『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』:2007、日本

ガンマンのピリンゴが蛇を殺して飲み込んだ生卵を取り出していると、野盗のリッチと2人の子分が拳銃を構えて近付いた。どこからか鐘の音が聞こえ、リッチが「何の音だ?」と口にすると、ピリンゴは「祇園精舎の鐘の声」と呟いた。リッチが「何?」と訊くと、ピリンゴは「源氏と平家を知ってるか?遠い異国で赤と白に分かれて戦った」と言う。ピリンゴは源氏と平家の物語について語った後、一味を軽く始末した。それを見ていた少女は、「凄い」と感嘆した。ピリンゴは卵を割ってかき混ぜ、すき焼きを食べた。
壇ノ浦の戦いから数百年後。流れ者のガンマンが馬に乗り、「根畑」という村への街道を進んでいた。向こうから荷物を抱えて歩いて来たトシオという男は、「この先は何も無い村だ。お宝なんて無いぞ」と告げた。流れ者が根畑に入ると、激しく対立している平家ギャングと源氏ギャングの連中がアジトから出て来た。平家ギャングの方は、村の保安官を仲間に引き入れていた。流れ者は双方に対し、自分を用心棒として雇うよう持ち掛けた。流れ者が腕前を披露すると、双方が彼を雇おうとした。
流れ者が平家ギャングを選ぼうとすると、雑貨屋を営むルリ子という女が現れて「一人でやりな。総取りして、こいつらを子分にすればいい。じっくり考えりゃいい」と持ち掛けた。流れ者は彼女に誘われ、とりあえず店へ行くことにした。平家ギャングの首領である平清盛は、流れ者を連れて来るよう保安官に命じた。平家ギャングが保安官を仲間にしていたことから、流れ者は彼らが先に村へ来たと見抜いていた。ルリ子は流れ者に、保安官が寝返る機会を窺っていることを教えた。
平八という幼い孫と2人で暮らしているルリ子は、村の事情を流れ者に語った。平家の血を引く人々が暮らす根畑の村に平家ギャングが来たのは2ヶ月前だが、それ以前から問題は起きていた。平家の落人ブームの到来を受け、大勢のならず者が埋蔵金目当てで押し掛けてきたのだ。村が荒らされて人々が困っているところへ、平家ギャングがやって来た。しかし平家ギャングは埋蔵金目当ての連中を村から追い出すと、塚を掘り始めた。彼らは村に居座り、村長を殺害して保安官を懐柔した。
源氏ギャングの到来により、平家ギャングの天下は終わった。源氏ギャングは平家ギャングの平宗盛たちを軽く始末するが、追い出そうとはしなかった。平家ギャングに埋蔵金を発見させてから横取りしようと目論んだ彼らは、村に居座った。2つの組織が対立する中、多くの村人が根畑を去り、今では数名しか残っていない。保安官は流れ者に、「清盛は馬鹿が加速している。源氏にしておけ。いい女もいる。ダンサーしてた上玉だ」と持ち掛けた。
その女とは平八の母親であり、ルリ子の息子の結婚相手だった静のことだ。静は源氏の血を引く人間だが、夫のアキラは彼女を妻にした。そのアキラが平家ギャングに殺され、清盛に体を狙われた静は、源氏ギャングの元へ転がり込んだ。源氏ギャングの首領である源義経は、彼女を犯して情婦にしていた。流れ者は源氏ギャングのアジトを訪れ、静を報酬として自分に売るよう持ち掛けた。源氏ギャングの与一が腹を立てて襲い掛かるが、流れ者は軽く叩きのめした。義経は与一を制し、流れ者に「好きにしな」と告げた。
与一は子分の弁慶に、流れ者を殺すための武器を買いに行くよう命じた。そのことを静から知らされた流れ者は、「撃ち合いになったら、平八を連れて山へ逃げろ」と告げた。流れ者は静を通じて、保安官に「武器が運び込まれる。着く前に奪えと平家に伝えろ」と記したメモを渡した。清盛は忠臣の重盛たちを率いて出撃し、武器を運ぶ弁慶の一団を襲った。流れ者の裏切りに気付いた義経は、アジトの2階に向かって発砲する。流れ者は銃弾をかわし、窓から飛び出した。
静はルリ子と平八を連れて山へ逃げようとするが、大切な薔薇を取りに戻る。そこへ与一が手下たちを率いて現れ、ボウガンの矢を彼女の腹に撃ち込んだ。流れ者が助けに駆け付けるが、静を人質に取られたため、銃を捨てた。弁慶は平家ギャングに追い込まれるが、仕入れたガトリングガンを乱射して形勢を逆転させる。しかし馬車が爆発し、彼は激しく吹き飛ばされた。戦場に到着した義経は、清盛に向けて発砲した。重盛が清盛を助けに戻るが、義経の銃弾を浴びて命を落とした。
与一は流れ者を暴行し、静を蹂躙しようとする。そこへトシが戻り、ルリ子に拳銃を投げ渡した。たちまちルリ子は与一と手下たちを一掃した。彼女は「血まみれの弁天」と呼ばれた伝説の女ガンマンだったのだ。ルリ子はトシオにメモを渡し、武器の仕入れを依頼した。トシオは老いたピリンゴの元を訪れ、武器を入手した。ルリ子はピリンゴから殺しを教わったのだ。先住民の伝七に手当てを受けて回復した流れ者は、カタを付けに行こうとする。ルリ子はトシオにお宝を掘り起こさせ、それをエサにして決着を付けようと考える…。

監督は三池崇史、脚本はNAKA雅MURA&三池崇史、企画は中沢敏明、エグゼクティブプロデューサーは遠谷信幸、製作統括は佐野哲章、製作は気賀純夫&島本雄二&亀山慶二&亀井修&小笠原明男&中村邦彦&会田郁雄、プロデューサーは吉田浩二&山口敏功、共同プロデューサーは大脇聖雄&白石統一郎&梅澤道彦&植田文郎、アソシエイトプロデューサーは梅村安、撮影監督は栗田豊通、美術は佐々木尚、照明は鈴木秀幸、録音は中村淳、編集は島村泰司、音楽は遠藤浩二、音楽プロデューサーはMAKOTO。
主題歌:「ジャンゴ〜さすらい〜」作詞:MAKOTO、編曲:川村栄二、歌:北島三郎、原曲:DJANGO。
出演は伊藤英明、佐藤浩市、伊勢谷友介、桃井かおり、香川照之、木村佳乃、香取慎吾、クエンティン・タランティーノ、石橋蓮司、塩見三省、松重豊、安藤政信、堺雅人、小栗旬、田中要次、石橋貴明、内田流果、溝口琢矢、稲宮誠、大西武志、米山善吉、安藤彰則、山口祥行、やべきょうすけ、岡田正典、中村銀次、外川貴博、小林太樹、尚玄、浅井明、赤星満、飯尾武人、ホリケン。、潮崎博志、佐藤尚宏、にしやうち良、大久保貴光、伊東俊彦、市野世龍、源、田端英二、永田良輔、椎葉智、清河寛、宮本行、松田一輝、友光小太郎、竹下結人ら。


監督の三池崇史と脚本のNAKA雅MURAが、『DEAD OR ALIVE 2 逃亡者』『46億年の恋』に続いてコンビを組んだ作品。
ガンマンを伊藤英明、清盛を佐藤浩市、義経を伊勢谷友介、ルリ子を桃井かおり、保安官を香川照之、静を木村佳乃、リッチを香取慎吾、ピリンゴをクエンティン・タランティーノ、村長を石橋蓮司、伝七を塩見三省、トシオを松重豊、与一を安藤政信、重盛を堺雅人、アキラを小栗旬、宗盛を田中要次、弁慶を石橋貴明、平八を内田流果、幼少時代のガンマンを溝口琢矢が演じている。

タイトルには「スキヤキ」という言葉が含まれているが、本作品はすき焼きではなく、悪ふざけの過ぎた闇鍋だ。食えたものではない。
すき焼きだとすれば、味付けを間違えてクソまずく仕上がったすき焼きだ。
クエンティン・タランティーノっぽい映画を作りたかったんだろうってのは痛いほど伝わって来るが、とても痛々しい仕上がりになっていることも確かだ。
そもそも三池崇史&NAKA雅MURAのコンビって、タランティーノ的なオタク気質も無いし、模倣しているジャンルや作品に対する愛や情熱も薄い。
タランティーノは既存の作品から要素を拝借し、それを再構築して映画を作るけど、三池崇史&NAKA雅MURAは元ネタを壊すことしかやらない。

タイトルには「マカロニ」という言葉があるし、明らかにマカロニ・ウエスタンの『荒野の用心棒』が元ネタだ。
しかし、この映画にはマカロニ魂が全く感じられない。
「マカロニ・ウエスタンじゃなくてスキヤキ・ウエスタンだから当たり前」と思うかもしれないけど、じゃあ「スキヤキ・ウエスタン」としての面白さがあるのかっていうと、そんなの無いし。
それに、あくまでもマカロニの基礎があって、それを破壊した上に「スキヤキ・ウエスタン」ってモノを構築すべきなのに、この映画は壊したところで終わってるのよ。

全編英語の台詞にしたのは世界市場を狙ってのことなのかもしれないが、少なくとも映画の面白さには全く繋がっていない。
大半の出演者は英語が堪能じゃないから、ってことは「英語のセリフを喋る」というだけで神経を使わなきゃいけなくなるわけで、そこに枷を用意して何の意味があるのかと。
これが全編日本語だったら映画の面白さが落ちるのかと考えた時に、マイナス要素は何も思い付かない。むしろメリットしか無いんじゃないか。
世界市場を考えるなら、無理に英語を喋らせるより、英語吹き替え版を作ってもらえばいい。

きっと無国籍映画っぽくしたいはずだと思うんだけど、そういう意味でも、全編英語の台詞ってのはマイナスに作用している。むしろ、日本語で喋らせた方が無国籍の雰囲気が出ただろう。英語の台詞は、陳腐な印象を与えるだけだ。
源平合戦を持ち込んでいるのも同様で、やはり陳腐でしかない。雑な形で源平合戦を扱っていることに対して文句を付けようとは思わないが、そんなの持ち込まない方がいい。
マカロニの世界観でチャンバラをさせたいってことで源平合戦を持ち込んだのかもしれないけど、そんなの使わずにチャンバラをやっても、特に支障は無いよ。源平合戦を使ったところで、デタラメ世界観にリアリティーをもたらすわけでもないんだし。
そんな要素を持ち込むメリットが、まるで見当たらない。「源平合戦を使えば2つの組織の対立が分かりやすくなる」とか、そういうわけでもないしね。

ビリンゴが登場する冒頭シーンは、背景が書き割りってのが露骨に分かるようになっている。
意図的に「これはセットです」と示したのかもしれないけど、そこはロケにした方がいいし、セットで撮影するにしてもロケっぽい雰囲気を出すべきだ。最初に「作り物感」や「閉じられた世界」ってのをアピールするのが好ましいとは思えない。
っていうか、もっと根本的なことを書いちゃうと、その冒頭シーンってバッサリと削り落としていい。ルリ子とピリンゴの関係性も、設定から排除していいし。
出来れば100分以内に収めたいので(本作品は121分)、とりあえず冒頭シーンは削っちゃえばいい。大して支障は無い。いや、全く無い。

物語が全く先へ進まず、状況を説明しているだけで最初の45分ぐらいが経過してしまうのは、構成としてダメでしょ。
それを考えると、静の過去なんかも要らないなあ。
ようやく話が進み始めてからも、その中身はものすごく普通で薄っぺらい。
企画としては尖っているのに、ストーリーは『荒野の用心棒』の周囲をダラダラと漂っているだけで、そこには弾けるパワーもエナジーも感じられない。遊びの部分だけで観客を惹き付けるだけのモノも無いし、アクションシーンもイマイチ。

アクの強い連中に囲まれて、主人公である流れ者は魅力に乏しく、存在感が薄い。狂言回しなら仕方が無い部分もあるかなあとは思うけど、前述したように『荒野の用心棒』を模倣しているんだから、そうじゃないはずだし。
終盤、ルリ子が正体を現して戦いに参加すると、ますます流れ者の存在意義が薄くなってしまう。
そもそも配役からして、この映画で主役を張るのは、伊藤英明では厳しいんじゃないか。例えば、流れ者のポジションに佐藤浩市でも良かったんじゃないかと思ってしまった。そんで清盛のトコには、香川照之を据えるってことでさ。保安官は、BoBAさんでいいかな。
そうそう、周囲のキャラは表面的に個性的な色こそ付けてあるものの、その魅力で映画を引っ張るだけの力があるのかというと、それは無いよ。

キャストで言うと、最もミスマッチなのは木村佳乃。小栗旬と夫婦ってのも合わないと感じるが、それ以上に、「そこはお色気ムンムンの女性じゃなきゃ成立しないでしょ」ってのを強く感じる。木村佳乃って、決して艶っぽさのある女優ではないからね。
静が唐突に踊り出すってのも、妖艶な女性だったら受け入れようかとも思うけど、そうじゃないから違和感しか抱かないし。
っていうか、意味も無くダンスのシーンを用意するなら、ダンスの技能を持つ女性を起用すれば良かったんじゃないの。
っていうか逆に、ダンスの技能がある人を起用しないのなら、踊らせる意味が分からん。
『丹下左膳 百万両の壺』で和久井映見を起用したり歌わせたりしたのに匹敵するぐらい、木村佳乃を静役に起用して踊らせたのは謎采配だ。

(観賞日:2014年3月9日)


第1回(2007年度)HIHOはくさい映画賞

・最低脚本賞:NAKA雅MURA
<*『どろろ』『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』の2作での受賞>

 

*ポンコツ映画愛護協会