『スケバン刑事』:1987、日本

高校生の萩原和夫と友人の加藤喜久男は海を泳ぎ、港に辿り着いた。2人は男たちに追われており。必死に逃亡する。怪我を負った喜久男は 別れて逃げようと提案し、持っていた書類を2つに裂いた。喜久男は和夫に、「万が一の時は妹のめぐみに渡してくれ」と手作りの人形を 託す。喜久男は電話ボックスでめぐみに連絡しようとするが、男たちに取り囲まれた。
2代目スケバン刑事を解任された麻宮サキは普通の女子高生に戻り、梁山高校で平穏な学生生活を送っていた。ある日、街を歩いていた サキは、和夫に正面からぶつかられる。和夫は書類を落としたが、そのまま走り去り、停車中のバスに乗り込んだ。サキは書類を拾い、 和夫を追ってバスに乗る。その後ろから2人の男が現われ、和夫を挟み込む。そのままバスは出発してしまった。
サキは和夫に書類を返そうとするが、「俺のじゃない」と突き返される。異常を察知したサキは和夫を連れてバスを降りようとするが、 男たちが銃を持ち出して阻止する。サキは男たちを倒して逃亡しようとするが、追ってきた仲間に捕獲される。サキは和夫と共に監禁され、 拷問される。和夫によれば、男たちは三晃学園の教師だという。
サキは和夫と共に監禁場所から逃走し、彼が盗み出したという写真を見せる。だが、それは単なる集合写真に過ぎなかった。和夫は、自分 が逃げ出した三晃学園について語り出す。三晃学園は孤島に建つ私立学園で、地獄城と呼ばれている。全寮制で、親が見離した不良学生を 更生させる学校というのが表向きの姿だ。しかし実際には、暴力を用いて服従させ、軍事訓練をさせているのだという。多くの生徒たちが 訓練で命を落とすのを、和夫は目にしていた。
サキは内閣機密調査室のエージェント・西脇と連絡を取り、暗闇指令と面会する。サキは事情を説明して調査を求めたが、暗闇指令は 却下した。しかし、暗闇指令は以前から三晃学園の内偵を進めていた。サキの持ち込んだ写真を見た暗闇指令は、その中心に写っている 男が北時宗だと気付く。北時宗は、5年前に国防省でクーデターを起こし、爆死した人物だ。
サキは昔の仲間・ビー玉のお京の元を訪れ、協力を求めた。戦いに戻れると喜ぶお京だが、サキが頼んだのは和夫を四国へ逃がす手伝い だった。サキは、自分たちだけで敵う相手ではないと考えていたのだ。しかし、お京に戦う気持ちを忘れたのかと問われ、サキは自分たちで 囚われた学生たちを救出しようと決意した。
お京は昔の仲間・矢島雪乃を呼ぼうとするが、サキは彼女がイギリス入学を控えていることを考え、引き入れることに反対した。和夫の 提案で、サキたちは千葉房総の勝浦紅組・平田たい子を助っ人に呼ぶことにした。サキと和夫はめぐみの元を訪れ、喜久男が託した人形を 渡した。めぐみが仲間に入れて欲しいと頼むので、サキは彼女をメンバーに加えることにした。
サキたちは、たい子や勝浦紅組の面々との合流地点へ向かう。だが、そこへ三晃学園の連中が乗ったヘリコプターが現われ、攻撃を仕掛けて きた。さこへ3代目スケバン刑事の風間唯が現われるが、全く歯が立たない。たい子たちを助けようとした和夫は、命を落とした。怒りに 燃えたサキは、唯が持って来たヨーヨーでヘリコプターを攻撃し、爆発させた。
お京は飛行場へ向かう雪乃を待ち伏せし、一緒に戦ってほしいと頼んだ。雪乃は喜んで承知し、留学を取りやめた。サキたちは雪乃の別荘に 集まり、地獄城攻略の作戦を練る。そこへ西脇が現われ、圧倒的な破壊力を持つ究極のヨーヨーをサキに渡した。暗闘指令の元へ戻った 西脇は、三晃学園の校長・服部の正体が死んだはずの北時宗だと知らされる。
サキ、雪乃、お京、唯、めぐみの5人は孤島へ渡り、地獄城へ潜入する。しかし、あっけなく入り込めたことに、サキは不審を抱く。服部 は、事前にサキたちの計画を把握していた。サキ達は待ち受けた服部の手下により、簡単に捕まってしまう。実は、喜久男を助けてやると 言われためぐみがサキたちを裏切り、情報を漏らしていたのだ・・・。

監督は田中秀夫、原作は和田慎二、脚本は橋本以蔵&土屋斗紀雄、プロデューサーは中曽根千治&稲生達朗&手塚治、企画は岡正& 前田和也&植田泰治、制作補は河井真也&石原隆&角田朝雄、撮影は大町進、編集は只野信也、録音は柿沼紀彦、照明は梅谷茂、美術は安井丸男、 音楽は新田一郎、主題歌は南野陽子「楽園のDoor」、挿入歌は南野陽子「夜の東側」。
主演は南野陽子、共演は吉沢秋絵、相楽ハル子、伊武雅刀、浅香唯、小林亜也子、坂上忍、杉本哲太、長門裕之、蟹江敬三、大西結花、 中村由真、和田慎二、内藤武敏、吉田康子、小野寺丈、太田千尋、矢追幸宏、渡辺浩行、柴田時江、鈴木亜紀子ら。


1985年11月から1986年10月まで放送された人気TVシリーズ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』の劇場版。
元々、『花とゆめ』に連載された和田慎二の漫画を基にしたTVシリーズとして、1985年4月から1985年10月まで斉藤由貴主演の『スケバン刑事』が放送されていた。
それに続く第2シリーズが、『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』である。
「麻宮サキ」は第1シリーズではヒロインの本名だったが、第2シリーズではスケバン刑事のコードネームとして引き継がれている (2代目サキの本名は早乙女志織。というか五代陽子)。
TV版では第3シリーズとして、『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』が1986年10月から1987年10月まで放映された。
つまり、この映画は『スケバン刑事III』放送期間の公開ってことだ。

サキ役の南野陽子、雪乃役の吉沢秋絵、お京役の相楽ハル子、暗闇指令役の長門裕之、西脇役の蟹江敬三、たい子役の吉田康子らは、 TV版の出演者。
浅香唯は、『スケバン刑事III』のヒロイン風間唯役で登場。同じく『スケバン刑事III』でトリオを組む結花役の大西結花、由真役の中村由真も、最後に顔を見せている。
他に、服部を伊武雅刀、めぐみを小林亜也子、和夫を坂上忍、喜久男を杉本哲太、服部のバックにいる政界の大物を内藤武敏が演じている。
また、サキが街を歩くシーンに登場するヨーヨー売りのおじさんは、原作者の和田慎二だ。
最も原作のイメージに近いということで、和田慎二は第2シリーズを気に入っていたらしい。
第2シリーズって、やたらと色々な映画のパロディーをやったり、おニャン子クラブを無意味に登場させたりと、おふざけも多かったと記憶しているが、それは原作者的にはOKなのね。

バスがショベルカーに突っ込むとか、ヘリコプターからの銃撃&爆破とか、地獄城の爆破とか、劇場版ということで、お金を掛けている ことを、分かりやすいトコロでアピールしている。
基本的にスケバン刑事って、「女子高生を主役に据えた特撮ヒーロー物」みたいなノリを感じる。
たい子との合流地点がなぜか岩場で、そこでヘリとの戦いがあるってのも、いかにも特撮ヒーロー物っぽい。

孤島に到着した5人が防水着を一斉に脱ぐと、御丁寧にもお揃いのセーラー服姿。
お前ら、同じ学校の生徒じゃないだろうに。
しかも、それまでのシーンでは、唯以外は私服を着ていた。
つまり、こいつらは戦うためにセーラー服を着たってことになる。
戦闘服なのね。
5人揃ってセーラー服戦隊ってな感じよ。
やっぱり特撮ヒーロー物のノリだな。

話としては、かなり雑なところが目立つ。
なぜか服部の手下は和夫ではなく、サキを拷問する。
その後のシーンで、サキが「ウチは男の人の顔をこんな近くで見たの、生まれて初めてじゃき」とか言うが、その直前に服部と顔が極度に接近していたように思うが。
ああ、そうか、それは「サキは見ていなかった」という解釈なのか。
でも、TV版で恭志郎と超接近してなかったっけ。

後半に入ると粗っぽさは3割増しになり、なぜか服部は喜久男を殺しておらず、だからといって洗脳して戦闘マシーンにするわけでもなく 、ロボトミー手術で廃人にしている。
利用価値は無いので意味不明。
服部は洗脳した生徒たちにサキを殺させようとしたのに、挑発されると自分で戦うというイージーっぷり。
で、あっさりサキを捻じ伏せるのだが、「危険な存在だ」と言っておきながら抹殺しようとはせず、部下に別の場所で注射を打たせようとする。
たぶん廃人にするつもりなんだろうが、これまた意味不明。

既に地獄城が爆発&炎上を始めているのに、わざわざサキは中に戻って服部を探そうとする。
だけど、もう燃えているんだから、そのまま放っておけば焼死すると思うぞ。
それがイヤなら脱出するだろうから、外で待ち受けていればいいだけだし。
で、そこで洗脳された生徒が襲ってくると、「おまんらとは戦えん」と言っていたのに、サキはヨーヨーでビシバシと倒す。
あ〜あ。

最後は服部がサイボーグだと判明し(だからって強くなるわけではないが)、そんな敵にトドメを刺すこともなくサキは地獄城を脱出する。
だったら、わざわざ探しに突入した意味は何だったのかと思うが。
で、海に飛び込むと、先に脱出していた学生たちが救命ボートに乗り、拍手でサキを迎える。
なんだ、その展開は。
あと、そんなに多くの救命ボート、どこに隠してあったんだろう。

前述したように3代目麻宮サキである風間唯が登場するのだが、こいつが何の役にも立たない。
岩場のシーンでは無防備に立ってヘリに向かって「下りて来い」とか叫ぶので、慌ててサキとお京に岩陰へ引っ張り込まれる。
その後、唯はヨーヨーをヘリに引っ掛けるが、そのまま引っ張られているだけ。
役に立たないどころか、むしろ足手まといだ。
もちろん主役はあくまでも2代目サキだから、メインで活躍するのはそっちで構わない。
ただ、わざわざ3代目を登場させたのなら、それなりに活躍させてあげるべきなんじゃないのか。
『スケバン刑事III』は放送中だったんだから、そこへ繋げる意味も含めてさ。
なのに、なんで「やっぱり3代目はダメだな。2代目の方が良かったな」と思わせるような扱いなのかと。

しかも、その1シーンだけの特別出演かと思ったら、その後も引き続いて地獄城への潜入作戦に参加しているのよね。
だったら、2代目と3代目の対立と友情のドラマとか、あるいは2代目から3代目にスケバン刑事の魂が引き継がれるという風な描写とか、そういうのが あっていいようなモノでしょ。
ところが、そういうモノは全く無い。
結局のところ、3代目は単なる同行者に過ぎない。
お京らと並列か、ちょっと下の扱いなのだ。
そんな扱いなら、わざわざ登場させた意味が無いだろうに。
1シーンでも美味しい見せ場が与えられていればまだしも、全く無いし。
っていうか、普通は1シーンのゲスト出演にしておかないかね。
ラストだけ助っ人に駆け付けるとか。

 

*ポンコツ映画愛護協会