『スペーストラベラーズ』:2000、日本

西山保、藤本誠、高村功は、車に乗っていた。彼らは金を手に入れるため、銀行強盗を実行すると決めていた。藤本は再放送で人気が出たTVアニメ『スペーストラベラーズ』のファンで、トレーディング・カードを集めていた。コスモ銀行に備え付けられたテレビでは、その『スペーストラベラーズ』が流れていた。子供たちに混じって番組を見ていた警備員の庄田義政は、支店長の常田宣一に注意された。
3人組の車が銀行の前に到着した時、熊のヌイグルミを抱えてバッグを持った坂巻隼人が銀行に入った。電気屋の倉沢慎太郎は自分の暗証番号を忘れてしまい、行員の清水孝宏に尋ねる。清水は教えられない決まりになっていることを恐縮しながら説明するが、倉沢は執拗に食い下がった。坂巻は行員の相田みどりに両替を頼むが、為替の担当は2階だと教えられる。みどりの元に婚約者で同僚の野々村清が来て、「もうちょっとやな」と告げる。コスモ銀行では、行員が結婚する時にサプライズでパーティーを開く慣例がある。その日の閉店後に自分たちのパーティーが開かれることに、2人は気付いていた。
パーティーの準備をする女子行員たちは、みどりが野々村と結婚することを意外に感じていた。野々村は女子行員を片っ端から口説いており、全員に「いいかげんな男」と言われるような男だった。みどりも野々村の噂は知っていたが、「君が危険にさらされた時、僕は命を捨ててでも必ず君を守る」というプロポーズの言葉で結婚を決めていた。坂巻は2階の受付でバッグを開くと、フィリピン紙幣の札束を日本円に両替するよう頼んだ。
深浦功一と妻の公子は、言い争いながら銀行へ入った。公子はみどりに、深浦が金の亡者で使おうとしないことを話した。深浦は通帳と印鑑をみどりに差し出すと、解約してほしいと頼んだ。夫婦は離婚すると決めたのだ。2人はみどりの前でも言い争った。倉沢は暗証番号の登録に3度続けて失敗し、カードが機械から出て来なくなった。女子行員に呼ばれて坂巻と応対した野々村は、ペソは扱っていないことを説明した。みどりは夫婦に穏やかな会話を促すが、公子に「余計なお世話よ」と冷たく言われた。
3時になってシャッターが閉まり始める中、3人組は覆面を被って銀行に突入した。彼らは5分で仕事を済ませると決めていた。みどりは強盗団を見て、パーティーの趣向だと思い込む。しかし強盗団が発砲して監視カメラを破壊したので、本物だと悟った。パーティーの準備をしていた常田や清水たちは、会議室に飛び込んで来た西山を見て防犯訓練だと思い込んだ。しかし客や行員が人質にされいるのを見て、本物の強盗だと悟った。
西山は常田と庄田に拳銃を構え、金庫に案内するよう要求した。野々村は強盗団に見つからない内に、排気ダクトへ逃げ込んだ。野々村が逃げたと知り、みどりはショックを受けた。坂巻は油断していた藤本を軽く制圧し、銃の扱い方をレクチャーした。藤本が震えながら「撃つぞ」と言っても、彼は平然としていた。庄田は常田に目配せで合図を送るが、気付いてもらえないので呆れた。彼は西山を金庫から追い出し、常田を残して扉を閉めてしまった。強盗団が金を運び出せないよう、金庫に閉じ篭もったのだ。
西山は藤本から「金は?」と訊かれ、不機嫌そうに「金庫の中」と答える。清水は常田と庄田が金庫の中にいると聞かされ、西山が2人を殺したと思い込む。清水が衝動的に逃げ出そうとしたので、西山と藤本が慌てて捕まえる。だが、清水が外に出る寸前だったため、その様子を巡回中の所轄警官2名に目撃されてしまう。他の人質が逃げ出そうとしたため、高村は天井に向けて威嚇発砲した。その銃声を耳にした警官2名は慌てて警察署に連絡し、銀行強盗の発生を知らせた。
金庫の扉が朝まで開かないと知って愕然とする強盗団に、坂巻は小さく笑って「事態はそれどころじゃないぜ」と告げる。高村が窓から外に目をやると、銀行の周囲は警官隊に包囲されていた。強盗団は坂巻から「まずは情報だ」と助言され、テレビを付けた。まだ事件のことは報じられていなかったが、坂巻は「時間の問題だ」と告げた。テレビのワイドショーでは、人気バンドのJ.SIX.BABYSが突然の解散を発表し、その記者会見がホテルで開かれるというニュースが報じられていた。J.SIX.BABYSは話題作りで解散を発表したのだが、銀行強盗発生の知らせを受けた記者たちは、一斉にホテルから去ってしまった。
警官が射殺されたらしいという誤った情報が伝わったため、警視庁本部長の須藤正義は機動隊の出動を指示した。銀行に電話を掛けた彼は、受話器を取った西山と交渉しようとする。しかし西山は「これ以上、銀行に近付くな。言うことを聞かないと人質を一人ずつ殺す」と告げ、電話を切った。排気ダクトを這いながら移動していた野々村は、携帯電話を置き忘れていた。その電話が鳴ったので、強盗団が出た。すると相手は野々村が口説いていた女で、みどりのことをバカにする発言を口にした。
みどりは野々村に騙されていたと気付き、高村がカウンターに置いた自動小銃を手に取った。彼女は排気ダクトから覗いている野々村に気付いており、そこに向かって乱射した。野々村は慌てて後ずさりした。なおも発砲を続けようとしたみどりを、藤本が制止しようとする。みどりはバランスを崩して倒れ、発射された弾丸は外に停めてあったパトカーに当たった。パトカーは爆発炎上し、警官隊は退避した。警察もマスコミも、それを強盗団の仕業だと誤解した。
みどりは「今、私、気持ち良かった。スッキリした」と嬉しそうに笑った。その様子を見た藤本は、『スペーストラベラーズ』の登場人物であるアイリーンを連想した。監視カメラに写っていた坂巻のデータを調べた須藤たちは、彼が国際的なテロリストだと知った。須藤は集まった記者たちに対し、坂巻が事件の主犯格だと発表した。テレビ中継を見ていた西山たちも、坂巻の正体を知ることになった。すぐに藤本は、『スペーストラベラーズ』の登場人物であるクラッシャーを連想した。
坂巻は町にいる理由を西山から訊かれ、一度も会ったことが無い娘の誕生日なので、プレゼントを渡そうとして来たのだと話した。テレビの報道では、事実と異なる大げさな騒ぎ方をしていた。坂巻の「敵は中のことを全く把握できてないんだ」という言葉を聞いた西山は、「そうか。だったら、もっと騒がしてやるか」と口にした。もっと大勢で強力だと思わせて情報をかく乱させようと考えた西山に、藤本はカードを眺めて「スペトラだ。スペーストラベラーズだ」と告げた。
須藤がSATとSITの隊長にテロリストの殲滅を指示しているところへ、藤本は電話を掛けた。彼は「俺はブラックキャットだ」と『スペーストラベラーズ』のキャラクター名を名乗った。「何者だ」と訊かれた彼は、「俺たちは『スペーストラベラーズ』だ」と述べた。「要求は?」という須藤の質問を受けて、藤本は「50億だ。出来なければ人質を1時間に一人ずつ殺す」と告げ、電話を切った。
西山や藤本たちは、人質に対して「これから犯人になってもらう」と説明した。9人の国際的な犯罪グループを装う作戦に、みどりと公子は興味を示した。藤本は全員にスペトラのカードを渡し、キャラクター名を与えた。ホイという名の小ずるいキャラクターを与えられた深浦は、不満を口にした。しかし「どうしても嫌なら、人質をやれば?」と言われ、仕方なくホイの役を受け入れた。西山は須藤に電話を掛けて「仲間を紹介しよう」と言い、人質たちに喋らせた。
最後に携帯を手にした西山は、「金は用意できたか」と質問した。須藤が「もう少し時間をくれ」と言うと、西山は「そうか」と口にする。西山は犠牲者の演技をするみどりの悲鳴と銃声を須藤に聞かせ、人質の一人を殺したように思い込ませた。彼は「次は一時間後だ」と告げ、電話を切った。空腹を感じた西山たちは、宅配ピザを注文した。須藤は部下を宅配係に変装させ、中の様子を隠しカメラで撮影して来るよう命じた。
清水がキャラクターの姿に扮装して取りに行くと、変装した警官は「仲間でお運びします」と告げた。不審を抱いた清水は宅配係に質問し、その答えで警官だと見抜いた。清水はピザを受け取り、通用口で警官を追い返した。深浦が死体のフリをして倒れている深浦がカメラに写ったので、須藤たちは人質に死者が出ていると思い込んだ。深浦夫妻が子供がいるのに離婚すると知った西山は、「子供にはな、親が必要なんだよ」と声を荒らげた。
みどりから銀行強盗の理由を問われた西山は、一枚の古い写真を見せた。そこには小さな島が写っていたがどこにあるのか西山たちは全く知らなかった。ただ、小さい頃から、その島に3人で行くと決めていたのだという。南半球のどこかにあるであろう島に行くため、3人は金を手に入れようとしたのだ。みどりは夢のために行動する3人に感銘を受け、自分も変わろうと決意したことを話す。清水の提案で、みんなは記念写真を撮影した。一方、マスコミは警察批判を開始し、SIT隊長は須藤に突入命令を求める。その直後、西山は須藤に電話を掛けて「これから人質を解放する」と通達し、坂巻に「子供の所へ行ってやってくれ」と告げた…。

監督は本広克行、原作は「ジョビジョバ大ピンチ」(構成・脚本・演出 児島雄一(マギー))、脚本は岡田恵和、企画は河村雄太郎&佐藤雅夫&岡部秀司、プロデューサーは臼井裕詞&近藤正岳&堀部徹、撮影監督は藤石修、照明は椎原教貴、録音は芦原邦雄、編集は田口拓也、助監督は羽住英一郎、制作担当は松岡利光、助監督は近藤一彦&川村直紀&中村大輔、美術進行は谷田祥紀、アクションコーディネーターは佐々木修平、音楽は松本晃彦。
出演は金城武、深津絵里、安藤政信、池内博之、渡辺謙、濱田雅功、大杉漣、ガッツ石松、中山仁、筧利夫、鈴木砂羽、甲本雅裕、武野功雄、高杉亘、小木茂光、野仲功、伊藤洋三郎、高田聖子、北山雅康、正名僕蔵、小梶直人、生部麻依子、伊藤留奈、斎藤菊代、星野亜紀(現・ほしのあき)、氏家恵、緒方美穂、星山達郎、山形清貴、ジョビジョバ(石倉力、木下明水、坂田聡、長谷川朝晴、マギー、六角慎司)、渋谷亜季、谷本一、森順子、寺田千穂、児玉徹、加山到、北原一咲、アルバート・スミス、横森文、永野寿彦、進藤良彦ら。


演劇ユニット“ジョビジョバ”の舞台劇『ジョビジョバ大ピンチ』を基にした作品。
西山を金城武、みどりを深津絵里、藤本を安藤政信、高村を池内博之、坂巻を渡辺謙、野々村を濱田雅功、常田を大杉漣、庄田をガッツ石松、須藤を中山仁、深浦を筧利夫、公子を鈴木砂羽、清水を甲本雅裕、倉沢を武野功雄が演じている。
監督は『7月7日、晴れ』『踊る大捜査線 THE MOVIE』の本広克之、脚本は『ゴト師株式会社』『ときめきメモリアル』の岡田恵和。

『ジョビジョバ大ピンチ』は高い評価を受けていたらしいから、たぶん映画化に際して内容は大幅に変更されているんだろう。
そして、たぶん大幅に改変した部分が、ことごとくダメな方向への修正になっているんだろう。
6人で演じられた舞台劇を映画化するということで、「話のスケールを大きくして、主要キャラクターも増やして、派手で豪華なイメージの映画に仕上げよう」という考えだったのかもしれない。
製作サイドがどういうスタンスで舞台劇を改変したのかは知らないが、確実に言えるのは失敗作だということだ。

強盗団が銀行に突入するのは、映画開始から約18分後。そこまでに、主要キャラクターの紹介が行われる。
人物紹介は必要な作業だが、強盗開始までの時間がちょっと長すぎると感じる。そこをシェイプアップすれば、上映時間は125分も要らなかっただろう。
コメディー映画で125分って、そりゃ無いわ。内容を見ない段階でも、「ダラダラしている」「中身を削ぎ落とす作業を手抜きしている」ということが、ほぼ確定的だと言ってもいいぐらいだ。
実際、西山が常田と庄田に「モタモタするな」と言うシーンがあるが、この映画自体に「モタモタするな」と言いたくなるテンポの悪さだ。

序盤で主要キャラクターを次々に紹介し、群像劇として構成しているのも引っ掛かる。
この映画、ちゃんと主人公を据えて、その周囲に他の面々を配置するという形にした方がいい。
巻き込む側ではなく、巻き込まれる側に中心人物を配置すべきなので、最も適任なのは、みどりだろう。
巻き込む側に中心人物を配置しても、やり方次第では何とかなるが、巻き込まれる側にしておいた方が話を進めやすい。
それに、本作品における「巻き込む側」の強盗団3名には、物語を引っ張る力も、中心人物としてのカリスマ性も無い。

どうせ全ての面々をキッチリと処理できているわけではないので、主要キャラクターも減らした方がいい。
野々村とか、いかにも重要な役回りを担当しそうな匂いがしていたのに、いなくても全く支障が無い程度の扱いだ。っていうか邪魔だ。
大勢の人物にフォーカスしたり、銀行の外での動きを挟んだりすることが、話の厚みに繋がっていない。ゴチャゴチャして整理されていないという印象に繋がっているだけだ。
いっそのこと、銀行の中だけを舞台にしてしまってもいいぐらいだ。
「全国公開される映画だし、豪華キャストでスケールを大きくしよう」という意識は、完全に裏目に出ている。

まだ客が残っているのにシャッターを閉めてしまうのは不自然で、そこには「人質として客の何名かを残さなきゃいけない」という都合が透けて見える。
監視カメラを破壊したからって強盗団が覆面をすぐに脱ぐのは不自然で、そこには「俳優たちの顔を見せなきゃいけない」という都合が透けて見える。
通報からあっという間に警官隊もヘリも駆け付けて銀行を包囲するっのては、「さっさと話を進めたい」という都合が透けて見える。
そこでテンポ良く進めることを意識するなら、他にも意識すべき箇所が山ほどあるけどね。

西山たちが『スペーストラベラーズ』のキャラクターを名乗って全員で犯人グループを偽装しようと言い出した時に、最初から深浦を除く全員が賛同し(深浦もホイ役が気に入らなかっただけ)、携帯電話を渡されるとノリノリで須藤に自己紹介するってのは、あまりにも無理がありすぎる。
人質をストックホルム症候群に持ち込むだけの説得力は、そこまでの展開には皆無だったぞ。
ただ単に西山たちの緊張感が欠けていたというだけで、シンパシーを感じさせるような連中としては描かれていなかった。

舞台劇であれば、少しぐらい人物の動かし方が強引だったり展開が荒っぽかったりしても、勢いやノリで何とかなる場合がある。
しかし映画の場合は、そういう部分をもっと丁寧にやらないと厳しい。
この映画は銀行の外にも視点を向けたり、登場人物を増やしたり、カメラワークも含めて「舞台劇らしさ」から外れようとしているのに、そういう部分だけは舞台劇チックな強引さで乗り切ろうとする。

西山たちは結託してスペトラを名乗るグループを結成した後、空腹を感じてピザを注文する。
だけど、パーティーのセッティングをしていたんだから、そこに食べ物ぐらいあるはずだろ。何も食べ物を用意せずに、結婚パーティーなんて有り得ない。
坂巻が警官に変装して脱出するってのは、手口としては分からんでもないが、処理が雑すぎる。
西山が坂巻から渡された時限爆弾入りヌイグルミを無造作にカウンターへ置いたままにして、それを清水が触って起動させてしまうという展開も強引すぎる。

みどりが自動小銃を撃った後で「私、今、気持ち良かった。スッキリした」と笑い出すのは、キャラクターの動かし方として無理がある。
そこには「その様子を見た藤本が『スペーストラベラーズ』の登場人物であるアイリーンを連想する」というところへ繋げたいという事情が絡んでいる。
だが、そもそも『スペーストラベラーズ』というTVアニメを絡ませようとしていること自体が成功していない。

『スペーストラベラーズ』というのは架空の番組だから、観客は世界観や登場人物についての知識が何も無い。
だから、藤本が登場人物になぞらえて強盗団や人質に役割を与えても、ピンと来ないし、テンションも上がらない。
だからと言って、『スペーストラベラーズ』について詳しく説明していると時間が足りなくなるし、そんなことに時間を割いていたら作品としてのバランスは悪くなってしまう。

『スペーストラベラーズ』という架空のアニメを持ち込んだのは、そのアニメを実際に製作するところへ発展させ、そこでも金を稼ごうという商売根性なんだろう。
で、たくましい商魂で『スペーストラベラーズ』ってのを絡ませたことを百歩譲って受け入れるとしても、そのキャラになぞらえて強盗団と人質に役割を与えたのに、そこに意味が無いってのはダメでしょ。
それぞれに特技や特徴が設定されているが、それが強盗団&人質の特技や特徴として発揮されることは無い。
ただの役立たずで終わっている奴もいるし。

映画の冒頭に「あなたは今、何をしていますか?」という文字が出たので、その時点で既にヤバい雰囲気は漂っていた。
この映画で、そのようにメッセージを訴え掛けるような言葉が、なぜ必要なのかと首をかしげたくなった。まさか、本気で「心に響くメッセージやテーマを伝えよう」としているんじゃあるまいな、と不安になった。
残念ながら、その予感は的中してしまった。
この映画、お気楽なドタバタ喜劇ではなく、後半に入ると「しんみりさせてから、メッセージを発信する」という、余計なことをやらかしている。

後半、みどりは西山たちの目的を知り、「なんか、いいなあ、そういうのって。自分はそういう夢とか見たこと無いから」と口にする。
その辺りで既に、感動モードへ持って行こうという匂いが強く漂っている。
さらに、みどりは自分が死ぬまで平凡な暮らしを送るのだろうと諦めていたこと、何も期待していなかったことを語り、「これからは自分で何かを起こすわ」と言う。
つまり、強盗団の行動を全面的に肯定し、「みどりは3人のおかげで背中を押された、考えが変わった」という形になっているのだ。

ただ、幾ら話が進む中で西山がどんどん善人化していくにしても、大事件を起こした犯人を称賛するだけで終わらせるのは倫理的にマズいと思ったのか、高村が狙撃されて命を落とすという展開が待ち受けている。最も避けるべき展開を、やらかしているのだ。
この映画で死人なんか出したらダメでしょ。
その後、西山と藤本が外へ飛び出したところで画面が切り替わるが、そのシーンは『明日に向って撃て!』の真似なので、彼らも撃ち殺されていることは確実だ。
でも繰り返しになるけど、この映画で死人なんか出したらダメなのよ。
シリアスになるだけでも違和感が強いのに、死人まで出すとは。
それは、ただ後味の悪さを感じさせるだけだぞ。

で、全てが終わり、時が過ぎてクリスマスになる。みどりは『スペーストラベラーズ』が映画で復活することを知り、涙を流す。 なぜ泣くことが出来るのか、その心情が鈍感な私には全く理解できない。 その後、みどりの「まるで夢を見ているようだった。あの夢の間の、アイリーンだった私は、それまでの私よりちゃんと生きていた気がする。自分に何が出来るかなんて分からないけど、私は今、どこかにある自分のパラダイスを探しています。あなたは今、何をしていますか?」というモノローグが入る。
結局、みどりのモノローグによって、強盗団の行動は全面的に肯定される。そして「夢のために行動するって大事なことだよね」というメッセージを発信する。
強盗団が死んでシリアスに着地するのも違うけど、そんな前向きなメッセージを真面目に訴え掛けるのも違うぞ。もっと能天気な喜劇として作れば良かったのよ。
大体さ、夢のために行動した強盗団は、最終的に命を落としているわけだからね。

(観賞日:2013年12月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会