『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』:2016、日本

4月27日、広島県福山市龍神の滝付近。土砂降りの中で到着した福山署の三橋博之たちは、呻き声を耳にして滝へ向かった。すると滝壺の中に2本の柱が設置され、居比修三と妻の篤子が縛り付けられていた。篤子は口、修三は両目を縫い付けられており、その近くには赤ん坊が遺体となって浮かんでいた。横浜セリトス大学で講義を受け持つ御手洗潔の元に、季刊文芸誌「ラストミステリー」編集者の小松みゆきが訪ねて来た。彼女は石岡和己が執筆する御手洗シリーズの熱烈なファンで、新作を書いてもらおうと考えていた。しかし石岡に「御手洗の解決した事件を書いているだけだ」と言われ、事件を見つけて解決してもらうために訪れたのだと彼女は説明した。みゆきがネットで拾ったネタを幾つか見せると、御手洗は次々に死体が流れ着くという「死体島」に興味を示した。
4月28日、御手洗とみゆきは愛媛県松山市興居島を訪れた。松山署の春山誠治は警視庁から指示を受けたため、仕方なく御手洗に協力する。御手洗の質問を受けた彼は、半年で6回も死体が流れ着いたこと、身許も死因も分からないことを説明した。島民でないことは明らかで、流れ着いた場所は様々だった。話を聞いた御手洗は、「犯人は目の前にいる。特殊な海です」と口にした。福山沖の海で操業中の漁師は水しぶきが走るのを目撃し、「水竜じゃ」と漁船の仲間たちに叫んだ。
瀬戸内海水理模型試験場を訪れた御手洗とみゆきは職員の北王子に案内され、現在は全てデータ化されていることを聞く。瀬戸内海の水の出口は3箇所あり、無数の島が散在しているため複雑な海流の動きがある。水の動きは昔から機械のように繰り返されており、時計仕掛けの海なのだと御手洗はみゆきに話す。データを調べた彼は、死体が全て福山から流れ着いたことを突き止めた。福山に到着した御手洗とみゆきを、福山署の黒田優作が出迎えた。黒田は2人を歓迎するが、三橋は不快感を隠そうともしなかった。御手洗は黒田に、ここ半年ほどの捜索願を見せてほしいと要請した。
西京化学工業の本社では社長の槙田邦彦が中国地方の経済界を代表する面々に来てもらい、建設を予定している水族館への理解と協力を求めた。彼は巨大な水族館を建設し、言い伝えのある首長竜を捕獲して水槽に入れる計画を説明した。御手洗が福山警察署へ赴くと、黒田は半年の間に捜索願が出ていないことを教えた。 そこへ刑事の須藤淳平が現れ、アパートで女の変死体が発見されたことを黒田に報告した。第一発見者がアパートの管理人だと聞いた御手洗は、現場へ同行することにした。
部屋に倒れている外国人女性の遺体を確認した彼は、黒田に「パトカーを返して下さい。それから、これ以上、人を来させないように」と告げた。遺体を調べた御手洗は注射痕を見つけ、覚醒剤によるショック死だろうと述べた。彼は黒田たちに、外へ出て待機するよう指示した。歴史学者の滝沢加奈子は新資料が出たという知らせを受け、福山歴史博物館へ駆け付けた。学芸員の富永幸平と会った彼女は、蔵から発見された古文書を見せられる。それはぺりー来航の際、開戦となった場合の幕府側の出陣図だった。福山藩主の阿部正弘は老中首座だったことから、その図が残っていたのだろうと富永は言う。黒船の背後には、「星籠」という文字が記してあった。
御手洗たちが車内で待機していると、アパートには4名の外国人男性がやって来た。御手洗は死体処理班だと言い、黒田は部下たちに指示して逮捕させた。4月30日、黒田は御手洗を訪ね、男たちが黙秘を続けていることを話す。御手洗は故郷の家族が人質になっているのだと告げ、すぐに大物弁護士が来るはずだと予言した。彼は「目的は充分達している。彼らが外国人であることを確かめたかっただけです」と言い、興居島の死体が全て外国人であること、アパートの女性も同じように流れ着くはずだったことを話す。
御手洗は黒田に、福山署が捜査している事件について話すよう求めた。そこで黒田は龍神滝での事件を明かし、赤ん坊は首の骨が折れていたことを告げる。御手洗は「目」「口」「柱が2本」という情報から、犯人が「罰」「断罪」というメッセージを発信しているのだと述べた。御手洗とみゆきは黒田に連れられて福山市民病院へ行き、修三から話を聞く。修三は革細工の小さなブランドをやっており、夫婦で新作発表会へ出掛ける時はベビーシッターの辰見洋子に息子を預けていた。その日、夫婦が帰宅すると洋子は両手を縛られ、腹部を刺されていた。夫婦の息子は誘拐され、2千万円を要求する脅迫状が残されていた。
洋子は同じ病院に入院しており、まだ話を聞ける状態ではなかった。ボイスチェンジャーを使った犯人から電話が入り、脅迫状の文面を修三に読ませた。夫婦が金を工面して指定された淀媛神社へ行くと、男たちにスタンガンで襲われたのだった。御手洗は帰宅した時の状況を確認し、現場のマンションへ向かう。加奈子は西京化学工場横島工場へ出向き、文化センターの学芸員を務める小坂井准一と会う。保管されている資料を見せてもらいに行く途中、彼女は外国人労働者たちの姿を目撃した。
居比夫婦のマンションに到着した御手洗は室内を調べて「被害者は、被害者ではないかもしれません」と言い、洋子に近しい人の当日のアリバイを調べるよう黒田に頼んだ。加奈子は工場を立ち去る時、走って来た外国人の男とぶつかった。男は持っていたレジ袋を落とし、白い粉の入った無数の小さな袋が散乱した。慌てて袋を拾い集めた男は、別の男が追って来ると逃走した。その夜、御手洗は黒田と居酒屋で会い、人権団体の依頼を受けた弁護士が来たこと、匿名の通報で事件を知ったと言っていたことを知らされる。御手洗は真犯人を警戒させないため、早く釈放するよう指示した。漁師たちが水竜を見たと話す声を耳にした御手洗に、黒田は他にも同様の目撃談が続出していることを告げた。御手洗は漁師たちの元へ行き、目撃した水竜について詳細を聞いた。
5月1日、御手洗はみゆきと黒田に、居比家の事件の不審な点を指摘した。洋子には腹部以外に傷が無かったこと、犯人が脅迫状を復唱させていること、金の受け渡し時刻を変更させていることだ。医者の許可が出たという知らせを受けた御手洗たちは病院へ行き、洋子から話を聞く。洋子は覆面の男が乗り込んで来たこと、抵抗したが腹を刺されたことを話す。御手洗は何か気付いている様子だったが、それ以上は詮索せずに病室を出た。
三橋は黒田に、洋子には弟がいること、事件当日は警察官の採用試験に合格して友人たちと一緒にいたことを話す。さらに洋子には学芸員の小坂井と交際していること、彼は仕事の後で真っ直ぐ帰宅していることも彼は知らせた。また事件が発生したという連絡が入り、御手洗たちは警察署へ行く。そこには加奈子が待っており、事情を説明した。彼女は歩道橋で外国人の男2人に襲われ、バッグを振り回して抵抗したら1人が転落死したのだと話す。相手は見たことの無い男たちで、襲われる心当たりも無いと彼女は告げた。しかし加奈子は、星籠を調べ始めた頃から誰かに尾行されている気がすると言い出した。
小坂井は洋子から電話を受け、預かっていた物を奪われたと告白する。「あの後、すぐに追って来て。洋子を刺したヤクザじゃ思う」と言われ、洋子は激しく動揺した。次の日、御手洗とみゆきは加奈子と共に鞆の浦を訪れた。加奈子は2人に出陣図を見せ、そこに書かれた星籠とは江戸幕府が密かに準備した船ではないかと話す。そんな船を開発できるのは村上水軍の他に、忽那水軍があると加奈子は話した。加奈子が福山歴史博物館へ赴くと、小坂井が槙田と一緒にいた。加奈子は彼らに挨拶し、御手洗とみゆきを紹介した。小坂井が立ち去る時、御手洗は手首の怪我に気付いた。
加奈子は槙田について、アメリカのファンドから来て会社を立て直したこと、横島の新工場を建てる時にも地元の反対が無かったことを話す。さらに彼女は、30年ほど前に備後半島の大きな地域開発があった際には環境汚染の問題で激しい反対運動が起き、計画が中止されたことも語った。御手洗たちは造船会社を営む夏島健二の船に乗せてもらい、忽那の子孫である怱那鷹光が住む野忽那島に出向いた。一行は怱那から古文書を見せてもらい、「岩流星籠」という文字に気付いた。
怱那は御手洗たちに、江戸の殿様に献上するということで島から持ち出されたことを話す。黒船対策として、一族が秘伝の星籠を老中の阿部に伝えていたのだ。その末裔が小坂井だと知った御手洗は、「4つの事件が全て繋がった」と口にした。御手洗は小坂井の元へ行き、「星籠とは潜水艇ですね」と指摘する。彼が推論を詳しく話すと、小坂井は模型を見せた。御手洗は立ち去る際、洋子に赤ん坊を誘拐した容疑が掛かっていることを小坂井に告げる。彼は「共犯者に関して心当たりはありませんか」と問い掛け、手袋の内側からでも指紋が採取できることを話した。
黒田と会った御手洗は、居比夫婦が20年前の横島開発計画で反対運動の先頭に立っていたことを知らされる。その運動で大勢の怪我人が出ただけでなく、渉外部長が計画中止の責任を取る形で自殺に追い込まれ、妻も半年後に心労で亡くなっていた。その息子は親戚をたらい回しにされて辛い目に逢い、中学を出ると福山を離れて行方不明になっていた。その夜、小坂井が居比夫婦のマンションに忍び込むと、御手洗たちが待ち受けていた。御手洗は指紋検出について嘘をついたことを明かし、観念した小坂井は当日の出来事を告白する…。

監督は和泉聖治、原作は島田荘司(講談社刊)、脚本は中西健二&長谷川康夫、製作は青山理&古川公平&三宅容介&寺田和正&小林宏明&菅田雅夫&眞田奈津基&山城滋、エグゼクティブプロデューサーは佐倉寛二郎、プロデューサーは臼井正明、ラインプロデューサーは古森正泰、撮影は佐々木原保志、美術は若松孝市、録音は弦巻裕、照明は東田勇児、編集は大畑英亮、音楽は岩代太郎。
出演は玉木宏、広瀬アリス、吉田栄作、小倉久寛、石田ひかり、要潤、谷村美月、寺脇康文、神尾佑、渡辺邦斗、寺井文孝、今野麻美、片桐竜次、不破万作、金児憲史、螢雪次朗、品川徹、坂田雅彦、三谷悦代、内村遥、藤本稜太、中薗光博、大家由祐子、荒木秀行、吉田祐健、大竹浩一、江藤大我、高尾六平、柿辰丸、糸永直美、後藤昇、喜多村久至、杉之原祥二、菅田雅夫、寺田雅一、松浦宏次、藤本慎介、長谷川茂、宮下忠人、細田佳央太、田中悠太、朝鍋櫂、渡部葉月ら。


御手洗潔を主人公とする島田荘司のミステリー小説シリーズの第49作『星籠の海』を基にした作品。
監督は『相棒-劇場版II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜』『HOME 愛しの座敷わらし』の和泉聖治。
『青い鳥』『花のあと』の監督を務めた中西健二と、その2本でタッグを組んでいた長谷川康夫が共同で脚本を手掛けている。
御手洗を玉木宏、みゆきを広瀬アリス、槙田を吉田栄作、黒田を小倉久寛、加奈子を石田ひかり、小坂井を要潤、洋子を谷村美月、夏島を寺脇康文、修三を神尾佑、三橋を渡辺邦斗、須藤を寺井文孝、篤子を今野麻美が演じている。

原作では小説家の石岡が御手洗とコンビを組んでいるが、この映画版に彼は登場しない。台詞で言及されるだけで、編集者の小川みゆきが登場し、御手洗とコンビを組む。
当初は原作と同様、石岡が登場する予定だった。
それが実現しなかったのは、2015年3月にフジテレビで放送された2時間ドラマ『天才探偵ミタライ〜難解事件ファイル「傘を折る女」〜』が関係している。
このドラマでは御手洗を玉木宏、石岡を堂本光一が演じていた。
ドラマの最後は「To be continued?」という文字が出て、シリーズ化の狙いが明らかとなった。

この映画版は、そんな2時間ドラマの劇場版という意味合いもあった。だから企画がスタートした時点では、ドラマと同じく堂本光一が石岡役で出演する予定になっていた。
しかしドラマの視聴率が関東地区で8.6%と振るわなかったため、シリーズ化の話が潰れただけでなく、ジャニーズ事務所は堂本光一の映画出演も断ったのだ。
原作者の島田荘司は石岡の出番を大幅に減らし、ついには声だけの出演という形で粘ったが、ジャニーズ事務所のOKは出なかった(だから本作品の電話シーンでも、石岡の声は堂本光一ではない)。
その辺りの事情については、島田荘司がTwitterで明かしていた(すぐに削除された)。

原作小説のファンやドラマを気に入った人からすれば、石岡が登場しないこと、堂本光一が出演しないことは、かなり残念なポイントになっているだろう。
しかし幸か不幸か、そんなことは大した問題じゃないと思うぐらい、この映画はドイヒーな出来栄えとなっている。
前述した事情だけならジャニーズ事務所の対応を批判したくなるかもしれないが、実際に映画を見たら「その判断は正解だった」と感じるかもしれない。

そういう原作だから仕方が無いのだが、「御手洗が相手をチラッと見ただけでズバズバと情報を言い当てる」という特徴は、どうしても「シャーロック・ホームズの模倣」を感じさせてしまう。
そこを排除したら御手洗シリーズを映画化する意味が無いので、重視するのは当然だろう。
ただし、それだけでは「どこかで見たような」という印象になってしまう恐れがあるので、他の部分で「ホームズとの差異」や本作品ならではの魅力を付けないと厳しい。
しかし、そういうモノが何も見当たらない。

「御手洗とみゆき」は「ホームズとワトソン」を連想させるが、「推理の得意な主人公とパートナー」というコンビをメインに据えるのはミステリーでは良くあるケースだ。ベタベタではあるが、それがダメとは言わない。
問題は、そこら何の魅力も感じないってことだ。
この映画に登場するキャラクターは誰一人として魅力を発していないが、内容を考えれば、メインのコンビさえ輝いていれば他はどうでもいいとさえ言えるのだ。
その肝心な2人が何の面白味も無いコンビになっているので、どうにも救いが無いのである。

御手洗は「クールに事件を解決する頭脳明晰な男」というキャラクター造形のようだから、玉木宏の芝居が大きく間違っているわけではない。
だから問題は、御手洗にプラスアルファを付けなかったことにある。
それこそシャーロック・ホームズのように、「風変わりな男」とか、「扱いの難しい男」とか、何かしらのクセを用意した方がいいのだ。
それが無いので、ただの「感情が乏しい名探偵」になっている。
「推理力がものすごく高い」というだけでは、主人公としての魅力を放つことが出来ないのだ。

みゆきの方はというと、「ただのハッピー感覚な女子」という程度の印象しか無い。
ワトソンのように、御手洗の指示を受けて肉体労働を担当するわけではない。勝手な行動を取ったり余計なことを言ったりして、トラブルメーカーになるわけでもない。得意げに見当外れの推理を語るとか、ヘマを繰り返すけど意外なことが御手洗にヒントを与えるってことも無い。
単なる同行者としての役割以外に、これといった存在価値を見出せない。
そんな何の魅力も無い2人が、コンビネーションとしての面白さを発揮するわけでもない。

原作は長く続いている人気シリーズなのだから、絶対に面白いはずだ。ってことは、映画用に脚色する時点で大きな失敗を犯しているってことになる。
私は未読だが、この映画から推測するに、「一歩間違えばトンデモ度数の高いミステリーになるような奇想天外な話を、大胆なハッタリや巧妙なディティールで飾り付ける」という方向性で考えていくのが適していたんじゃないか。
でも実際の映画は、リアルな方向へ寄せようとした形跡が窺える。でも全てをリアルに染めることは出来ず、結果的には「中途半端に非リアリティーが残った地味なミステリー」という印象になっている。
複数の事件が絡み合い、様々な情報を組み合わせて真相に近付くという本格推理をやっているのに、どことなく「テレビの2時間サスペンス」を感じさせる仕上がりになっている。

龍神滝の事件で「目」「口」「柱が2本」という情報から犯人が「罰」「断罪」というメッセージを発信しているのだと御手洗が告げた時には、思わず苦笑してしまった。
御手洗が自信満々に言うからには、それはバカバカしい推理ではなく、正解しているってことになる。だけど、そんなメッセージを解読するのは、普通じゃ絶対に無理でしょ。
つまり、犯人は「罰」というメッセージを伝えたいはずなのに、普通の人では絶対に伝わらないような方法を取っていることになる。
そもそも、彼がメッセージを伝えたい相手は居比夫婦のはずなので、その現場に細工を施す意味も全く無い。本人たちを拉致した時、そこで伝えれば済むことだ。
犯行の手口でケレン味を出すのは悪いことじゃないけど、「そうする必要性や意味」の部分に無理があり過ぎてバカバカしさ満開になっている。

終盤になって「解答編」に突入すると、御手洗が洋子の病室で事件の真相を一気に詳しく説明する。
完全ネタバレだが、そこでは「槙田が恨みを抱く居比夫婦を張り込んでいると、赤ん坊の転落事件が発生した」「それを見た彼は、荷物を持って出て来た小坂井を手下に襲撃させた」「槙田を昔から兄のように慕っていた小坂井は、事情を話した」「バッグに入っている赤ん坊の死体を見た槙田は、洋子の計画を利用した」ってことが明らかになる。
御手洗が「都合のいい偶然が幾つも重なった」と語るわけではないが、それが事実だ。
どんな本格推理であろうと、いや本格推理であるがゆえに、御都合主義に頼るケースは珍しくもない。ただ、それが笑っちゃうぐらい露骨に見えて来るってことは、推理物としての組み立てや見せ方が上手く行っていないってことだ。

幕末の出陣図が登場したり、戦国時代の村上水軍と織田信長の戦いについて触れたりするシーンがあったりする。
「そのように歴史を遡る必要があるミステリー」ってことではあるんだろうけど、該当するシーンを見ている最中は「そんな説明に何の意味があるのか」「そんな会話をしている暇があったら、さっさと事件を調べればいいのに」と言いたくなってしまう。
そのシーンが事件に関係してくるんだろうと頭では分かっていても、そこに気持ちが向かないのだ。
星籠が江戸幕府の用意した黒船対策用の船であろうが、村上水軍じゃなくて怱那水軍の秘伝であろうが、星籠の正体が潜水艇であろうが、「だから何なのか」と言いたくなる。
御手洗の小坂井に対する質問で「星籠が現存しているのでは」という可能性が出て来るが、これまた「どうでもいい」としか思えない。

しかも恐ろしいことに、この映画は予想の斜め上を行く結末を用意している。
なんと星籠に関する謎は、事件には何の関係も無いのである。
事件の真相が説明された後、「もっと早く海外へ脱出できた槙田は、星籠の謎が姿を現すのを待つために国内へ残っていた」ってことが明らかにされる。そして水竜の正体である潜水艇の星籠が出現し、小坂井は父親が作っていたのを完成させたことを話す。
つまり水竜の伝説も星籠も、一連の事件とは全くの無関係なのだ。そこを全てカットしても、全く支障は無いのだ。
その要素を盛り込むことでケレン味やスケール感を出しているのは分かるが、無関係というオチには驚愕した。
事件の真相なんかより、そっちの方が遥かに「驚きの結末」と言える。

(観賞日:2018年2月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会