『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』:2009、日本

少年時代、ケンは母を病気で亡くした。病室を覗き込んだケンを見つけた父は、泣きながら抱き締めようとした。するとケンは父から離れ 、廊下で嘔吐した。そんなことを、久しぶりに帰郷したケンは思い出していた。駅へ迎えに来た旧友のモトキは、ケンを車に乗せた。ケン は転校して以来、久しぶりに故郷の仲森町へ向かう。ケンの幼馴染である盲目のリンは、現在はモトキと同棲していた。
リンがアパートで食事の用意をしていると、ノックの音がした。「私、ユキ。早く開けて」という声に、リンは激しく動揺しながらドアに 近付いた。すると見えないはずの視界に、ドアの向こうにいるユキの姿が浮かび上がった。モトキとケンがアパートに到着すると、リンは ユキを迎え入れていた。「あの事件の後、ユキの家族と会ったのか」とモトキはリンに尋ねる。その「事件」のことを、ケンは全く記憶 していなかった。昔の文集を読んでいると、らせん階段のフラッシュバックに見舞われた。
モトキはユキの妹・ミユの家に電話する。落雷で停電すると、急にユキは怖がって暴れ出したため、ケンが取り押さえた。ユキの体には 幾つもの痣があった。「私、帰って来たんだよ。私、覚えてるよ」とユキに言われ、またケンは同じフラッシュバックに見舞われた。彼女 に触れられ、ケンは怯えて飛び退いた。モトキはケン、ミユ、ユキを車に乗せ、ミユと母親が暮らすユキの実家へ向かう。ユキは車の中で 、「みんなとはぐれてから、何度も名前を呼んだ」と言う。またケンはらせん階段のフラッシュバックを見た。
ケンたちを迎えたミユは、「姉は死んだんじゃないんですか。亡くなった父から、そう聞かされてきました」と言う。彼女の母は、ユキが 亡くなって以来、精神に異常をきたしているという。ミユの母は、今も2階にユキがいると思い込んでいた。ミユは急に現れたユキが本物 だと思えず、強い警戒心を示す。彼女の母は、壊れたウサギのヌイグルミに「ユキ」と呼び掛ける。ユキは悲鳴を上げて逃げ出し、階段 から転落して意識不明になった。
ケンたちはユキを車に乗せ、病院を探す。ミユは、父が姉ばかりを大事にするので「どっか行っちゃえ」と思ったら、本当にユキが失踪 したことを語る。ケンはユキに腕を掴まれて「私たち、みんなまた会えるよね」と言われるが、それは幻覚だった。彼らはユキを深夜の 病院に運び込むが、誰もいなかった。医者を探しに行ったモトキは人を見つけるが、声を掛けると逃げ出した。一方、別の廊下を歩いて いたケンは、風船を引っ張る誰かの手を目撃した。
リンとミユがロビーで待っているとユキが起き上がり、「置いてかないで、待って」と叫んで走り去る。そこへケンとモトキが戻り、4人 はユキを捜し回る。だが、彼女だけでなく、誰の姿も見当たらない。落ちている金魚を踏んだケンは、またフラッシュバックを見た。背後 に浮かび上がったウサギのヌイグルミが壁に消えるが、ケンたちは気付かなかった。しばらく歩いていると、ミユが「ここ、見たことある 。同じ夢を見るの。子供の頃からずっと」と言い出した。
ミユが「誰かが助けてって手を伸ばすの。でも私は怖くて逃げだした。それでも後ろから……」と漏らした時、見えない幼女がケンたちの 横を通り過ぎた。その後には、ミユが過去に無くした靴が残された。ケンたちは、自分の背後を数名の子供たちが歩いて行くのを目撃した 。リンが「言っちゃダメ」と止めるのも聞かず、ケンたちは後を追って階段を上がる。すると、また子供たちが去っていった。
子供たちが去った後には、ウサギのヌイグルミが残されていた。それを抱き上げたケンは、「嘘だろ」と手を震わせる。モトキは、その ヌイグルミを投げ捨てた。それはユキが大事にしていたヌイグルミだった。ミユは「もうみんな気付いてるんでしょ、ここはあの時の お化け屋敷じゃない。どういうことよ?」と叫ぶ。ケンは強張った顔で、「あの時、俺がユキを殺したんだ」と漏らした。
1999年6月6日。ケン、ユキ、モトキ、リン、ミユの5人は、ケンの母とユキ姉妹の母に引率され、遊園地へ遊びに来ていた。母親2人が 席を外した隙に、モトキはケンをお化け屋敷「戦慄迷宮」に誘う。ケンが尻込みしていると、モトキはリンを引っ張っていった。ミユも後 を追ったため、ケンとユキも付いて行く。戦慄迷宮は営業時間が終了していたが、モトキは開いている裏口を見つけた。
ケンたちは戦慄迷宮たちに入るが、モトキは「ちっとも怖くない」と呆れたように言う。誰かが付いて来ていると気付いた彼らは、慌てて 逃げ出す。その時、ユキはウサギのヌイグルミを落とした。彼らが逃げ出した時、背後で懐中電灯を照らしていたのは、それから10年後の ケンたちだった。そんな出来事をケンが回想していると、10年前のユキがヌイグルミを拾いに来た。走り去る途中、背後に顔が浮かんで体 が逆になり、彼女は現在のユキに変身してケンたちの横を通過した。
ケンが「これはユキの復讐だ」と漏らした直後、急にシャッターが下りた。ケンとリン、モトキとミユは、分断されてしまった。モトキが 「とにかくここから出るんだ」と言うので、ケンはリンを連れて出口を探す。ミユが「お姉ちゃんがどこでいなくなったのか思い出した。 全部、私のせいなのよ」と言って走り出すので、モトキは後を追う。ケンたちが歩いていると、10年前にリンが壁に落書きした相合傘が あった。だが、その時はケンとリンの相合傘だったが、今回はリンの名前が消され、ユキの名前が書かれていた。
リンはケンに、ユキばかりがもてはやされることに妬みを抱き、「死んじゃえばいい」と思っていたことを明かす。彼女が「あの時、ユキ がいるって分かってたのに。私は殺される」と怯えると、ケンは「だとしたら、俺もだ」と口にした。モトキたちが歩いていると、10年前 のユキを発見した。彼女は10年前のケンが開けたドアにぶつかり、階段から転落した。慌ててケンが下に行こうとすると、10年前のリンが 「行っちゃダメ、下に怖い物がいる」と告げて止めた。
そんな様子を見ていたモトキが「ケンがユキを殺したのか」と呟くと、ミユは「ケン君が殺したんじゃない。あの時、まだお姉ちゃんは 生きてた」と言う。そこへ10年前のミユが現れ、倒れているユキを発見した。その直後、ユキは何者かに引きずられ、姿を消した。ミユは モトキに「お姉ちゃんは誰かに連れて行かれたのよ」と言う。モトキとミユが階段を下りると、リンの死体が転がっていた。「ケンの 言った通りだ。これはユキの復讐なんだ」とモトキは呻いた。
翌朝、ケンが戦慄迷宮から2名の警官に伴われて出て来た。「もう一人いるんだよ」と訴える彼を、警官たちは「分かった、分かった」と 静まらせた。戦慄迷宮の外には、3人の死体が毛布を掛けられて並んでいた。その内の1体が動いたため、消防署員は救急車に運び込む。 そこに刑事の丹波や藤野たちがやって来た。警察署で取り調べを受けたケンは、リンがユキに殺されたことを証言した。すると丹波は 「リンさんの顔は鈍器のような物で殴られていた。女性の力では不可能だ」と言う。藤野から渡された資料に目を通した丹波は、「なんて こった」と漏らした。
ケンは戦慄迷宮でのの出来事を思い起こした。彼がシャッターを持ち上げようとしていると、10年前のユキが現れた。ケンがリンを残して 階段を上がろうとすると、10年前のケンがドアを開け、ユキは転落した。リンはユキと激突し、命を落とした。ケンは10年前のミユの声を 耳にすると、ユキを引きずって移動させた。現在のモトキとミユがリンの死体を発見した時、ケンはユキを抱えて隠れていた。
モトキがその場を離れると、ミユも後を追った。幻覚を見たモトキは急に震えて逃げ出し、ある部屋に鍵を掛けて閉じ篭もる。「ユキの ことは、俺は関係ねえ。お前らが勝手にやったことだろ」と、彼はドアの外にいるミユに怒鳴った。ミユが「リンさんは、あのまま放って おくの?」と訊くと、モトキは「死んでせいせいしたよ。どうせ、あいつは俺のことなんか好きじゃなかった」と漏らした。
廊下で座り込んだミユは、ヌイグルミを持ったケンを目撃する。ケンは見えない誰かに向かって、「離せよ、離せよ」と言っていた。ミユ の周囲には、幾つもの水泡が現れた。再びケンに視線をやると、10年前のユキが彼の手を握っていた。ケンが投げたヌイグルミは、ミユの 前で浮遊した。腹部のジッパーが開くと、10年前のユキが現れた。ユキに触れられたミユは、その場に倒れて動かなくなった…。

監督は清水崇、原案は富士急ハイランド「戦慄迷宮」、脚本は保坂大輔、エグゼクティブ・プロデューサーは豊島雅郎、共同 エグゼクティブ・プロデューサーはMichael J. Werner、プロデューサーは谷島正之&小椋悟&宮崎大、ラインプロデューサーは大崎裕伸 、プロデュース・スーパーバイザーは寺嶋博礼、共同プロデューサーは岩浪泰幸&遊佐和彦、撮影は田辺司、編集は堀善介、照明は 工藤和雄、美術は福田宣、3D撮影スーパーバイザーは宇井忠幸、3Dテクニカルアドバイザーは井上充夫& 灰原光晴、特殊造型監修は西村喜廣、VFXスーパーバイザーは鹿角剛司、アトラクション・コーディネーターは人見渉、 脚本協力は黒石智美、企画協力は藤井秀剛、音楽は[草かんむりに配]島邦明。
主題歌『CLONE』はストレイテナー、作詞:ホリエアツシ、作曲:ホリエアツシ。
出演は柳楽優弥、蓮佛美沙子、勝地涼、前田愛、水野絵梨奈、松尾スズキ、中村久美、山中崇、中島ひろ子、増本庄一郎、荒井眞理子、 平岡拓真、松本花奈、森大悟、荒川ちか、伊藤星、荒井タカシ、高田郁恵、柳之内たくま、辰巳直人、川崎賢一、河野達郎、金子太郎、 竹内恵介、渡邉達也、塩谷智司、鋒久奈緒美、西村喜廣、有村昆ら。


世界最長のウォークスルー型ホラーハウスとしてギネスブックに正式認定された富士急ハイランドのお化け屋敷「戦慄迷宮」をモチーフに した映画。実際に戦慄迷宮を使って撮影が行われている。
日本初のデジタル3D実写長編映画として公開された。
タイトルロールでは『戦慄迷宮』という文字だけが表示される。
監督は、たぶん死ぬまで“『呪怨』の”という冠で紹介されるであろう清水崇。
ケンを柳楽優弥、ユキを蓮佛美沙子、モトキを勝地涼、リンを前田愛、ミユを水野絵梨奈が演じている。

私は3Dではなく2Dで見たので、この映画の本来の醍醐味を体感できているわけではない。ただ、正直なところ、3Dじゃないことで 面白さが半減しているとは感じなかった。別に2Dであろうとも、3Dと大して変わらないクオリティーで鑑賞できているんじゃないかと いう印象を持った。
その理由の1つは、昔の3D映画のような「飛び出し」を意識した映像が少なかったからだろう。
昔の3D映画は、とにかく「やたらと色んな物を飛び出させる」ということばかりに気を取られて作品ばかりだった。話としての面白さ、 映画全体のバランスは無視して、とにかく画面の奥から手前に向けて人やら物やらが飛び出すシーンを幾つも用意するという作品ばかり だった。
この映画は、飛び出しが無いわけではないが、それよりも奥行きを意識した映像作りをしているらしい。
ただ、2Dで見た限り、「3Dで見ないと勿体無い」という風には感じなかった。

ユキが10年ぶりに戻って来るシーンの表現は、レントゲン写真のような映像で「リンがドアの向こうにいるユキを見る」というのを示した 後、リンが携帯電話を耳に当てる。
カットが切り替わると、ドアの外には幾つもの水泡が浮かんでおり、それが落下して消える。
直後、ケンとモトキが現れ、部屋に入るとリンがユキを招き入れているんだが、その辺りは、ものすごくギクシャクしている。
その順番でカットを重ねると、「リンが見たユキは実際には水泡の集まりであり、モトキたちが戻ってきたら姿を消した」という風にしか 解釈できないぞ。
だから室内にユキがいるのは、すげえギクシャクして見える。

しかも、戻った時の会話からすると、どうやらリンはモトキに電話を掛け、ユキが来たことを話していたようだが、それも説明不足 だよ。
電話をしたのなら、そのシーンは省略すべきではない。
っていうか、そもそも電話を掛けるシーンが要らない。
「リンがユキの声を聴いて動揺しているところにケンたちが来ると、ユキがドアの外にいる」とか、あるいは「モトキがケンを連れて戻り 、その後にユキが来る」とか、そういう形にしておけばいい。

ミユはユキに不信感を示していたが、階段から転落すると「お姉ちゃん!」と叫んで駆け寄る。
しかし病院へ連れて行こうとする車内では、「本当にこの人が姉だって信じてるんですか」と、また態度が戻る。
だったら「お姉ちゃん!」のセリフは要らない。そこをブレブレにする意味が無い。
その後、ユキの足が濡れているとのをケンが拭こうとすると「触らないで」と叫んで自分が拭いたりと、ブレブレなのよ。
まあ実際、ブレているという設定なんだろうけど、それを上手く表現できていない。

ミユは、父が姉ばかりを大事にするので「どっか行っちゃえ」と思ったら、本当にユキが失踪したことを語る。
ってことは、事件そのものは知っているのね。で、その事件で姉が死んだと聞かされていたのね。
そのセリフがあるまでは、事件そのものを知らない、あるいは覚えていないという風に思ってしまう。
その辺りは、説明が物足りないんだよなあ。
そこだけに限らないんだけど。

1999年の回想シーンに入っても、説明不足を感じる。
まず、お化け屋敷に関する説明が全く無い。ものすごく怖いということで有名になっているとか、ものすごく人気があるアトラクション だとか、そういう説明が必要だろう。
そして、なぜ母親たちがいない隙にモトキがお化け屋敷へ行こうとするのか、それも分からない。
大人たちが「お化け屋敷に言ってはダメ」と口にしているシーンは一度も無い。反対されていないのなら、隙を見て行く必要は無い はずだ。
そこは「行きたがるけど大人たちに反対されて、だから目を盗んで行ってみる」という手順が必要だろう。
そもそも、モトキがお化け屋敷に強い興味を持っているという描写も無かったよな。

ケンたちがお化け屋敷に行くと閉まっているのだが、そんな時間に「終了」は変だ。
あと、モトキが裏口を見つけてまで入るのは不自然。
終盤に入り、モトキが正面から入ろうとしたら係員に「大人が一緒じゃないと入れない」と止められるシーンがあるが、タイミングが 遅すぎる。そんなの、終盤まで引っ張るようなネタじゃないよ。
っていうか、そんな出来事があったのなら、なぜケンは「大人が一緒じゃないと入れないよ」と反対しなかったのか。
なぜモトキは、まず正面入り口で終了していることをチェックしたのか。

ケンと一緒に病院内を歩いていたリンが、相合傘の変化に気付くという表現があるが、それは変だろ。リンは盲目じゃないのかよ。
「実は盲目を装っているだけだった」という設定でもないんだし、見えているような表現は変だぞ。
っていうか、そもそもリンが盲目だという設定に意味があるのかというと、何も無いんだよな。そのせいで悪霊に気付かずにピンチに陥る とか、そんなわけでもないし。
意味が無いと言えば、ケンが10年前の事件を完全に忘れている設定とか、ケンの母親が死んだ時の回想シーンとか、それも無意味だなあ。
ケンの母の死が、どのように関連してくるのかと思ったら、全く関連性が無いのね。それが無くても、全く話に影響を及ぼさない。

リンやミユはユキに対する妬みの気持ちを語るが、セリフで軽く触れるだけなので弱い。
そういう心情を絡めたいのなら、それを補足するためのエピソードが欲しい。
たぶん清水監督、そこに限らず、繊細で複雑な心情を表現しようと試みたんだろうけど、そういうのは得意じゃないようだ。
それと、色々なことがボンヤリしたままで進行しているのに、10年前のケンたちが逃げ出す時に見た人影が現在の彼らだとバラす タイミングだけは、やたらと早くないか。それって、大オチに残しておいてもいいようなネタだと思うんだけどなあ。
むしろ、他の部分は、早い段階で明確に提示してもいい。

警官や消防隊員たちの行動は、かなり不自然だ。死体だと思っていたのが動いた段階で、顔まで被せてある毛布を普通は取るでしょ。本当 に息があるのか、死後硬直で動いただけなのかを確認するでしょ。
そこでの消防隊員の行動はデタラメすぎるぞ。
あと、そこで「3人が死んでケンは生き残る」とバラすのは、無粋だと思うんだが。そのネタバレって、誰得なんだろうか。
その後に、迷宮の中で起きた出来事を描かれても、リンを含めた3人が死んでケンが生き残ることがバレちゃってるのは、マイナスで しかないでしょ。

清水監督がお得意とする時系列を組み替えた構成で、ケンたちの体験した事件が何なのか、最初は分からない。
だけど、それがプラスだとは思えない。
そこをミステリーにしておくことは、単に話を分かりにくくしている、話に入り込みづらくしているとしか感じない。
どうせ、遊園地でユキが失踪したことや、病院で目撃する子供たちが過去のケンたちだということはバレバレなんだし、最初に明確な形で 10年前の事件を描いておいた方がいいと思うんだけどなあ。

時系列を組み替えずに配置した方が、ユキが戻って来た時にケンたちが受ける衝撃もダイレクトに伝わるだろうし、デメリットよりは メリットの方が大きいと思うんだよな。
リンの落書きとか、風船を持った子供とか、床に転がる人形とか、そういうのをケンたちが病院で目撃しても、その時点では何も 感じない。
後から「勝手に戦慄迷宮に入った時に、彼らが書いたり動かしたりした」というのが初めて分かるんだけど、それが分かった上で見てこそ 、そこに驚きや不安や恐怖が湧き出るものなんじゃないのか。

ただし、この映画の場合、先に見せておいたとしても、たぶん全く感情は動かなかっただろうけどね。
逆の意味でビックリするぐらい、これっぽっちも怖さが無いのよ。
『呪怨』と違って、清水監督は怪奇現象を露骨に見せたり、ショッカー描写に頼ったせずに怖がらせようとしたらしいんだけど、残念 ながら彼は、心理的に追い詰めるとか、ジワジワと恐怖を煽るとか、そういうのは苦手のようだ。
いかにもお化け屋敷的に「お化けやモンスターをダイレクトに見せる」とか「急に現れて脅かす」とか、そういう表現以外に、恐怖を醸し 出すセンスは持ち合わせていないようだ。

完全ネタバレだが、実はユキは10年前に死んでおらず、それから植物状態になって病院にいる。
だったら、ケンはともかく、それをモトキやリンが知らない様子なのは不可解だし、妹のミユが全く知らされておらず「死んだ」と 聞かされているのも無理がある。
あと、「帰って来たユキは、ケンが頭の中で作り出した幻想だった」と丹波が説明するけど、だったら、その幻想であるユキを、モトキや リンたちまで見ているのも辻褄が合わない。

その後、病院にいるユキの足が汚れている様子が写るので、「丹波の説明は彼の解釈に過ぎず、本当にユキがリンたちを殺したのだ」と いうことが示唆されている。
しかし、丹波が前述のように説明する以上、そのような解釈も成り立つように描かれている必要があるはずだ。
だから、「ケン以外の人間が、戻って来た10年後のユキを見ている」という描写は、完全にアウトってことになる。

(観賞日:2011年5月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会