『デスノート Light up the NEW world』:2016、日本
かつてキラと呼ばれた男はデスノートの力を使い、粛正の名の下で大量殺戮を行った。これに歓喜した死神大王は、キラの後継者を探してデスノートを与えるよう死神たちに命じた。ロシアで医師をしているアレクセイ・イヴァノフはデスノートを拾い、その中身を確認した。ヴァシリイ・ニキトヴィッチという老人の患者を診察した彼は、死なせてほしいと頼まれる。アレクセイがデスノートに名前を書くと、彼は息を引き取った。効力が本物だと知ったアレクセイは、デスノートを使って末期患者や自殺志願者を次々に殺害した。キラ事件に酷似した手口であることからICPOは「新生キラ事件」と名付け、Lの後継者である竜崎を日本のデスノート対策本部に派遣した。
2016年12月10日。デスノートを所有する青井さくらは渋谷のスクランブル交差点で無差別殺人を開始する。デスノート対策本部の三島創は主任の松田桃太や捜査官の七瀬聖、黒元晋、浦上衛と共に現場へ行き、青井を追い掛ける。青井は死神の目を持っており、通行人の名前を知ることが出来た。三島が拳銃を構えようとすると、仮面で顔を隠した竜崎が現れた。彼は麻酔弾を発砲するが、倒れた青井は死亡する。竜崎がデスノートを見ると、青井が心臓麻痺で死ぬと書かれていた。竜崎はそのページを破り、渋谷を後にした。彼は監視カメラの映像もハッキングされていたこと、所有者は他にもいることを三島に告げる。
三島は対策本部へ戻り、デスノート対策本部責任者の須加原順郎たちに報告を入れる。デスノートオタクの三島は研究ノートを付けており、青井がキラの後継者ではないと断言した。竜崎はデスノートに触れ、死神のベポと話す。竜崎と三島はベポに質問し、現在はデスノートが6冊あること、それ以上は増えても効力を持たないことを知る。夜神月が「僕は人の死を自由に操ることが出来る。僕はキラだ」と話す映像が世界中に拡散され、それは「キラウイルス」と呼ばれた。キラの正体が月であることは、警察でも限られた人物しか知らない情報だった。竜崎は三島たちに、ウイルスの目的が膨大な個人情報を抜き取ることだと告げた。
「全世界の捜査機関は武器を封じられた」という竜崎の言葉に、対策本部は大丈夫かと須加原は懸念する。三島たちは家族がおらず仮名を使っていたが、須加原と松田は本名のままだった。須加原は同様し、「警視庁の全てのサーバーをチェックするぞ」と述べた。三島は竜崎の質問を受け、「弥海砂は現行法で立件できず、デスノートの所有権を放棄して記憶を失った」と話す。彼女を担当した検事の魅上照は、1年前に失踪していた。
女優として活動している海砂は、警察の監視下に置かれていた。紫苑優希は監視の目をかいくぐり、月の音声を使って海砂にデスノートを触らせる。記憶を取り戻した彼女はリュークと再会し、地下駐車場で紫苑と遭遇する。彼はキラの動画を拡散したが自分だと得意げに言い、「八神月は生きている。6冊のデスノートを集めると約束の場所に姿を現す」と語る。さらに彼は、「Lの後継者たちを倒して新世界を作ろうと月は言っている」と告げ、約束の場所を教えてほしいと持ち掛けた。海砂は彼の言葉を信用せず、デスノートを返そうとする。紫苑は「それは貴方の物ですよ」と告げ、その場を後にした。
帰宅した竜崎は、死神のアーマと会話を交わした。彼は外出する度にデスノートの所有権を放棄し、帰宅してから戻すという作業を繰り返していた。キラの必要性を主張するコメンテーターの貴世河春菜はデスノートを所有する最高裁判事の御厨賢一に操られ、「キラ、お前にはノートを渡さない」と言わされて死亡した。紫苑は郵便配達員に化けて御厨の元へ乗り込み、死に方を詳細に記した手紙を渡す。紫苑は「僕はキラの使者。ノートは貰います」と告げ、御厨はデスノートを差し出した。
御厨は警視庁へ出向き、Lの後継者を呼べと要求する。三島たちが駆け付ける中、彼は「Lの後継者に告ぐ。キラは3人の所有者を処刑した。これより4人目の処刑を行なう」と言い残して死亡した。かつて一家を惨殺された紫苑は、その犯人を殺してくれたキラを信奉していた。竜崎は調査を進め、アレクセイ・イヴァノフの他にウォール街の投資家であるロジャー・アーヴィングがデスノートの所有者だったと突き止めた。紫苑はキラを名乗って声明文の映像ファイルをマスコミに送付し、テレビは緊急特報として報じた。月の声を使った声明文は、Lの後継者にニュース番組へ出演して顔と名前を晒すよう要求していた。
竜崎はLのCG映像を使い、サイトにログインしてチャットで会話するよう持ち掛けた。紫苑は竜崎の提案した音声通信を承諾し、対策本部は逆探知によって犯人の居場所を港区内の高級マンションと特定する。紫苑は竜崎に、対策本部のデスノートを渡すよう要求した。三島たちは高級マンションに到着するが、それは紫苑の罠だった。松田はデスノートの指示通りに行動し、無人のマンションで死亡した。須加原は三島たちに、デスノート対策本部を解散して今後捜査一課が主導すると通告した。国策としてノートを回収するという須加原は、三島の抗議を一蹴した。
憤る三島に、竜崎は「お前らが解散しても探偵の俺には何の関係も無い。俺が全て終わらせるよ」と告げる。三島はLのCG画像を分析し、「私が最後の一冊を所有している」という英文が隠されているのを発見した。三島は竜崎のマンションへ侵入し、アーマの存在を知った。彼が拳銃を突き付けて詰め寄ると、「Lは後悔していた。だから俺は彼に誓った。絶対にノートを使わず事件を解決してみせるって」と竜崎は告げた。
信じようとしない三島に、竜崎は「新生キラは6冊全てを集めることに執着している。こっちの2冊を使って奴をおびき出す。奴の4冊を奪えばデスノートを封印できる」と語る。するとアーマが、「そのためには、もう1冊を持ち出す必要がある」と補足した。マンションを出た三島は捜査一課の刑事たちに取り囲まれ、デスノート事件の重要参考人として連行された。三島のパソコンからは不可視ファイルが発見され、「八神月の子供がアメリカで誕生し、魅上が日本へ連れ帰って育てていた」という情報が判明していた。須加原は三島が入手した情報を隠していると断定し、身柄を拘束した。
紫苑は海砂に、「全てのノートが揃う時が来ました。明日、午後2時。ノートを持ってシティホールに来て下さい。そこでLの後継者を倒します」というメールを送信した。竜崎は拘置されている三島の前に現れ、牢から出した。彼は三島を拳銃で脅し、本部のデスノートを手に入れた。竜崎は2冊のノートをケースに入れ「新生キラとコンタクトを取る。ノートを手に入れるには必ず生身の人間が現れる。そこで全てを終わらせる」と口にする。竜崎は拳銃を三島に渡して自分に向けさせ、「信用できないなら撃て」と凄んだ。それから彼は対策本部の鍵を差し出し、「居場所を作っといてやった。動きを監視しろ」と指示した。
竜崎は対策本部メンバーの3人を呼び出しており、三島は協力してもらう。三島は本部で監視カメラの映像をチェックし、3人は竜崎のサポートに向かった。紫苑は竜崎に、まず互いのノートが本物だと確かめる必要があると告げる。彼の指示を受けた竜崎は、東大川門駅前のコインロッカーにノートの切れ端を入れる。次の指示で駅前広場へ向かった竜崎は、ベンチの隙間に挟んであったノートの切れ端を発見した。それに触れるとリュークが見えるようになり、竜崎はノートが本物だと確認した。紫苑はコインロッカーで切れ端に触れ、アーマの姿を確認した。彼は竜崎に連絡し、「14時半、東京シティホール。顔を見せて待て。俺も顔を出して行く」と告げた。
三島は竜崎の動きを確認していたが、本部の監視システムがダウンし、妨害電波によって連絡も不可能になった。約束の時間が来たため、何も知らない竜崎は素顔を晒した。竜崎が周囲を見回していると、デスノートを持った海砂が現れる。海砂がノートに本名を書き込み、竜崎はその場に倒れ込んだ。紫苑は静かに歩み寄って竜崎の鞄を手に入れ、海砂に「思い出の場所へ行こう」と話し掛ける。すると海砂は「月はもう存在しない」と言い、約束の場所が強羅山の廃屋だと教えてデスノートを渡した。彼女はデスノートの切れ端に浦上と黒元の本名を書いて抹殺し、自らも死を選んだ…。監督は佐藤信介、『DEATH NOTE』原作は大場つぐみ&小畑健(集英社ジャンプコミックス刊)、脚本は真野勝成、製作は中山良夫&木下暢起&堀義貴&福田太一&大角正&藪下維也&沢桂一&永山雅也&永井聖士&長澤一史&熊谷宜和、ゼネラルプロデューサーは奥田誠治、エグゼクティブプロデューサーは門屋大輔、企画・プロデュースは佐藤貴博、プロデューサーは田中正&飯塚信弘&佐藤譲、撮影監督は河津太郎、美術は斎藤岩男、録音は横野一氏工、編集は今井剛、音楽プロデューサーは志田博英、特撮監督は神谷誠、音楽は やまだ豊。
主題歌は安室奈美恵『Dear Diary』作詞・作曲:Matthew Tishler&Felicia Barton&Aaron Benward&TIGER。
出演は東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、船越英一郎、藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、金田明夫、藤井美菜、川栄李奈、青山草太、竹井亮介、大迫一平、水上剣星、白羽ゆり、大塚ヒロタ、花岡翔太、中泰雅、堀畑杏奈、田代輝、山崎竜太郎、村本明久、政修二郎、鴨志田媛夢、坂本彩、Sergey Gonchanov、Sergey Peruminov、Sergey Kuvaev、波多江孝文、梅中悠介、Christopher Battin、福島優子、豊田順子、佐藤義朗、町田浩徳ら。
声の出演は沢城みゆき、松坂桃李、中村獅童。
週刊少年ジャンプで連載された漫画『DEATH NOTE』を基にした2006年の映画『DEATH NOTE デスノート』2部作の続編。2015年の連続TVドラマ版が最終回を迎えた時に製作が発表されたが、繋がりは無い。
監督は『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』『アイアムアヒーロー』の佐藤信介。
脚本はTVドラマ『相棒』や『ST 赤と白の捜査ファイル』の真野勝成で、映画を手掛けるのは初めて。
三島を東出昌大、竜崎を池松壮亮、紫苑を菅田将暉、御厨を船越英一郎、須加原を金田明夫、七瀬を藤井美菜、青井を川栄李奈、黒元を竹井亮介、浦上を大迫一平、魅上を水上剣星、貴世河を白羽ゆり、西村を大塚ヒロタが演じている。
アーマの声を沢城みゆき、ベポの声を松坂桃李が担当している。
2部作からは月役の藤原竜也、L役の松山ケンイチ、海砂役の戸田恵梨香、リューク(声)役の中村獅童、松田役の青山草太が続投している。『DEATH NOTE デスノート』2部作との大きな違いは、今回は6冊のデスノートが使われるということだ。
では6冊を巡って激しい争奪戦が繰り広げられるのか、そんなモノは全く無い。身も蓋も無い言い方をしてしまえば、ただ数が増えたというだけだ。
「質より量」の作戦がハマるケースも、ゼロとは言い切れない。
しかし本作品の場合、その量が全く効果を発揮していないし、質が著しく低いため、どうにもならない状態に陥っている。デスノート所有者たちの高度な頭脳戦が展開されるのかというと、そんなモノも全く無い。この映画に登場する連中はデスノートを所有しているか否かに関わらず、揃いも揃ってボンクラどもだ。
なので当然のことながら、ここで描かれるのは「ボンクラ同士の愚かな争い」ということになる。
これがコメディーであれば、それはそれで面白く仕上げる方法もあるだろう。
しかし残念ながらシリアスな話なので、ボンクラ同士の争いを描かれても、盛り上がる要素が見つからないのである。完全ネタバレを書くが、新生キラは三島であり、紫苑は自称に過ぎない。紫苑は新生キラを始末し、自分が本物になろうと目論んでいる。
なので6冊の争奪戦が繰り広げられないにしても、本来なら「Lの後継者である竜崎」「新生キラの三島」「キラの信奉者である紫苑」による三つ巴の戦いが描かれるはずだ。
しかし三島は所有権を放棄したため、自分が新生キラだということを忘れている。終盤に入って記憶を取り戻すが、ただショックを受けて呆然としているだけだ。
なので、最後まで三つ巴の戦いには至らないのである。6冊のデスノートが人間界に落ちるのだが、その内の4冊は日本だ。世界は広いのに、ものすごく国土の狭い日本に4冊も落ちるなんて、何とも驚異的な偶然である。
ともかく6冊が存在するってことは、それで呼び出せる死神も6体(6人?)いるってことだ。しかし映画に登場するのは、リューク、アーマ、ベポの4体だけ。
しかしペポは「6冊のデスノートが存在して、こういうルールがあるよ」と説明すると、それで出番を終えてしまう。単なる説明役として配置されているだけだ。
登場人物が多いので、死神を6体も出したら収拾が付かなくなると思ったのかもしれない。だとすれば悪くない考え方ではあるが、「だったら最初から6冊ルールなんて採用するなよ」と言いたくなることも事実である。製作サイドは前作と完全に切り離して話を作ることを選択せず、「前作からの続き」であることを強く意識している。
新登場のキャラだけでは訴求力が足りないと考えたのか、海砂、リューク、松田を登場させ、前作で死んだ月とLまで強引とも言える形で出している。
前作と繋がりを持たせるのは、決して悪いことではない。そこを上手く関連付けて活用することが出来れば、強力な武器になる。
しかし本作品の場合、むしろ前2部作のファンを怒らせるような、ものすごく雑で適当な使い方をしている。私は前2部作の熱烈なファンというわけではないし、それどころか高く評価しているわけでもない。だが、そんな私でさえ、「ここまで前2部作をリスペクトしていないのはダメだろ」という感想を抱いた。
最も分かりやすいダメなポイントは、「夜神月が万が一に備えて子供を作っていた」という設定である。
「そんなに女からモテモテのタイプじゃなかったはずだし、デスノートを手に入れてから死ぬまでの期間は短かったし、いつの間に子供を仕込んだのか。セックスしたからって、確実に子供が出来るわけでもないだろ」と、そういうゲスなことが、まず気になった。
だが、それより何より、「何かあった時のために子供を作る」というのが有り得ない。
月は計画に絶対的な自信を持っていたはずで、「ひょっとすると失敗するかも」なんて考える奴じゃなかっただろ。
「僕はキラだ」と自分の素性を明かしてメッセージを残すような映像を残しているのも、「そんな奴じゃなかっただろ」と言いたくなる。そもそも「キラの大量殺戮に歓喜した死神大王が、後継者を見つけてデスノートを与えるよう死神たちに命じた」という最初の説明の段階で、安っぽさを感じずにいられない。
だってさ、「死神大王」だぜ。
そんな死神大王は、キラの後継者を見つけた死神に新たな王の座を与えると約束していたことが終盤になって明らかにされる。だから死神たちは、頑張ってキラの後継者を探していたというわけだ。
そんな設定も含めて、バカバカしいったらありゃしない。そういう類の荒唐無稽は、この映画を陳腐にするだけだ。ICPOは新世キラ事件の発生を受け、竜崎を日本のデスノート対策本部に派遣する。
だけど、最初に起きたのはロシアやヨーロッパなのに、なぜ竜崎は日本に派遣されるのか。
結果的にはデスノート所有者が日本に揃っていたけど、まだICPOも竜崎も突き止めていなかったはずで。Lが日本へ来た時は、もう「そこにキラがいる」と突き止めていたからね。
あとさ、世界的な規模で事件が起きているなら、対策本部が日本にしか存在しないのは不自然でしょ。青井が無差別殺人をやらかす理由は、特に何も用意されていない。彼女の犯行シーンは、「デスノートによって次々に人が死ぬ」というシーンでインパクトを与えるためだけに用意されていると断言してもいいだろう。
そんな彼女の犯行現場に到着した対策本部のメンバーはサングラスを装着し、フードで顔の下半分を隠す。
もちろん顔を見られないための対処法ではあるのだが、「もっと利口な方法が幾らでもあっただろ」と言いたくなる。
っていうかさ、本気でデスノート対策を取るなら、整形してもいいぐらいでしょ。もっとマヌケなのは、須加原と松田は本名を使っていること。
お前らは10年前の事件から、何も学んじゃいないのかと。松田に至っては、10年前の事件も担当していたはずなのに。
そんで須加原はビビったのか、松田が死ぬと「対策本部を解散して捜査一課が主導する」と宣言するけど、そっちの方が全員が本名で活動しているんだから危険が増すだろうに。どんだけボンクラなのかと。
松田には「夜神総一郎の遺志を継いだ」という設定があるらしいけど、そんなの劇中じゃ語られないし、それがあってもボンクラには変わりないし。青井が殺される時、彼女のデスノートに名前が書かれている。それは紫苑が書いたってことなのか。だとすれば、いつの間に書いたのか。そして、どうやって彼は青井の名前を知ったのか。
紫苑は御厨の元へ行くが、どうやって彼の存在を突き止めたのか。配送員に変装してはいるものの、そこまで簡単に入り込めるほど警備体制は杜撰なのか。
こいつの行動には謎が付きまとうが、ともかく御厨は操られて警視庁へ行く。そこへ駆け付けた三島たちは、相手がデスノートを持っている可能性があると思っているはずなのに、左手で顔を隠すだけ。
そういう状況も事前に想定して、ちゃんと準備しておけよ。三島なんてオタクのはずなのに、ユルユルじゃねえか。竜崎はキラウイルスについて、「膨大な個人情報を抜き取ることが目的だ。全世界の捜査機関は武器を封じられた」と説明する。
だけど、そんなに簡単に抜き取れるようなオンラインサーバーに捜査官のデータを保管しているのかよ。少なくとも諜報機関にいる人間の情報は、そんなトコに入れておかないと思うぞ。
そこに限らず、この映画って「コンピュータは何でも可能」「ハッカーは無敵」みたいな扱いになっているんだよね。そこまで無敵なら、もはやデスノートなんて要らなくねえか思うぐらいなのよ。
あと、ハッカーでも何でもない三島まで「CGを分析して簡単に隠しメッセージを見つける」という能力を発揮するけど、どういうことだかサッパリだわ。デスノートのルールには、「残された寿命の半分と交換で死神の目を貰える」「所有権を失うと死神の目も失うが、余命は元に戻らない」という条項もある。
前作で海砂は、2度に渡って死神の目の取り引きを交わしている。それだけで、かなり余命は減っているはずだ。
だが今回、また彼女は死神の目を使っている。
おいおい、こいつに与えられていた最初の寿命って、どんだけ長いんだよ。1986年生まれだから、もう死んでなきゃおかしいんじゃないのか。竜崎は紫苑にサイトへのアクセスを提案した時、死神の名をパスワードとして登録するよう告げる。
ってことは裏を返せば、彼は全ての死神の名を知っていることになる。そうじゃないと、紫苑がパスワードを打ち込んでもアクセスできないからね。紫苑はリュークの名を打ち込んだけど、他の名前でも分かったってことだよね。
でも、それって変でしょ。
どうやって竜崎は、全ての死神の名前を知ったのか。アーマが教えてくれたわけでもないだろうに。
「リューク以外は受け付けない」とか、そういう設定だったりするのか。三島が竜崎のマンションへ忍び込むけど、どうやって場所を突き止めたのかサッパリ分からん。何かしらの方法で突き止めたんだろうが、簡単にバレてる竜崎がバカってことになる。
そんな竜崎は紫苑に切れ端で本物だと思わせ、偽のノートを渡して騙す。
ここは「竜崎が狡猾に紫苑を騙した」ってことになるんだろうが、竜崎がボンクラなのは露呈しているので、そんな奴に騙される紫苑がボンクラにしか思えん。
その後で「竜崎は三島によって随分と前に名前を書かれていた」ってのが判明するので、やっぱりボンクラだなと感じるし。終盤、紫苑はSATが突入して来ると、あらかじめ「即死」と書いておいた大量の切れ端を取り出し、隊員の名前を次々に書き込む。
それで全滅させようという作戦なのだが、何しろ人間の作業なので、書くスピードにも限界がある。隊員は大量にいるので、全員の抹殺には全く間に会わず、紫苑は銃弾を浴びて死亡する。そりゃあ普通に考えて、そうなるわな。
なので、紫苑がバカにしか見えない。っていうか実際、バカだからね。
でも彼は「キラの信奉者」に過ぎないので、まあバカでも仕方が無いのかもしれない。
だけど「新生キラ」の三島や「Lの後継者」である竜崎まで、やっぱりバカなのよね。
こいつら、先代の名を汚しまくってるな。終盤、七瀬は三島がキラだと知ると、いきなり拳銃を突き付ける。彼女の兄は、三島にデスノートで殺されていたのだ。
ってことは、兄貴は犯罪者だったってことだよね。それなのに七瀬は刑事、しかも対策本部の捜査官になれたのかよ。警察機構って、そんなの可能だっけ。
それは甘受するにしても、そこまでに七瀬に関する伏線は何も無かったので、あまりに唐突で困惑させられる。
そんな強引な手を使ってまで七瀬が三島を殺そうとする展開が絶対に必要なのかというと、「ノー」と断言できる。そこは「三島を庇った竜崎が撃たれ、彼の大事な物を守るためアーマがデスノートで七瀬を殺して消滅する」というドラマを描きたいためのシーンだ。ようするに、竜崎とアーマの立場を超えた絆を描きたかったわけだ。
気持ちは分からんでもないけど、やっぱり要らないなあ。
そもそも、前の2部作でリュークがデスノートを使っても消滅しなかったはずだよね。なんでアーマは消滅しちゃうのか。
それと、その後でリュークが「人間の欲がある限り、デスノートの封印を破る奴は現れる」と言っているので、たぶんアーマは普通に復活できちゃうんだろうし。
そうなると、その自己犠牲も全く無意味になっちゃうし。映画のラストで、ICPOが回収した6冊のデスノートを中立機関のワイミーズハウスに運んでいたが、テロ組織に襲われて4冊が燃えて2冊が奪われたことが竜崎によって語られる。
「なぜ運ぶ先がワイミーズハウスなのか」「簡単に奪われすぎだろ」と言いたくなるが、それは置いておこう。
で、そんな事態を受けて、竜崎は三島を後継者に指名する。だけど三島は今回の事件の黒幕なのに、ホントにいいのかよ。
そりゃあ竜崎は余命わずかだし、誰かに後を託す必要があるのは分かるよ。それに、「超法規的措置」という言い訳は用意しているよ。
だけど、それでも「三島はやめとけ」と言いたくなるぞ。そんな類の「スッキリしない結末」を用意してどうすんのよ。(観賞日:2018年4月22日)