『たたら侍』:2017、日本

伍介が幼い頃、村は侍の一団に襲撃された。すぐに尼子一族が駆け付け、その集団と激しい争いを繰り広げた。伍介は目の前で母親を殺害され、自らも侍に狙われる。そこへ少年の尼子真之介が現れ、敵を始末した。青年へと成長した伍介は、たたら吹きの仕事を手伝っていた。彼の村では、砂鉄と木炭で真砂土の炉から鉄を作るたたらが古来から伝わっている。その秘伝は、村下(むらげ)と呼ばれる長のみに受け継がれる。伍介は、その跡継ぎとして生まれ育ってきた。
長く村下を務めてきた喜介が最後の仕事を終え、息子である弥介が後を継いだ。村長の長次郎は鉄を受け取り、長男の平次郎は従者たちを連れて刀匠の元へ届けに行く。伍介は老人の豊衛門から、「いずれお前も村下を継ぐ身。技を受け継ぐ父親を良く見ておけ」と告げられる。伍介は長次郎の次男である新平たちと共に、平次郎から神社の境内で木刀を使った剣術の稽古を受けていた。稽古を終えた一行は、村へ戻った真之介と遭遇した。真之介はお京という女を連れていた。
弥介はたたら吹きの仕事に集中し、伍介は村人たちと共に手伝う。伍介の許嫁であるお國は祖母の三洲穂から、「災いは思いも掛けない形で迫ってくる。天には逆らえないのじゃよ」と聞かされる。積み荷が襲われたという知らせを受けた伍介は、仕事を中断して村を飛び出す。彼が豊衛門の孫である新右衛門たちと共に現場へ行くと、平次郎がならず者2人組に襲われていた。2人組は木刀で立ち向かう平次郎を斬り捨て、積み荷を奪って逃亡した。村に戻った伍介は、弥介から「二度と離れるな」と注意された。伍介は真之介に、「村下を継いで、一生この村で生きていくのか。このままでいいんだろうか」と漏らした。
近江の金物問屋である惣兵衛が村を訪れ、織田信長の鉄砲隊のために鉄を譲ってほしいと長次郎に持ち掛けた。しかし長次郎は、これまでの付き合いだけで手一杯だと告げて断った。惣兵衛は若者たちの会話を聞き、信長が身分を度外視して家来にすること、天下を取ると評判になっていることを知った。彼は村を去る惣兵衛に声を掛け、「村を強くするにはどうすればいいか」と尋ねた。惣兵衛が「この世の広さを自分で確かめることから始めれば、おのずと答えは出ましょう」と言うと、伍介は「村を出て侍になりたい」と述べた。惣兵衛は適任の人物を紹介すると持ち掛け、信長の領地に入るための船を手配すると約束した。
伍介は新平とお國に別れを告げ、村を出て船に乗った。敦賀の港に着いた彼は惣兵衛と合流し、与平という商人を紹介された。伍介は村から持ち出した鉄を、惣兵衛に渡した。与平は鉄を見て、伍介のために刀を用意すると告げる。彼は遠慮する伍介に、いずれ自分にも商売をさせてもらえばいいのだと告げた。与平は刀鍛冶の宗義に会い、伍介のための刀を作らせた。武器を運ぶ与平の一団に、伍介は同行した。与平は彼に、「この戦乱の世を切り開くのは、切り開くのは刀ではございません」と告げた。
与平は蜂須賀軍の雑兵頭である井上辰之進に武器を引き渡し、伍介を紹介した。辰之進は伍介を受け入れ、家来の仙吉に世話係を任せた。飯炊きを指示された伍介に、辰之進は「兵糧係がいなくては戦にならん。侍になりたければ、下働きをしっかり務めろ」と告げた。仙吉は伍介に「本当は戦なんかしたくねえ」と明かし、信長軍に入れば給金が貰えると聞いて飛び込んだこと、立身出世も夢じゃないと思ったが雑兵のままであることを語った。
仙吉から「手柄を立てて出世してえか」と問われた伍介は、「はい」と答える。仙吉は彼に、「人間、死んじまったらおしまいだ。信長様が天下を取れば、戦は無くなる。そしたら出世は出来ねえが、その方がいいなあ。田んぼや畑を幾ら耕したって、戦さ場になれば滅茶苦茶にされてしまうからな」と語った。陣地に敵軍が攻めて来たので、辰之進たちが応戦した。物陰に避難した伍介が出て行こうとすると、辰之進は「手出し無用」と叫んだ。それでも敵の前に飛び出した伍介だが、何も出来ずに倒れ込んだ。仙吉は鉄砲で敵を撃ち殺し、伍介を連れて戦場から逃走した。
伍介と仙吉は逃げる途中、盗賊が民家を襲って食糧を奪う様子を目撃した。仙吉は伍介に、「もう懲り懲りだ。国へ帰る」と告げた。彼と別れた伍介は、森で死体を探る一団に見つかって逃げ出した。翌日、彼は戦場を通り掛かり、大勢の死体の中に仙吉を見つけた。疲れた彼が街道で佇んでいると、お京が現れた。「これから、どうなさるおつもりですか」と問われた伍介は「村が心配だ」と言うが、帰郷を躊躇していることを吐露した。お京は彼に、「人はいつか死ぬもの。でも貴方は生きている。定めを受け止めなされ」と説いた。
伍介が村へ戻ると、新平は「よくぞ生きて帰ってきた」と喜んだ。源蔵のように「どのツラ下げて戻って来た」と批判する者もおり、伍介は「甘かった。ワシは何も出来んかった。村には帰れないと思った。だけど帰る場所が、ここしか無い」と吐露した。長次郎から「よく帰って来た」と言われ、彼は泣いた。伍介が弥介の仕事を手伝っていると、与平が村へ来て「約束通り参りました」と告げた。彼は伍介や新平たちに、「織田軍が連戦連勝、さらなる鉄を求めて、この村に攻め込んできます」と告げた。「村を守るためには、どうすれば?」と伍介が訊くと彼は持参した鉄砲を見せ、村の鉄で同じ物を作るよう勧めた。
新平は「そんな物で村は守れん」と拒否するが、鉄砲の威力を見た伍介は「これがあれば村を守れる」と確信した。彼は賛同した仲間たちと共に、砦を築き始めた。伍介は鉄砲のために鉄を作りたいと考えるが、弥介は「今まで通りだ。俺たちはただ、鋼を作る。それだけだ」と述べた。新平から「戦に皆を巻き込むな」と詰め寄られた伍介は、「皆を守るためだ」と反論した。喜介は静かに「憎しみの力からは何も生まれん」と諭すが、伍介は耳を貸さなかった。新平は剣術の稽古で神社へ赴いた帰り、2人の男たちに襲われた。そこへ真之助が駆け付けると、男たちは逃亡した。そのまま新平は村に戻らず、姿を消した。
しばらくして斥候らしき3人組が村に近付いた時、その中に新平の姿があった。後日、密かに村へ戻った彼は伍介と密会し、「目を覚ませ。騙されてる」と告げた。彼は真之助の元にいることを明かし、与平が来ると気付かれないよう去った。しばらくして、与平は腕に覚えのある猛者たちを村へ呼び寄せた。伍介は困惑するが、与平は村を守るためだと説明した。真之助の使者たちが村に来ると、与平は問答無用で発砲させた。1人が死亡し、1人が逃亡した。伍介が抗議すると、与平は「貴方が望んだことですよ」と告げた…。

原作・監督・脚本は錦織良成、エグゼクティブプロデューサーはEXILE HIRO、統括プロデューサーは森広貴、製作は森雅貴&熊谷正寿&寺島ヨシキ&青山理&坂本健&中江康人&飯田雅裕、プロデューサーは川崎隆&清水洋一&鈴木大介、Co.プロデューサーは安川唯史、アソシエイトプロデューサーは藤井健太郎、美術監督は池谷仙克、撮影は佐光朗、照明は吉角荘介、録音は西岡正己、編集は日下部元孝、アクションディレクターは飯塚吉夫、音楽は長岡成貢、音楽プロデューサーは池畑仲人。
主題歌『天音(アマオト)』作詞:EXILE ATSUSHI、作曲・編曲:久石譲、歌:EXILE ATSUSHI。
出演は青柳翔、小林直己、AKIRA、津川雅彦、奈良岡朋子、笹野高史、山本圭、豊原功補、田畑智子、石井杏奈、早乙女太一、高橋長英、甲本雅裕、宮崎美子、品川徹、でんでん、氏家恵、安部康二郎、菅田俊、音尾琢真、中村嘉葎雄、佐野史郎、大越弥生、澤純子、武田敏彦、紀伊修平、金子太郎、白神允、山科ノロ、伊藤龍治、佑々木優、古川康、真辺幸星、樋口朋弘、小林こずえ、新野アコヤ、佐々木しほ、安田マユミ、工藤俊二、山沖純、藤原基樹、シゲル、古谷徳隆、飯塚古夫、知念輝、金子海斗、須田琉雅、川崎拓斗、南岐佐ら。


『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』『わさお』の錦織良成が原作&監督&脚本を務めた作品。
LDH JAPANの創業者であるEXILE HIROが、初めてエグゼクティブプロデューサーを務めている。
ちなみに錦織良成監督、伍介役の青柳翔、新平役の小林直己、真之助役のAKIRA、お國役の石井杏奈、辰之進役の早乙女太一がLDH JAPANの所属。
他に、与平を津川雅彦、三洲穂を奈良岡朋子、惣兵衛を笹野高史、長次郎を山本圭、平次郎を豊原功補、お京を田畑智子、喜介を高橋長英、弥介を甲本雅裕、伍介の母の八重を宮崎美子、豊衛門を品川徹、源蔵をでんでん、梢を氏家恵、新右衛門を安部康二郎、佐吉を菅田俊、仙吉を音尾琢真が演じている。
他に、宗義役で中村嘉葎雄、徳川家康の家臣役で佐野史郎が出演している(佐野はエンドロールの途中で1カットのみ出演)。

この映画は2017年5月20日に封切られたが、熊吉(源蔵の息子)という役で出演していた橋爪遼が6月2日に覚醒剤取締法違反で逮捕される出来事が起きた。
これを受けて製作委員会は、上映の終了を決定した。後に橋爪遼の出演シーンを全てカットして再編集し、上映館数を大幅に減らして再上映された。
全編35mmフィルム撮影だし、オープンセットを使った出雲たたら村というテーマパークまで開設していたし、LDH JAPANとしては相当に力の入った作品だったはず。
それが想定外の事態で、大きなダメージを食らう羽目になったわけだ。

錦織良成はLDH JAPANと組む前に、出身地である島根県を舞台にした『白い船』『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』『うん、何?』という島根3部作を撮っている。そして前作『渾身 KON-SHIN』も、やはり島根を舞台にしたいわゆる「ご当地映画」だ。
今回の作品も、島根県に伝わる「たたら製鉄」を題材としたご当地映画として企画されていたはずだ。
ところがEXILE HIROが積極的に関与し、LDH JAPANか製作委員会に主導的な立場で参加したことによって、妙な方向へ転がってしまったのではないかと思われる。
簡単に言ってしまえば、「たたら製鉄」を題材としたご当地映画としての方向性と、EXILEファミリーが出演する派手な娯楽映画としての味付けが、まるで融合していない作品だ。

冒頭シーンは、どこ対どこの戦いなのかが分からない。
後から軍勢が来る時には「尼子」という言葉が聞こえるが、最初の連中は不明だ。尼子が駆け付ける理由も不明だし。
あと、そこで「伍介が目の前で母親を殺される」という出来事が起きるのなら、「母を殺した連中への復讐」という流れになっても良さそうなモノだが、そういうことは無いのね。
彼にとって「幼少期に母が殺された」ってのは重要な出来事のはずだが、実はそこをカットしても大きな影響は無いのだ。

冒頭で戦いが描かれた後、続いて伍介のナレーションが入り、「子供の頃から、強さは力だと思っていた。しかし何か、本当の強さとは何かを、ワシは知らなかった」と語ってタイトルが出る。
現在の村の様子が写し出されると、「ワシらの生業は、砂鉄と木炭で真砂土の炉から鉄を生み出すこと。古来から村に伝わる鉄作りの秘伝たたらは、村下とよばれる長のみに受け継がれる究極の技。ワシは、その跡取りとして産まれた。だが、その頃のワシは、村下を継ぐという本当の意味など知る由も無かった」という語りが入る。
主人公の語りで説明するのは不細工だが、そういうやり方を選んだ以上、ずっと貫き通すべきだろう。
だが、そこを過ぎると、ナレーションは全く入らない。
だったら最初からナレーションなんか使わず、たたらの解説だけは文字で表示すりゃいいんじゃないかと。

伍介は「村下を継ぐという本当の意味など知る由も無かった」と語っているが、たたら吹きの仕事に不満を感じているとか、疑問を抱いているとか、そういう様子は全く無い。
「そんなことよりも剣術を学んで強くなることの方が重要」と考えている様子も無い。普通に仕事を手伝っている。
「村を守るには強さが必要」と思っているのなら、それを台詞や芝居でハッキリと出した方がいい。
表情だけで伝えることなんて、これっぽっちも出来ていないんだからさ。

冒頭シーンで少年時代の真之助が登場しているのだが、ここで伍介と対面させている意味はあまりない。そんな彼が成長してAKIRAとして登場するのも、ちょっと分かりにくい。
あと、なぜ真之助が村を去り、なぜ今になっても戻ったのかも良く分からない。
彼はお京という女を伴っているが、こいつが何者なのかもサッパリ分からない。
また、真之助が見知らぬ女を連れて来たのに、伍介たちが全く気にする様子を見せないのは不自然だ。

たたら吹きの秘伝は村下と呼ばれる長だけが受け継ぐことをナレーションで説明しているのに、その「長」とは別に村長がいるという設定は無駄にゴチャゴチャしていると感じる。
あと、村人に関する説明が全く足りていないので、例えば豊衛門はどういう立場にいる奴なのかが分からない。
三洲穂や豊衛門は意味ありげなことを言うが、実は全く存在意義が無いし。
ヒロインであるはずのお國でさえ、ものすごく薄っぺらい扱いだし。

喜介が最後の仕事を終えると、平次郎が鉄を届けるため村を出発する。ところが、そのシーンから少し経つと、平次郎が伍介たちに剣術の稽古を付けている様子が描かれる。
どういうことなのか。そのシーンは回想ってことなのか。
しかし、だとすると真之助が村に戻ったのは喜介が引退する前ってことになる。しかし真之助と伍介の会話では、「喜介が引退して弥介が後を継いだ」と説明している。
なので、どうなっているのかサッパリ分からなくなる。
あと、伍介たちに剣術を教える役目は平次郎より真之助の方がいいでしょ。

積み荷が襲われたと聞いた伍介が作業場を離れる様子の後、カットが切り替わると2人組が刀を抜いて平次郎に「荷物を置いていけ」と要求している。
それは変でしょ。「積み荷が襲われた」と村人が村に戻って報告し、伍介が現場へ駆け付けるまでに、かなりの時間が経過しているはずだ。その描き方だと、平次郎たちの元へ現れた2人組は、しばらく何もせずにチンタラしていたことになるぞ。それは筋が通らないだろ。
あと、誰よりも真っ先に駆け付けるべき新平が現場へ行かず、悲しみや悔しさを表現しないのは間違っている。後から彼の様子が写し出されるが、完全にタイミングを逸している。
っていうかさ、「兄を目の前で殺され、強さが必要だと考えた新平が村を出て侍なろうとする」という流れの方が、よっぽどスムーズなぐらいなのに。

平次郎の死を見た伍介が村に戻ると、弥介か静かに「二度と離れるな」と注意する。
ここで伍介が反発せず、無表情のままで済ませるのはダメだわ。
ここに限らず、こいつのリアクションが乏しいってのは大きなマイナスだ。もっとハッキリした形で反発させるべきで、それをさせないメリットなんて何も無いぞ。
感情を分かりやすく表現するシーンも、無いわけではない。ただ、肝心なトコで無意味に感情を抑制しているので、なんだかなあと。

伍介は平次郎が殺された後、「村下を継いで、一生この村で生きていくのか。このままでいいんだろうか」と漏らす。しかし惣兵衛が来た時には、「村を守るには、いや、それだけじゃない。村を強くするには、どうすればいいか」と質問する。
「そんなことを金物問屋に質問してどうすんのか」というツッコミは置いておくとして、「村を守るために強くなりたいのか、村での暮らしに辟易していて村を出たいと思っているのか、どっちなんだよ」と言いたくなる。
伍介は仙吉から「手柄を立てて出世してえか」と問われて「はい」と即答するが、ただ侍になって出世したかっただけなのか。っていうか、なぜそんな風に思うようになったのか。
こいつの考えが、ものすごくボンヤリしているんだよな。

与平は伍介を伴って町を出る際、「織田家への仕官の道、長旅になります」と説明している。しかし彼は目的地に到着すると、そこにいた男に「井上様」と呼び掛けている。
そりゃあ信長はボスだから、そう簡単に会うことは出来ないだろう。
ただ、「井上」が何者なのかがサッパリ分からない。史実に登場する有名な武将でもないから、「歴史に詳しければ分かる」ってことでもないし。
ホントにこの映画は説明不足で、「こいつは何者なのか」「ここはどういうシーンなのか」など、色んなトコで無駄な引っ掛かりが生じている。

与平は伍介に、「その刀で、何をお斬りになりますか。この戦乱の世を切り開くのは、切り開くのは刀ではございません」と話している。
この時、伍介が「では、何が斬り開くのか」と問い掛けることも無く、そのシーンを終わらせるのは手落ちにしか思えない。
気になる言葉じゃないのかよ。そこは答えを出せよ。
答えは出さないにしても、せめて伍介が質問する手順は入れるべきじゃないのか。
その上で「与平が答えをはぐらかす」という形にするなら、それはOKだけどさ。

伍介が村に戻ると、まずは新平と再会させて、続いて源蔵や長次郎と会うシーンになる。
この辺りは普通に描いているのに、お國や弥介、八重とのシーンは台詞が無く、音楽に合わせて背景としてサラッと処理するだけ。
どう考えても優先順位がおかしいだろ。なぜ両親や許嫁よりも、村長の長次郎や村人の1人に過ぎない源蔵の方が優先されているのか。
特に父親との関係って、下手をすると本作品で最も重要かもしれないのに、そこに限らずペラペラなんだよな。

伍介は「侍になる」という強い決意で村を出たのに、初めての戦闘を見るとビビって何も出来なくなる。盗賊を見ると、これまたビビって逃げ出す。
戦場でビビッて何も出来ないのは、平次郎が殺された時と全く同じだ。
そして彼は、あっさりと村へ戻ることを決める。
お京から今後の行動を問われた彼は「村が心配だ」と言うが、「他に行く当ても無いし、侍は怖いので、尻尾を巻いて逃げ帰ることにした」というだけにしか思えない。
もはや挫折とさえ言えず、それより遥か前の段階でヘタレっぷりを露呈している。

伍介は人間的に全く成長しないまま、さっさと村に戻っている。
だったら、彼が村を出る展開なんて要らないんじゃないかと。彼を村に留まらせたまま話を進めた方が、遥かに有意義でしょ。この不毛な時間は何だったのかと。
こいつが村を出なくても、「村を守るため与平の口車に乗せられる」という展開には何の支障も無い。
伍介を突き動かす動機に「外で戦の現実を見たから」ってのを使っているけど、大した効果は無いぞ。っていうかマイナスだけは腐るほどあるぞ。
「勝手に村を出て何の成長もせず戻ったのに、愚かしい判断で簡単に騙されて多大な迷惑を掛ける」という形になっているんだからさ。

終盤、真之助は伍介を呼び出して「信長様は、たたらの村の伝承を途絶えさせるようなことなどせん」と告げる。
しかし、こっちは信長がいかに理不尽で残虐な行為を色々とやったか、史実として教わっているわけで。なので真之助の言葉を、全面的に信用できないのよね。
「与平が信長を悪役にすることで計略を進めている」ってのを表現したいのは分かるけど、そのために「信長は悪人じゃない」という理屈で突破しようとするので無理が生じる。
劇中で信長のキャラ描写をやっていれば別だが、登場しないからね。

真之助は伍介に、刀で立ち会うよう要求する。彼が「刀を抜くということ、それ即ち死を意味する。覚悟はあるか」と問われると、伍介はビビって黙り込んでしまう。
つまり彼は、この期に及んでも、命懸けで村を守る覚悟が無いのだ。与平が大勢のならず者を集めた時、「村は自分たちで守る」と言っていたけど、実際は全く守れないのだ。
実際、与平の集めた一味を倒す仕事は、全て真之助と家来たちが担当している。伍介はラスボスである与平を斬ることさえ出来ず、見逃してしまうヘタレっぷりなのだ。
ホントに伍介は何の魅力もないし、共感を誘わないし、最後まで不愉快なクソ野郎でしかないのよね。
なぜ、こんな奴を主人公として造形したのか、理解に苦しむ。
何一つとして良いトコの無い主人公に、どうやって映画を牽引させようというのか。

(観賞日:2018年6月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会