『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』:2015、日本

百年以上前、突如現れた巨人たちに人類の大半は喰われ、文明は崩壊した。この巨人大戦を生き残った者は、巨人の侵攻を防ぐため、巨大な壁を3重に築き、内側で生活圏を守って平和を保っていた。ある日、アルミンは両親の営む店を出て、女友達であるミカサの元を訪れる。2人は広大な草原へ行き、仲間であるエレンに声を掛ける。エレンは不発弾の上に乗っており、「爆発したらどうするの?」と心配するアルミンに「みんな吹き飛べば良い」と言う。
エレンは仕事が長続きせず、今回も1ヶ月でクビになっている。「何がしたいわけ?」とアルミンが尋ねると、彼は「お前は店の跡継ぎで満足か?」と問い掛ける。「内地にはでっかい建物があって、金持ちが住んでるんだろ。こんな田舎に無い物が一杯あるってな。行ってみたくないか?壁の外はどうだ?壁の中で産まれて、死んでいくのか?それでいいのか?俺は嫌だ」と彼は語り、苛立って不発弾を蹴る。すると付着していた土が剥がれ、描かれていた水着女性の絵が出現した。その背景の青色を見たアルミンは、「これは海だよ。ホントに実在したんだ」と興奮する。
「ホントにそれが壁の向こうにあるの?」とミサカは言い、飛ぶ鳥を見て「あの鳥は、海を見たことがあるのかな?」と呟いた。エレンは「見たいのか?」と問い掛け、ミカサとアルミンを連れて立入禁止区域の壁に向かう。エレンが壁を越えようとすると、ミカサは「いい、今じゃなくても」と言う。アルミンは「壁を登ったら死刑だよ。それに壁の外は巨人だらけっていうし」と反対するが、エレンは「ホントに信じてるのかよ、巨人がいるって。この百年以上、誰も見た奴はいない。もしかすると壁の向こうは、楽園かもな」と語る。
警備兵たちが3人に気付き、捕まえようとする。エレンが激しく抵抗していると、彼の知人である隊長のソウダがやって来た。彼は部下を下がらせ、「俺もガキの頃、同じことをやって捕まった」とエレンに告げる。ソウダは間もなく壁外調査が始まることを教え、調査隊に志願しないかとエレンに持ち掛けた。その直後、激しい揺れが発生し、壁の向こうから巨人が出現する。巨人は壁を破壊し、町には無数の岩が降り注ぐ。ソウダは部隊へ戻り、兵士たちに攻撃の準備を命じる。
壁には穴が開き、何体もの巨人が町へ乗り込んで来た。部隊は大砲を放つが、巨人は平然と歩き続ける。彼らは兵士を捕まえ、次々に捕食した。町がパニックに陥る中、エレンとミカサは逃亡する途中でアルミンとはぐれた。次々に捕食される人々の中には、アルミンの父も含まれていた。群衆は教会へ避難しようと押し寄せる中、赤ん坊を連れている母親が倒れ込んでしまう。それに気付いたエレンは母親に立ち上がるよう促し、ミカサは赤ん坊を抱き上げる。
エレンはミカサに駆け寄ろうとするが、群衆に押されて教会へ入ってしまった。すぐに扉が閉じられたため、エレンはミカサを助けに行くことが出来なかった。外に目をやったエレンは、ミカサが迫り来る巨人に怯える様子を目撃した。爆風の衝撃を受けた後、エレンが外へ飛び出すと巨人は去っており、ミカサの姿は無かった。その直後、巨人たちは教会を破壊し、中にいた人々が犠牲になった。エレンは呆然としたまま、崩壊した町を当ても無く歩いた。
2年後。外の壁を破壊された人々は農業地区を放棄し、中の壁がある商業地区まで撤退することを余儀なくされていた。大量の難民が発生し、食糧不足は深刻化していた。奪われた土地を取り戻し、外の壁を修復するため、軍の士官であるクバルは志願した作業員たちに訓練を積ませた。エレンやアルミン、ジャン、サシャ、サンナギ、フクシ、ヒアナ、リルといった面々は訓練を終了し、いよいよ作戦を実行に移す時が来た。兵器班長のハンジは巨人を倒すため、立体機動装置という武器を用意している。オモテ町の中継地点では、シキシマ隊長の率いる偵察隊と合流することになっていた。
出発前に夕食の配膳へ並んだエレンとアルミンは、給仕係の1人がソウダだと気付いた。ソウダからミカサについて問われたエレンは、「俺のせいだ」と漏らした。彼が巨人を憎んでいることを語ると、ソウダは皮肉っぽい口調で「それで巨人に復讐か。一匹や二匹を倒したって、どうにもならんぞ」と告げた。これまで外壁修復作戦は何度も失敗しており、とうとう爆薬も底を尽きた。残っているのは、表町にある最後の爆薬だけだった。
作業チームはトラックへ乗り込み、エレンの故郷であるモンゼン地区へ向かうことになった。ハンジは作業員たちに「巨人も夜は眠るし、起きても目は利かない。だから夜明けまでに表町まで一気に進む」と言い、ユノヒラ教官は「大声が出すな。巨人は人間の声に、敏感に反応する」と告げた。門が開かれ、作業チームは出発した。途中で子供の声を耳にしたヒアナは、チームを離れて捜しに行ってしまう。エレンが後を追うと、そこにいたのは巨人の赤ん坊だった。
赤ん坊が泣き出し、その声を聞いた調査チームは動揺する。ユノヒラは落ち着くよう告げるが、目を覚ました巨人に食われた。エレンとヒアナは数匹の巨人に追われ、必死で逃亡する。クバルがトラックを出発させたので、大勢の作業員が取り残される。ハンジはエレンたちに、「もうすぐ高い建物が増える。そこまで走れ」と叫んだ。エレンたちが走っていると、シキシマが立体起動装置で助けに駆け付けた。一緒に行動している戦士がミカサだと気付き、エレンは驚いた。シキシマとミカサは巨人を倒すと、無言で飛び去った。
クバルやハンジたちがオモテ町の倉庫に到着すると、シキシマは扉が開かないので爆薬は確認できていないことを話した。クバルはハンジに「反乱の噂があるのでね」と言い、地下の隠し階段を開けた。ジャンの挑発を受けたエレンが喧嘩をしていると、ミカサが来て「これ以上、隊規を乱すな」と冷淡に告げた。エレンが話し掛けても、彼女は無視して立ち去る。シキシマから声を掛けられたエレンは、ミカサのことを尋ねる。シキシマは「巨人と楽しく遊ぶ方法か?だとしたら俺が教えた」と告げた後、「本当の敵はな、巨人じゃない。本当の敵は安全だよ。飛んでみろ。捨てなければ得られない」と口にした。
エレンはミカサを見つけ、「とにかく良かった」と声を掛ける。するとミカサは彼を睨み付け、「良かった?あの子は喰われた」と言う。彼女は「私も」と告げ、巨人の歯形が残っている腹部を見せた。そこへシキシマが現れ、ミカサにリンゴを食べさせて背後から抱き締める。外へ出たエレンが叫んでいると、ヒアナが来て「また巨人を呼ぶ気?」と言う。エレンが詫びると、ヒアナは彼を屋内へ連れ込んで誘惑した。「娘の父親になってくれない?」と言われたエレンは、覗き込んでいる巨人の目に気付いた。
巨人はヒアナを引きずり出し、絶叫する彼女を捕食した。大勢の巨人たちが包囲しており、ハンジは作業チームに撤収を指示するシキシマやミカサは立体起動装置で出撃し、次々に巨人を始末する。そんな中、顔を隠した謎の男が爆薬を積んだトラックを奪って巨人へ向かった。恋人のフクシを亡くしたばかりのリルはトラックに飛び乗り、男を蹴り落としてハンドルを握った。彼女は巨人に突っ込み、トラックは大爆発を起こした…。

監督は樋口真嗣、原作は諫山創『進撃の巨人』(講談社『別冊少年マガジン』連載中)、脚本は渡辺雄介&町山智浩、製作は市川南&鈴木伸育、共同製作は中村理一郎&原田知明&堀義貴&岩田天植&弓矢政法&高橋誠&松田陽三&宮田謙一&吉川英作&宮本直人&千代勝美、エグゼクティブ・プロデューサーは山内章弘、プロデューサーは佐藤善宏、プロダクション統括は佐藤毅&城戸史朗、ラインプロデューサーは森賢正、特撮監督は尾上克郎、撮影は江原祥二、照明は杉本崇、美術は清水剛、録音 整音は中村淳、録音は田中博信、扮装統括は柘植伊佐夫、スタントコーディネーターは田渕景也、特殊造型プロデューサーは西村喜廣、編集は石田雄介、テクニカルプロデューサーは大屋哲男、VFXスーパーバイザーは佐藤敦紀&ツジノミナミ、音楽は鷺巣詩郎。
主題歌『ANTI-HERO -movie edit-』SEKAI NO OWARI 作詞:Fukase、作曲:Nakajin、編曲:SEKAI NO OWARI&Dan the Automator。
出演は三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、桜庭ななみ、松尾諭、渡部秀、水崎綾女、武田梨奈、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼、神尾佑、諏訪太朗、橋本じゅん、原知佐子、長島☆自演乙☆雄一郎、仁科貴、村木よし子、高橋みなみ、KREVA、細貝圭、大沢ひかる、青柳尊哉、伊藤裕一、児玉拓郎、佐藤亮太、杉原枝利香、清野菜名、とちおとちる、豊田茂、中村尚輝、中山孟、中泰雅、永澤伶門、鉢嶺杏奈、堀田祥子、山本啓之、NAO、遊木康剛、荒川真、小松雅史、屋敷紘子、橋本まつり、ナガセケイ、暁、芦原健介、井口昇、石川ともみ、石原仁志、碓井英司、大久保了、岡部恭子、おむすび、神田ホイ、小林優太、後藤健、笹野鈴々音、ジャスティス岩倉、仲義代、成瀬労、難波一宏、原勇弥、春木生、町山優士、三島ゆたか、物袋桃子、山下大輔、YOSHI、デモ田中ら。


諫山創のデビュー作である人気漫画を基にした2部作の前篇。
監督は『日本沈没』『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』の樋口真嗣。
脚本は『ガッチャマン』『ジョーカー・ゲーム』の渡辺雄介と映画評論家の町山智浩による共同。町山智浩が脚本を担当するのは初めてだが、原作者の諫山創が彼のファンで、参加を要望したらしい。
エレンを三浦春馬、シキシマを長谷川博己、ミカサを水原希子、アルミンを本郷奏多、ハンジを石原さとみ、ソウダをピエール瀧、クバルを國村隼、ジャンを三浦貴大、サシャを桜庭ななみ、サンナギを松尾諭、フクシを渡部秀、ヒアナを水崎綾女、リルを武田梨奈が演じている。

冒頭、「百年以上前、突如現れた巨人たちに人類の大半は喰われ、文明は崩壊した。この巨人大戦を生き残った者は、巨人の侵攻を防ぐため、巨大な壁を3重に築き、内側で生活圏を守って平和を保っていた。だが、百年、壁が壊されなかったからと言って、今日壊されない保証はどこにもない」というエレンのモノローグが、アニメーションと共に語られる。
そういう状況設定も含め、全てをドラマとして描写するのではなくモノローグで処理するのは、別に構わない。
ただ、それを最初に喋っちゃうのは、ちょっと勿体無くないか。

モノローグの後、本編が始まり、しばらく物語を進めてから「巨人襲来」というターンに入る。
でも、映画が始まったら、いきなり「巨人が壁を壊して人間に襲い掛かる」というシーンを用意した方が、インパクトがあるんじゃないかと思うだんよね。
もちろん映画を見る観客の大半は、人類が巨人と戦う話ってのは知っているだろう。
だけど、そうであっても、モノローグから入るよりは「巨人襲来」で始めた方が、観客を引き付けるパワーは遥かに強くなるんじゃないかと。

次に「勿体無いなあ」と感じるのは、モノローグが終わってアルミンが町を移動する映像。ずっとカメラの位置が近過ぎて「壁によって閉鎖された生活空間」という印象を全く受けない。
アニメーション部分では「壁に封鎖された町」の絵があったけど、それで充分とは全く言えないわけで。
そこは出来ることなら、ロングや上空からのカメラで町を捉える映像が欲しいところだ。町全体とは言わないまでも、もうちょっと「広い絵」を入れないと、映画そのもののスケール感にも悪い影響が出るよ。
エレンがいる草原のシーンでは「広い絵」があるけど、それは「閉鎖された町」のイメージから程遠いし、壁が全く見えないので、むしろ逆効果だわ。
その後、エレンが「壁の外はどうだ?」と口にした時、ようやく壁が写るけど、すんげえ遠いので「なんか違うなあ」と感じるし。

「内地にはでっかい建物があって、金持ちが住んでるんだろ」というエレンの言葉からすると、壁の中でも格差があるようだが、それは最後まで全く見えて来ない。
2年後になり、クバルが「外の壁を破壊されて農業地区を放棄し、中の壁がある商業地区まで撤退した」と説明して、ようやく「3重の壁って、そういう意味だったのか」ってのが分かるのも説明が上手くない。
っていうか、エレンたちの住んでいた地区が農業地区には全く見えなかったぞ。
そして2年後の彼らがいる場所も、まるで商業地区には見えないし。

エレンはミカサとアルミンに、「内地にはでっかい建物があって、金持ちが住んでるんだろ。行ってみたくないか?壁の中で産まれて、死んでいくのか?それでいいのか?俺は嫌だ」と苛立って語る。
だけど、そこが彼の初登場なので、そんなにイライラしている理由が全く伝わって来ない。
いや、もちろん設定としては理解できるのよ。
でも、「壁の中にいるから自由が無く、閉塞感に苛立ちを覚えている」というエレンの設定に説得力を持たせるための描写が無いので、そこに気持ちが乗らないのだ。

アルミンは不発弾に描かれた海の絵を見ると、「ホントに実在したんだ」と興奮する。
だけど、絵に描かれているからって、実在するとは限らないでしょ。例えばユニコーンの絵が描いてあったら、「実在する」と思うのか。違うでしょ。空想の光景を描いている可能性だって、ゼロとは言えないわけで。
もちろんアルミンが「そう思い込む」ってのは勝手だけど、違和感は否めない。
他にも違和感のあるシーンは色々とあって、例えば巨人が襲って来た時に兵士が拳銃で自殺する描写。「逃げ切れないから自害を選んだ」ってことなんだけど、映像を見る限り、まだ逃げるチャンスは充分にあるのよね。なので、早すぎるだろうと。
っていうか、それホントに要るかね。「絶望的な状況」ってのをアピールしたかったのかもしれんけど、だとしたら全く効果は発揮されていないよ。それどころか、ほぼ無意味だ。

巨人が出現した時に感じたのは、「怖さが今一つだなあ」ってことだ。
一応、捕食する様子をキッチリと描くなど、残酷描写で恐怖を醸し出そうという意識は感じられる。もちろん、まるで怖くないってことではないのよ。
ただ、あれだけ大勢の巨人が町を襲って来たことを考えると、「それにしては」という程度に留まっているのよね。もっと絶望的にさせるぐらい、圧倒的な恐怖が欲しいかなと。
それと、教会が襲われた後にエレンがフラフラと町を歩くんだけど、「なんでテメエだけ全く標的にされないんだよ」ってのは引っ掛かるぞ。まだ町に巨人は残っているはずでしょうに。

出発前夜のシーンは一応、「調査チームの面々のキャラクター紹介のための時間」になっている。ジャンが偉そうな奴だとか、サシャの食い意地が張っているとか、リルが臆病だとか、それなりにキャラ設定は描かれている。
でも、そこから彼らの人間ドラマが魅力的なのかというと、「答えはこうだ、イヤァオ!!」って感じである。
これだと意味不明だろうからマトモに書くと、とにかく「疎ましい」の一言だ。目の前に「巨人」という強大な敵がいて、壁を修復したり土地を奪還したりする重大な任務があるのに、「やたらと飯を食う」とか、「やたらと喧嘩する」とか、そういうのが邪魔にしか思えない。
エレンがジャンとの喧嘩で飛び膝蹴りを入れる時にスロー映像を使ったりするけど、「そんなトコで飾り付けてどうすんの」と言いたくなるし。そういうケレン味は、巨人との戦いで使うべきでしょ。

エレンたちは調査兵団なのかと思ったら、ジャンが「あの調査兵団でさえ全滅した作戦だぞ」と言う。一度も登場しないまま、調査兵団は全滅したらしい。
なので、「あの調査兵団でさえ」と言われても、そもそも調査兵団がどういう存在なのかが伝わっていないし、まるでピンと来ない。
ただ、とにかくエレンたちは、訓練は積んだものの、そんなに有能な部隊ではないという設定のようだ。
なるほど、だから「大声を出すな」と命じられたのに大声を出しまくるし、戦闘では全くと言っていいほど役に立たないのね。
でも、そんな奴らの様子を描かれても、こっちとしては「何を見て楽しめばいいのやら」ってことだわ。

作業チームは車を使っているのだが、それなら立体機動装置だけじゃなくて他の武器も作れるだろ。
車が当たり前に走っている世界で(つまりガソリンも豊富に存在するってことだ)、巨人を倒すための最大の武器が立体機動装置で、後は弓矢と斧ぐらいしか無いってのは、世界観の設定に違和感を覚える。
あと、肝心の立体機動装置も、そんなに活用していないんだよね。おまけに、それを使うシーンも、あまり面白味を感じないし。
それよりも、サンナギが巨人を一本背負いするシーンの方が遥かに面白かったぞ。
ただし、その面白さは「ギャグですか?」と言いたくなる意味での面白さだけど。

エレンが原作のキャラクターと大きく異なることに、不満を抱いたファンは少なくなかったようだ。
ただし、原作者の諫山創が「原作のエレンには共感できない」ということで、「巨人が現れたら怖がる普通の男」に変更するよう求めたという事情があるらしい。
だったら「巨人を怖がる男」に変更するのは、まあ仕方が無いとしよう。
でも、「何の魅力も感じない主人公」になっているのは、どう考えたって原作者の希望ではないはずで。

終盤には「エレンが立体機動装置で巨人に立ち向かう」という展開があるけど、そもそも彼は立体機動装置の訓練を積んでいないはず。
なので、初心者が調子に乗って行動しただけにしか見えない(まあ調子に乗らせちゃったシキシマにも問題はあるが)。
しかも、あっさりと巨人に弾き飛ばされるので、主人公としての活躍は皆無だし。
その後、アルミンを助けて巨人に食われたエレンは巨人になって復活するけど、なぜなのかはサッパリ分からない。まあ原作通りっちゃあ原作通りなんだろうけど、違和感しか無いわ。

ヒロインであるミカサも、これまた全く魅力を感じさせないキャラクターになっている。
そんな羽目になった最大の理由は、彼女の怒りが理不尽なモノにしか思えないってことだ。
たぶん「エレンに見捨てられた(と思い込んでいる)から怒っている」という設定だろうとは思うのよ。ただ、あの状況でエレンが助けに行くのが無理なのは、かなりのボンクラでも理解できるはずで。
それが分からないとしたら、「あまりにもアホすぎる」ってことで共感できないし。

あと、エレンとミカサの恋愛関係が全く描かれていなかったので、そういう意味でもミカサの存在って上手く話にハマってないのよね。
「2人が恋愛関係にあった」という前提条件が成立していないから、「シキシマとミカサの様子を見たエレンが激しく苛立つ」ってのもピンと来ないし。
でも、もっと根本的なことを言っちゃえば、そもそも三角関係なんて要らないのよ。それが物語に厚みを与える要素ではなく、ただ邪魔なだけになっている。「そんなことをやっている場合かよ」と言いたくなっちゃうのよ。
それは恋人とイチャイチャするリルや、エレンを誘惑するヒアナの描写も含めてのことだわ。恋愛の要素は、バッサリでいいわ。
もちろん、それを上手く融合させることが出来ていれば何の問題も無いけど、見事に失敗しているのでね。

シキシマというのは映画オリジナルのキャラクターであり、原作におけるリヴァイの代役という扱いのようだ。
「ヴ」の発音が日本っぽくないので登場させなかったという事情らしいけど、変なトコで生真面目なのね。
日本人が「リヴァイ」という人物を演じていたとしても、そんなに引っ掛かることは無かったと思うぞ。そもそも、そこは「架空の町」であって、日本と断定されているわけではないし。それに未来の日本なら、「リヴァイ」という名前が出て来ることも無いとは言えないし。
そもそも、「エレン」や「アルミン」という男子がいる時点で、ちっとも日本っぽくないでしょ。

そんな問題よりも、「代わりに登場させたシキシマが残念すぎるキャラクターになっている」という問題の方が圧倒的に大きい。シキシマは過剰なほどキザに台詞を口にして、やたらとカッコを付けたがる奴なのだが、これが見事なぐらいに陳腐なのだ。
もちろん、「それが長谷川博己の演技スタイル」ってことではなくて、彼は指示された通りに芝居をしているだけだ。でも、明らかに浮いている。
ただし、仮にシキシマを及川光博が演じていたら、あるいは草刈正雄が演じていたら(この歳、年齢的なことは無視するとして)、随分と印象が違っていたんじゃないか。そのキザすぎるキャラ造形や大仰な台詞回しも、そんなに違和感が無かったんじゃないかと思う。
ようするに、シキシマのキャラ設定と、長谷川博己という役者が、あまりにもミスマッチなのだ。

リルと武田梨奈も、どう考えたってミスマッチだ。「やたらと怯えて恋人に元気付けられる妻」という役割を武田梨奈に担当させるって、どういうセンスだよ。意外性を狙ったのかもしれないけど、そんなの誰も得をしないわ。
武田梨奈だけじゃなく、立体機動兵役の清野菜名も含めて文句を言いたいのは、「なんで彼女たちにアクションをさせないんだよ」ってことだ。ビジュアルが良くてアクションが出来る女優ってのは貴重な存在なのに、そこを活用しないのは勿体無いでしょ。
これが恋愛映画やコメディー映画なら、「どうしてアクションをさせないのか」なんて言わないよ。でもアクション映画で彼女たちにアクションをさせないのは、何のメリットも無いでしょ。
それは音楽イベントのゲストにジミー・ペイジを呼んでおいて、ギターを演奏してもらわないようなモノだぞ。
っていうか、そもそも清野菜名に至っては、どこに出ていたのかさえサッパリ分からなかったし。

(観賞日:2017年2月18日)


2015年度 HIHOはくさいアワード:第1位

 

*ポンコツ映画愛護協会