『大帝の剣』:2007、日本

オリハルコンという金属は持つ者の意思に反応し、その生命体の能力を増幅させると言われている。気が遠くなるほど遥か昔、地球にもオリハルコンはどこからかやって来た。それは3つに分裂し、1つはスカンダの独鈷杵、1つはユダのクロスに姿を変えた。残る1つは、古代マケドニアの王、アレキサンダー大王の手に渡り、後に大帝の剣と呼ばれる大きな剣に姿を変える。3つのオリハルコンを手にした者は、神の如き力を得られると言われる。有史以来、どの権力者もそれを欲しがった。
多くの支配者たちの元を旅して16世紀初頭、オリハルコンは日本へ渡った。江戸に徳川幕府が開かれて数十年、三代目・家光の時代となっていたが、まだまだ平穏とは程遠く、豊臣の残党・真田幸村は、豊臣の血筋の女性を大事に匿い、育て、反撃の機会を窺っていた。その女は舞という名だった。そんな中、真田の里は徳川の襲撃に遭って火を放たれた。避難した舞は山の上から、燃える里の様子を眺めた。山伏姿となった幸村は真田忍軍の佐助に「これより二手に別れる。加賀までの道中、舞様をしっかりとお守りするのだぞ」と告げ、霧の才蔵を始めとする3人の真田忍軍を伴って歩き出した。
一方、大帝の剣を持つ大男の万源九郎は、山賊が女を拘束して野営している現場を通り掛かった。山賊は女の身代金を父親に要求し、その到着を待っているのだ。父親に雇われた源九郎は山賊の刀を奪って戦い、次々に始末していく。最後に残った頭領に刀を壊された彼は、大帝の剣を抜く。頭上に巨大な炎が現れて浮遊するのを見た頭領は、狼狽する様子を見せた。源九郎が刀を向けて脅しただけで、頭領は慌てて逃げ出した。
源九郎が女の縄を切った直後、激しい地震が起きた。山中の湖に宇宙船が墜落し、足を取られて転倒した舞は掌に裂傷を負う。佐助が薬草を取りに行っている間に、水飴のような液体が舞の背後から近付いた。湖へ様子を見に来た源九郎は、宇宙船を見て興奮する。その背後からも謎の液体が迫るが、源九郎は爆発で弾き飛ばされた。少し時間を巻き戻し、宇宙船が墜落に至った事情を説明しよう。2つの宇宙船が、宇宙空間で激しい戦いを繰り広げていた。どちらもオリハルコンを見つけて戦いに勝利しようと目論み、小さな宇宙船を放出して地球へと向かった。その内の1つが、湖に墜落したのである。
所変わって石川県金沢辺り、その沖にある鬼ヶ島という孤島。徳川幕府は多くの民を狩り出して地面を掘らせていた。鬼ヶ島奉行を務める藤井寺房之進の指揮下で、島に埋まっているというスカンダの独鈷杵を探させているのである。その現場にはユダのクロスが祀られている。寛永十五年、島原の乱で首謀者である天草四郎時貞が身に付けており、戦いに敗れた後、徳川の手に渡ったのだ。3人の男たちは密かに抜け出すが、土蜘蛛衆の1人、黒虫によって殺された。
翌朝、伊部宿に入る街道で、佐助は舞を捜していた。昨夜の宇宙船騒ぎの中で、舞とはぐれてしまったのだ。そんな中、舞の簪を頭に挿した源九郎が通り掛かる。源九郎と佐助は、鶏鍋屋に入った。土蜘蛛衆の頭領・破顔坊は藤井寺から、「豊臣の血筋の娘が生きていたこと、既にそちの耳にも入っておろう」と言われ、「手妻の籐次を張り付かせてある」と静かに告げる。手下の姫夜叉から「いつまで奴らの言いなりになっているのですか」と訊かれた破顔坊は、「間もなく時期が来る」と述べた。
その頃、森の中を奇妙な動きで歩いていた舞は、座り込んで酒盛りをしている男たちと遭遇する。舞は落ちていた石をボリボリと齧り、石つぶてを発射して男たちを攻撃した。舞が逃走したので、男たちは追い掛ける。その様子を観察していた籐次は、「あやつ、本当に豊臣の姫なのか」と不審を抱く。町に入った舞は、追い掛けて来た男たちに包囲された。騒ぎを知った佐助が駆け寄ろうとするが、石つぶてを浴びせられて吹き飛んだ。大帝の剣を目にした舞は、源九郎に駆け寄った。源九郎は襲ってきた男たちを追い払う。その様子を物陰から見ている美剣士がいた。
マタギの権三は、湖畔で死んでいる熊を発見する。だが、その熊は立ち上がって権三を殺害し、また倒れた。熊の頭部から水飴のような液体が流れ出ると、権三の中に入り込んだ。その水飴のような物が、宇宙船に乗って地球に降り立った宇宙人なのだ。宇宙人に肉体を乗っ取られた権三は、熊の左腕を持つ怪物として蘇った。源九郎が荒れた寺で佐助の額から石つぶてを抜き取ると、付いて来た舞は彼の唇を奪った。困惑した源九郎が引き離すと、舞は彼の両耳に自分の人差し指を入れ、目を閉じた。
源九郎が舞を押し倒して唇を奪おうとすると、彼女は我に返って平手打ちを浴びせた。「最初に誘ったのはお前だろうが」と源九郎が言うと、舞は「私ではありません。誘ったのはランというお方です」と口にした。舞の不用意な発言で、源九郎は彼女が豊臣の末裔だと知った。源九郎は彼女に簪を返してやった。再び「ラン」の意識に乗っ取られた舞は、不気味な声で話し始めた。墜落した宇宙船に乗っていた宇宙人のランが、舞の傷口から彼女の中に入り込んだのだ。その様子を、本堂の外から美剣士が覗いていた。
外に出た源九郎と舞は、路上で籐次が手妻を披露している場所を通り掛かった。集まっている他の人々と共に、2人は手妻を見物する。背後から源九郎に忍び寄った美剣士は、大帝の剣に手を伸ばそうとする。だが、彼女に気付いた源九郎は、「前に来ると良く見られる」と親切心で自分の前に移動させた。籐次は源九郎の隙を見て小刀で襲い掛かろうとするが、美剣士が刀を出して防ぐ。籐次が逃げ出したので、源九郎は後を追った。
源九郎は痺れ毒を塗った吹き矢を浴びて倒れるが、籐次が抹殺しようとすると、美剣士が立ちはだかる。舞が源九郎の毒を吸い出そうとする間、美剣士が籐次と戦う。だが、いきなり出現した権三が、怪力で籐次を抹殺した。舞の中のランは、「ダクシャだ。俺を殺すために、俺の船にくっ付いて来たんだ」と源九郎に言う。ダクシャは源九郎に襲い掛かるが、大帝の剣で熊の腕を切断され、逃亡した。
吸い取った毒が回って倒れている舞に気付いた源九郎は、駆け付けた佐助に彼女の毒抜きを指示した。源九郎に名を問われた美剣士は、「牡丹」と答える。佐助は舞を背負って投入堂へ赴き、幸村たちと合流して彼女に薬を飲ませる。舞たちに同行した源九郎に、幸村は礼金を渡して引き取ってもらおうとする。だが、源九郎は「金は要らねえよ。訳を聞かせろ」と要求する。舞はランの声で「源九郎はどこにも行かせない。俺のお供をさせる」と告げる。
ランは源九郎に、幸村たちが大陸へ渡って諸外国と手を組み、外から徳川に攻め入るつもりだと明かす。源九郎は舞たちに、オリハルコンで出来た三種の神器を探していることを話した。すると幸村は、同じ物を徳川も探していること、加賀で探索作業が行われていることを教える。幸村も三種の神器には強い興味を持っており、手に入れたいと考えていた。幸村は、源九郎に舞の護衛を依頼した。
源九郎は舞に、自分の祖父が信長に献上された異国人であること、大帝の剣が祖父の持ち物だったこと、その祖父が亡くなる前に「あと2つのオリハルコンを探し出し、3つの神器を本来持つべき者に届けよ」と言い残したことを明かす。一方、鬼ヶ島では少年が独鈷杵を発見していた。翌日、源九郎、舞、佐助は縁日で賑わう加賀の町にやって来た。そこへダクシャが現れて舞を捕まえ、源九郎に大帝の剣を渡すよう要求した。だが、佐助が花火でダクシャを火だるまにした後、源九郎が川へ蹴り落とした。
佐助が深手を負った舞を背負って前田家の屋敷へ向かった直後、ダクシャが川から飛び出した。源九郎はダクシャの胴体を真っ二つに切断し、その場を去った。前田家の屋敷では、舞があっという間に回復したので、それを見た加賀城主の前田利常は驚いた。屋敷には幸村一行も来ており、徳川家打倒計画についての進行状況を利常と確かめ合う。破顔坊は権三の死体から流れ出た液体に触れてダクシャの力を知り、自分の肉体に宿るよう促した。
ダクシャに憑依された破顔坊は、舞を生きたまま島へ連れて行くよう黒虫に命じた。続いて彼は姫夜叉に対し、源九郎を始末して大帝の剣を奪うよう指示した。舞は黒虫によって拉致されるが、源九郎は何も知らずに入浴していた。そこに姫夜叉が現れて襲い掛かるが、源九郎は返り討ちに遭わせた。源九郎は舞を助け出すため、弱気になっている佐助を奮い立たせ、真田忍軍と共に鬼ヶ島へ向かった…。

監督は堤幸彦、原作は夢枕獏(エンターブレイン刊)(角川文庫刊)、脚本は天沢彰、製作は浜村弘一&坂上順&石黒吉貞&渡辺純一&亀山慶二、企画は青柳昌行&遠藤茂行&梅澤道彦&伊藤満、プロデューサーは木村立哉&宮野洋美、宣伝プロデューサーは杉田薫、キャラクターデザインは天野喜孝、VFXスーパーバイザーは升元大治、撮影は唐沢悟、照明は木村明夫、美術監督は稲垣尚夫、録音は田中靖志、編集は伊藤伸行、アクション監督は諸鍛冶裕太、音楽は見岳章、音楽プロデューサーは津島玄一。
主題歌:鼓動/GLAY 作詞・作曲:TAKURO。
出演は阿部寛、長谷川京子、宮藤官九郎、黒木メイサ、竹内力、津川雅彦、杉本彩、前田愛、本田博太郎、遠藤憲一、大倉孝二、六平直政、船木誠勝、徳井優、野添義弘、犬山イヌコ、谷口高史、諏訪太朗、法福法彦、SAMUEL POP ANING、CAMU(カミュー・ケイド)、林泰勇騎、阿部進之介、武智健二、辻本一樹、岩尾万太郎、小西康久、安藤彰則、横山一敏、小村裕次郎、大河原晃、福山健介、宮内大、中島大和、ダイアモンド勝田、BEAUFULS GILLIES、田村新、高松知美、智鐘聖耀、田村勇馬、石坂良磨ら。
語り手は江守徹。


夢枕獏による同名のシリーズ小説を基にした作品。
監督は『トリック 劇場版』『明日の記憶』の堤幸彦。
源九郎を阿部寛、舞&ランを長谷川京子、佐助を宮藤官九郎、牡丹を黒木メイサ、破顔坊を竹内力、幸村を津川雅彦、姫夜叉を杉本彩、山賊に拉致された女を前田愛、才蔵を本田博太郎、権三を遠藤憲一、籐次を大倉孝二、黒虫を六平直政、山賊の首領を船木誠勝、利常を徳井優、鶏鍋屋の女将を犬山イヌコが演じている。語り手は江守徹。

公開当時の惹句は「地球じゃせまい!目指すは宇宙!面白ければ、それでいい!! 」だった。
時代劇なのに宇宙船や宇宙人が登場するし、かなり色々な要素をこれでもかと盛り込んでハチャメチャな内容になっているが、惹句の通り、面白ければ、それでいい。
だから本作品の致命的な問題は、面白くないってことだ。
序盤の語りで、わざわざ「我が国では最近珍しい大冒険活劇の始まりでございます」とハードルを上げるようなことを言っているのだが、日本の大冒険活劇って、総じてポンコツな出来栄えなんだよな。

「ナレーション過剰な映画はハズレが多い。っていうか9割以上の確率でハズレ」というのが私の勝手な偏見だが、この映画もそれに該当する。「それ」ってのは、つまりハズレってことだ。
冒頭から江守徹の長々とした説明が入るが、世界観の設定が特殊なので、「豊臣の残党・真田幸村は、豊臣の血筋の女性を大事に匿い、育て、反撃の機会を窺っていた。」という辺りまでは、まあOKとしよう。
だが、そのまま続けて「遠く燃えているのは信濃の国、真田の里。徳川の襲撃に遭い、火を放たれた様子。そしてこちらが、その問題の女性。なんと、途絶えたはずの豊臣の血を引く、ただ一人の御方なのである」と、ここまで説明しちゃうのは、手抜きでしょ。
そこはちゃんとドラマの中で表現すべきだよ。
で、そんだけ説明しておきながら、山伏の姿で立っているリーダーらしき男が真田幸村であることは説明しないんだよな。
意図的に隠しているのかと思ったら、そういうことでもないし。

その後も、シーンが切り替わって源九郎が登場すると、「さてさてお待ちかね、霧の中から現れた大男。この大男こそ、この物語の主人公である。この背中の大剣は、先程から話題の、オリハルコンで出来た剣、大帝の剣ではないか。何故こんな物騒なものを」と語る。
うるさいよ。
なんで先に、源九郎が大帝の剣を持っていることをバラしちゃうのか。
それを考えると、霧の中から現れる源九郎を先に見せちゃうのも失敗じゃないか。山賊たちの様子を先に描いて、そこに謎めいた大男が現れて、そいつが持っている武器が大剣、という順番で見せていった方がいいんじゃないか。

山賊の頭領が女に刀を突き付けて脅すと、源九郎は「やってみな。生きたまま連れて帰れなんて言われなかったんでな。約束の十両は先に貰った。だからもう関係ねえ」と笑う。
ところが、その後で山賊から「何のために戦う?金か?」と問われると、「面白けりゃ、それでいいのよ」と答える。
いやいや、違うだろ。金のためだろ。
そこで「面白けりゃ、それでいいのよ」と言わせるなら、その前に「金目当てで動く男です」みたいなセリフを用意するのは、整合性が取れなくなっちゃうぞ。

源九郎が宇宙船を見つけると、「時代劇に宇宙船とはなんともはや奇想奇天烈。何がどうなっているのやら。少々、時間を戻してみよう」という語りが入り、また説明を始める。
「堂々と宇宙空間を進む、長い、長い、長い宇宙船が、どうやら別の宇宙船に食べられている。2つの宇宙船は争いながら広大な時間を旅してきたのだろうか。何故に」とか言うけど、それって絵で表現すべきことでしょ。
鬼ヶ島が写った時には「徳川幕府は多くの民を狩り出して何かを探させている様子」という語りが入るが、それは見て分かるし。
「この奇妙な形をしている十字架。これが先刻から話題の3つのオリハルコンの1つ、ユダのクロス。寛永十五年、島原の乱で首謀者である天草四郎時貞が身に付けており、戦いに敗れた後、徳川の手に渡ったもの」ってのも、また語りで説明する。
見て分かることをいちいち語りで説明するのと、絵で表現すべきなのを語りに頼るのと、両方が入り混じっている。
とにかく、語りの多さが大きなマイナス。

伊部宿に入る街道で佐助が舞を捜す様子が写ると、「舞を捜すこの男、名は佐助」という語りが入るが、そんなの分かってるし。
それより、「佐助が薬草を探しに行って、戻ったら舞がいなかった」というシーンを省略しちゃダメだろ。
舞の簪を挿した源九郎が通り掛かるが、これも簪を手に入れるシーンを省略しちゃダメだろ。
余計なナレーションは過剰なのに、描くべきシーンを色々と省略している。

語り以外の部分に触れていくと、まず序盤で宇宙船が戦うシーンを挿入し、語りによって説明しているが、そこの必要性に疑問を感じる。
むしろ、そんなのカットしちゃった方が、先にネタバレしないし、ミステリアスなまま物語を引っ張って盛り上げることも出来るし、何かと都合がいいんじゃないかと。
ひょっとすると、早い段階で宇宙船とか登場させないと、そういう荒唐無稽な話ってことを明らかにならず、それが分かった辺りで観客の気持ちが離れるってのを懸念したのかもしれない。
だけど、早く見せたところで、ダメな人はそこで気持ちが離れるから、そんなに大差が無いと思うし。

源九郎はオレ様主義の奴なのかと思ったら、舞に簪を返してやったり、牡丹には「邪魔だな。前に来ると良く見られる」と前に移動させてやったりと、すげえ親切な奴だ。
その辺り、どうもキャラクター造形が不徹底に思える。
後半に入ると、ごく普通の「正義の味方」になっているしね。
いや、正義の味方が絶対にダメってわけじゃないけど、登場シーンの描写からすると、もっとアクの強いキャラクター、ひねくれたキャラクターにしておいた方が面白味があったんじやないかと。

シリアスにセリフを喋った籐次が走り出そうとしたら背負っている荷物が木に引っ掛かってバランスを崩すとか、その手の喜劇描写は要らないなあ。
その後も籐次は、何かにぶつかったりコケたりということを繰り返す。
他にも、キャラを選ばずに小さなギャグをやらせており、いかにも堤監督らしいとは言えるけど、そういうのは要らないなあ。
荒唐無稽な描写は大いにあっていいし、軽妙なノリもいい。コメディー・リリーフを登場させるのもいいだろう。
ただ、『トリック』的なユルいノリや小ネタの乱発は、この映画には邪魔。

源九郎は登場しても、山賊の刀を使って戦う。頭領と戦う時、ようやく大帝の剣を抜く。
勿体ぶってから大帝の剣によるアクションで盛り上げようっていう腹か、ハードルを上げてるけど大丈夫かと思っていたら、戦わずして頭領は逃げ出す。
権三に憑依したダクシャとの戦いでも、ほとんどチャンバラらしいチャンバラは無い。
よっぽど扱いが難しかったのか、相手との距離感が違いすぎて殺陣を付けにくいのか、大帝の剣を使い始めると、いわゆるチャンバラ・アクションは無い。
短いカットで「剣を振り上げる」とか「剣を突き出す」とか、そういう1つの動きを見せるだけで精一杯になっている。連続して剣を振るうシーンになると、カットを割っている。

せっかく大帝の剣という見栄えのする剣を主人公に持たせているのに、それをアクションを盛り上げるための道具として全く活用できていない。
っていうか、そもそも戦う相手がマトモじゃないので、たぶん普通の長さの刀を使ったところで、マトモなソード・アクションなんてほとんど盛り込めなかっただろうけどね。
で、じゃあ特撮を駆使したアクション描写が魅力的なのか、高揚感を煽ってくれるのかというと、それも無い。
そもそも特撮がチープだし。もしも意図的にチープにしているのだとしても、プラスの作用は無い。

破顔坊は権三の死体から流れ出た液体に触れてダクシャの力を知り、自分の肉体に宿るよう促すが、まず「画面が切り替わったら権三の死体の前に破顔坊がいる」ってのが上手くない。破顔坊が加賀へ向かうことを示す描写も、町にやって来たという描写も無いので、唐突に現れた印象になっている。
それに、いきなり不気味な液体を自分の体に宿らせるのは不可解。破顔坊は、自分の力を信じていないのかと。
まだこいつが戦うシーンは全く無かったわけで、どれぐらいの力を持っているのか分からんが、しかし自信に満ちた様子だった。そんな奴が、いきなり「乗っ取られるけど、強くなれるなら構わん」ということで自分に宿らせるのは時期尚早だろう。
例えば、「破顔坊は自分の力に自信を持っていたが、源九郎と戦って敗北する。負けを素直に認められず、仕返ししたい気持ちを燃やし、もっと強くなるために未知の力を取り入れようとする」とか、そういう手順でもあれば、すんなりと受け入れられたかもしれんが。

牡丹は女装の麗人かと思いきや、美剣士、つまり男という設定なのね。
それは語りで「美剣士」と言っているが、確かに言葉で説明してくれないと分からんわ。まあ説明しないと分からんのも問題っちゃあ問題だけど、そこを女性にやらせる意味、そんなにないぞ。
で、牡丹は天草四郎なのだが、その正体を明かされても、「だから?」と思ってしまう。
彼女が天草四郎であろうと、別の素性を持つキャラであろうと、そこに物語における効果が全く感じられない。
しかも、牡丹は天草四郎という正体を明かした後、すぐに退場してしまう。まだダクシャとの決着は付いておらず、クライマックスの戦いは途中なのに、スッキリした表情を浮かべて退場してしまうのだ。
なんだよ、その中途半端な扱いは。

(観賞日:2012年5月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会