とでも理解すればいいのかね。帆高は夏美と会うと、須賀の愛人だと思い込む。でも、須賀が結婚しているかどうかも知らないのに、なぜ「恋人」ではなく「愛人」だと思うのか。
木村は陽菜をスカウトしているが、どう見ても18歳未満なのに、そんな危ない橋を渡る必要性は全く無いので不可解。
帆高は木村に殴られると鞄から拳銃を取り出すが、「ずっと持ち歩いていたのかよ」とツッコミを入れたくなる。
刑事の安井と高井は帆高が拳銃を向けている写真を木村に見せているが、その写真は誰が撮ったのか。そして安井たちは、どうやって手に入れたのか。
などなど、色々と疑問点は多い。ハリウッドには古くから「白人の救世主」と呼ばれるパターンがあるが、日本には私が勝手に「美少女の救世主」と呼んでいるパターンが存在する。
「冴えない男性主人公の前に美少女が現れ、無条件に愛し、励まし、導いてくれる」というパターンである。
これは少年漫画で使われてきたパターンで、やがてアニメや実写の世界にも波及するようになった。
この映画も(っていうか新海誠作品の全てと言っていいかもしれない)、そんな少年漫画のパターンを使っている。「美少女の救世主」を用いた作品は、何しろ少年漫画から始まったフォーマットなので、主人公は最後まで美少女に頼ったまままで終わるわけではない。
基本的には「美少女のピンチを救うために頑張り、人間的に成長する」というドラマが付随する。
ただし新海誠作品の場合、主人公は最後までヘタレだったり身勝手だったりして、成長の度合いは少ない。
「一応は美少女を救うために奔走するけど、結局は庇護される存在のまま」というのが、お約束のようになっている。須賀と夏美は晴れ女について調査し、気象神社で神主から「天気の巫女」について詳しい話を聞く。だけど、そういうのは全く要らない。
陽菜の不思議な能力に関しては、もっとフワッとした手触りでいいのよ。これがSFなら科学的なディティールがあった方が望ましいかもしれないけど、ファンタジーなんだし。
背景や根拠を説明すればするほど神秘性が薄れるし、作品の雰囲気も壊れるよ。
そりゃあ「伝承」みたいなトコでの裏付けがあった方が深みが出る類の作品もあるけど、この映画は違うからね。帆高の誇張した態度が、ことごとく上滑りしている。
例えば、事務所で昼寝している夏美に欲情して顔を近付け、「いや、ダメだろ、人として」と独り言を口にするシーン。
例えば、陽菜のアパートを訪れて玄関をノックし、「これってもしかして、俺、女子の部屋、初訪問」とドギマギするシーン。
例えば、「姉ちゃんが好きなんだろ?」と凪に指摘され、顔を真っ赤にして「いや、好きとかじゃなくて。いや、もしかして俺、そうなのか」と焦るシーン。
アニメだと誇張した表現ってのは珍しくもないし、そういうのが常にダメってわけじゃない。ただ、この映画では、ことごとく陳腐な印象になっている。須賀は帆高に実家へ戻るよう諭す時、「もう大人になれよ、少年」と言う。その言葉を「物分かりのいい人間になれ」という風に、かなりネガティヴな意味で捉えることも出来るだろう。
しかし帆高に関しては、「ホントに少しは大人になれよな」と説教したくなる。
子供であることを、「後先考えずに行動できる純粋さ」とか「がむしゃらに突っ走れる情熱」といったプラスの面で肯定できる部分もあるだろう。
しかし帆高は周囲に迷惑を掛けることへの無神経さや、責任や覚悟に対する自覚の無さといったマイナスがデカすぎる。日菜が「実家に戻った方がいいよ。ちゃんと帰る場所があるんだから」と言った時、帆高は「俺、帰らないよ。一緒に逃げよう」と告げる。
しかし、それは日菜を助けるためでもなければ、愛の情熱でもない。ただ自分が帰りたくないだけだ。
それに彼は警察から追われている身なので、一緒にいたら日菜が見つかるリスクは余計に高くなるかもしれない。そういうことを、彼は全く考えていない。
帆高は「まだ子供だから未熟」ってことじゃなくて、シンプルに人間として愚かしいのよね。そこを若さゆえの過ちとして、好意的に受け取ることが難しいのよ。帆高の誇張した態度について前述したが、それとは違う問題も彼は抱えている。
日菜から「晴れ女が人柱になって消えることで、狂った天気が元に戻る」と言われた時の帆高の反応は、誇張した態度が云々ってことではなくシンプルに間違えている。彼はすぐに泣き出すが、それだと最初から「日菜が人柱として消えてしまうかも」と疑念を抱いていたかのようだ。
でも彼は、そんなこと全く思っていなかった。だったら、まずは「透明化しつつある体を見て驚く」という反応があり、そこから「ってことは日菜の言葉は真実だ」という理解があり、それを経て「彼女が消えることへの悲しみ」に入るべきでしょ。
途中の手順を思い切りスッ飛ばしちゃってるのよ。終盤、帆高は人柱になろうとする日菜を助けに行き、「もう二度と晴れなくたっていい。青空よりも、俺は日菜がいい。天気なんて狂ったままでいい」と叫ぶ。万人や世界よりも、日菜を選ぶわけだ。
そんな行動の是非については、たぶん監督も賛否両論あることは分かった上で描いているんだろうから、それは構わない。問題は、そこに大罪を背負う覚悟が無いってことだ。
帆高は逡巡も苦悩も抱かず、日菜を助けるために真っ直ぐに突き進む。周囲の大人に擁護のための言葉を喋らせているが、帆高の行動によって世界中に雨が降り続き、多くの犠牲が出ることは事実なのだ。
あと、帆高は日菜を晴れ女にした罪悪感から逃れるために助けたようにも見えちゃうし。(観賞日:2021年8月24日)