『中国の鳥人』:1998、日本

商社に勤める和田誠治は、同僚の岡村が急病で入院したため、彼が担当していたヒスイ買い付けの仕事を引き受けることになった。和田は部長に指示され、中国の雲南省へ飛んだ。初めて訪れた中国で、和田は通訳の沈増元に出迎えられる。
和田が沈と共に車で出発しようとしていると、そこに氏家というヤクザが現れる。氏家の組織は岡村に金を貸しており、鉱脈の話で騙されたという。そこで氏家は親分に命じられ、取り引きを見張るためにやって来たのだった。
和田と沈に氏家も同行し、彼らは鉱脈がある秘境の地へと向かう。ようやく目的の村に辿り着いた一行は、背中に羽根を付けて飛び跳ねている子供達の姿を目撃する。その村では燕という娘が鳥人学校を開き、子供達に空を飛ぶことを教えていたのだ…。

監督は三池崇史、原作は椎名誠、脚本はNAKA雅MURA、企画は宇田川文雄 伊藤秀裕、企画協力は平田道弘 清水敬之、プロデューサーは渡邊範雄&辻裕之&王子精波、製作は岩切靖治&古里靖彦、製作協力は中沢敏明、エクゼクティブプロデューサーは鳥山誠、撮影監督は山本英夫、編集は島村泰司、録音&整音は中村淳、美術は増本知尋、照明は田部谷正俊&原由巳、衣裳は磯井篤郎、衣裳デザインは堂本教子、音楽は遠藤浩二、音楽コーディネーターは十川夏樹。
出演は本木雅弘、石橋蓮司、マコ・イワマツ、王麗黎、奥田智彦、徐光輝、港雄一、吉瀬美智子、古里靖彦、加藤文明、吉平、李鎮祥、張彦云、和平、張弘、解方遊、施{うかんむりに丁}、楚俤、陶秀仙、ボビー・マリンコピック、仲雪、森羅万象、釼持誠、渡洋史、麻生茂、戸田慎太郎、神谷有樹彦、佐藤元樹、松浦次郎、山田岳史、扇谷公貴、坂西仲夫、森利夫、平田道弘、井原英介ら。


椎名誠の同名小説を映画化した作品。
実際に舞台となっている中国の雲南でロケが行われ、大勢の中国人が出演している。和田を本木雅弘、氏家を石橋蓮司、沈をマコ・イワマツ、燕をオーディションで選ばれた王麗黎が演じている。

序盤、氏家が和田に殴り掛かった理由を説明する辺りで、借金云々の話が何となくスッキリまとまらないまま提示されるので、どうも話に乗っていけない。
しかし、そんなトコロで「話に乗っていけない」と言っていたら、もう大変だ。
その後の話なんか、マトモに見られない。

最初は、コメディー・タッチのロードムーヴィーかとも思った。
それならば、氏家の乱暴なキャラクターと沈の惚けたキャラクターを徹底的に生かして、和田が連続するトラブルに巻き込まれていくドタバタっぷりを描けばいい。
しかし、そういうタイプの作品としては作られていないようだ。

車がオンボロだったり、川で立ち往生したり、急な嵐に見舞われたりと、それは苦労の多い大変な旅ではあるのだが、いわゆる「おかしな珍道中」ではない。
だからといって、厳しいアドベンチャー映画として描かれているわけでもない。

いきなり和田や氏家がクレイジーになって、大笑いしたり拳銃を撃ったりするシーンが挿入されたりするが、何の意味があるのかは分からない。
唐突に沈が記憶喪失になる展開も待っているが、これも意味は分からない。

で、唐突に目的地に到着し、“未知なる中国との触れ合い”のようなモノが始まる。
だが、それまでに中国の風変わりな人々や神秘的な風習などが描かれていないため、鳥人の伝説を信じている燕が「単なるトンデモさん」にしか見えない。
和田や氏家は当たり前のように受け入れるが、映画の外に伝わる説得力は無い。

それまでは大して好奇心旺盛な素振りを見せていなかった和田や氏家が、なぜか鳥人の伝説に対しては、とても強い興味を示す。
そして、残されていた英語の文書を翻訳しようとするまでに入れ込む。
2人がそこまで入れ込むに至る心理が見えない。

燕は「村の恥だ」と他の村人から言われている存在だ。
だが、彼女には多くの子供達が飛び方を教わっている。
本当に村の恥だと思うのなら、なぜ子供達を彼女に近づけないようにしないのだろうか。その辺りは、良く分からない。さすが中国、それも神秘なのか。

唐突に氏家が銃で撃たれまくる夢など入れたりするが、やはり意味不明。
終盤になると氏家がトチ狂って村の亀を殴り殺すが、それは意味不明。
で、最後は和田もトチ狂ってしまい、なぜか2人で羽根を付けて飛ぼうとする。
やっぱり、ワケが分からない。
どうやら中国の神秘に惑わされ、シナリオが迷走してしまったようだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会