『首都消失』:1987、日本

大阪。関西放送の番組『午後のワイドショー』に出演しているフリーキャスターの小出まり子は、恋人である関西放送報道部員・田宮洋介の車で新大阪駅へ向かっていた。彼女は1年前から週に2日だけ、仕事のために大阪を訪れている。台本を読んだまり子は番組内容に不満を抱き、「秋の編成で東京テレビから誘われてるのよね」と口にした。「どうなるんだよ、俺たちの関係は」と田宮が尋ねると、まり子は笑ってはぐらかした。車は新大阪駅に到着し、まり子は車を降りた。
東京行きの新幹線に乗り込んだまり子は、東京都杉並区に住む母・梅子に電話を掛けた。梅子は、3歳になるまり子の娘が風邪気味なので医者に診てもらうことを話した。さらに梅子は、霧が出ていることを告げた。北斗電機技術開発部長の朝倉達也は、名古屋駅から川崎市百合ヶ丘の自宅へ電話を掛けた。彼は妻の由美子に、「本社で会議の後、厚木の中央研究所に寄る」と告げた。朝倉が仕事で多忙なため、夫婦仲は上手く行っていなかった。由美子は話し合いの場を持とうとしていたが、朝倉は「仕方ないだろ、仕事なんだから」と苛立った口調で言う。由美子が「もう改めて話し合うこともなさそうだわ」と告げた直後、雑音が入って電話は切れた。
由美子が台所にいると、予備校の合宿に行く長男が2階から降りて来た。停電が起き、水道とガスも止まった。由美子が外に出ると、異様な雲が空に広がっていた。関西放送報道部に戻った田宮は、東京からの電波が全て遮断され、電話だけでなく警察無線まで通じなくなっていることを知った。報道部長の川村は、ネットワークで最も近い駿河テレビに連絡して中継車を出してもらうよう、部下に指示を出した。特ダネになると感じた田宮は川村の指示を待たず、カメラマンの小山と共にヘリコプターで東京へ向かった。
富士川の辺りを走る新幹線では、列車の遅れや電話が繋がらないことに対して不満を抱いた乗客たちが、車掌に詰め寄っていた。その先頭に立っているのは、郵政大臣の秘書・三好大一郎だった。東京だけでなく、その周辺地域との通信も不通になり、電気とガス、水道が寸断される状況となっていた。新幹線では、朝倉とまり子が通路を挟んだ席に座っていた。朝倉は親友である航空自衛隊二等空佐・佐久間英司に声を掛けられた。佐久間が「三島駅に公用車を呼んだ。良かったら乗っていくか」と誘うので、朝倉は同乗させてもらうことにした。話を聞いていたまり子は、「ご一緒させて頂けないでしょうか」と頼んだ。そこへ三好が来て、彼も同乗することになった。
公用車で東京方面へ向かう途中、佐久間や三好は関係機関に連絡を取ろうとする。だが、海上司令部や国会とも連絡は取れない状態だった。三好は「箱根の方に急用が出来た」と言い、途中で車を降りた。田宮の乗ったヘリは、異様な雲に近付いていた。自衛隊機が雲に突入するが、爆発してしまった。朝倉やまり子たちは、異様な雲が東京を覆い隠している様子を目にした。雲から10キロ圏内が飛行禁止区域に指定されたという連絡が入ったため、田宮の乗った取材ヘリは退避した。
公用車は北斗電機中央研究所に到着し、朝倉とまり子が降りた。出迎えた研究所員の安原は、まだ本社とは連絡が取れないことを朝倉に話した。朝倉が研究所に入ると、アルバイトの松永美恵子や研究所員の竹田たちがいた。テレビの臨時ニュースでは、東京湾で雲に衝突した大型タンカーが爆発したこと、津波が発生して転覆事故が起きていること、鉄塔が倒れて火災が発生していることが報じられた。観測衛星の映像により、謎の雲は直径50キロ、高さ2000メートルに及ぶことが分かった。
中央研究所には、技術顧問である筑波大学電子工学教授・大田原権造が来ていた。朝倉は、彼に、調査協力を求めた。既に大田原は市や警察から依頼を受けており、調査のために必要な計器類は用意してあった。まり子は朝倉に、同行取材を申し入れた。田宮は川村からの電話で、まり子と合流するよう指示された。ニューヨーク発東京行きのJAL005便に乗っていた外務省国際局次長の堀江は、航空無線を利用させてもらい、大槻駐米大使と話す。大槻は「今夜は在日米軍と自衛隊の事務レベルの会合がある」と言い、参加するよう指示した。本来なら参加すべき人物は全員が東京におり、連絡が取れない状態となっているからだ。
朝倉たちが調査に出向くと、そこに田宮と小山がやって来た。城南医大の久保教授は先に来ており、医学的調査を行っていた。彼は朝倉や大田原たちに、雲に有毒性は無いこと、しかし入っていくと酷い頭痛と耳鳴りがすることを話した。超音波検査を行った朝倉たちは、道路が雲の中で切れていることを知った。彼らは車に長い竹竿を取り付け、雲の中に足を踏み入れた。途中で電波障害が発生し、まり子たちのマイクやカメラは使えなくなった。さらに先へ進むと、あちこちで激しい火花が散った。
これ以上は危険だと感じた朝倉は、前進を中止した。彼は同行した警官の拳銃を借りて発砲し、力場が生じていることを確認した。株価が激しく変動する中、商社マンの浦部は電話を掛け、「建築資材を早く押さえろ」「原油を買い叩け」と指示した。三好は箱根で病気療養中だった民主党の前幹事長・中田と会い、国政の舵取りを依頼した。大阪府知事の小室達夫も中田に電話を入れ、同様の依頼をした。
マスコミは謎の雲を「物体O」と名付け、テレビ番組に出演した学者は「宇宙的現象ではないか。解明の糸口は見えないし、物体の中にいる二千万人の安否も分からない」と述べた。海上自衛隊の厚木基地では会合が開かれ、佐久間や堀江たちが出席した。米軍から参加したローガン准将たちは、ソ連が空母を極東方面へ向かわせているという情報を得ていた。ローガンは日本側に、国務省と国防総省の要人が横田基地へ来ることを話し、12時間以内に協議できる体制を整えるよう要請した。朝倉の元には、中学生の娘・佐和子から電話が入った。佐和子はクラブ活動で奈良へ行っており、京都にある親戚の家から電話を掛けていた。娘の無事を知った朝倉は安堵した。
次の日、異常物体O対策本部が設置され、自衛隊や消防署のヘリコプターや車両が集結した。有人潜水調査船しんかい2000が出動し、物体によるバリアーは海底深くまで及んでいることが判明した。堀江は大槻駐米大使、植草駐英大使の2人とテレビ会議を行い、「臨時の政府代行機関が出来るまでは時間稼ぎをするしかない」と告げた。大槻も植草も、米ソ軍部の動きを懸念していた。中央研究所の面々が調査を続ける中、安原の元には妻の敬子から電話が掛かって来た。「今月分の給料が振り込まれていない」と文句を言う妻に安原は苛立ちを覚え、「そんなことでいちいち電話してくるな」と怒鳴って受話器を置いた。
緊急全国知事会議が開かれ、小室は全国知事会を暫定的な国政代行機関にすることへの同意を求めた。招待された中田が話し始めようとした時、停電が起きた。大阪の他の場所でも停電が発生するが、それは関西人民軍ゲリラの仕業と判明した。朝倉たちの調査によって、物体Oの中身が空洞であることが分かった。エコーの二重現象が起きたからだ。「薄くなった場所なら穴を開けられるかもしれない」と朝倉が言うと、大田原は「筑波高エネルギー研究所の実験によると、物体Oから放出されている素粒子のエネルギーは100万兆電子ボルトを超えている。人類には作り出せないエネルギーだ」と述べた。
物体Oの内部にいる人々の生存率についてコンピュータで目安を計算した結果、4週間から8週間は生存可能という答えが弾き出された。ただし火災が発生していれば、数日しか生きられない。大田原は仕事に没頭する朝倉とまり子に「鮎でも食べに行こう」と持ち掛け、実家の旅館へ赴いた。そこでは恵子が仲居としてアルバイトをしていた。佐和子が旅館に来ていたので、朝倉は抱き合って喜んだ。
夕食の席で、朝倉は佐和子から、由美子が良く酒を飲んでいたことを聞かされる。「パパが単身赴任で、ママは寂しかったんだよ」と佐和子に言われ、朝倉はショックを受けた。深夜、まり子は庭に出ている朝倉を目撃し、声を掛けた。朝倉は彼女に、「女房がそこまで追い詰められていたのに、分かってやれなかったなんて亭主失格です」と告げた。まり子は2年前に離婚したこと、夫から家庭に入ってほしいと求められて仕事を選んだことを話した。
翌朝、まり子は恵子と佐和子から、東京にいる兄の声を聞いたという少年の存在を知らされる。アキラという少年は、双子の兄であるヒロシからのメッセージをテレパシーで受け取ったというのだ。母の光子は「子供の戯言ですから」と言うが、祖父の松吉は「そんなことねえ。爺ちゃんは信じるぞ」と口にした。田宮は浦部と情報交換し、対日貿易で強硬的な考えを持つ米国のピンター上院議員が厚木基地にやって来たことを知った。
大田原は米国から共同調査の申し入れを受け、朝倉とまり子を伴って厚木基地へ赴いた。米国調査チームの団長は、大田原の友人であるコロンビア大学のバーナード博士だ。朝倉は米国チームと共に専用機へ乗り込み、雲の中へ向かった。雲の切れ目が見つかったため、朝倉は観測筒を落下してもらう。切れ目はすぐに消えるため、それに伴って観測筒は爆発した。一つだけが雲を通り抜けるが、電波障害で映像は乱れた。新宿や渋谷周辺で火災が起きていないことだけは分かったが、人の姿までは確認できなかった。
雲の中から高エネルギービームが放出され、専用機は損傷した。米国チームの2名が死亡し、朝倉も大怪我を負った。専用機は何とか基地に帰還し、朝倉は病院に運び込まれた。大田原は浜名湖で中田と小室に会い、バーナードが調査結果を教えてくれないことを話す。大田原は2人に、米国が雲のパワーを軍事利用しようと企んでいるのではないかという推測を語った。意識を取り戻した朝倉は、まり子に頼んで上着のポケットに入っている手紙を取り出してもらう。朝倉が「離婚届です。見て下さい」と言うので、まり子は驚いた。朝倉は離婚届を破り捨て、「僕はね、必ず助け出しますよ。僕の妻を」と力強く告げた。
次の日、朝倉は勝手に病室を抜け出し、中央研究所へ赴いてコンピュータに向かう。まり子や大田原たちが駆け付け、無理をせずに病院へ戻るよう促した。大田原は朝倉に、服のポケットに入っていたメモの内容について質問した。朝倉は「高度1200メートルの雲の中で、センサーが掴んだデータです」と説明し、コンピュータで計算した。その結果、雲の内部は炭酸ガスと水蒸気が多いこと、気温は30度を超えていること、人々が蒸し風呂状態で閉じ込められていることが分かった…。

監督は舛田利雄、特撮監督は中野昭慶、原作は小松左京(徳間書店刊)、脚本は山浦弘靖&舛田利雄、製作は徳間康快&村上七郎、企画は巻幡展男&荒井修&山本洋、プロデューサーは溝口勝美&柏原幹、アソシエイト・プロデューサーは飯泉征吉&和田康作、クリエイティブ・アドバイザーは永田貴士&鹿野司、撮影は飯村雅彦、美術は育野重一、照明は川崎保之丞、録音は瀬川徹夫、編集は谷口登司夫、音楽はモーリス・ジャール、音楽プロデューサーは三浦光紀、音楽監督は松居和、編曲はゲーリー・ストックデール&松居慶子、ミュージックアドバイザーは鈴木清司。
挿入歌「LONELY CRY」作詞:松村冬風、作曲:松居慶子、歌:松村冬風。
出演は渡瀬恒彦、名取裕子、山下真司、丹波哲郎、大滝秀治、石野陽子、夏八木勲、三木のり平、竜雷太、渡辺文雄、石橋蓮司、財津一郎、ザ・ぼんち・おさむ、松村冬風、津村隆、加藤治子、安井昌二、海老名みどり、平淑恵、濱田万葉、浅利香津代、江角英明、岸部一徳、星正人、秩父俊哉、大村浩之、清水大敬、石川裕介、並木史朗 、苅谷俊介、平泉成、曽雌達人、丹波義隆、掛田誠、宮内洋、うえだ峻、健名敏幸、堀正彦、清川元夢、篠原大作、岸野一彦、毛利八郎、石原悦子、那知武敏、井上大輔、井村翔子、助川未華、中村久光、青木義朗、相馬剛三、浜田晃、児玉謙次、梅野泰靖、大塚国夫、不破万作、山本亘、田口計ら。


小松左京の同名SF小説を基にした作品。
監督は『宇宙戦艦ヤマト』『愛・旅立ち』の舛田利雄。
朝倉を渡瀬恒彦、まり子を名取裕子、田宮を山下真司、中田を丹波哲郎、大田原を大滝秀治、木村を三木のり平、川村を財津一郎、美恵子を石野陽子、佐久間を夏八木勲、堀江を竜雷太、小室を渡辺文雄、三好を石橋蓮司、小山をザ・ぼんち・おさむ、浦部を津村隆、梅子を加藤治子、大槻を安井昌二、敬子を海老名みどり、由美子を平淑恵、佐和子を濱田万葉、光子を浅利香津代が演じている。

音楽担当は世界的なビッグネームのモーリス・ジャールだが、冒頭で流れて来るBGMからして、なんか違和感を覚えてしまう。
スケールは壮大だが、やけに爽やかな印象なんだよね。
そこで描かれるのは、まだ何も起きていない朝の情景なので、映像とのマッチングとしては間違っていない。
ただ、そこで『首都消失』という題名が出ちゃうんだし、もう不安を煽るようなBGMで良かったんじゃないかと。
そこに「爽やかな朝」からの落差ってのは、必要ないかなと。

東京が雲に覆われた後、中の様子は全く描かれない。中に取り残された朝倉やまり子の家族の様子も、全く分からないままだ。
だったら、もっと徹底してしまった方がいい。
まり子が電話を掛けた時に梅子が「霧が出てる。こんな時期に変だ」と語るシーンも、由美子が自宅にいる時に電気とガスと水道が止まるという描写も、外に出たら異様な雲が広がっているという描写も、無くした方がいい。
これから東京が雲に覆われるという予兆を中の人々の視点から描かず、もう完全に「雲の外からの情報しか無い」という形にした方がいい。
朝倉たちが物体Oに覆われる東京を見て驚くシーンで、観客も初めて何が起きているのか分かるという形にした方がいい。

取材に取り掛かったまり子は、田谷から「心配にならないのかよ。この雲の中の由美ちゃん(娘)やお母さんのことが」と責めるように言われ、「心配したら、この雲が晴れてくれるの?」と強気な態度で反論する。
そりゃ正論ではあるし、取材に全力を注ぐのも構わない。ただ、ホントに母と娘を心配する様子ってのが、その時点では皆無なのよね。
それと、「人々を救うために、家族の心配は後回し」ということなら分かるが、「取材が大事だから、家族の心配は後回し」ってのは、まるで共感を誘わないしね。
朝倉が佐和子からの電話で安堵した後、まり子が娘を心配する描写が入るが、「そりゃあ、その場面では、さすがに心配するだろ」としか思えない。何のリカバリーにもなっていない。

原作は「首都機能が停止した時、日本の政治や経済はどうなるのか」ということを描くシミュレーション小説だが、この作品では、そのアプローチを完全に捨て去り、パニック映画として仕上げている。
政治や経済に関わるシーンが無いわけではないが、そこで描かれるのは「私欲や国益のために今回の出来事を利用しようと企む人々の醜さや身勝手さ」が大半で、シミュレーションとしての描写は薄い。
雲に覆われた二千万人の安否がどうなっているか分からない状況なのに、金儲けのために原油を買い叩く商社マンとか、大臣を裏切って前の幹事長を担ぎ出そうとする議員秘書とか、そんな奴らの醜い人間模様を描かれても、「だから何なのか」と言いたくなる。そんなことよりも、雲を突破して(もしくは消滅させて)中の人々を救い出そうとする様子を描いてくれと。
パニック映画として作るのであれば、そうすべきじゃないかと。

東京が消失(実際に無くなったわけではなく、雲に隠れて見えなくなっているだけだが)しても、それによって差し迫った大きな問題が発生しているようには見えない。
すぐにテレビ番組の放送は復活するし、東京以外の地域では電気もガスも水道も普通に使うことが出来ている。
株価が激しく変動するとか、銀行の小切手や為替取引が停止するとか、東京近辺の交通がストップするとか、そういう影響は出ているが、どれも人命に関わることじゃないので、「差し迫った危機」には感じない。
やっぱり、そもそもパニック映画として作るには、ちょっと難しい内容の原作小説ではあるんだよな。

雲によって東京が消失しても、外にいる人は政治や経済といった問題以外で直接的なダメージを受けるわけではない。終盤に入るまでは「雲がどんどん広がっている」ということもないし、「あと何日、何時間で雲の中にいる人々が確実に死ぬ」というタイムリミットが定まっているわけでもない。
中の人々の様子が全く分からないこともあり、緊迫感や危機感ってものが、なかなか高まって来ない。
おまけに、外にいる人々が、前述のように私欲にみまれた行動を取っていたり、まり子が朝倉に惚れたり、田宮が嫉妬したりと、ますます危機感を削ぐようなことになっちゃってるし。
どうでもいいわ、外の連中の恋愛劇なんか。
これが外にいる人と中に取り残された人のカップルで、「惚れた相手を絶対に助け出す」「惚れた相手に必ず再会する」という強い思いで行動する、というところで恋愛要素を利用するのなら、それは話が違ってくるけど。

終盤、中の人々が蒸し風呂状態を余儀なくされていることが分かった後、まり子と田宮は外に出る。雲の近くでは多くの屋台が出ており、屋外ステージでは松村冬風のロックバンドが演奏している。
田宮は「とんだバカ騒ぎだな」と吐き捨て、松村を殴り倒す。だが、彼らは中に取り残された仲間がロック好きなので、力付けようとして演奏していたことを明かす。まり子が「弾いてあげて」と言うと、松村はギターを弾きながら挿入歌のバラード『LONELY CRY』を切々と歌い出す。
いやいや、お前、それまでノリノリのインスト曲を演奏していたじゃねえか。
しかも、まり子は「弾いてあげて」と言っただけで、「歌ってあげて」とは言ってねえよ。なんで急に歌モノに変えたんだよ。
それに合わせて仲間たちも合唱するけど、これっぽっちも感動なんかしねえぞ。
むしろ、聴いてて恥ずかしくなるぞ。

雲の中にいる人々を助け出すために、まず雲の正体を調べようということになる。で、雲の正体についての情報が少しずつ分かって来るが、救出のためのミッションに入るのは、残り20分ぐらいになってから。
で、SCMトラックという特殊車両を使った最初の作戦が失敗に終わり、台風が来たことで作戦は中止になる。だが、朝倉は「落雷の地場との相乗効果を利用すればいい」と考え、勝手にSCMトラックで雲へ突っ込む。でも失敗して怪我を負い、戻って来る。
激しい落雷があるので野次馬的な連中は退避しているが、松村冬風だけは仲間が去った場所でギターを弾きながら『LONELY CRY』を切々と歌う。
その姿は、マヌケにしか見えない。

朝倉が怪我を負って救出された後、田宮は急に使命感を燃やして「次は俺が行く」と言い出し、SCMトラックに乗り込む。専門家でもなんでもない、ただの報道部員なのに、勝手にSCMトラックを運転して雲の中へ入っていく。まり子は徒歩で追い掛け、2人とも気絶する。
で、目を覚ますと、なんか良く分からんが穴が開いており、2人は生きている犬を見つけて喜ぶ。
突如として雲が晴れて、朝倉たちが喜んでオシマイ。
なんだ、そりゃ。
約2時間の上映時間を使って、起承転結の「起」の部分だけを延々と描き、最後になって急に短い「結」が来るような構成なのだ。
あとさ、犬は生きていたけど、中の人々が生きているかどうかは分からんぞ。

政治や経済の動きを描くシミュレーション作品であれば、雲の正体がハッキリしないままでも、それは別に構わないかもしれない。
何もしていないのに急に雲が晴れるという展開でも、それは別に構わないかもしれない。
なんせ、そこにテーマが無いわけだからね。
だけど、これはパニック映画であり、「雲の正体を探り、中の人々を救い出そうとする」という連中の様子をメインに描いているのだから、そこの処理がテキトーじゃダメでしょうに。

(観賞日:2013年8月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会