『新宿スワンII』:2017、日本

秀吉が死んでから1年が経過し、白鳥龍彦は若手の鼠賀や井出たちを指導する立場になっていた。仲の良かった洋介は、いつの間にか姿を消していた。ホステスのルイは龍彦に挨拶し、照会してもらった店のことで礼を述べた。それを見ていたマユミという女に、井出が話し掛けた。するとマユミは、「あの人に相談する」と龍彦を指名した。200万円の借金があることをマユミが明かすと、龍彦は涼子がママを務めるクラブ『ムーランルージュ』を紹介した。
龍彦は鼠賀からスカウトが揉めていると知らされ、急いで現場へ向かった。するとスカウト会社「パラサイツ」の森長千里が、バーストのスカウトマンたちを暴行していた。バーストとパラサイツは手打ちしており、龍彦は「終わった喧嘩だ」と言う。しかし森長が構わずに襲い掛かったため、龍彦も反撃した。2人が喧嘩していると、警官の木下たちが駆け付けた。龍彦は「また喧嘩か」と呆れる木下に、森長は仲間だと釈明した。木下たちが去った後、龍彦と森長は笑顔で別れた。
龍彦がバーストのオフィスへ戻ると、社長の山城と幹部の真虎、関、葉山、時政が集まっていた。山城は「現場での揉め事が多いなあ」と言い、ハーレムとの合併でスカウトマンが増えたせいで問題が起きていると指摘した。彼はスカウトマンを減らすことも考えるが、幹部の面々は反対した。すると山城は「シマを広げる」と言い、横浜へ進出する計画を明かした。全日本酒販連合会が2軒の大型クラブを出店し、それぞれ100人規模のホステスを募集するという情報を彼は掴んでいた。
真虎や時政は、横浜は滝正樹の率いる「ウィザード」が固めていて入り込む隙が無いと語り、山城の考えに反対した。すると山城は、滝と因縁のある関に龍彦を連れて横浜へ乗り込むよう指示した。龍彦は困惑するが、山城から「洋介が横浜にいるらしい」と聞いて行く気になった。関は真虎に問われ、滝とは幼い頃からの仲良しであること、2年の服役を終えてから横浜には戻っていないことを話した。全日本酒販連合会の住友会長は新聞広告などでホステスを募っていたが、30人しか集まっていなかった。そこで側近の梶田に指示し、ウィザードに頼むことにした。
滝は恋人のアヤカに、12年ぶりに関が横浜へ戻って来ることを教える。彼は洋介がヤク中になったことを知っており、ちゃんと監視するよう要求する。滝は幹部のハネマン、キルビル、モリケンを集め、「薬は使うもんじゃねえんだ。売るもんだ」と怒鳴った。住友は滝に1億円を渡し、その金額で領収証を切って5000万円は返却するよう告げる。滝が「5000万円で会長を雇うことになる」と言うと、彼は「君に雇われたりはしない」と述べた。彼は「その金をどうしようと勝手だ」と告げ、その場を去った。滝はハネマンを呼ぶと、2000万円を宝来会へ運ぶよう命じた。住友は部下の倉石に連絡し、ウィザードとは別のスカウト会社を当たるよう持ち掛けた。
龍彦はマユミを呼び出し、横浜へ行くことを話した。気乗りがしないことを打ち明ける龍彦だが、マユミが背中を押した。龍彦は関と共に船で横浜へ向かい、後から鼠賀、井出、ヒロシ、本田、臨時採用の森長が来ることを語る。森長はどうしても横浜へ来たいということで、バーストに加わったのだ。それを聞いた関が毒山も呼ぶよう命じたので、龍彦はウィザードと喧嘩する気だと感じた。ハネマンは関が来たことを刑事の砂子に知らせ、滝から預かった金を渡した。
関は1人になると、過去を振り返る。ある時、滝は数名の男たちに襲われ、反撃して1人を殺害した。その場に居合わせた関は罪を被り、刑事に逮捕された。関は滝に電話を掛けて宣戦布告し、「一緒にやろうぜ」という誘いを断った。関は龍彦たちに、ウィザードと揉めても構わないから片っ端から女に声を掛けろと指示した。すぐにトラブルが勃発し、バーストとウィザードは乱闘になった。ハネマンの連絡を受けた砂子は警官隊を引き連れて現場に駆け付け、バーストの面々だけを連行した。
滝は紋舞会の天野会長に会い、バーストを横浜へから追い出してウィザードの面倒を渋谷で見てほしいと持ち掛けた。彼が5000万円を渡すと、天野はバーストからウィザードに乗り換えることを承諾した。焦った山城は横浜から龍彦たちを引かせようとするが、真虎は「今さら関は戻らないし、破門にしても終わらない」と指摘する。時政が「横浜を手に入れよう」と提案すると、真虎は賛同した。山城は腹を括り、「宝来会へ乗り込み、ウィザードを切り離す」と宣言した。
横浜中央署を出た龍彦は、真虎からの電話で波紋を通告された。龍彦が狼狽すると、真虎は天野がバーストからウィザードに乗り換えたことを語って「これ以上、会長を刺激できない」と告げた。ハネマンたちは「ムーランルージュ」へ乗り込み、挑発的な態度を見せ付けた。山城は真虎と時政を伴い、宝来会の田坂総長と面会した。山城は金を積み、ウィザードが紋舞会の世話になろうとしていることを教えた。しかし田坂は信じようとせず、山城の計画は失敗に終わった。
龍彦と森長は倉石の仲介で住友と会い、ホステスのスカウトを要請された。住友は「集めた女性でコンテスト大会をやるというのはどうだ。スポンサーを呼んで審査員をやらせれば、いいイベントになる」と語り、採用者の多かったスカウト会社に1千万の賞金を出すと告げた。3月31日の開催を決定した彼は、滝にも連絡を入れた。滝はバーストが早々に潰れると考えており、余裕の態度で承諾した。葉山は滝を訪ね、洋介を捜しに来たと言う。滝は「バーストは潰れる。お前に話すことは無い」と告げ、彼を追い払った。
龍彦たちが女性をスカウトしていると滝がウィザードの面々を引き連れて現れ、「お前にお灸を据えに来た。一緒に来い」と告げる。龍彦は滝の部下に洋介の姿を確認して驚き、「付いていってやるよ」と言い放った。滝は龍彦を監禁して暴行し、山城に電話を掛けて「勝ち目は無いからウチに付け」と脅した。真虎はムーランルージュを訪れ、涼子に「もう打つ手は無い」と漏らして協力を求めた。涼子が「天野はそんなに甘くないわよ」と言うと、彼は「バカな話をした。忘れてくれ」と告げて立ち去った。
関は砂子と会い、滝の薬の取り引き場所を教えてくれと持ち掛けた。砂子は拒否し、出所しても横浜に戻らなかった理由を質問した。関は出所したら田坂が待っていたこと、滝からの餞別として2千万を差し出したことを告げる。「横浜から出て行け。二度と戻って来るな」と言われた関は、金を受け取らずに立ち去ったのだと語る。その話を聞いた砂子は、本牧の第21番倉庫で31日の19時に取り引きが行われることを教えた。
ウィザードの面々は開店前のムーランルージュへ乗り込んでボーイを暴行し、内装を破壊して去った。犯行の様子は防犯カメラに写っていたが、駆け付けた龍彦たちに涼子は「警察には届けない。私流で決着を付けるわ」と告げた。龍彦も自分流でやると告げ、新宿の街を歩くウィザードの面々を見つけて喧嘩を吹っ掛けた。バーストは巨大パネルを倒し、激しい乱闘を繰り広げた。しかし龍彦はハネマンに殴られ、やって来た紋舞会はウィザードの味方に付いた。
龍彦はマユミと会い、「借金は返せそう?」と訊く。マユミが「利息が高すぎて、幾ら返しても追い付かない」と言うので、龍彦は「俺が話付けてやるよ」と闇金へ同行することにした。彼が愛情金融へ行くと、そこにいたのは顔馴染みの連中だった。彼らは半年前からマユミと連絡が取れなかったこと、不良債権と化したので専門業者に激安で売却したことを語った。マユミは「生きてるのが嫌になった」と吐露し、橋から川へ飛び込もうとする。龍彦は思い留まるよう説得するが、彼女は川に飛び込んだ。龍彦は彼女を救助し、「信じて頑張れば報われる」と励ました。 涼子は真虎に連絡し、「この間の件、引き受けるわ」と告げた。彼女は天野の元を訪れ、「店の全面修繕費と休業補償として2億円を用意する。ウィザードを新宿から追い出し、バーストに戻る」という要求を出した。交換条件を問われた彼女が「何でも望みを叶える」と言うと、天野は承諾した。天野は滝から受け取った金を田坂に送り付け、2億円の損害賠償請求書を同封した。裏切りを知った田坂は滝を呼び付けて殴り付け、2億円を用意するよう命じた。
滝はアリサと幹部たちを集め、「洋介の薬の取り引きも、今夜で最後だ」と告げる。ようやく解放されるとアリサは喜び、滝はハネマンに「ウィザードは生まれ変わるんだ」と述べた。田坂は住友と密会し、手を切りたいと通告される。滝さえ手懐けられないことを指摘した住友は、脅しを掛ける田坂に「私は君の上の上とも繋がっているんだよ」と泰然とした態度で言い放った。アリサは洋介に頼まれ、彼を龍彦の元へ連れて行く。洋介がヤク中だと知った龍彦はバーストに戻るよう誘うが、「放っておいてくれ」と拒絶された。アリサは薬の取り引きが終われば洋介が用済みになると考え、連れて逃げるよう龍彦に頼む…。

監督は園子温、原作は和久井健『新宿スワン』(講談社『ヤンマガKCスペシャル所載』)、脚本は水島力也、プロデューサーは山本又一朗、企画は古川公平&瀧藤雅朝、共同プロデューサーは富田敏家&鈴木剛、ラインプロデューサーは佐藤圭一朗、撮影は谷川創平、美術は林田裕至、照明は李家俊理、編集は掛須秀一、衣裳デザイン/キャラクターデザインは澤田石和寛、アクション監督は谷垣健治、録音は小宮元、音楽は大坪直樹&清塚信也、音楽プロデューサーは古川ヒロシ、主題歌『Dead End in Tokyo』はMAN WITH A MISSION。
出演は綾野剛、浅野忠信、伊勢谷友介、椎名桔平、吉田鋼太郎、豊原功補、山田優、深水元基、金子ノブアキ、村上淳、久保田悠来、上地雄輔、広瀬アリス、高橋メアリージュン、桐山漣、中野裕太、中野英雄、笹野高史、要潤、神尾佑、佐藤祐基、成田凌、一ノ瀬ワタル、梶原ひかり、北村昭博、三浦力、奥野瑛太、山口祥行、玉城裕規、山本紗也加、長手絢香、野崎萌香、Anly、福田愛美、中村祐樹、吉家章人、三浦萌、小宮有紗、岡村いずみ、加弥乃、桜木さら、上松大輔、有馬健太、冨永竜、大川慶吾、栗原類、藤巻勇気、渡辺潤、新井佑典、溝口裕介、札内幸太、武藤賢人、根岸拓哉、植田恭平、久保龍一、金子元彦、園山敬介、谷本幸優、谷本和優、河野有汰、小橋秀行、Adam Torel、松田陸、武田一馬、原博章、杉原勇武、兼松若人、宮城大樹、沖原一生、らぶ、吉田カルロス、市川真也、池田和樹、小橋川健、西村涼太郎ら。


和久井健の漫画『新宿スワン』を基にしたシリーズ第2作。
監督は前作に引き続き、園子温が担当。
脚本は前作のコンビから鈴木おさむが外れ、この作品のプロデューサー&綾野剛の所属事務所社長でもある山本又一朗が「水島力也」名義で執筆している。
龍彦役の綾野剛、真虎役の伊勢谷友介、天野役の吉田鋼太郎、山城役の豊原功補、涼子役の山田優、関役の深水元基、葉山役の金子ノブアキ、時政役の村上淳、洋介役の久保田悠来、毒山役の一ノ瀬ワタルは、前作からの続投。
滝を浅野忠信、森長を上地雄輔、マユミを広瀬アリス、アリサを高橋メアリージュン、鼠賀を桐山漣、ハネマンを中野裕太(前作にも別の 役で出演していた)、井出を佐藤祐基、ヒロシを成田凌、キルビルを梶原ひかり、モリケンを北村昭博が演じている。

スカウトマンの話なのに、やたらとアクションシーンが多い。スカウトマンなのに、やたらと喧嘩に強い連中が揃っている。
ようするに、スウカトマンの世界を描いているものの、やってることは不良映画とヤクザ映画のミックスなのだ。
チャカやドスを使わずステゴロの戦いが多いのは不良映画のノリで、グループ同士の縄張り争いやバックに付く組織との関係などはヤクザ映画のノリ。会社を解雇されることを「破門」と呼ぶなんて、完全にヤクザだしね。
実際は、ヤクザに憧れている愚連隊みたいなモンだけど。

第1作を見ていなければ、話に付いていくのは難しい。前作で描かれたストーリーや人間関係が、そのまま引き継がれているからだ。当然のことながら、そこを改めて詳しく説明するような作業は無いしね。
そして前作を見ていたとしても、主要キャラの多さは厄介な障害となる。
前作の時点で、既に主要キャラが多すぎて渋滞を引き起こしていた。その内の何名かは減っているが、新たな面々も加わっている。
交通整理が下手なので、やたらとゴチャゴチャしており、主要キャラを把握するだけでも大変だ。
そんな苦労を強いるのに、そんな面々を充分に使いこなせていない。前作に引き続いて、存在意義の乏しいキャラが何人もいる。

森長のように、「まるで前作からの続投みたいに登場するけど、実は新顔」というキャラもいる。
っていうか、こんな奴、要らないでしょ。こいつと龍彦は「喧嘩で仲良くなる」という不良映画のベタをやっているけど、見せ方が下手だから不自然極まりないし。
あと、森長が臨時採用で横浜に来る展開は強引すぎるだろ。その理由が「どうしても横浜を見たいから」って、なんちゅう適当な設定だよ。
そんな変な形になるぐらいなら、最初から「バーストの新入り」ってことにしておけばいいじゃないか。

臨時採用ってことで横浜に来た森長が、住友から仕事を依頼される大事な場に、龍彦と2人で行っているのも不可解だ。
龍彦が倉石から話を聞いた時に、なんでバーストの部下じゃなくて、森長を連れていくと決めたのか。
っていうか、なんで龍彦が横浜に派遣されたグループのリーダー格みたいになってんのよ。スカウトの依頼をされる大事な話し合いなのに、なんで関が同席しないのよ。
倉石から話を聞いた時、龍彦が関に伝えないのは変だろ。

序盤、山城は関から「どうやってシマを広げるのか」と問われた時、「そんなの決まってる。横浜だ」と言う。
でも、何が「決まってる」のかサッパリ分からない。彼は2軒のクラブが出来ることを話すけど、「横浜に決まってる」と断言するまでの説得力は乏しい。
そもそも、前作でバーストはハーレムと合併したけど、それで縄張りも増えているはずでしょ。なので、「合併でスカウトが増えたから縄張りを増やす必要がある」という理屈は、ちょっと良く分からない。
増やすにしても、なぜ渋谷の周辺から攻めないのかと。

全日本酒販連合会という団体がクラブ経営に乗り出しているのは違和感があるが、ここは「ごく普通のこと」としてスルーされている。
そんな全酒連がホステスを広告で募集したのに30人しか集まっていないってのは不自然に感じるが、そこもスルーされている。
あと、住友が1億の半分を戻すよう滝に要求する意味が良く分からないんだけど、着服が目的ってことなのか。
砂子は賄賂を受け取る悪徳刑事にしてあるし、「龍彦の周囲は職業を問わず醜悪な奴ばかり」ということにしたかったのかな。
ただ、欲張り過ぎて全く整理できていない。個々のキャラをちゃんと描けていないし、もはや記号としての存在さえボンヤリしている。

前作もそうだったが、余計なシーンが多すぎて上映時間が長くなっている。
前作は139分で、この2作目は133分。6分だけ減ったけど、尺が長すぎると感じるのは一緒だ。
内容が充実しているから、それで長くなっているわけではない。
例えばクラブのステージでAnlyが歌うシーンとか、絶対に要らないでしょ。昔の映画だとゲストの歌唱シーンを用意することも珍しくなかったけど、それでも90分ぐらいの尺で収めていたからね。
この作品の場合、ただでさえ無駄が多いのに、そんなトコで時間を使っている余裕なんて無いでしょ。

Anlyが歌うのは、龍彦がマユミを呼び出し、横浜へ行くことを語るシーンだ。
龍彦にとってマユミは、特別な女性ではない。自分が店を紹介した女性の1人に過ぎないはずだ。
ってことは、龍彦は「自分が世話した女性へのアフターサービス」として、全ての女性にマユミと同じ対応をしていると捉えるべきだろう。つまり、「全ての女性を呼び出し、横浜へ行くことを伝え、しばらく一緒に過ごす」という行動を取っていることになる。
どんだけ手間と時間が掛かるんだよ。

っていうかさ、マユミって全く要らないよね。
前作のヒロインであるアゲハも存在意義が乏しかったけど、それでもメインストーリーの中で動かそうとしていた。今回はバーストとウィザードの抗争を描く話なので、マユミは全く関係が無い。
存在意義という意味では、監督のお気に入りである高橋メアリージュンが演じるアリサの方が、遥かに上。
マユミの絡むシーンを全てバッサリとカットしてしまった方が、少しは話がスッキリするだろう。

マユミは借金を返済するためにクラブで働き始めるが、負債を抱えた理由を掘り下げるわけでもない。
クラブで働き始めた後、彼女が重要な鍵を握るようなエピソードが用意されるわけでもない。
彼女の借金絡みで龍彦が行動を起こす展開はあるが、本筋とは上手く絡み合っておらず、余計な寄り道にしか思えない。
しかも、そこでマユミは自殺寸前まで追い込まれるのに、借金問題がどうなったのかは分からないまま、放り投げられて映画は終わってしまうのだ。

滝から「一緒に来い」と言われた龍彦が付いて行くのは、バカでしかない。「お灸を据える」と言っているんだから、暴行されるのは明白だろうに。付いて行っても、洋介を連れ戻せるわけじゃないんだし。
っていうか、そもそも滝が自ら龍彦たちの元へ来て「お灸を据えるから一緒に来い」と要求するのもバカだろ。普通は、そんな要求を出しても同意しないぞ。「話があるから一緒に来てくれ」とか、何か騙して連行し、暴行した方が利口だろ。
あと、わざわざ出向くなら、その場で喧嘩を仕掛けろよ。
いや、それ以前の問題として、滝が自ら龍彦の元へ行く時点で不自然。手下たちに連行の仕事は任せて、自分は待っていればいいだろうに。

真虎は涼子に「打つ手は無い」と漏らして協力を求めて直後に「忘れてくれ」と言うが、それは彼の価値を無駄に落とすシーンだ。そんなことを喋ったら、涼子が「力になりたい」と考えるのは分かっているはずでしょ。
だから、そこは例えば「真虎が困っていることを誰かと話し、それを聞いた涼子が自らの意志で力になろうとする」という形にでもした方がいい。
その後、店を壊された涼子は「こないだの話、引き受けるわ」と言うんだけど、ここで真虎が「頼むぞ」と全て委ねるのも酷い。それが何を意味するのか、彼は分かっているはずだろ。
そもそも、テメエらの問題なんだから、テメエらで片付けろよ。涼子が「死ぬよ」と覚悟を決めているのに、それを平気で放置するのは、どうしようもなくカッコ悪いぞ。

ただ、店を壊された涼子が防犯カメラの映像があるのに警察に届けず、「私流で決着を付ける」と言うのも不可解なんだよね。
その後で天野と会って損害賠償を請求したりするけど、そこは「真虎のために動いている」という部分の方が大きいし。
なので、それはそれとして、店を荒らされた出来事については、警察に届ければいいんじゃないのかと言いたくなのよ。
そこで警察に届けずに済ませようとする理由が、サッパリ分からないぞ。

関が砂子から横浜へ戻らなかった理由を問われると、田坂に「横浜から出て行け」と言われた時の回想シーンが入る。
それは滝の差し金じゃなくて田坂の考えなのだが、なぜ彼が関を横浜から遠ざけようとしたのか、その理由がサッパリ分からない。
そこに裏事情を用意するからには、後で「実はこんな狙いがあって関を騙した」という種明かしがあるのかと思ったが、何も無い。
それとさ、それを聞いた砂子が取り引き場所と日時を教えるのは変だよ。彼は「お涙頂戴話で俺を落としやがって」と言うけど、賄賂を受け取っている悪徳刑事が、その程度のことで滝を裏切るかね。
っていうか、どこにお涙頂戴の要素があったんだよ。

住友が「集めた女性でコンテスト大会をやるというのはどうだ。スポンサーを呼んで審査員をやらせれば、いいイベントになる」と言うシーンで、「やっちまったな」と感じる。
まず、そこに触れる前に、「コンテスト大会」ってのは表現として変じゃないか。コンテストが競技会の意味なので、「コンテスト」だけでいいでしょ。
あと、「いいイベントになる」ってのも気になるなあ。
そこは例えば「いい宣伝になる」みたいな言い方が適切じゃないか。

言葉の問題は置いておくとして、このままだと暴力による争いが続くので、何か変化を付けようとするのは分からんでもない。
見栄えがする分かりやすい出来事として、「ホステスのコンテスト」ってのを思い付いたんだろう。
安易っちゃあ安易だが、スカウトマンの本領を発揮できるチャンスと捉えることも出来る。喧嘩騒ぎや縄張り争いってのは、スカウトマンの本業からは外れているからね。
ただし、軌道修正を狙って山本又一朗がコンテストを持ち込んでいるわけではないのよね。

「クイーン・コンテスト」と名付けたイベントは高級ホテルの大広間を貸し切って開催され、それなりの地位がありそうな面々が審査員に呼ばれている。
そんな中で、ガラの悪さが見た目でモロに分かるバーストとウィザードのスカウトマンたちが会場に招待されているのは不可解だ。
ホントに住友や全酒連がコンテストを成功させたかったら、そいつらは呼ばないだろ。
っていうか、そいつらの仕事はホステスを集めた時点で終わっており、コンテストが始まったら何の関係も無いはずでしょ。

それを考えると、龍彦が「麻薬取引とコンテストが同じ日だ」ってことで悩むのも、関が「取引の方は任せてコンテストを優先しろ」と指示するのも、筋が通っていない。コンテストが始まったら、スカウトマンが出来ることなんて何も無いはずだ。
あと、バーストの連中が「いい子をスカウトしたが数が足りない」とか、「ウチが62人でウィザードが119人。圧倒された」と負けたような態度になるのも不可解。
コンテストなんだから、数じゃなくて大事なのは最も質のいい女性をゲットできたかどうかじゃないかと思うのよね。
だから報告を受けた真虎たちまで「負けは決まった」と焦りを見せているのも、バカにしか見えないのよね。

他審査結果が発表される時になって「採用者は98人と92人でバーストの勝利」ってことになっているけど、ここで初めて「ホステスとして採用者の多い方が勝利」というルールが明らかになるのよね。
そこまでは「優勝者を決める大会」だと思っていたから、前述した疑問を抱いていたのよ。
そのルールなら、そりゃあ用意した数の多い方が有利なのは確かだろう。だったら、そういうルールを事前にハッキリと示しておくべきでしょ。
っていうか、本気でホステスの採用を決める目的でやるのなら、ミスコンと同じような質疑応答や特技披露じゃなくて、その筋のプロが別の基準で選んだ方がいいと思うぞ。

そんなフワフワした大会を龍彦は途中で抜け出し、滝と関が対峙している現場へ赴く。そして龍彦は滝と殴り合いを開始するのだが、これとカットバックでミスコンに参加しているマユミの様子が描かれる。
だが、それで話の盛り上がりが増すようなことは全く無い。
「龍彦とナオミが、それぞれの戦いを繰り広げている」ということを言いたいのかもしれないけど、そこまで2人の関係がメインで扱われているわけでもないし、絆が深まっているわけでもない。
そもそも大会の方はチーム対決だから、ナオミが優勝を目指しているわけでもないし、彼女が良かったら勝てるわけでもないし。

あと、龍彦は大会を途中で抜け出しているけど、彼が滝を倒して全ての問題が解決するわけではないのよね。途中で戦いを切り上げた滝は関に釈明して負けを認め、宝来会の組員に田坂の仇討ちとして射殺されるのだ。
つまり龍彦は、ただの傍観者でしかない。わざわざ大会を抜け出して、そこにやって来る必要性など全く無いのだ。
その後に「洋介を連れて現場を去ったら葉山が現れて」という展開があるので、進行上の都合で移動させただけだ。
そして明らかに3作目を作る気満々で、何も解決せずにモヤモヤした状態で映画は終わる。

(観賞日:2018年8月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会