『男子高校生の日常』:2013、日本
真田北高校2年のタダクニは、自室で親友のヨシタケ&ヒデノリと好きな女性のタイプについて語り合う。だが、実際に女性と付き合った経験は誰も無かった。テストの時間、タダクニはボーッと窓の外を眺めるだけで、全く答えを書き込まなかった。時間が来て村松先生が「ペンを置け」と言うと、タダクニは慌てて答えを書き込んだ。廊下に出たタダクニたちは、生徒会副会長と一緒にふざけ合った。そこにクラスメイトの細野が慌てた様子で走って来て、「女子」と口にした。真田東女子高校の生徒会役員4人が来たので、男子たちは騒然としていた。生徒会長のりんごちゃんは転びそうになり、咄嗟にタダクニの腕を掴んで謝った。
生徒会長の唐沢や副会長たちは東女子高と顔合わせをするため、村松に呼び出された。唐沢たちは緊張して、マトモに女子と話せなかった。タダクニたちは帰り道、今回の文化祭が東女子高と合同で開催されることを知った。彼らは「男の祭りじゃねえのかよ「関係ねえよ女子なんて」と、心にも無い言葉を口にした。コンビニに立ち寄ろうとしたタダクニたちだが、東女子のヤナギン&生島&羽原が入るのを見てたじろいだ。彼らは「コンビニの気分じゃねえな」と言い、その場を後にした。
タダクニの部屋で集まった3人は真田祭のポスターを見て、チームしゃちほこがゲストに来ることを知った。ヨシタケとヒデノリは衣装を見て、「スカートはパンツ剥き出しで歩いてるのと同じ」と言い出した。ヨシタケはタダクニの妹の部屋から勝手にスカートを持ち出し、履いてみようと提案した。しかし着替えて一斉に見せ合うはずが、ヨシタケとヒデノリは履かなかった。そこへ妹が帰宅し、スカートを履いているタダクニに平手打ちを浴びせた。
りんごちゃん&ヤナギン&美果&生島&羽原はコンビニの休憩スペースで集まり、合同文化祭に関連して男子を馬鹿にした。タダクニたちは近くのカウンター席に座り、背中を向けていた。りんごちゃんは店を去る時、美果が男子の出し物としてお化け屋敷はどうかと提案すると「見たいかも」と口にした。その言葉を、タダクニが聞いていた。コンビニで買い物をしたヨシタケは、イヤホンで聴いているチームちゃちほこの歌に気付いた店員に心を惹かれた。浜辺に出掛けたヒデノリは、文学少女と芝居じみた台詞を交わした。
文化祭の説明会が開かれ、女子は新校舎で男子は旧校舎を使うことを美果が話した。説明会に参加して熱心にメモを取っていたタダクニは、りんごちゃんと目が合った。教室でふざけていたヨシタケとヒデノリは、生島と羽原が当日に使うための採寸に来ると途端に黙り込んだ。タダクニはヨシタケたちに旧校舎の教室が1つ空いていることを伝え、お化け屋敷をやらないかと持ち掛けた。女子はコスプレカフェをやることになるが、ヤナギン&生島&羽原は受付だけで適当に済ませるつもりだった。
タダクニや唐沢たちは女子に使ってもらうためのトイレを、綺麗に整えて飾り付けた。ヨシタケはコンビニへ出掛け、店員に気付かれないように文化祭をカウンターの向こうへ投げ込んだ。ヒデノリは浜辺へ行き、文学少女にポスターを見せた。文化祭の準備をするため、女子が大挙して真田北高へやって来た。男子たちは緊張し、いつもと違う態度を取った。ヤナギンたちは婦人用トイレに気付き、唐沢を呼び出して文句を付けた。
タダクニやミツオ君たちはお化け屋敷の準備をするが、りんごちゃんが来てガムテープを貸してほしいと頼むと黙り込んだ。ヨシタケはガムテープを借りる名目で、細野を引き連れてりんごちゃんたちがいる教室へ向かった。ヤナギンと美果が口論になっているのを見た彼は、細野を置き去りにして逃げ出した。唐沢が様子を見に行くと、細野は女装させられていた。バルコニーから密かに覗いていたヨシタケや副会長たちは生島に見つかり、「キモいんだけど」と罵られた。
タダクニとヒデノリが教室にいるとりんごちゃんとヤナギンが現れ、ゴミ捨て場の場所を尋ねた。ヒデノリは場所を教えるだけで済まそうとするが、ヤナギンから案内を要求された。タダクニとヒデノリが仕方なく同行すると、ゴミ捨て場の前では文学少女が座って読書していた。りんごちゃんとヤナギンは彼女にゴミ袋を渡し、その場を去った。下校時間になったので、副会長は女子の部屋に出向いた。美果が「すぐ終わるので」と言うので引き下がった副会長だが、タダクニたちの元へ戻ってから泣いた。唐沢は「先に帰っていいよ」と他の面々に告げるが、タダクニたちは理由を作って一緒に残ることにした。
タダクニはヨシタケから、りんごちゃんがお前を好きなんじゃないかと指摘される。彼は仲間の前で、説明会の後にりんごちゃんが自分の元へ来て会釈したことを得意げに語った。女子たちは作業が終わり、唐沢たちに報告して学校を去った。真田祭の当日、コスプレカフェは大盛況だが真田北の生徒たちは覗き込むだけで入ろうとしなかった。りんごちゃんはヤナギンと合流し、お化け屋敷に入った。副会長が脅かそうとして勢い良くロッカーを開けると、扉がヤナギンに当たってしまった。ヤナギンは激怒し、安全管理はどうなっているのかと男子たちを説教した…。監督は松居大悟、原作は山内泰延(ガンガンコミックスONLINE / スクウェア・エニックス刊)、脚本は小峯裕之&松居大悟、製作は百武弘二&水口昌彦&浅田秀之&宮路敬久&鈴木竜馬&福島更一郎&佐竹一美、企画は松本整&宇田川寧、プロデューサーは大畑利久&若林雄介、共同プロデューサーは小林智浩、撮影は塩谷大樹、照明は蒔苗友一郎、美術は湊博之、録音は反町憲人、編集は相良直一郎、衣装は西留由起子、音楽は森優太&マイコンスタジオ、音楽プロデューサーは浅田秀之、主題歌はチームしゃちほこ『マジ感謝』。
出演は菅田将暉、野村周平、吉沢亮、佐藤二朗、岡本杏理、山本美月、太賀(現・仲野太賀)、角田晃広(東京03)、東迎昂史郎、栗原類、上間美緒、三浦透子、山谷花純、白鳥久美子(たんぽぽ)、高月彩良、小池唯、奥野瑛太、志村玲那、根岸美優、秋本帆華、咲良菜緒、安藤ゆず 大黒柚姫、坂本遥奈、伊藤千由李、内田貴史、堀善雄、神谷大輔、集堂元太、本折最強さとし、林雄大、伊藤圭太、石丸雅理、槌谷絵図芽、中田由布ら。
山内泰延の同名ギャグ漫画を基にした作品。
監督は『アフロ田中』の松居大悟。
脚本はTVドラマ『好好!キョンシーガール〜東京電視台戦記〜』の小峯裕之と松居大悟監督による共同。
タダクニを菅田将暉、ヨシタケを野村周平、ヒデノリを吉沢亮、村松先生を佐藤二朗、りんごちゃんを岡本杏理、ヤナギンを山本美月、唐沢を太賀(現・仲野太賀)、副会長を角田晃広(東京03)、ミツオ君を東迎昂史郎、細野を栗原類、美果を上間美緒、生島を三浦透子、羽原を山谷花純、文学少女を白鳥久美子(たんぽぽ)、タダクニの妹を高月彩良(当時はbump.yのメンバー)、コンビニ店員を小池唯が演じている。序盤から佐藤二朗が出て来て、かなりクセのある喋り方で存在をアピールする。いかにも佐藤二朗らしい目立ち方とは言えるのだが、この映画にとっては邪魔。
タダクニたちが喋り方を真似してふざけるシーンが何度もあり、「ネタにされるタイプの教師」として登場していることは分かる。実際、クセのある教師ってのは大抵の学校にいるはずだから、それ自体は間違っちゃいない。
ただ、演者が佐藤二朗だと、よっぽど上手く扱わないと間違いになってしまう。
これが福田雄一作品であれば、「ランドマークみたいなモンだから仕方が無いか」と諦めが付くもしれない。だけど、そうじゃないからね。ストレートに笑いを取りに行くのなら、弾けっぷりが足りないように感じるし、映像的に遊んだり表現を誇張してみたりという方向性があってもいいんじゃないかと思う。オフビートやシュールな笑いを狙うなら、間の取り方やテンポに難がある。
いずれにせよ、コメディー映画としては緩急が弱くてリズムが単調だ。
いい意味でも悪い意味でも、ホントに高校生が他愛もないバカ話をダラダラと喋って、内輪で盛り上がったり楽しんだりしている様子を延々と見せられているような気分になる。
「いい意味でも悪い意味でも」と前述したけど、商業映画であることを考えると、いい意味にはならないよね。この映画をちっとも面白いと思えないのは、「タダクニたちと同世代なら楽しめて、そうじゃないから楽しめない」とか、「懐かしさを覚えれば楽しめて、そうじゃないと楽しめない」とか、そういう問題ではないだろう。
シンプルに、味付けと調理方法を失敗しているだけだと思う。
っていうか、それ以前の問題として、映画の土台となる部分、ようするに食材選びの時点で間違えているとしか思えない。
何が悪いのかと言うと、それは「合同文化祭に向けて準備を進め、本番の日が訪れる」という物語にしたことだ。映画のタイトルは『男子高校生の日常』であり、その通りに「男子高校生の日常」を描くべきだったと思うのだ。
時に劇的なことなど何も起きない日常生活の中で、くだらないことを面白がったり、些細なことで口論になったり、バカみたいなことに夢中になったり、そういう日々。
その中で、幼稚だけど愛すべき男子高校生の様子を描くのが、作品として目指すべき方向だったんじゃないかと。
「合同文化祭のために大勢の女子高生がやって来る」ってのは、ちっとも日常ではない。
映画の大半が、非日常を描く内容になっているのだ。たぶん、ドタバタ喜劇とか爆発的な笑いを求めるタイプの作品ではないだろうと思われる。なので、そういうのが無いのは別に構わない。
ただ、「ケ」ではなく「ハレ」の舞台を用意して、そこを大きく扱ったことが致命的な欠陥になっている。
これが「前半で日常を描いておいて、後半に1つだけ日日常の出来事を挟む」みたいな構成なら、それは分からんでもない。
でも、ずっとハレが続くからね。女子高生の出番なんて、もっと大幅に削ってもいいのよ。女子だけのシーンを何度も入れるとか、論外でしょ。りんごちゃんをどういうキャラとして見せたいのかが、ハッキリしない。
タダクニの腕を掴んで謝罪する初登場のシーンでは、いかにも「いい子」みたいな感じだ。しかしコンビニでヤナギンたちと喋るシーンでは、男子学生への陰口に同調して笑っている。
ヤナギンたちが仕事をサボりがちなことで美果と口論になった時は仲裁するが、その直後には嫌がる細野を一緒に女装させて楽しんでいる。ヤナギンたちとは「表面的には仲良くしているが、実は心の中で一線を引いている」みたいな描写もあるのだが、学園祭のシーンではゴミ捨て場に行く時もお化け屋敷に入る時も2人で行動している。
あと説明会の時には歩み寄ってまでタダクニに会釈するから、恋心じゃないにしても何かあるのかと思ったら、ホントに何も無いので、あの行動は何だったのかと言いたくなるし。学園祭のシーンでは、色々とおかしな描写が目立つ。
大盛況のコスプレカフェから切り替わってお化け屋敷が写ると、不良男子2名しかおらず、「何だよこれ、つまんねえな」と全く盛り上がっていない。なので「不人気で閑古鳥が鳴いている」という状況なのかと思ったら、大勢の客が出入りする様子が写る。
ってことは客は多いのだろうが、怖がってくれているのか、評価が高いのかは分からない。
そこは「不人気で閑古鳥」か、「大盛況で高評価」か、どちらかの二択でハッキリさせた方がいいでしょ。
そしてコメディー映画としては、どう考えても前者が正解だ。りんごちゃんとヤナギンがお化け屋敷に来るシーンも、その直前に変な描写がある。りんごちゃんが廊下を歩いていると、学ラン姿の人物と遭遇する。
りんごちゃんは「着てくれたんだ。一緒に行こう」と手を取るのだが、この時点では相手の顔が写らず、声も発していない。だから、これがヤナギンであることは分からない。
観客に男子学生だと誤解させるような演出にしているわけだ。
でも、そんなミスリードを狙う意味が全く無いのよ。終盤に入ると、チームしゃちほこのライブ時間が迫っても会場に全く客が集まっていない様子が描かれる。
だが、何か特別なアイデアで客を集めることはなく、普通に「みんなで呼び掛けたら大勢の客が集まってライブは大成功」という結末にしてある。
そこに何のギャグも仕掛けも用意しないのなら、「チームしゃちほこが不人気なので客が集まらない」という設定は邪魔なだけだろ。
さすがに「客が少ないライブ」で映画を終わらせるわけにも行かないから、例えば、「副会長はチームしゃちほこを馬鹿にして客なんて少ないだろうと軽く見ていたが、大勢が集まるので驚く」みたいな結末でもいいはずで。(観賞日:2026年1月11日)