『天国から来た男たち』:2001、日本

三友物産に勤務する早坂幸平は、会社から大統領候補に賄賂を渡す任務を受けてフィリピンに出張した。しかし彼は麻薬不法所持の罪で逮捕され、刑務所に投獄される。刑務所では、日本企業を騙した詐欺師ブランドゥが悠々自適の生活を送っていた。
刑務所の日本人房には、刑務所長と共謀して金を稼いでいる吉田克明、若いフィリピーナと結婚した海野俊幸、ロリコンの医者・坂本淳、シャブ中のフィリピン太郎といった面々がいた。早坂は、この刑務所が金さえあれば何でも出来る場所だと知る。
ある日、早坂は吉田からビジネスの手伝いを頼まれる。吉田の仕事に同行する際は、簡単に刑務所から出ることも出来た。日本の雑誌を見た早坂は、2億3000万円を横領した銀行員の三島奈美恵が女子房にいることに気付いた。早坂は奈美恵から、吉田のビジネスが麻薬の運び屋だと聞かされ、手伝いを断った。
早坂は臓器売買の組織に殺されそうになり、ビジネスの手伝いをするという約束で吉田に助けてもらう。吉田は早坂に、「外の奴らに、お前の気持ちは分からない」と告げる。早坂は、信頼していた妻・美由紀と会社の後輩・杉森弘治の裏切りを知った。
裁判で無期懲役を言い渡された早坂は、吉田や海野の麻薬ビジネスを手伝う。だが、詐欺師だった吉田を追ってヤクザの藪元忠らが現れ、早坂も巻き込まれることになる。早坂と吉田は他の日本人達と共に刑務所から逃亡し、小さな村に身を隠すのだが…。

監督は三池崇史、原作は林洋司、脚本は橋本以蔵&江良至、製作は高野秀夫&上松道夫、企画は豊忠雄&篠正幸&木村純一&中野正豊&伊藤秀裕、製作統括は川瀬友弘&猿川直人&仁平幸男&早河洋、企画・プロデューサーは林由恵、プロデューサーは安村重幸&島袋憲一郎&古賀宗岳&飛河三義、エクゼクティブ・プロデューサーは浜崎正信、撮影監督は山本英夫、編集は島村泰司、録音は小原善哉、美術は尾関龍生、音楽は吉川晃司、音楽協力は小西智行。

出演は吉川晃司、山崎努、大塚寧々、遠藤憲一、翁華栄、水橋研二、及川麻衣、金山一彦、北見敏之、竹中直人、及川光博、モンソール・デル・ロザリオ、Pocholo Montes、King Gutorez、Less Lapid、Kaye Tuano、Joey Galve、Levy Ignacio、迫英雄、宮本聖也、庄島毅ら。


林洋司の同名小説を基にした作品。
早坂を吉川晃司、吉田を山崎努、奈美恵を大塚寧々、海野を遠藤憲一、坂本を翁華栄、フィリピン太郎を水橋研二、美由紀を及川麻衣、杉森を金山一彦、藪元を北見敏之が演じている。また、早坂が出所の手助けをしてくれそうな人々と会うシーンで、竹中直人と及川光博が友情出演している。

主人公の早坂は、冴えない平凡なサラリーマンである。エキセントリックとかクレイジーとか、そういう要素からは程遠いキャラクターだから、弾けようがない。途中でクレイジーに変貌して暴れまくったりするのかというと、そうではない。だったら、そんな冴えないビジネスマン役に吉川晃司をキャスティングする意味が無いと思う。
監督も冴えない役を演じる吉川晃司を主役として扱い続けるのが苦しかったのか、終盤に待っている唯一とも言える見せ場をかっさらって行くのは、遠藤憲一なのである。エンケンがクレイジーな存在感を発揮している間、吉川は傍観しているだけだ。

大塚寧々は要らないだろう。
いや、彼女が、というよりも奈美恵というキャラクターが要らないと感じる。
お色気要員としての女性は必要だろうが、主要キャラクターとしての女性は必要無い。
この映画にとって、共に行動する女は邪魔者でしかない。

この映画のメガホンを執ったのは、三池崇史監督である。
三池監督には、『DEAD OR ALIVE/犯罪者』という怪作にして大傑作がある。
あの映画は、話としては完全に破綻していた。見事なぐらいデタラメ極まりない、メチャクチャで壊れた映画だったが、しかし捻じれたパワー、狂ったエナジー、圧倒的なハイテンションがあった。ぶっ飛んだキャラクター、ぶっ飛んだ世界が弾けまくっていたから、『DOA』は破綻していても気持ち良く乗り切れた。
この映画も、破綻している。しかし、それを乗り切るだけのキャラクターや世界観の弾けっぷり、テンションの高さや狂ったパワーを感じないのだ。なぜなら、ある意味では真っ当な作り方をしている正攻法の映画だからだ。

三池監督が常に『DOA』のようなノリの映画を作る必要は無いし、そんなことをしていたら短命で燃え尽きてしまうだろう。だから、真っ当な映画を作るのは構わない。しかし、にも関わらず破綻してしまったら、それは冴えない映画だと言わざるを得ない。もちろん、シナリオの良し悪しに左右されてしまうというコトもあるだろうけれど。
普通ではない舞台設定、普通ではないキャラクター設定は用意されている。しかし、クレイジーなパワーは伝わって来ない。とにかく画面から元気や活力が伝わって来ないのが、致命的な問題だ。だから、「普通に作った映画がパッとしない」ということになる。それなりのオチは用意されているのだが、やはり冴えないなあという印象で終わる。

 

*ポンコツ映画愛護協会