『死者の学園祭』:2000、日本

結城真知子は手塚学園に通う高校2年生。演劇部の部長をしている彼女は、創立80周年記念となる学園祭で、友人の山崎由子が最後に書いた作品「青い瞳の天使」を上演しようと頑張っていた。由子は校舎の屋上から飛び降りて自殺したのだった。
「青い瞳の天使」は、80年前に手塚学園で起きた実際の事件を元にした作品だ。ドイツから招かれた美術教師メトカフは妻が祖国にいながらも、学園長の娘であった音楽教師と恋に落ちた。しかし2人の仲は引き裂かれ、学園長の娘は身を投げてこの世を去ったのだった。
演劇部では美術教師のソーンヒルがメトカフ役を演じることになり、稽古が始められた。そんな中、学園には神山英人という転校生がやって来た。真知子の親友・柳田真弓は彼からデートに誘われるが、その日の夜に何者かに殺害される。それは連続殺人の始まりだった…。

監督は篠原哲雄、原作は赤川次郎『死者の学園祭』角川文庫刊、脚本は 安倍照男&山田珠美、プロデューサーは柘植靖司&井上文雄、エグゼクティブ・プロデューサーは原正人、撮影は柴主高秀、編集は冨田功、 録音は山田均、照明は豊見山明長、美術は稲垣尚夫、音楽は溝口肇。
主題歌「How?」唄:深田恭子、作詞:岩里祐穂、作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし。
出演は深田恭子、加藤雅也、内田朝陽、根津甚八、筒井康隆、宮崎美子、セイン・カミュ、林知花、坂本三佳、黒澤優、羽仁俊太郎、 上田耕一、伊藤洋三郎、山田幸伸、側見民雄、三上猛士、野口雅弘、松山薫、石川素子、北島織、阿部朋子、平塚英治、 金子貴俊、渡邉真遊、金本幸子、野間雅代、川村陽介、清水沙映、田口未央、木村朋彦、小川摩起、田畑菜々子、 平賀彩、水戸ひねき、大橋明、野貴葵ら。


深田恭子、ニックネームはフカキョン。
彼女が初主演した映画。
原作は赤川次郎で、ヒロインの相手役である神山英人を演じるのは、「21世紀ムービースターオーディション」で選ばれた内田朝陽。
アイドル映画としてのお膳立てが揃った、深田恭子ファンのためのアイドル映画だ。

映画の中で真知子がピアノを弾くシーンがある。
これは吹き替えではなく、実際に深田恭子が練習して弾いている。
「ピアノの練習をするよりも、演技の練習をした方がいいんじゃないのか」などと、無粋なツッコミを入れてはいけない。
主演しているのはフカキョンなのだ。
ホリプロのアイドルなのだ。

加藤雅也が演じる教師・倉林勇に対する真知子の熱い思いが空回りしているように感じられるとか、親友が死んだことの悲しみがほとんど伝わってこないとか、そういうことを気にしてはいけない。
フカキョンはアイドルなのだから、演技力を期待してはいけないのだ。

そのことは、製作サイドも分かっている。
周囲を芸達者な俳優ばかりで揃えてしまったら、彼女の芝居がお世辞にも上手くないということが浮き彫りになることを知っている。
だから、オーディションで選んだ新人とか、作家の先生とか、バラエティー系のタレントとか、演技の上手くない俳優などで脇を固めているのである。

前半では神山に疑いを向けたいのだろうが、真弓が車でひかれて殺害されている時点で無理が生じる。謎を解いていく展開は薄く、終盤に近付いてから慌てて処理しようとする。真犯人に繋げるためのラインは弱い。
しかし、そういったことを気にしてはいけない。

この作品は、フカキョンを見るための映画だ。
フカキョンと、フカキョンのファンのために作られた映画だ。
だからビデオをレンタルした場合、フカキョンの出演シーン以外は早送りしても構わない。
ストーリーが知りたければ、原作を読めばいい。
内容など、二の次、三の次なのである。
フカキョンが可愛いんだから、それでいいのだ。
他に何が要るだろうか。

 

*ポンコツ映画愛護協会