『チーム・バチスタの栄光』:2008、日本

東城大学医学部付属病院の不定愁訴外来で働く田口公子は、上司の有働喜三郎教授から、院長・高階権太の元へ行くよう頼まれた。有働は 高階から頼み事をされたのだが、翌日から銀婚式の世界一周旅行へ出掛けるため、代理を立てたのだ。田口が院長室を訪れると、そこに 第一外科助教授の桐生恭一がやって来た。高階の依頼には、彼も関わっていた。
高階はバチスタ手術の説明から始めた。バチスタ手術は難易度が高く、成功率は60パーセントだ。しかし天才外科医の桐生は着任して以来 、26例も連続して成功させていた。ところが最近、3例も立て続けに失敗を重ねてしまった。そこで原因を解明してほしいというのだ。 バチスタ手術について何も知らない田口は断ろうとするが、桐生は「専門家じゃないからこそ、お願いしたい」と頼む。今回の依頼は、彼 が持ち掛けたことだった。
田口は、桐生を取り上げたドキュメンタリー映像を見た。桐生は「チーム・バチスタ」と称されるメンバーを率いて、手術に当たっていた。 第一助手の垣谷雄次、第二助手の酒井利樹、麻酔医の氷室貢一郎、看護師の星野響子、臨床工学技士の羽場貴之、それに桐生の義弟である 病理医・鳴海涼という面々だ。ただし星野は結婚退職し、現在は大友直美に交代している。
田口はチーム・バチスタのメンバーと面会し、一人ずつ話を聞いていく。そんな中、病院に西アフリカの少年兵アガピ・アルノイドが 運び込まれてきた。政府軍に撃たれて国境無き医師団が診察したところ、彼には重い拡張型心筋症が発見された。アメリカが受け入れを 拒否したため、チーム・バチスタが手術を担当することになったのだ。田口が立ち会う中、少年兵の手術は成功に終わった。外科教授の 黒崎誠一郎は、まるで自分の手柄のように記者会見を行った。
田口は、薬品会社とのソフトボールの試合に投手として参加した。そこへ見知らぬ男が現れ、薬品会社チームの代打に立った。田口が球を 投じると、男はホームランを放った。翌日、その男は不定愁訴外来に現れた。彼は厚生労働省大臣官房付・白鳥圭輔で、院長から調査を 依頼されたのだと語った。彼は「一連の術死は殺人だ。チーム・バチスタの中に殺人犯がいる」と断言した。
白鳥は田口の報告書を「夏休みの絵日記だ」と扱き下ろし、聞き取り調査をやり直すと言い出した。彼はチーム・バチスタの面々を挑発 して怒らせ、その反応を観察した。田口は、翌日にバチスタ手術を受ける患者・小倉勇吉に、氷室がエピドラという作業を行うのを見学 した。麻酔薬を入れるカテーテルを事前に通しておいて、手術が始まってから注入していくのだという。
小倉が発作を起こしたため、その日の内に緊急手術が行われることになった。調査のためフロリダへ行っていた白鳥は、日本に戻ってきた ところだった。白鳥は田口から緊急手術のことを電話で聞かされ、急いで病院へ向かう。小倉の手術は失敗に終わった。その直後、白鳥が 手術室に乗り込んで来た。彼は「オートプシー・イメージングをやる」と言い、遺体のMRIを撮った。
深夜、田口は白鳥が今までのバチスタ手術の映像をチェックしている現場を目撃した。白鳥はフロリダへ行き、桐生と鳴海が勤務していた 心臓疾患専門病院を訪れていた。彼は田口に、「鳴海の手の傷は、桐生が手術中に誤ってメスで付けたものだ。そのせいで執刀医としての 将来を絶たれた鳴海は、桐生を恨んでいるはず」と語る。田口は「桐生先生は鳴海さんを全面的に信頼している。手術に挑む時も、目を 閉じて鳴海さんに委ねている」と反論する。手術の映像を見た田口は、あることに気付いた。
田口と白鳥は、桐生、鳴海、高階の3人に集まってもらった。そして2人は、桐生が視野欠損を患っており、視界の下半分が見えないこと を指摘した。白鳥は「どんな理由があろうと、貴方はメスを持つべきじゃなかった」と厳しく言い放った。桐生はチームのメンバーに 視野欠損を明かし、翌日の手術を垣谷に託してサポートに回った。垣谷は緊張の中で執刀し、無事に手術を成功させた。そこに白鳥が現れ、 「小倉さんの死因が分かりましたよ」と告げた…。

監督は中村義洋、原作は海堂尊、脚本は斉藤ひろし&蒔田光治、製作は加藤嘉一&島谷能成&劔重徹&當麻佳成&細野義朗&林尚樹& 松田英紀&溝口博史&後藤尚雄&仲尾雅至、プロデューサーは佐倉寛二郎&山内章弘、エグゼクティブプロデューサーは間瀬泰宏、企画は 市川南、撮影は佐々木原保志、編集は阿部亙英、録音は小野寺修、照明は祷宮信、美術は部谷京子、音楽は佐藤直紀、 音楽スーパーバイザーは桑波田景信、主題歌はEXILE『You’re my sunshine』。
出演は竹内結子、阿部寛、吉川晃司、池内博之、玉山鉄二、井川遥、田口浩正、田中直樹、佐野史郎、國村隼、野際陽子、平泉成、 上田耕一、ベンガル、山口良一、上月左知子、並樹史朗、野波麻帆、森下能幸、山中崇、小林聡、橋本亜紀、恩田括、アミル、久保田智子、 七咲友梨、根本美緒、倉光聖、青木勝、もういくや、山瀬秀雄、小野花梨、山田将之ら。


現役の医師である作家・海堂尊のデビュー作で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した同名小説を基にした作品。
原作では男性だった田口を、映画では女性に変更している。
田口を竹内結子、白鳥を阿部寛、桐生を吉川晃司、鳴海を池内博之、酒井を玉山鉄二、 大友を井川遥、羽場を田口浩正、氷室を田中直樹、垣谷を佐野史郎、高階権太を國村隼、不定愁訴外来の看護師・藤原を野際陽子、黒崎を 平泉成、有働をベンガル、小倉を山口良一が演じている。

中盤、氷室がエピドラをやった後、小倉が発作を起こしたために緊急手術を行うという展開がある。
この場面で、氷室が容疑者として浮かび上がる(劇中で田口や白鳥が疑うのではなく、こっちが見ていて疑わしいと感じる)。
で、それだと配役がココリコ田中ってのはマズいよなあと思っていたら、そのまんま、何の捻りも無く彼が犯人という答えが待って いた。

何しろ氷室以外に、「こいつは怪しい」と匂わせるような予兆、ミスリードとしての仕掛けは全く無いんだよな。
みんな不審な行動があり、それぞれに怪しいというのではなくて、その真逆。誰も殺害の動機が無くて、誰も不審な行動を取らない。
白鳥が登場して、数名に対しては動機を示唆するが、「疑わしい」と思わせるほどのモノではない。
時間が足りなかったのか、チーム・バチスタのキャラ描写が薄くて、怪しいか否かという以前に、羽場などは「ああ、いたっけ」という 程度の存在感。

「どの容疑者にも動機や不審な点が全く見当たらない」ということが、逆にミステリーとしての面白味に繋がっているわけではなく、単純 に推理劇として薄いと感じさせるだけ。
医療ウンチクとか、病院の裏側の暴露とか、そういった専門的情報の多さで圧倒し、ミステリーとしての薄さを補う、もしくは誤魔化すと いう戦略を取っている様子も見られない。
とにかく阿部寛という俳優のアクの強さと、白鳥というキャラクターの強さで、引っ張っていこうという仕上がりになっている。
田口は、ほとんど何もしていない。
唯一、桐生の視力について気付くのみ。それだって、白鳥も気付きそうな感じなんだよな。
「天然だけど、事件の解決に大きく貢献する」という印象は受けない。
白鳥だけでも解決できたんじゃないかと思ってしまう。

謎解きへの流れは、ほとんど無い。
ヒントを集めて、パズルを組み立てていくような作業は見られない。
MRIで撮ってあった写真が終盤に登場し、それだけで、あっさりと解決に至る。
その謎解きに、田口は全く関与していない。
犯人が用意してあった薬品を内緒で交換し、犯行を防ぐという役目は果たしているが、それは白鳥のフォローをしているに過ぎない。
犯人が判明しても、「あの道具は、そんな風に使われていたのか」とか、「あの時の行動は、そういう意味だったのか」とか、そういう 衝撃は無い。

『このミステリーがすごい!』大賞を映画化したのに、なぜ、こんなに謎解きとしての面白さが薄い仕上がりになっているんだろうか。
そういうのを期待したのが間違いだったということだろうか。
小ぢんまりとまとまりすぎているし、やけに淡白だし、まあテレビの2時間ドラマという感じかな。
あとソフトボールの場面は、絶対に要らないでしょ。

(観賞日:2009年3月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会