『シュアリー・サムデイ』:2010、日本
高校3年生の喜志巧、真鍋京平、後藤和生、北村雄喜、岩崎秀人は学校の教室を占拠し、中止となった文化祭の復活を要求した。彼らは 校庭にある小屋を爆破し、教室にも爆弾を持ち込んでいた。教頭は脅しに屈し、文化祭の復活を約束する。喜ぶ巧たちだが、コードを切断 してもタイマーが止まらない。しかも、中身は空だったはずなのに、京平が勝手に火薬を入れていた。巧たちは慌てて教室を飛び出すが、 雄喜だけは逃げ遅れて爆発に巻き込まれた。
それから3年が経過した。爆破事件の後、巧は退学になり、刑事だった父・建夫は退職に追い込まれた。巧は彼女にフラれ、現在は建夫の 始めたバーの手伝いをしている。今でも巧とつるんでいる京平は、退学になった後、彼女が欲しくて大検を受けた。奇跡的に三流大学に 合格したが、未だに童貞のままだ。ある日、2人は金髪女が道に飛び出して車にぶつかるのを目撃した。車から出て来たヤクザの男が 近付くと、女は平然と立ち上がった。そして男の拳銃を奪って脅し、彼の車に乗り込んで逃走した。
巧と京平は、ヤクザが和生だと気付いて驚いた。和生は2人に気付くが、すぐに女を追い掛けた。その夜、巧と京平がバーにいると、和生 が「組長に追われている」と言って逃げ込んで来た。彼が身を隠した直後、組長の亀頭がやって来た。彼は和生を捜すが、見つからない。 巧と京平が同級生だと知った亀頭は、「明日の夜までに和生と彼が奪った3億円、用意しておいてくれるかな」と言う。亀頭は威嚇発砲し 、店から出て行った。
和生は巧と京平に「俺は奪ってねえよ」と言い、奪われた車に金を積んでいたことを説明する。彼は巧に、「金髪はカツラだ。あの女、 ガキの頃、お前のお袋だと思って歌舞伎町にまで捜しに行った女だ」と告げる。巧は10年前の出来事を回想する。彼は風俗雑誌に建夫が 丸を付けているのを知り、歌舞伎町にあるソープランド『はっぴーナイト』のヒメノという女が自分の母親ではないかと考えた。巧は建夫 から、母は自分が産まれてすぐ死んだと聞かされていたが、離婚してどこかにいると信じていた。
巧は仲間4人にそのことを話し、みんなで歌舞伎町へ出掛けた。巧は1人で店に入り、ヒメノを呼んでもらう。ヒメノが「私、幾つだと 思ってるの」と笑うと、巧は「お姉さんがお母さんじゃないって、知ってた」と言う。「だったら、なんで?」と訊かれ、「お父さんが お母さん以外の人を好きになったんじゃないかって」と彼は答えた。ヒメノは「お父さんは寂しさを紛らすために会いに来てるだけ」と 微笑した。彼女は巧を誘惑し、その手を握って自分のオッパイに触れさせた。
ヒメノは巧の父親が刑事だと聞き、慌てて別の部屋にいたヤクザの飯島と子分たちに知らせた。飯島たちが麻薬を持って逃げようとした ところへ、建夫が部下たちを引き連れてやって来た。彼は飯島を検挙するため、潜入捜査で店に来ていたのだ。飯島は発砲して逃走し、 置き去りにされたヒメノは連行されることになった。ヒメノは巧を見つけ、「誰も私なんて好きにならない。私は汚れちゃったの」と言う 。巧が「お姉さんはキレイだよ。俺は好きだよ」と告げると、彼女は抱き締めて「君が大きくなったら、お嫁さんにしてくれる?」と 問い掛ける。巧は「いいよ。俺がお姉さんを守ってあげる」と言い、彼女を見送った。
巧が回想を終えたところへ、建夫がやって来た。建夫は売上金を回収し、「お前らな、そうやって一生、傷の舐め合いやってろ。じゃあな 、負け犬」と告げて店を去った。巧は女を捜し出して3億円を取り戻そうと決意した。巧、京平、和生は、ストリート・ミュージシャンを している秀人の元へ行く。彼は退学になった後、親に家を追い出され、ストリートで音楽活動を続けていた。秀人を加えた4人は歌舞伎町 で聞き込みをするが、ヒメノの情報は得られなかった。
和生は飯島の子分たちが来るのを見つけ、「やべえ、逃げるぞ」と巧たちに叫ぶ。追われて逃亡する最中、秀人は「女の本名は美沙だ。 宮城さん覚えてるか。美沙さんは宮城さんの女だ」と告げた。彼は3年前のことを語る。ある日、5人はナンパに出掛け、秀人は3人の 女子高生を簡単に落とした。その直後、彼らは路上でギターを演奏している宮城祐と遭遇する。その演奏を聴いて感動した秀人は、巧たち に「バンドやんねえ」と持ち掛けた。雄喜の父・雄一郎が、楽器の演奏を教えてくれることになった。
秀人が路上で宮城と話していると、彼の恋人・葉月美沙が来た。それがヒメノと同一人物であることを、秀人は今になって気付いたのだ。 巧たちは練習を重ねたが、文化祭の中止を知った。それを秀人から聞かされた宮城は、「関係ねえよ。楽器があれば、どこでもステージに なる」と言う。彼は秀人に、「美沙と一緒になろうと思ってる」と明かした。巧は京平たちに、教室を封鎖して文化祭の復活を大人たちに 訴えようと提案した。まず校庭にある小屋を爆破し、教室には火薬を入れない爆弾を用意するという計画だ。爆破事件の直後、秀人は いつもの場所へと走ったが、そこに宮城はいなかった。
秀人は巧たちに、それから宮城とは一度も会っていないことを語る。しかし爆破事件の数日後、彼は雄一郎が支店長を務める銀行の裏口で 、美沙を目撃していた。美沙は雄一郎と何か話していたらしい。4人は雄喜の家へ赴き、母親の美和子に美沙の写真を見せるが、知らない 女性だという。雄喜のことを尋ねると、相変わらず家から一歩も出ないらしい。退学して1ヶ月後に父親が自殺し、彼は心を閉ざして しまった。ただし巧たちは、爆破に巻き込まれて左腕が無くなったという噂は嘘だと知る。
巧たちは、3年前に仲良くしていたホームレスの露天商・やっさんの元へ赴いた。やっさんによると、宮城は弁当屋でバイトしていた らしい。やっさんは、3年前に美沙と宮城がヤバい連中に車に押し込まれたのも目撃していた。それ以来、2人の姿を見ていないという。 巧たちが弁当屋へ行くと、女店長は「宮城君なら、もういないわよ」と言うが、何か隠している様子だった。そこで秀人が誘惑し、「もう 亡くなったっていう話よ」という証言を得て、宮城の住所も聞き出した。
巧たちは宮城が住んでいたというアパート「月見荘」へ赴いた。ドアには鍵が掛かっていたが、和生が激しく殴って壊してしまった。中に 入ると誰もおらず、宮城の位牌が飾られていた。位牌を見た巧たちは、宮城が3年前の9月15日に死んだことを知る。それは爆破事件の日 だった。4人が墓地へ行くと、美沙が墓参に来ていた。巧は京平から「なんで彼女がここにいるって分かったんだよ」と問われ、「なぜ 昨日、事件が起きたのか。全ては偶然じゃなく、必然だったっていうことだ」と答えた。
巧は美沙に、なぜ3億円を奪ったのかを尋ねた。美沙は詳しい事情を語り始める。飯島に裏切られた彼女は、麻薬取引の罪を全て背負って 6年間を過ごした。3年前に出所した美沙は、当てもなく歩いている時、宮城の演奏を聴いた。金の入った封筒を置いて去ろうとすると、 「良かったら飲みに行かない?」と誘われた。美沙は宮城との同棲生活を始めた。音楽プロデューサーが演奏を聴きに来てくれることに なり、その前日、宮城から「結婚しようか」と言われて美沙は喜んだ。
しかし翌日、飯島の一味が現れ、美沙と宮城を拉致した。宮城を助けるため、美沙は飯島の元へ戻った。美沙はマネーロンダリングの仕事 を飯島に任された。雄一郎は飯島から「協力しなければ家族の命は無い」と脅された。雄一郎は協力を強いられ、そして自殺した。遺書で マネーロンダリングの実態は全て明らかにしていたが、それは表に出ていない。美沙は「絡んでいる組織はとてつもなく大きい。事件を 簡単に握り潰せるぐらいに」と巧たちに告げた。
組織の下にいた飯島は潰されかかったが、幹部を殺して海外へ逃亡した。美沙は飯島から解放され、拉致された日に宮城が殺されていた ことを知った。彼女は復讐のために飯島を捜したが、見つからなかったという。和生は、前の組長が飯島という名前だったことは知って いた。彼は困惑の表情で、「今の組長は亀頭っていうんですよ、俺を襲ったって何の復讐にもならないですよ」と美沙に告げた。
その時、背後から「なるほど、そういうことだったのか」という声がした。いつの間にか、墓地には亀頭と子分たちが来ていた。和生が組 に持たされている携帯にGPS機能が付いており、追跡されていたのだ。亀頭を見た美沙は、飯島が整形して姿を変えていると見抜いた。 亀頭は美沙を連行し、子分に巧たちの始末を命じた。巧は亀頭を後ろから蹴り倒し、美沙を奪還した。他の3人も隙を見て逃げ出し、車に 乗り込んだ。巧たちは逃亡するが、すぐに捕まる。だが、美沙の姿は無かった。車の中で、やっさんと服を交換して摩り替わっていたのだ 。亀頭は巧たちを恫喝し、明日までに3億と美沙を用意するよう要求した…。監督は小栗旬、脚本は武藤将吾、プロデューサーは山本又一朗、共同プロデューサーは佐谷秀美&池田宏之、ラインプロデューサーは 大里俊博、アソシエイトプロデューサーは野村祐人、撮影は千葉真一、照明は高坂俊秀、録音は小原善哉、美術は橋本創、編集は掛須秀一 、音楽は菅野よう子、音楽プロデューサーは富永恵介。
出演は小出恵介、勝地涼、鈴木亮平、ムロツヨシ、綾野剛、吉田鋼太郎、岡村隆史、竹中直人、小西真奈美、モト冬樹、原日出子、 遠藤憲一、山口祥行、高橋光臣、須賀貴匡、高橋努、横田栄司、笹野高史、井上真央、阿部力、大竹しのぶ、津田寛治、妻夫木聡、 上戸彩、北村匠海、富永凌平、佐々木隆一朗、高橋宜亜、星野亜門、福島靖夫、咲世子、徳田公華、麻亜里、八木のぞみ、河村賢治、 磯村竜太、叶雅樹、俵広樹、安田桃太郎ら。
俳優の小栗旬が初めて監督を務めた作品。
彼があらすじを考え、『クローズZERO』の武藤将吾が依頼を受けて脚本を執筆している。
巧を小出恵介、京平を勝地涼、和生を鈴木亮平、雄喜をムロツヨシ、秀人を綾野剛、亀頭を吉田鋼太郎、やっさんを岡村隆史、建夫を 竹中直人、美沙を小西真奈美、宮城祐を横田栄司、雄一郎をモト冬樹、美和子を原日出子、飯島を遠藤憲一が演じている。
教頭役で笹野高史、和生の妹・翔子役で井上真央、建夫の部下・若杉役で阿部力、弁当屋の店長役で大竹しのぶ、看守役で津田寛治、 警官役で妻夫木聡、本人役で上戸彩が友情出演し、小栗旬も妻夫木の相棒の警官役で出演している。この映画を取り上げるかどうかは、かなり迷った。
「これがポンコツ映画なのかどうか」というところで、迷ったわけではない。これがポンコツ映画であることは、断言できる。
普段は、駄作だと思ったら、遠慮なく駄作として批評するし、ポンコツだけど魅力的な映画だと感じたら、そういうことに触れた批評を 掲載する。
この映画は駄作だし、魅力的だとも感じないが、「小栗旬の若気の至りということで、今回はスルーしてもいいんじゃないか」ということ で、掲載しようかどうか迷ったのだ。
ようするに、「モラトリアムとして許容すべきなのではないか」ということで、躊躇したのだ。若き新人監督を、あまり批判したくないと いう気持ちになったのだ。ただ、これは深夜枠で放送されたテレビ映画というわけでもないし、小栗旬のファン向けに発売されたDVDというわけでもない。
角川映画やフジテレビジョンという大企業が製作に関わり、松竹という大手映画会社の配給で全国公開された劇場作品だ。
それを考えると、やはり真正面から「駄作」として取り上げざるを得ないだろう。
そして蛇いちご賞で新人賞を受賞していることもあって、ここで取り上げるという判断に至った次第だ。
ただし今でも、この映画の責任の大半は、監督の小栗旬よりも、この企画を通したマタ山本プロデューサー(この映画のプロデューサーで あり、小栗旬の所属事務所の社長でもある)にあると、私は思っている。冒頭、巧たちは教室を占拠する事件を起こし、誤って爆弾を爆発させている。
しかし、仮に爆発しなかったとしても、校庭の小屋は爆破しているし、教室を占拠して学校に脅しを掛けたのだから、その時点で退学に なるでしょ。
だから、まるで「爆破事件があったら自分たちの人生が狂ってしまった」という風な描写になっているのはおかしい。
占拠して爆弾で脅しを掛けている時点で、もはや「ちょっとした悪戯」の領域を遥かに超越しており、明らかに犯罪行為なので、その時点 でアウトなのよね。その爆破騒ぎの際、雄喜だけが取り残されたという設定の意味が薄い。
3年後になってから、巧と京平が「片腕を失ったらしいけど、面会できなかったから噂でしかない」という設定も無理がある。
面会できなかったとしても、片腕を失ったかどうかという情報ぐらいは分かるだろうに。
そんで3年後に家へ行くと拒絶されることも無く母親は喜んで招き入れているわけだから、その気になれば簡単に会いに行けたということ になるし。退学になってから現在までの経緯をナレーション・ベースで足早に説明するが、そこはもう少しボリュームが欲しい。「こういうことが ありまして」というエピソードが少なすぎる。そこはもっと厚みを持たせないと、そういう演出にしている効果が弱くなってしまう。
あと、高校生から3年後に飛んで、そこから巧の回想で10年前に戻るんだが、その構成も上手くない。3年後に飛ぶのはいいけど、そこ から10年前の出来事が関与してくるという部分に問題がある。
せめて戻るのなら3年前でしょ。
「あの頃の俺たちはこういう行動を取ったり、こういう気持ちだったり、こういう人間関係があったりして、それが現在にこういう影響を 及ぼしていたり、こういう変化が生じていたりします」というところで関連付けるのはいいよ。
でも10年前に戻っちゃうと、3年前から物語を始めた意味が薄れてしまう。
「3年前にバカなことをしでかして、そこから何もいいことがなかった冴えない人生だった。だから今回のピンチをチャンスに変えて、 人生をリセットしよう」という流れにすべきではなかったか。巧は「母親は生きていると信じていて、それがヒメノだと思い込んだ」という設定なんだけど、無理がありすぎる。どう考えたってヒメノ は若すぎるし。実際、ヒメノもそう言ってる。
しかも、巧は「俺は、“この女”に会いに行く」とか言っちゃって、母親に会いたいのか、ヒメノに恋心を抱いのか、そこもボンヤリ しちゃってるし。
そこをボンヤリさせてどうすんのよ。
だったら最初から、一目惚れして会いに行くということでいいでしょ。母親を絡める必要性は無い。「お姉さんがお母さんじゃないって、 知ってた」って、何だよ、そりゃ。ワケが分からん。
「お父さんがお母さん以外の人を好きになったんじゃないかって」って、お前は母親の顔も知らないし、会ったことも無いんだろ。 それなのに、そんな感情になるのは不可解だ。「3億円を盗んだのは、巧が少年時代に会いに行った女」ということで10年前の出来事を関連付けることで、話が散漫になってしまう。
色んな要素を盛り込みすぎて、処理できていない。
それに、そういう個人的な少年時代の出来事を絡めることで、「5人の仲間の物語」じゃなくなってしまう。
過去の出来事なんてバッサリと削ぎ落として、3億円を巡るドタバタに絞り込めば良かったのに。巧が回想を終えた後、急に大声で喚いて、「あの事件のせいにして逃げるのはもうやめだ。3億取り戻して、バカで最強だった俺たちを 取り戻す」と言い出すのは、すげえ唐突で不自然。
建夫に「そうやって一生、傷の舐め合いやってろ。じゃあな、負け犬」と言われたのがきっかけなんだろうけど、そもそも「あの事件の せいにして逃げていた」ということが表現されていないから、上手く繋がらない。
「バカで最強だった俺たち」と言われても、3年前のシーンで、バカで最強だった俺たちは感じられなかったし。あと、この時点で、現在の雄喜と秀人が登場していないのも半端だ。
それと、「3億取り戻して、バカで最強だった俺たちを取り戻す」と巧だけが思うのなら、「女を見つけ出し3億円を取り戻さなきゃ いけない」というのは、和生じゃなくて彼が巻き込まれたトラブルにしておいた方がいい。
和生が3億を奪われて、亀頭が仲間である巧たちに要求するという筋も、ちょっと苦しいものを感じるし。っていうかさ、女を見つけて金を取り戻して、それが「バカで最強だった俺たちを取り戻す」ってことに、どうして繋がるのか全く理解 できないぞ。どういう方程式なんだ、それは。
例えばさ、「その3億を横取りして」とか、そういう大それた計画があったりするなら、話は違って来るだろうけど。
金を取り返して亀頭に渡しても、それは「降り掛かったトラブルを解決した」というだけに過ぎないでしょ。
つまり、相変わらず「負け犬人生」に変わりは無いわけで。秀人が宮城の演奏に感動したのなら、宮城の顔をはっきり見せず、遠い絵で見せるというのは間違いでしょ。そこを隠しておくことに何か 意味があるのかと思ったら、次に登場するシーンでは普通に顔を見せているし。
あと、なぜか秀人は仲間たちに「バンドやろうぜ」と言う時点で、宮城の名前まで知っている。彼に弟子入りしたのなら、「秀人が声を 掛けて云々」という手順を踏むべきで、そこを省略するのは上手くない。
何を省略すべきで、何を絶対に描くべきかという判断にも、色々とミスが多い。
っていうか、巧たちが冒頭の爆発騒ぎを起こしたのには、「そういう経緯でバンドを結成して練習したのに文化祭が中止になったから、 納得できずに復活させようとする」という経緯があったわけだが、それを後から遡って描くという構成もマズいでしょ。
だったら、そこから3年後のシーンを描いていくんじゃなくて、その教室占拠事件の解決をクライマックスに持って来る構成にした方が いい。巧に亀頭から助け出された美沙は「私なんかほっとけばいいのに、どうして」と言うけど、アンタを助けようが助けまいが、そのままだと 殺されたわけだから、そりゃあ、そういう行動になるだろ。
少なくとも美沙を連れ去れば、その間は殺されずに済むし。
そこは「そのまま立ち去れば巧たちは無事に済んだのに、美沙を助けて自ら危険に首を突っ込んだ」という形にしておくべきであり、 「自分たちも亀頭一味によって殺されそうになる」という形にすべきではないのだ。亀頭一味が、大勢の人々がいる中で拳銃を構えたり発砲したり巧たちを暴行したりするのはメチャクチャだ。
3年前は、たまたま交番の警官がいなかったから美沙と宮城を拉致してもバレずに済んでいるけど、そこは無理だろ。警察を呼ばれちゃう だろ。
そういうことを考えずに行動しているのが、アホにしか見えない。
「そういうことを平気で握り潰せるほど巨大な組織」という風にも、全く見えないし。
それを見ていた連中が呑気に拍手しているってのもメチャクチャだ。っていうか、そもそも巧たちが美沙を奪還して逃げたのに、すぐに捕まって脅されるという展開自体が冴えない。
そこは、亀頭たちから逃げ出したのなら、計画を練って逆転の道筋へ移行していくべきだよ。どうして、弾けられるタイミングで弾けよう とせず、ダメな状態を維持しちゃうのか。
もっとテンポ良く軽快に話が転がっていくのかと思ったら、やけにウェットでヘヴィーな部分が多いんだけど、もっと明るくいこうぜ。
あと、5人組だったのに、現在のシーンになると、ほとんど雄喜は絡んで来ないというのもマズいでしょ。で、終盤は3億を工面するために巧たちが銀行強盗をするという展開になるのだが、なんでだよ。
そもそも、美沙は3億を奪った理由を訊かれて「復讐するために飯島を捜し続けた」と語っているけど、それって3億を亀頭の組織から 奪ったことの説明になってないし。
で、そんな女に巧たちが3億を渡して逃がしているのも理解不能。それで銀行強盗で3億を作ろうとか、メチャクチャな展開でしょ。
大体さ、3億を工面したところで、美沙も連れて来いと言われているんだから、それだけだと亀頭に許してもらえないわけで。
あと、強盗をする直前、路上でライブをやるという唐突な展開にも、唖然としてしまう。(観賞日:2012年4月29日)
第7回(2010年度)蛇いちご賞
・新人賞:小栗旬(監督として)