『着信アリ2』:2005、日本

7月の東京・新宿。奥寺杏子は親友の内山まどかと共に、保育士として働いている。雨の日、最後まで残っていた園児を、母親が迎えに 来た。その園児は、なぜか誰もいないはずの場所に向かって手を振った。杏子の恋人の桜井尚人は、中華料理店で働いている。店主の娘で ある王美鳳(ワン・メイフォン)の携帯電話が鳴るが、彼女はいなかった。厨房から店主の王建峰(ワン・ジェンフォン)が現れ、携帯を 持って引っ込んだ。
中華料理店には、杏子とまどかがやって来た。2人は美鳳と仲がいい。厨房では美鳳の携帯が鳴るが、先程とは違う着メロだった。王が 電話を取ると、向こうから「また火を付けっ放しにして」という美鳳の声が聞こえて来た。最後は悲鳴が聞こえ、電話は切れた。直後、 買い物に出掛けていた美鳳が戻って来た。彼女は自分の携帯に電話など掛けていなかった。
美鳳は杏子とまどかに、赤外線で新しい携帯の番号を送った。まどかの携帯から、入れたはずの無い着メロが流れた。彼女は、それが 1年前に起きた“死の予告電話”事件の着メロだと気付いた。厨房に戻った尚人は、王が高温の油で大火傷を負って死んでいるのを発見 した。新宿中央署の刑事が現場に赴くと、管轄外である世田谷署の刑事・本宮勇作が死体を調べていた。彼は1年前の事件との関連を 疑っていたが、新宿中央署の刑事から「被害者は携帯を持っておらず、口から飴玉も出なかった」と聞かされる。
外に出た本宮は、死の予告電話事件を執拗に追っているジャーナリストの野添孝子から質問を受けた。本宮は孝子に、「どこまで追っても 答えは出ないよ」と告げた。孝子は翌日、警察の事情聴取を終えた尚人に声を掛け、話を聞く。尚人はカメラマンのアシスタントの仕事で 1年前は東南アジアに行っており、死の予告電話事件を知らなかった。尚人は孝子の質問を受け、王の着メロが死の予告電話事件で使用 されたのと同じだったこと、まどかの携帯も同じ着メロだったことを語る。
尚人はまどかの携帯に電話をするが、ノイズが入って通じなかった。同じ頃、まどかは杏子にテレビ電話を掛けていた。杏子はショックで 寝込んだ美鳳を介抱していた。電話をしていた杏子は、まどかの背後に不気味な何者か姿を目撃した。だが、まどかは全く気付いていない 様子だ。杏子は逃げるよう警告するが、通信が切れてしまった。まどかが携帯の伝言メモを聞くと、自分の悲鳴が入っていた。その履歴は、 数分後だった。まどかは風呂場で何者かに襲われ、体を折り畳まれた。
まどかの部屋に駆け付けた杏子と尚人は、彼女の無残な死体を発見した。直後、杏子の携帯から例の着メロが響いた。確認すると、杏子が 金網を掴んでいる画像が送り付けられていた。着信履歴は3日後の7月20日、21時10分だった。杏子と尚人は、孝子を通じて本宮に相談 した。本宮は画像の場所を特定するよう部下の紺野克彦に指示するが、尚人は警察が当てにならない様子を感じ取った。
18日、孝子は杏子と尚人を連れて、水沼美々子の祖母・サチエの元を訪れた。サチエは「美々子を孫なんて思っていない。あの子は娘が レイプされて孕んだ子だ」と冷淡に述べた。その犯人は、サチエの夫が殺害したという。サチエの夫・張偉(チャン・ウェイ)は台湾人で 、出所後は故郷へ戻っていた。彼は刑務所にいる頃から「女の子が自分を殺しに来る」と怯えていたという。
孝子は台湾にいる元夫の陳雨亭(チェン・ユーティン)に電話を掛け、張偉について調べてほしいと依頼した。その電話で彼女は、台湾 でも日本と同様の死の予告電話事件が起きていると知る。しかも、それは美々子が死ぬより遥か以前から発生していた。一方、警察では 鑑識により、まどかの遺体から微量の石炭が検出されていた。それは日本の石炭ではなく、王の遺体からも検出されていた。そこに現れた 孝子は、それが台湾の石炭かどうか調べるよう求めた。
19日、孝子は張偉に会うため台湾に渡った。しかし張偉の住所に行くと、彼は既に死んでいた。雨亭の元を訪れると、そこには台湾で 起きた予告電話事件の資料があった。雨亭は孝子に、「この事件には関わらない方がいい」と警告した。尚人から電話が掛かったので、 孝子は「張偉の着信メモリーから選ばれた次の犠牲者が美々子なのかも」という推測を語った。
杏子のアタッシェ・ケースに入れていた携帯から、あの着メロが鳴り響いた。尚人が投げ捨てると携帯が開き、杏子の画像が写った。一方 、孝子は頭に痛みを覚えた。9歳の頃、孝子は双子の妹・真理子と神社で遊んでいた。社務所で電話が鳴った時、彼女は妹に取らせ、その 場から逃げ出した。真理子は行方不明になり、川で死体が発見された。それ以来、孝子は自分を責め続けていた。予告電話事件を執拗に 追うのも、そのためだった。雨亭は孝子に、予告電話を受けた友人が3日前に死んだことを告げた。
20日、杏子と尚人は台湾に渡り、孝子と合流した。孝子は2人を、ジェイフォンという村へ連れて行くことにしていた。そこは、かつて 炭鉱として栄えたが、今は廃村になっている。その前に3人は、村の唯一の生き残りである高淑梅(ガオ・スウメイ)を訪ねた。なぜ村の 人々が次々に死んだのかと孝子が問うと、彼女は「李麗(リー・リィー)が殺しに来る」と怯えた。李麗という少女に死を予告された村人 が、次々に血を吐いて死んだ。そこで村人たちは李麗の口を縫い、坑道で生き埋めにしたのだという。
孝子は雨亭からの電話で、彼も死の予告電話を受けていたことを知った。3人は閉鎖された炭鉱に到着し、二手に別れて入り口を探す。 孝子の携帯から例の着メロが鳴るが、掛けてきたのは本宮だった。本宮は、中村由美が美々子に憑依されたのではなく、自分の意思で共鳴 したのだと語った。ノイズが入り、電話は切れた。入り口を発見した孝子は坑道に入るが、何かを見て悲鳴を上げた。悲鳴を聞いた尚人は 、杏子を残して孝子の元へ向かおうとする。すると、杏子も何かを見て悲鳴を上げた…。

監督は塚本連平、脚本は大良美波子、企画・原作は秋元康、製作は黒井和男、プロデューサーは佐藤直樹&有重陽一、アソシエイト プロデューサーは門屋大輔、企画協力は磯野久美子、撮影は喜久村徳章、編集は上野聡一、録音は滝澤修、照明は才木勝、美術は新田隆之、 VFXスーパーバイザーは田中貴志、プロダクションスーパーバイザーは大屋哲男、音楽は遠藤浩二。
主題歌「愛の祈り」はaki(作詞は秋元康、作曲はGajin、編曲は上杉洋史)。
出演はミムラ、吉沢悠、瀬戸朝香、ピーター・ホー、鰐淵晴子、石橋蓮司、ちすん、大久保運、シャドウ・リュウ、小林トシ江、 眞島秀和、谷本一、六角精児、藤谷祥子、小須田康人、小村裕次郎、川屋せっちん、渡辺妙子、天現寺竜、筒井真理子、大島かれん、 小泉奈々、大窪汐里、大窪凪沙、溝井菜緒、望月みさ、海老沢神菜、谷口正雄、歌津圭一郎、今田尚志、 柳沢宏貴、杉本央、俵木麻衣、内山百穂、渡部大樹(大輔は間違い)、平沼恭史郎、秋葉恵理香、大谷神菜、 篠原健太、飯塚雅己、畔上真次、渋谷太郎、山田裕花、荒井紫織、昇平ら。


秋元康が企画・原作を担当したホラー映画シリーズの第2作。
出演者は大半が入れ替わり、監督も三池崇史から『ゴーストシャウト』の塚本連平にバトンタッチしている。
杏子をミムラ、尚人を吉沢悠、孝子を瀬戸朝香、雨亭をピーター・ホー、サチエを鰐淵晴子、本宮を石橋蓮司、まどかをちすん、王を 大久保運、美鳳をシャドウ・リュウが演じている。

冒頭の「園児が誰もいない方向に手を振る」というシーンは、後の展開に繋がる伏線なのかと思ったら、そのまま放置される。
杏子がチャイルド・セラピストの資格取得を目指しているとか、尚人がカメラマンを目指しているとか、わざわざ説明する必要も無いこと にセリフで言及するぐらいだから、何かあるのかと思ったけど、そういう設定には何も意味も無い。
まどかは自分が入れたはずの無い着メロが携帯から流れると、1年前に起きた“死の予告電話”事件の着メロだと気付く。
でも、1年前の事件を知っていたとしても、そのメロディーが1年前の事件で使われたものだと、なぜ知っているんだろうか。
そんなに有名になっているのか、その着メロって。
そんなメロディー、事件の関係者しか知らないはずだけど。

王建峰は熱した油まみれで死ぬんだが、だったら悲鳴の一つも上げるだろ。
同じ店内にいて、誰も気付かないってのは不自然だ。
あと、その現場が描写されていないので詳しくは分からないが、たぶん王のケースでは、「勝手に鍋がひっくり返る、もしくは手が勝手に 動いて鍋をひっくり返す」など、超常現象チックな形で殺されたものと推測される。
悪霊が直接的に手を下すのであれば、鍋をひっくり返すより、鍋に王の頭を突っ込んだりするだろう。
で、まどかの時には「超常現象が起きて殺される」というんじゃなくて、悪霊が自ら手を下しているので、ルールの統一感が無いなあと 感じる。

前作では、着信で自分の声を先に聞いて、「死ぬ間際に自分がそのセリフを言ってハッとする」という仕掛けだったように記憶しているが 、今回は、そういう演出が無い。
王は自分の声じゃなくて美鳳の声を聞く。で、死ぬ直前に、美鳳が同じセリフを言うわけでもない。
いきなり「ルール無用の世界へようこそ」である。
ヴァーリ・トゥードでも最低限のルールはあるのに、ノールールだ。
しかも王が死ぬ様子は描写されない。だったら、ホントに呪いで死んだかどうかも定かじゃないだろ。
いや分かってるけどさ、そこはちゃんと「呪いで殺された」という表現にしておかなきゃダメでしょうが。
で、飴玉も出ないので、「統一感が無いなあ」と思っていたら、話が進む中で、「そもそも犯人が1年前とは別人」という流れになって いく。なんだ、そりゃ。

なぜ本宮や孝子は、王の事件を「1年前の事件と関連がある」と睨んだのだろうか。
まだ事件は起きたばかりで、油の鍋をひっくり返して死んだことぐらいしか判明していないはず。その時点で、1年前の事件と結び付ける モノは何も無いだろうに。
ひょっとすると、こいつらは、東京で発生した全ての事件について、1年前の事件との関連を調べているんだろうか。
なぜ張偉が李麗に殺されるのかが分からない。
どういう繋がりで、李麗の呪いの電話が彼まで到達したんだろう。ずっと日本にいたはずなのに。
で、それはまだしも、刑務所にいる頃から「女の子が自分を殺しに来る」と怯えていたのは、もっと良く分からない。
それは李麗に怯えていたのか。だとしたら、刑務所に入っている頃に、携帯に着信が来たってことになるぞ。それは変だろ。もし李麗じゃ なく美々子に怯えていたとしたら、その美々子じゃなく李麗に殺される話の構成に問題アリだと思うし。

「アジア市場でのヒットを狙って、今回は台湾をメインの舞台にしよう」というところから続編の企画が立ち上がっているんだろうと 思われる。
で、その立ち上げからして「着信アリ」ならぬ「問題アリ」だとは感じるけど、そこに問題があったとしても、日本で起きた事件と台湾を 関連付けるために労力を注ぐのが、映画人としてやるべき仕事だ。
ところが、そこが完全に手抜き作業になっている。
今回の話と美々子の起こした事件って、まるで関係ないじゃん。
どうやって関連付けるんだろうと思っていたら、「実は台湾の少女が起こした事件でした」ということで話を進めて、美々子はどうでも いい存在になっている。

美々子の遺体から石炭が検出されたところで関連付けているつもりかもしれんが、粗いよ。
っていうか、美々子が呪いの元凶じゃなきゃダメでしょ。それが本作品の最低限のルールなんじゃないの。
「実は美々子じゃなくて今回は別人の呪いです」って、なんちゅうハシゴの外し方だよ。
それは1作目と2作目の犯人が異なる『13日の金曜日』シリーズへの遠いオマージュか何かなのか。

王も張偉も「見つけたら死んでいる」という形なので、呪いの殺人をちゃんと描写するのは、まどかのケースだけ。そのまま後半に入る まで、呪いの伝染・進行が全く無い。
恐怖を煽るような演出も、ほとんど見られない。尚人が壊して捨てた後、杏子の携帯は出て来ないが、「捨てたはずなのに、どこからか 着メロが鳴って、なぜか携帯が近くにある」という風な怖がらせ方も無い。
「呪いの根源はどこにあるのか」「どうやったら呪いを解くことが出来るのか」という謎解きに軸足を置いて進めているようだが、そこに 惹き付けるモノは無い。どうせマトモな謎解きにはならないだろうって、こっちは見透かしちゃってるからね。
陳腐なミステリーよりは、コケ脅しホラーの方が、まだ見られるモノがあるんじゃないかと思っちゃうのよね。

もうすぐ死ぬというのに、杏子の切迫感が足りない。一時期はノイローゼ状態になるが、尚人に元気付けられると、その後はすっかり 落ち着いてしまう。
冷静沈着なスクリーミング・クイーンなんて、有り得ないからね。もっとビビったり、焦ったり、叫んだり、ある意味、狂ってくれないと 。
彼女だけじゃなくて、尚人と孝子も、どことなくノンビリしている。っていうか全体的にマッタリしている。タイムリミットがあるのに、 そういう類の緊張感が伝わってこない。
マッタリしちゃってる最大の原因は、やはり呪い殺されるシーンの少なさだろう。得体の知れない何かが近くに潜んでいるとか、奇怪な 現象が起きるとか、そういうモノでビビらせることがほとんど無いのだから(まあ「電話で呪いが伝染する」という性質上、なかなか 難しい部分はあるだろうが)、後は「人が呪いによって残虐な殺され方をする」というところで怖がらせていくしかないと思うんだが、 それが前半にわずか1回しかないからね。
そりゃキツいよ。

孝子の過去をクローズアップすることは、話を分散させてマイナスに作用している。
っていうか、途中から杏子のことはどうでもよくなってるぞ。
あと、孝子が過去の罪を引きずっている設定って必要かな?
それが無くても、「彼女が李麗と共鳴する」という展開において、支障は無いでしょ。
杏子なんて、そんな過去は無いけど李麗に同情しているし、簡単に共鳴しそうな感じだぞ。

坑道に入ってからは、演出のマズさに映像の暗さも重なって、目の前で何が起きているのかも良く分からない。
だけど、あまり支障は無い。だって、その頃には「もうどうでもいいや」という気持ちになっちゃってるから。
どうせ見逃したところで、大したことは起きてないって分かってるし。
ただ、何が起きてるか良く分からないから、怖がりようがないけどね。

終盤、杏子の携帯から例の着メロが鳴った時、尚人は自分が取ることによって自分が身代わりになるという手段に出る。
だけど、最初に杏子が電話を受けた時点で、呪いの相手は彼女に決定してるんじゃないの。
後から掛かってきて(なぜ何度も掛かってくるのかも疑問だが)、それを他人が受けたら、呪いはそっちにバトンタッチするの?
だとしたら、アタッシェケースに入れておいた携帯を投げ捨てた時に画像が写っているから、その時点で尚人に呪いは移ってるんじゃ ないの。
もうメチャクチャだな。

(観賞日:2009年8月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会