『着信アリFinal』:2006、日本

安城高校2年C組の草間えみりたちは、修学旅行で韓国へ向かった。フェリーの甲板では、生徒たちが楽しそうに写真を撮影している。だが、 えみりには全面的に楽しめない事情があった。幼馴染みの松田明日香がイジメに遭い、参加していないのだ。夜、皆が船室に集まって 怪談話に盛り上がっていると、楠木あずさの携帯が鳴った。だが、その着メロは全く聞き覚えの無いものだった。
携帯を取ると、向こうから本人の声が聞こえてきた。発信元は楠木あずさで、着信時刻は翌日になっていた。携帯電話には、首を吊った 楠木あずさの姿が映し出された。生徒達は、1年前にクラスメイトのパムが首を吊った時の姿にそっくりだと感じた。翌日、生徒達は韓国 の街に出て自由行動を取った。道に迷ったあずさは、前日に聞いたのと同じ言葉を発した直後、奇怪な死を遂げた。
三上輝也もあずさと同じように携帯の着信を受け、やはり奇怪な死を遂げた。真鍋友香に着信が入った時、「転送スレバ死ナナイ」という メッセージが携帯電話に表示されていた。彼女からの送信を受け、同じ班の川中瑞江が死亡した。川中瑞江に送信されたメールには、 「転送スレバ死ナナイ」の文字は無かった。転送できるのは、最初に着信を受けた人だけなのだ。
えみりが明日香に電話を掛けると、彼女は死んだ3人の名前を挙げ、自分が関与していることを示唆した。えみりはボーイフレンドである 韓国人のアン・ジヌから、かつて「死の予告電話」の騒動が日本で起きていたことを知らされた。2人が事件についてインターネットで 調べている間に、生徒の赤池徹が4人目の犠牲者となった。えみりとアン・ジヌは、過去に発生した死の予告電話の元凶が水沼美々子と いう少女にあることを知った。
えみりが再び明日香に電話を掛けると、クラスメイトの島崎真理に替わるよう要求された。真理がえみりから携帯を受け取った直後、彼女 に着信が入った。「自分は苛めていないのに」と訴える真理に、明日香は「ただ見ていたニワトリも、みんな死ねばいいって」と告げた。 真理はえみりを責めて走り去った後、自分から恋人の塚本浩之を奪った矢澤みのりに送信した。みのりが死亡し、真理は浩之から「人殺し」 となじられた。
今度は明日香の方から、えみりに電話が掛かってきた。明日香はえみりから殺人を止めるよう求められ、「私はやめてもいいけど、パムは やめないって」と告げた。だが、パムとは明日香の仇名だった。明日香は1年前に首を吊って自殺未遂を起こし、ずっと昏睡状態にある はずだった。病院に電話を掛けたえみりは、今も明日香の意識が戻っていないことを確認した。
引率教師の木部義孝は、くだらない騒ぎを静めるという名目で生徒達から携帯電話を没収した。だが、それは自分の身を守るための行為 だった。携帯電話を隠し持っていた立花楓は、着信を受けて木部に送信した。エレベーターの中に同僚の園田美咲といる時、木部は奇怪な 死を遂げた。生徒達は没収された携帯を奪い合った。小泉丈弘は、今原信一の転送で7番目の犠牲者となった。
えみりはアン・ジヌから「明日香が電話を掛けてくるのは、君に助けを求めているからじゃないか」と言われるが、それを否定した。彼女 は、最初は自分が苛めを受けていたこと、それを庇ったことで明日香が苛められるようになったこと、それを自分は止めなかったことを 打ち明けた。アン・ジヌはえみりに、「君の気持ちを伝えるべきだ。逃げるのはやめよう」と告げた。
えみりは明日香に電話を掛け、「私に送って。誰にも転送しない。それで最後にして」と頼んだ。しかし明日香は、返答しないまま電話を 切った。アン・ジヌは、明日香が「パソコンで次の犠牲者を選んでいる」と言っていたことに着目した。彼は、美々子がパソコンの中から 回線にアクセスしているのなら、フリーズさせれば着信を止められるかもしれないと考えた。えみりとアン・ジヌは、安城高校の生徒たちの 協力も得て、明日香のパソコンにメールを送るよう韓国の人々に呼び掛けた…。

監督は麻生学、企画・原作は秋元康、脚本は大良美波子&真 二郎、製作は黒井和男、プロデューサーは有重陽一&山本章、 アソシエイトプロデューサーは門屋大輔、撮影は田中一成、編集は川島章正、録音は滝澤修、照明は岡野清、美術は磯田典宏、 CGIプロデューサーは坂美佐子、音楽は遠藤浩二、主題歌『思い出のすぐそばで』は中孝介。
出演は堀北真希、黒木メイサ、ジャン・グンソク(チャン・グンソク)、板尾創路、野田よし子、ほんこん、朝倉えりか、上脇結友、 恒吉梨絵、内藤有紗、松田大輔(東京ダイナマイト)、ハチミツ二郎(東京ダイナマイト)、大島かれん、吉永毎莉奈、今野野乃香、 水谷里歩、高木古都、関戸優希、森山静香、真岬悠太、栩原楽人、山根和馬、山方隆士、川本貴則、石田勇大、橋本真実、天川美穂、 松本夏空、高橋あゆみ、池田寿奈、森岡龍、宇賀那健一、荒川優、板橋春樹ら。


秋元康が企画&原作を務めたシリーズ第3作。
2作目と3作目の間に、テレビ朝日でTVシリーズも作られている。
監督はTVシリーズでも演出を担当した『千里眼』の麻生学。
明日香を堀北真希、えみりを黒木メイサ、アン・ジヌをチャン・グンソク(当時の表記はジャン・グンソク)、木部を板尾創路、園田を 野田よし子、みのりを朝倉えりか、真理を上脇結友が演じている。高校の用務員役で、ほんこんもチラッと出演。

1作目から既にJホラー・ブーム作品群の出涸らしに近い状態だったのに、あざとい商売根性丸出しで、ついに3作目まで作ってしまった。
今回はファイナルと銘打っているが、あわよくば4作目も作ってやろうという意欲がありありと窺える。
まず何よりもシリーズを続けて搾取することを第一に作っていることが、この映画の質を下げる最大の要因となっているのではないか。
シリーズを続けることしか考えていないので、ルールを増やし、謎を追加するが、それを解決する気はさらさら無い。
シリーズとは言え、本作品において2作目は無かったことになっているが(完全に無視している)、もはや1作目も関係無いモノになって いないかね。これだけ単独で成立させた方がいいでしょ、この内容なら。明日香と美々子の関連性って、かなり無理を感じるぞ。

興行的なことを最優先に考えている本シリーズでは、第2作で台湾を舞台にして、台湾の俳優を起用した。
今回は韓国を舞台に設定し、韓国人俳優を起用している。
話として、韓国が舞台である必然性、必要性は全く無い。
むしろ、日本を舞台にした方が絶対にマシだったと断言できる。
ジャン・グンソクは日本語が話せないので聾唖の設定にしてあるが、そこまで無理をしてでも韓国人を起用し、韓国を舞台にしたのは、 韓国市場で稼ごうとしたためだ。
それ以外の理由は何も無い。

えみりとアン・ジヌは手話で会話しているが、国によって手話も異なることは無視されている。
まあアン・ジヌには「日本人の唇の動きを見ただけで何を話しているか理解できる」という設定もあるぐらいだし、その辺りはテキトー 極まりない。
だったらいっそ、互いに日本語と韓国語で話しているのに通じ合う設定でも良かったのに。
どうせ設定はデタラメなんだから。

連続事件が発生するのは韓国なので、生徒たちは言葉が通じない、地理が分からないという状況に置かれているわけだ。
だが、知らない人ばかりの異国の地にいることを、不安や恐怖を煽るために使う意識は皆無だ。
っていうかさ、3人も連続して死者が出ているのに、残った面々はそのまま韓国に居残っているのは変だろ。
警察が捜査のために残留を要請したのならともかく、そんな様子は無い。
学校側としては、一刻も早く帰国させようと考えて然るべきではないのか。

なぜ今回になって新ルールが追加されるのか、なぜ親切に殺人鬼がルールを教えてくれるのか、その辺りに関して、納得できる説明や 謎解きは無い。
そこの引っ掛かりを感じさせないような勢いやパワーも無い。
殺人シーンにおける「来るぞ、来るぞ」とジワジワ迫り来る恐怖の感覚は無いし、殺人そのものの視覚的なケレン味にも乏しい。
2人目の死なんかは、笑いの無いコントのようだ。

TVゲームのような感覚で追加された新ルールによって、人間同士の醜い争いが発生する。
そこで疑心暗鬼にかられたり裏切り合戦を始めたりするのは、恐怖を生み出すべき本来のポイントからは大きくズレているが、しかし単純 に観客を怖がらせるという意味では、そこは利用できる箇所だ。
しかし、そこを膨らませようという意識は無い。
そこを膨らませると本分からズレると思ったわけではなく、単純に使い切れなかっただけだろう。
だって本筋の方も、ちっとも怖くなってないんだから。

1人目の犠牲者は口から赤い飴玉が出るが、その後の犠牲者の口からは出て来ない。
1人目と2人目の犠牲者には電話が掛かってからメールが届いて画像が添付されているが、面倒になったのか、最初からメールが送られて くるようになるし、「掛かってきた電話の声と同じセリフを吐く」「添付の画像と同じ死に方をする」というのも無くなる。
7人目の犠牲者が死ぬ時は口からニワトリの羽を吐くが、それ以外のメンツはニワトリと絡めるような死に方はしていない。
そのように、ルールはアバウトで御都合主義に汚染されている。
そのため、ルールが生み出す恐怖感というのも全く感じられない。

終盤に入ると、問題解決のために友情の方向へ舵を切るが、ホラー映画でそんなところへ持っていったらヌルくなること請け合いだ。
実際、見事にヌルくなっている。
そして韓国にいるはずのえみりが急に日本の学校にワープするわ、パソコンが爆発するわ、いつの間にかえみりの携帯から自分に送信した アン・ジヌが身代わりで死ぬわと、ひたすらチープに突き進む。
全く映画と合っていない主題歌がエンドロールと共に流れてきても、失笑さえ出て来ない。

「スパムメールの一斉送信でパソコンをフリーズさせよう」という作戦にも唖然。
メールの大量送信でフリーズするのか、フリーズしたら再起動して受信拒否すればいいだけじゃないのか、などという以前に、なんで 「このアドレスにメールを送って呪いを止めよう」という怪しすぎるメッセージに、韓国の人々が呼応するのかと。
メッセージを受け取った韓国のネチズンが「頑張れ」「私たちも応援してるわ」などと揃ってエールを送るのも、底抜けのアホかと。

(観賞日:2008年7月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会