『スカイハイ 劇場版』:2003、日本

ジオフロント工学研究所で女性の死体が発見された。被害者は伊藤摩耶という22歳の大学生で、心臓が抉られて持ち去られていた。ここ 最近、同様の殺人事件が連続して起きており、彼女は3人目の犠牲者だった。刑事の神崎耕平は警察署で資料を読み返していて、そのまま 徹夜した。翌朝、先輩刑事・城嶋に起こされた彼は、「呆れた奴だな、今日が何の日か知ってるのか」と告げられる。その日は彼が恋人の 斉木美奈と結婚式を挙げる日だった。
仕度を済ませた神崎は城嶋と共に教会へ行き、控え室でウェディングドレス姿になっている美奈と会った。結婚式が始まり、神埼が教会で 美奈を待ち受けた。だが、扉が開いて現れた美奈は、心臓を抉られていた。彼女は神崎に抱かれて死んだ。美奈は怨みの門へ行き、門番の イズコに「貴方は死んで魂だけの存在となった。3つの行き先の内の1つを選ぶことが出来る」と告げられた。
怨みの門に来た者に与えられる選択肢は、「死を受け入れて、天国へ行き、再生の準備をする」「魂のまま現世を永遠に彷徨い続ける」 「現世の人間を1人呪い殺し、地獄へ逝く」という3つだ。魂の猶予期間は12日間。その間は現世に自由に降りることが出来る。その姿を 生きた人に見られることは無い。イズコに勧められ、美奈は自分が死んだ後の現世の様子を見に行った。
美奈が検死室へ行くと、検死医の青山響子が神崎と城嶋に「前の3件と同じ手口よ」と告げていた。怒りに燃える神崎に、城嶋は「お前は しばらく休んでろ」と告げた。美奈は神崎が犯人を見つけ出して殺すつもりだと気付いた。イズコは「人を殺した者は地獄へ落ちる。自殺 をした者も同じ」と美奈に告げた。「どうして私は殺されたの?」と訊く美奈に、イズコは「貴方が望むなら、恨みの記憶を辿ることが 出来る」と述べた。美奈は、それを望んだ。
美奈の脳裏に、記憶が飛び込んできた。控え室で彼女は、何者かの歪んだ顔が鏡に写るのを目撃した。奇妙な空間に迷い込み、そこに黒い 服の女が現れた。女が奇妙な剣で心臓を刺し、背後にいた男が美奈の心臓を抉り取った。神崎は響子に「そいつの心臓を止めて美奈の心臓 を取り返す」と復讐心を告げた。響子が「この事件は単なる連続殺人じゃない」と言うと、神崎は「俺は犯人を見つけて殺すだけだ」と 怒鳴った。神崎は、教会へ駆け込む時に不審な女を見たことを思い出した。
雑誌「Cosmic Economy」の記者・遠山小百合は編集長に呼ばれ、工藤達也がインタビュー相手に指名してきたことを告げた。工藤は遺伝子 の研究者であり、工藤ジネティックスのオーナーを務める大富豪だ。これまで単独取材に応じたことは無い。工藤が秘書の三輪レイと共に オフィスを歩いていると、複数の男たちが現れて銃を向けた。「金庫まで案内してもらおうか」と脅された工藤は、軽く笑い飛ばした。彼 はレイと共に、その一味を軽く蹴散らした。
神崎で教会の入り口で見た女のモンタージュ写真を作成し、情報屋・リョウの元を訪れて情報を求めた。工藤は小百合のインタビューで 「地位も名誉も手に入れても、何か悩みがあるか」と問われ、「いずれ病気にならない人間が出て来る可能性がある。そうすれば愛する人 が助かるようになる。人間は愛する者を助けたいという本能がある。神に逆らうのも自然な行為なんだ」と語った。カメラマンの岸一雄は 取材で撮影した写真を現像するが、そこには小百合の心臓を後ろから掴む謎の手が写っていた。
神崎は「美奈、死んだらお前に会えるかな」と漏らし、こめかみに銃を突き付けた。美奈が「いやーっ!」と叫ぶとガラステーブルが割れ 、神崎は引き金から手を離した。神崎は響子に呼ばれ、岸と引き合わされた。岸は大きな手が飛行機を掴もうとする写真を見せた。それを 撮影した3時間後に墜落事故が起きている。今回、同じように、謎の手が小百合の心臓を掴んでいた。響子は神崎に小百合の写真を見せ、 「この人が危ないかもしれないの」と告げた。
工藤の写真を見た美奈は、彼のオフィスへ赴いた。工藤は美奈に視線をやり、「ボンヤリと見える。その内、お前の顔もハッキリ分かる ようになる。生贄を捧げる度に私の力は増して行く。そして人間を超える」と言う。「私に何の恨みがあるの」と美奈が訊くと、工藤は 「恨みなど無い。必要なだけだ」と答えた。彼のオフィスには六芒星があり、その頂点の4つに心臓が置かれていた。
工藤は美奈に、カプセルの中で安置されている妻・エリの姿を見せた。「彼女は病気になった。原因を突き止めようとしたが、起きて しまったことは元には戻らない。問題はこれからどうすればいいかだ」と工藤は口にした。そこへレイが現れて刀を振るい、美奈をビルの 外へ転落させた。すると美奈の前には3人目の被害者・摩耶が立っていた。彼女は同じ連続事件の被害者・早苗と香津美の元へ案内した。 イズコは4人に「貴方たちは全員、かつて恨みの門の門番だった」と告げた。
神崎は岸から「次に殺されるのは小百合なんだ、彼女を助けてくれ」と告げる。岸は、そこに美奈が現れたことを告げ、「人を殺したら 地獄行きだ、手を引けと言っている」と述べた。神崎が信じないので、美奈は自分と彼しか知らない情報を岸に教え、それを言わせた。 だが、それでも神崎は信じない。岸は何度も小百合に留守電を入れていたが、ようやく彼女から連絡が入った。「工藤さんとデート中」と 嬉しそうに言う彼女に、岸は「そこから逃げろ」と告げる。だが、小百合は相手にせず、電話を切った。
岸は「捜してくれ」と怒鳴り、神崎は小百合がいるコンサート会場を突き止めた。神崎と岸はコンサート会場へと急いだ。電話を切った 小百合がホールに入ると、そこは無人だった。ステージに上がるとレイと工藤が現れ、彼女を殺して心臓を抉った。神崎たちが会場へ行く と、コンサートが始まっていた。その最中、ステージの天井から、逆さ吊りにされた小百合の死体が降って来た。
神崎と岸は駐車場へと走り、心臓を持って去ろうとしていた工藤とレイを発見した。岸が掴み掛かろうとすると、レイは特殊な力で彼を 弾き飛ばした。工藤とレイが車で駐車場を出ると、イズコが待ち受けていた。イズコは刀を構えて戦うが、レイの剣で胸を貫かれた。レイ は「この剣は死者でも斬れる」と不敵に笑った。一方、響子は岸の脈があるのに心臓が停止しているのを確認した。岸は「上伊那秀芳、 頼りになるのは、その人だけだ。飛行機事故の後、霊を祓ってくれた」と述べた。
恨みの門に戻ったイズコは、美奈と摩耶に「私はもうすぐ消える。あの剣の呪文のせい」と告げる。彼女は美奈に「今から貴方が門番よ」 と言って手をかざし、門番としての知識を与えて消えた。そこへ小百合が現れ、再生することを選択して門をくぐった。摩耶も再生する ことを選択した。神崎と響子は岸を秀芳の住む社に連れて行き、彼の心臓を元に戻してもらった。秀芳は「レイは生き霊で、工藤に力を 貸している。もはや彼らは人間ではない。儀式によって人間を遥かに超えた力が宿り、その体は闇の魔力によって守られている。工藤は 悪魔を呼び出そうとしている」と語る…。

監督は北村龍平、原作は高橋ツトム、脚本は桐山勲、脚本協力は小川智子、プロデューサーは遠藤日登思&出目宏&横地郁英、 アソシエイトプロデューサーは橘田寿宏&福吉健&株柳真司、企画は宮下昌幸&遠藤茂行&岩永恵&和田省一、製作指揮は大里洋吉& 早河洋、エグゼクティブプロデューサーは河井信哉&木村純一、プロダクション総括は佐藤和之、撮影は古谷巧、編集は掛須秀一、録音は 高野泰雄、照明は高坂俊秀、美術は花谷秀文、VFXプロデューサーは篠田学、VFXスーパーバイザーは進威志、 アクションコーディネーターは諸鍛冶裕太、音楽は森野宣彦&矢野大介、主題歌はHYDE『HORIZON』。
出演は釈由美子、大沢たかお、谷原章介、岡本綾、戸田菜穂、田口浩正、北見敏之、吉田照美、北村一輝、山田麻衣子、椎名英姫、 菊池由美、優恵、魚谷佳苗、小田瑞穂、浅井江理名、上地雄輔、神田昇二郎、野村真季、大場一史、片山武宏、金澤大朗、松本実、 上條公太郎ら。


高橋ツトムの漫画『スカイハイ』を基にしたTVドラマの劇場版。
TVシリーズは第2シリーズまで作られたが、この映画は第1シリーズと第2シリーズの間に製作されている。
TV版でイズコを演じた釈由美子が今回は斉木美奈という役柄で登場し、彼女がイズコになるまで の経緯を描くという内容になっている。釈由美子を除くTV版のレギュラーは登場しない。
工藤を大沢たかお、神崎を谷原章介、小百合を岡本綾、響子を戸田菜穂、岸を田口浩正、城嶋を北見敏之、編集長を吉田照美、リョウを 北村一輝、摩耶を山田麻衣子、イズコを椎名英姫、秀芳を菊池由美、エリを優恵、レイを魚谷佳苗が演じている。
監督はTV版の第9話と第10話(最終話)を演出した北村龍平。高橋ツトム作品を手掛けるのは『ALIVE』に次いで2度目となる。
テレビ朝日開局45周年記念作品だが、なんでそんな大事な作品にこれを選んだんだろうね。

私はTVドラマ版を未見だが、どうやらアクション作品というわけではなかったようだ。
北村龍平監督がメガホンを執るということで、アクション映画になったようだ。
っていうか製作サイドも北村監督を起用した時点で、TV版とは違ってアクションに特化した作品として 仕上げようという考えだったんだろう。
もしもアクションに特化する気が無いのに北村監督を起用したとしたら、映画をプロデュースするセンスが全く無いってことになる。

ウェディングドレス姿の美奈が心臓を抉られた状態で教会の扉を開けてヨロヨロと歩いてくるというのは、もう完全に「そのシーンを 撮りたい」というだけでやっている。
だって、それまでの3人は死体で発見されているわけだからね。
それなのに今回は、花嫁を式場で殺害するという、「どう考えても目撃されるだろ」ということを工藤たちはやっている。
そんな無茶な状況で殺人を実行する必要性は何も無いのだ。
それは「その絵を見せたい」という監督の都合に過ぎない。

イズコから死んだと言われたのに、美奈はまるで驚く様子が無く、そこは淡々と受け止めている。で、3つの行き先について説明されると 「何の話?」と笑い飛ばし、「貴方は殺されたのよ」と言われて初めてショックを受けているが、リアクションが遅いよ。
その前に「ここは不慮の事故や殺された者が来る場所」ってイズコが説明しただろうが。聞いてなかったのかよ。
しかも、彼女のショックをどうやって表現するかというと、稲光を使うという陳腐さ。
あと、「誰かが私を殺したのね。誰が?」って美奈は尋ねているけど、その記憶は無いのね。
テレビ版も見ていないし、漫画も読んでいないんだけど、「なんで自分が殺されたことも、殺した犯人も全く覚えてないんだよ。
忘れていたとしても、イズコから死んだことを告げられたら思い出すはずだろ」とツッコミを入れずに、そこはスルーしなきゃいけない 箇所なのね。

美奈に「どうして私は殺されたの?」と訊かれたイズコは「貴方が望むなら恨みの記憶を辿ることが出来る」と言うけど、恨んでるなんて 一言も言ってないから。どうして殺されたのかという「疑問」だから。
で、控え室で鏡に歪んだ顔が写って怖くなるところまでは分かる。だけど、なんで美奈は誰かを呼ぶわけでもなく、式場の外へ一人で フラフラと出て行くのか。
そんで、美奈は良く分からない場所でレイに刺されているんだが、そこは既に現世じゃないよな。どういう設定なのか良く 分からんぞ。レイは『ウイングマン』のキータクラーみたいに、別次元を作り出すことが出来るのか(その例えは分かりにくいぞ)。
で、心臓を抉られたのに美奈が教会まで歩いてくるのは変じゃないのかと思っていたら、後で響子が「医者だから分かるの。心臓を 抜かれて歩くなんて不可能」と言うので、それが普通じゃないことは、さすがに監督も分かっていたらしい。
でも、それを言うのが遅いよ。検死の時に言えよ。こっちは、それをバカバカしいシーンとして受け止めているんだから。
っていうか、バカバカしいと思わせてまでそんなシーンを描く必要は、本当は無いんだけどさ。

神崎は美奈の死体を見ながら「そいつ(犯人)はまだ美奈の心臓を持ってる」と言うけど、そうとは限らないだろ。抉り取るのが目的で、 その後は捨てたかもしれないぞ。
彼は響子に「そいつの心臓を止めて美奈の心臓を取り返す」と言う辺り、心臓にこだわっているようだが、なぜ「復讐する」じゃなくて、 「心臓を取り返す」が目的になってんのよ。
っていうか、そのセリフの前に、美奈は神崎が犯人を殺すつもりだと気付いてるので、その後で改めて神埼が復讐する考えをセリフで説明 するのは二度手間なのよ。そんなシーンはサクッとカットして、もっとシェイプアップしてくれよ。この映画、そうじゃなくても無駄に 長いんだし。
響子が魂が実在することについて長々と神崎に語るのも、ただ退屈なだけだよ。

工藤とレイが武装した男たちに囲まれるシーンで、北村監督が大好きなアクションシーンになる。
だけど、何がどう動いているのかは良く分からない。
北村監督はアクション映画が得意だと言われているが、実際にはアクションシーンを撮っているだけで、アクション映画を撮って いない。
しかも、そのアクションシーンにしても、決して上手くはないよ。
北村監督は決めポーズのような「止め絵」のイメージは持っているようだが、動画をちゃんと見せるセンスが乏しいのだ。
しかもこの人、アクションのバリエーションが少ないから、同じ映画の中でマンネリに陥ってしまう。

神埼が情報屋を訪ねたシーンでは、「テメエの女も守れない奴が偉そうなこと言ってんじゃねえぞ」と言われて神埼が襲い掛かり、格闘に なる。
だけど、そこはあっさりと銃を向けて威嚇するだけで終わるべき場所でしょ。なんでアクションシーンとて演出するかね。そんな トコに力を入れてどうすんのよ。
北村監督は、緩急の使い分けが全く出来ていないんだよな。「ドラマ部分は手抜きしてアクションは力が入る」という意味ではテンション の差はあるけど、そういうことじゃないからね、緩急の使い分けってのは。
っていうか、その後、その情報屋は二度と出て来ないし。じゃあ無理に出す必要ねえじゃん。工藤を襲った連中も同様。そこで工藤とレイ のアクションを見せておきたいという考えだったんだろうけど、やり方が雑。

岸が神崎に見せる「飛行機が大きな手に掴まれている」という写真は、工藤やレイとは何の関係も無い。
それは「岸は人が死ぬ予兆として、謎の手を撮影する能力がある」という設定を説明するためのモノなんだけど、今回の事件と無関係な モノを持ち込むんじゃないよ。無駄にややこしくなるじゃないか。
そういう奇妙な写真を用意するにしても、今回の連続殺人に限定すりゃいいのに。
工藤の部屋には六芒星があって、その頂点に心臓4つを置いてあるんだが、それまでの時点で既に陳腐な印象だったのが、ますます陳腐に なるぞ。
それを陳腐に思わせないためには、六芒星が登場しても脱力しないだけの地均し、その荒唐無稽な世界観に観客を巻き込むための作業が 必要なんだが、そういうことには全く無頓着なんだよね、北村監督って人は。

工藤のオフィスを訪れた美奈はレイが刀を抜くとビビってるけど、アンタは幽霊なんだから、簡単に瞬間移動とか出来るんじゃないのか。 そうやってオフィスにも来たんだろ。まさか普通に歩いてきたわけじゃないんだろ。だったら、そんなにビビらなくても いいでしょ。
っていうか、っていうか、なんで工藤やレイは、普通に死んだ人間を掴んだり出来るんだろう。
小百合が殺される時も美奈の時と同様、そこは現世ではなく別次元になっている。それはレイがやっているらしいんだが、生き霊ってのは 、そんな能力を持っているのね。
だけど「別次元を作り出して、誰にも見られずに殺人を実行できる」って、もうルール無用だよな。
おまけに生きている人間だけじゃなく死者を斬ることも出来るし、やりたい放題のシナリオだな。

響子と城嶋が地図を見ながら、コンサート会場と今までの事件現場を線で結ぶシーンがある。城嶋は、まず最初に3つの現場を正三角形で 結んで、残りの一つについては「分からん」と言う。ここで響子がコンサート会場のことを教えると、城嶋はそこと残った一つを 結ぶ。
それは六芒星を描く途中段階になっているが、「まず完成形ありき」じゃなかったら、そんな変な結び方はしないぞ。
神崎と岸がコンサート会場を訪れると小百合の死体がステージ上から降ってくるが、もう彼らが到着した時点で、既に小百合が殺されて いることは分かっているんだから、それは構成として失敗でしょ。
会場に行った時点ではまだ殺されたことは分かっておらず、宙吊り死体が降って来て、初めて彼女の死が判明する形にすべきなんだよ。
だけど北村監督は、「秘書が犠牲者2名を斬ってから小百合を刺す」という、無意味な動きを付けたアクションシーンを見せたい意識 ばかりが強くて、流れや構成はシカトしてんのよね。

小百合の死体を見た後、神崎たちは駐車場へ走るけど、なぜ駐車場へ向かったのかは不明。
っていうか、なんで工藤たちは、それまで会場に残ってるんだよ。もう目的を果たしたんだから、さっさと立ち去れよ。目撃されたら 困るんじゃねえのかよ。それまではバレないように殺人を重ねてきたのに、そこに来て急に「別に知られても構わない」的な態度に 変わるのは何なんだよ。
工藤とレイが会場を去ったところにイズコが現れて戦闘に突入するが、もう北村監督はソードアクションがやりたくて仕方が ないのね。
それは置いておくとしても、あっさりイズコが殺されてるのはいいのかよ。恨みの門の門番って、そんなに軽い存在なのかよ。もっと 絶対的な存在じゃなきゃダメなんじゃないのか。
あと、レイは「この剣は死者でも斬れる」と言うけど、剣の問題じゃなくて、アンタらが普通に死者を見ていることが問題なのよ。
それにお前は斬る以前に、パワーで岸を弾き飛ばして心臓を止めたりしてるじゃねえか。剣の能力が無くても、既に奇怪な存在に なってるのよ。

イズコは門に戻って美奈に「今から貴方が門番よ」と言うけど、門番って二度もやるケースもあるってことなのね。
だけど、まだ選択もしてないような奴に、そんなことを任せるのは無茶だろ。
っていうか、それ以前に、門番が門を投げ出して戦いに繰り出しているってのは、どうなのよ。その間に、恨みの門に誰か来ていたら どうする気だったんだ。
あと、そこには摩耶もいたんだけど、なぜイズコが美奈の方を選んだのかは良く分からないね。

終盤になると、工藤が悪魔を呼び出そうとしていることが判明する。遺伝子工学でヒトゲノムを解読した奴が、マッド・サイエンティスト じゃなくて悪魔信奉の狂信者になっちゃってるという設定だ。
決してギャグとしてやっているわけではない。
で、ようするにオカルトをやってるんだけど、オカルトとしての雰囲気作りが全く出来てないのよ。
そういう雰囲気作りのセンスの有無以前に、そもそも北村監督は、そういう作業をやる気が無さそうなんだよな。

恨みの門に来た工藤は美奈を殺そうとするが、「今さら彼女を殺したところで何の意味も無いだろうに。もはやエリを蘇らせることは 出来ないんだから」と思っていたら、「俺はこの世界を呪って引き換えにエリを取り戻す」と言い出す。
何をワケの分からんことを言っているんだと思ったら、秀芳が「悪魔を呼び出す最終段階は恨みの門へ行くこと。だから工藤はわざと 殺された」と説明する。
分かりやすい御都合主義だなあ。
まあ北村作品だから、話が陳腐でデタラメなのは、当然っちゃあ当然だけどね。

美奈ってヒロインのはずなのに、すげえ出番が少ない。
ヒロインがアクション俳優じゃないから、脇役を務めるアクション俳優に多くのアクションを担当してもらうというなら、狙いとして 分からなくは無い。
ただ、美奈の出番を減らした分、アクションシーンをこなしている連中も、やっぱりアクション俳優ではないのよ。
あと、カット割りが細かくて何をやっているのか良く分からないけど、これはアクションが出来ない俳優の動きを誤魔化すための演出と してやっているわけではない。
北村監督は、アクションの出来る俳優を使った場合でも、そういう細切れ演出をやる人だ。

(観賞日:2010年5月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会