『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』:1988、日本

1988年、全国から集められた優秀な学生により、学生刑事組織が結成された。彼らは青少年治安局の管理下に置かれ、荒廃した学園の 正常化を目的とした。かつて暗闇指令直属のスケバン刑事として活動していた風間唯も、学生刑事10人隊のメンバーとなっていた。しかし 、唯は非情な暴力によって不良学生を取り締まることに疑問を抱いていた。
唯は暗闇指令の元を訪れ、学生刑事10人隊の辞任を申し出た。しかし暗闇指令は、「新設された青少年治安局に移した時点で、自分の部下 ではなくなった」と告げる。暗闇指令も唯と同じように、青少年治安局に対する疑念を抱いていた。青少年治安局の局長を務めるのは、 司法大学院生の関根蔵人(せきね・くらんど)という男だ。
学生刑事10人隊は、不良グループ“番外連合”が麻薬取引に使用しているというライブハウスに乗り込んだ。10人隊は番外連合の面々を 叩きのめし、子供達を殺そうとする。唯は子供達を助け、10人隊を辞めることをリーダーの阿川瞳子に告げた。唯は九州の牧場で働き始め 姉の結花と由真に「夏休みに遊びに来て」と誘うハガキを送った。
暗闇指令の部下・依田は青少年治安局事務所に潜入し、コンピュータからデータを盗み出した。しかし関根に気付かれ、10人隊に襲われる。 依田はデータを記録したフロッピーディスクを持って逃亡し、結花と由真に連絡を取る。依田は2人にフロッピーを渡し、命を落とした。 関根は暗闇指令の職権を剥奪し、青少年治安局の監視下に置く。
唯は結花と由真から連絡を受け、東京に戻った。3人が会っているところへ10人隊が現われ、フロッピーを渡すよう要求した。拒否した 3人は10人隊に襲われ、結花と由真が負傷する。結花は川を流されていき、由真は10人隊に捕まった。何とか逃亡した唯は、番外連合の 子供たちと会った。子供たちは、唯を番外連合のアジトへ連れて行く。
番外連合の面々は唯を見て袋叩きにしようとするが、少女ケイが涙で訴え掛けたため、リーダーの坂東京助が止めた。京助は唯に、 ライブハウスで売っていたのは麻薬ではなく栄養剤だと告げた。2人が会っていた頃、関根は複数のテロ行為を起こし、番外連合の仕業に 見せ掛けていた。京助は、青少年治安局と組んで商売をしたいので関根に会わせろと唯に持ち掛けてきた。
唯が京助と共に青少年治安局事務所に潜入すると、暗闇指令と由真が監禁されていた。唯は2人を救出しようとするが、10人隊に囲まれる。 唯は由真から結花を助けるよう言われ、京助と共に青少年治安局事務所を脱出した。結花は吾朗という漁師に助けられていたが、10人隊が 来て連行されそうになっていた。そこへ唯が京助と共に駆け付け、結花を助けて吾朗の船で逃亡した。
番外連合のアジトに戻った唯たちはフロッピーを解読し、関根が秘密警察を組織しようとしていること、3時間後にウエスト・ホールの コンサート会場でテロを起こす計画があることを知る。そこへ、学生刑事軍団を引き連れた瞳子がやって来た。瞳子は、唯とフロッピーを 引き渡せば番外連合に手出しはしないと京助に告げる。もちろんウソだったが、京助は明確な答えを出せずに迷う。しかし唯が自ら瞳子の 元へ向かおうとした時、京助は番外連合に戦うよう指示を出した・・・。

監督は田中秀夫、原作は和田慎二、脚本は橋本以蔵、プロデューサーは中曽根千治&手塚治&角田朝雄&河井真也(フジテレビ)&石原隆 (フジテレビ)、企画は前田和也(フジテレビ)&植田泰治、撮影は池田健策、編集は只野信也、録音は柿沼紀彦、照明は小林芳雄、 美術は安井丸男、擬斗は岡田勝、音楽は新田一郎。
主題歌「Believe Again」作詞は麻生圭子、作曲は中崎英也、編曲は萩田光雄、 歌は浅香唯。
挿入歌「ミモザの奇蹟」作詞は湯川れい子、作曲は井上大輔、編曲は倉田保雄、 歌は大西結花。
挿入歌「君の夢に飛びたい」作詞は吉元由美、作曲は岸正之、編曲は瀬尾一三、 歌は中村由真。
主演は浅香唯、共演は大西結花、中村由真、長門裕之、萩原流行、江原真二郎、京本政樹、豊原功補、藤代美奈子、田中浩二、 山本顔ノ介、磯崎洋介、岩瀬威司、田山真美子、小沢一義、岩城正剛、千北直継、浜崎一成、藤山健剛、篠田高信、安田仁子、植松里香、 片桐順一郎、上野美和、近藤秀樹、小原靖子、鈴木浩司、高岩陽、下林山守、甲斐芳樹、渡辺一哉、豊川大介、邨井靖、太田浩人、MILK OF PARADISE、山中一徳、木村修、南条尚子、 城谷光俊、宮沢淑郎、甲斐新、早川昭彦、赤沼晃、大竹浩二、大保徹志ら。


和田慎二の漫画を基にしたTV作品「スケバン刑事」シリーズの第3弾『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』の劇場版。
唯役の浅香唯、結花役の大西結花、由真役の中村由真、暗闇指令役の長門裕之、依田役の萩原流行らTV版のレギュラーが続投。
関根を京本政樹、京助を豊原功補、瞳子を藤代美奈子、長官を江原真二郎が演じている。学生刑事10人隊の中には、小沢一義がいる。

TVシリーズ『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』は、それまでの『スケバン刑事』『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』とは全く別物となっていた。
学生刑事がヨーヨーを使って戦うという部分だけは踏襲していたが、なぜか『スター・ウォーズ』をコンセプトに持ち込み 、さらには忍者モノの要素まで取り込んで「風間三姉妹は忍者の一族」という設定にしたのである。
主人公は「麻宮サキ」というコードネームを使うことはほとんど無く、風間唯と名乗っていた。
セーラー服に忍者の手甲や額当てを装着し、忍者らしいイメージを持たせていたが、その一方で忍術を駆使することは無く、ヨーヨーで戦っていた。
主人公は学園で起きる事件を捜査する学生刑事だったはずが、途中から完全に忍者同士の戦いになり、最後は宇宙スケールの争いに発展した。

第2シリーズを気に入っていた和田慎二は、この第3シリーズについては激怒したらしい。
そんな原作者の怒りを鎮めようとしたのか、あるいはTVシリーズの評判がイマイチだったからなのか、この劇場版では大幅に設定を変更 してある。
なんと、「風間三姉妹は忍者の一族」という設定を排除したのである。
だから、唯も忍者装束である手甲や額当てを装着しない。
TV作品の劇場版がパラレルワールドになることは珍しくないので、ある程度の違いは良しとしよう。
ただ、基本設定からして無かったことのようにするのは、TVシリーズの否定になっちゃってんだろ。
そこまでするぐらいなら、劇場版を作るなよ。

しかも、TVシリーズの設定を排除した結果、デフレ現象を引き起こしている。
どういうことかというと、唯も依田も敵も、全てがTV版より弱体化しているのである。
TVシリーズでは最終的に宇宙支配を企むような強大な敵が登場したのに、今回の敵は秘密警察を作ってクーデターを起こそうとするという相手。
完全にスケール・ダウンしている。
依田は宇宙スケールの敵との激しい戦いをくぐり抜けたのに、たかが女子学生ごときにあっさりと殺される。
唯は宇宙スケールの敵を倒したのに、今回は学生相手に大苦戦し、ヨーヨーで装甲車の壁を打ち抜くことさえ出来ない。
10人隊は、装甲車から放水するレベルの敵。
学生刑事軍団と番外連合の戦いは、せいぜい機動隊と不良学生の争いというレベル。

おまけにサブタイトルは「風間三姉妹の逆襲」なのに、結花と由真は単なる付け足しに過ぎない。
結花は前半で右腕を負傷した設定になっており、ほとんど戦わない。
折鶴を使って10人隊の1人を倒すシーンが1度あるだけ。
由真に至っては、途中で敵に捕まってしまい、そのまま最後まで全く戦わずに終了。
スケジュールの都合でもあったのかと。
ストーリー進行としても、ウエスト・ホールでの爆破テロ計画が判明したのに、なぜかクライマックスがコンサート会場ではなく飛行場 ってのは、どうなのよ。
大勢を相手にしてスケバン刑事が大立ち回りをするわけでもなく、関根との戦いが白熱するわけでもなく(簡単に 倒している)、クライマックスとしての盛り上がりが無いまま終わっちゃうし。

 

*ポンコツ映画愛護協会