『セカンドチャンス』:1999、日本
エピソード1の主人公は28歳の山本華。ウェディングドレス専門店のスタイリストをしている彼女は、意地っ張りな性格が災いして恋人の青島と別れてしまった。そんな中、客として美登利という女が現れるが、彼女の婚約者は青島だった。
エピソード2の主人公は32歳の橋夕理。関東運転代行サービスの仕事をしている彼女は、5年前に別れた不倫相手の西生貫と再会する。借金の取り立て屋に追われている夕理は、西生に自分と逃げて欲しいと誘いを掛ける。
エピソード3の主人公は47歳の麻宮雪乃。サロンのチーフをしている彼女は、離婚してから女手一つで娘の香奈を育ててきた。その日は香奈の結婚式だったが、司会者として現れたのは雪乃の元夫である中島慎太郎だった…。監督は水谷俊之(エピソード1)&富岡忠文(エピソード2、エピソード3)、脚本は山田耕大(エピソード1)&大石哲也(エピソード2)&櫻井武晴(エピソード3)、製作は大原逸男、プロデューサーは李鳳宇&齋藤勇司、撮影は村石直人、編集は菊池純一&鵜飼邦彦、録音は野中英敏、美術は丸尾知行、照明は高柳清一、音楽は澄淳子。
エピソード1の出演者は清水美砂、林泰文、麻生久美子、高田聖子、長田江身子、草野康太、山田辰夫ら。
エピソード2の出演者は鈴木砂羽、橋爪功、勝村政信、石川伸一郎ら。
エピソード3の出演者は倍賞美津子、柄本明、野波麻帆、國村隼、松重豊、渡辺真紀子、銀粉蝶、有園芳記、山中聡、ガダルカナルタカ、小宮孝泰ら。
3話オムニバス形式の映画で、それぞれ20代、30代、40代の女性が主人公となっている。人生で2度目のチャンスを経験することになる主人公が、それをどのように受け止めるのかという、女性の生き方を描いた作品らしい。
まず3話オムニバスでありながら、2話を同じ監督が担当しているという部分に引っ掛かりを感じてしまう。
1話ずつ違う監督が担当するのが普通なのではないだろうか。
もしくは、3話とも全て同じ監督が担当するとか。
なんか中途半端に感じるなあ。エピソード1では、意地を張っていた美登利が途中で素直な態度になる。最初にワガママな様子を見せておくことで、余計に彼女が可愛い女に見える。そして、最初は彼女の様子に不満を持っていた華も、吹っ切れた様子で仕事を進める。
で、そこまで進展させておいて、頼りない様子だった青島に「今でも華のことが好き」と言わせてしまう。
それまでの流れを見ていると、煮え切らなかった青島も美登利を大事に思っていて、華は青島と美登利の幸せのために仕事をするというオチがふさわしい。ところが、この作品は「実は美登利が婚約者というのはウソで、全ては華に青島が好きだと言わせるためのドッキリでした」という恐ろしいオチを持って来る。
そんなデタラメな。
何の伏線も無かったので、ただ呆れるばかりだ。
そういうオチを持って来るのなら、華の姉が何かを企んでいる様子を描いておくとか、ドッキリ作戦を匂わせておくべきだろう。
その結末は主人公にとってはハッピーなサプライズかもしれないが、観客にとっては不快な裏切りに過ぎない。
3つの話の中では最悪。エピソード2では、賑やか師として西生の部下を登場させているのだが、ただ夕理に過去の恋愛を語らせるための誘い水で終わっている。
彼に関係を気付かれないように、夕理と西生が遠回しに感情をぶつけ合うという形にすれば良かったのに。
西生の部下が去った後は、間をたっぷり取った会話やピアノ演奏で時間を潰す。
そんなにノンビリしているほど時間的に余裕は無いと思うのだが。
で、またも「男に本心を言わせるためにウソで振り回しました」というドッキリを持って来る。
萎えるよ。エピソード3では、慎太郎が成長した香奈を自分の娘だと全く気付かないという部分から始まって、不自然が連続する。雪乃は慎太郎の司会を断ろうとしたのに、なぜか香奈の「あの人、首吊るよ」の一言で承諾してしまう。
司会なのにやたらと慎太郎が式の最中に休みを取るし、式場に平気で部外者が入ってくる。香奈が式に出席していない(と彼女は思っている)父親へのメッセージを発するのも、かなり不自然。
何より、雪乃の親族も出席しているはずだから、そういう人達は慎太郎が香奈の父親だと気付くだろうに。無理がありすぎるぞ。で、出席した多くの面々をそれほど効果的に使うことも無く、ダラダラと結婚式が進行して、何となく終了。
そんで最後にはつまらない夫婦漫才が待っている。
エピソード1と2の主人公がゲスト出演しているのが、最も印象に残るという始末である。全てのエピソードに共通しているのは、ヒロインにあんまり魅力を感じないということ。
それと、どの話も、もっとテンポ良く進めないと途中でダレてしまう。
人生のちょっとしたドラマだからって、面白さまでちょっとしたモノにしなくてもいいのにね。