『スクール・ウォーズ HERO』:2004、日本

1971年、山上修治はラグビーの日英親善試合に全日本代表のフランカーとして出場し、フィールドゴールを決めた。1973年、山上は、 月輪南中学で生徒たちに講習会を開いていた。そこへ不良学生の荒井邦男が現われ、難癖を付けてきた。山上は荒井に短距離競走を持ち掛け、 勝利を収めて退散させた。そんな様子を、伏見第一工業高校の校長・神林明彦が眺めていた。
神林は京都市役所へ赴いて末永教育長に会い、教員免許を取得した山上をラグビー部の監督に迎えたいと告げる。だが、既に山上は実業団 チームからの監督要請を引き受けていた。神林の熱い説得を受けた山上だが、そのことを理由に断った。そんな彼の目の前で、バイクに 乗った伏見第一工不良高校生達が神林を襲って立ち去った。神林は、彼らがラグビー部員だと告げた。「このままではラグビーのイメージ が悪くなる」と聞かされ、山上は神林の頼みを引き受けることにした。
1974年、山上は伏見第一工の教壇に立つが、生徒たちは全く言うことを聞かない。教室でも平気でタバコを吸い、バイクで廊下を走る者さえ いた。国語教師の亀田は、不良学生の長坂に火を付けられる。ラグビー部員も荒れており、3年生が下級生に暴力を振るっていた。教師は 揃って事なかれ主義で、現状を変えようと立ち上がる者は皆無だった。
ショックを受ける山上だが、妻の悦子に励まされ、登校時に明るく挨拶することから始めた。生徒の中に荒井を見つけた山上はラグビー部 に勧誘するが、激しく拒絶される。山上に好感を抱いた女子生徒の和田道代は、ラグビー部のマネージャーに志願してきた。山上はやる気 のある2年生と1年生の部員を集め、ラグビーの練習をする。やがて初めての練習試合が決まるが、3年生が下級生を脅して足止めした ため、集合場所には誰も来なかった。
亀田は不良学生たちによって、ロープで縛られて校舎の窓から吊り下げられる。山上は教師たちに、自分の熱い思いを伝えた。彼の気持ちに 動かされ、教師の浅野や栗原、亀田は朝の挨拶を一緒にやるようになった。山上は荒井を挑発し、1週間の条件でラグビー部の練習に参加 することを承諾させた。舐め切っていた荒井だが、厳しい練習でヘトヘトになる。だが、彼は流した汗の気持ち良さを体感し、そのまま ラグビー部員として残ることを決めた。
3年生のラグビー部員4名が警察の厄介になったとの連絡が入り、山上は警察署へ赴いた。山上は警官から、4人が後藤信吾という1人の 中学生に一方的にやられたことを聞かされた。やがて卒業式の日が来るが、その4名は途中で帰ってしまう。だが、山上が部室へ行くと キレイに掃除されており、彼らからの「あとは頼むぞ、全日本野郎!」というメッセージが残されていた。
新学期、伏見第一工に信吾が入学してきた。山上はラグビー部に誘うが、即座に拒絶される。しかしラグビー部には10人もの新入部員が 加わり、浅野と栗原が顧問となった。山上は新キャプテンに、留年した小渕弘之を指名する。山上は信吾の住むアバラ家を訪れ、彼の父・ 大吾と会う。大吾は酒ばかり飲んでロクに仕事もせず、妻に逃げられていた。そこへ帰宅した信吾は、「二度と来るな」と告げて山上を 追い返した。
ラグビー部の練習が始まるが、新入部員の望月はミスを繰り返した。山上はフランスの小柄な有名選手フーローの話をして、元気付ける。 望月は体力の無さを自覚しており、マネージャーになりたいと申し出た。総体が迫る中、山上は再び信吾を勧誘する。2人は揉み合いに なり、鴨川に落ちてズブ濡れになる。山上は信吾を連れ帰り、一緒に風呂に入った。
1975年、京都総体に参加した伏見第一工は、強豪の大園高校と対戦する。山上が全日本のジャケットを着て試合を見守る中、部員は全力で 戦うが、結果は112対0という惨敗だった。試合終了後、山上は優しく「お疲れさん」と声を掛けた後、「悔しいか」と尋ねる。部員たちは 号泣して悔しさをぶちまけ、「甘かった自分たちを殴ってくれ」と申し出る。山上も、泣きながら彼らを殴った。そんな様子を、観客席から 信吾が見ていた。帰宅した山上は悦子の前で、自分がエリート意識で思い上がっていたことを恥じた。
山上は暴力行為により、教育委員会から1ヶ月の謹慎処分を下された。彼が自宅にいると、ラグビー部員たちが家の前に現れてウォー・クライ を披露した。彼らは口々に、「謹慎なんて関係ない。早く学校に来て、俺たちにラグビーを教えてくれ」と叫んだ。その中には、ラグビー部 に入れてくれと志願する信吾の姿もあった。山上は学校に戻り、ラグビー部は猛特訓を開始した。1976年、伏見第一工ラグビー部は府大会 を勝ち進んでいくが、望月が白血病で入院してしまう…。

監督は関本郁夫、原作は山口良治、脚本は佐伯俊道&山田立、製作は早川洋&迫本淳一&元村武、企画は木村純一&宮島秀司、 プロデューサーは見留多佳城&橋口一成、撮影は猪本雅三、録音は宮本久幸、編集は奥原好幸、照明は遠藤克己、美術は沖山真保、 主題歌「ヒーロー」は大黒摩季、ナレーションは柳澤慎一。
出演は照英、里見浩太朗、和久井映見、内田朝陽、SAYAKA(現・神田沙也加)、小林且弥、弓削智久、最上寛之、中川家剛、中川家礼二、 宮川花子、間寛平、原日出子、井田國彦、石田弘志、河原崎建三、塩屋俊、船越英一郎、大八木淳史、伊藤友樹、山口翔悟、黄川田将也、 笠原秀幸、新田亮、仲島武士、土地道彦、石代武嗣、石川和也、神条誠也、横内祐樹、青木茂幸、趙[王民]和、吉田真、南優、萩原太、 高橋勇義、堀口力、梶本圭ら。


1984年から1985年に掛けて、『スクール・ウォーズ 〜泣き虫先生の7年戦争〜』というTVドラマがTBSで放送された。
京都の伏見工業高等学校ラグビー部と監督の山口良治をモデルにした馬場信浩の小説『落ちこぼれ軍団の奇跡』ベースにしたドラマである。
山下真司が主演したこの大映ドラマは人気を集め、高い視聴率を記録した(ちなみに『スクールウォーズ2』という続編があるが、別の 原作を無理に続編に仕立て上げたことが祟ってか低視聴率にあえぎ、覚えている人も少ないと思う)。
そのTVドラマのモデルとなった山口良治の著書『生きる力を伝えたい 泣き虫先生の熱血教育論』を基にしたのが、この映画である。
つまり、「TVドラマのリメイク」ではないということになるわけだ。
ちなみに製作にはTBSではなくテレビ朝日が関わっている。そのため、TVドラマ版とは役名も学校名も違っている。
では実際の名前を使っているのかというと、そういうわけではない。その辺りが、微妙なトコロではある。
「フィクションドラマ」という意味では、TVドラマ版と同じになっているのね。

山上を照英、神林を里見浩太朗、悦子を和久井映見、小渕を内田朝陽、道代をSAYAKA(現・神田沙也加)、信吾を小林且弥、荒井を 弓削智久、望月を最上寛之、望月の母を原日出子が演じている。
吉本興業が製作に関わっている関係で、教師役で中川家、食堂の女将役で宮川花子、信吾の父親役で間寛平が出演している(教師役の井田國彦も吉本所属の俳優だ)。
ホリプロも製作に携わっているので、こちらもやはり所属タレントが多く出演している。

照英を主役に抜擢したのは大正解だ。この企画は彼でなくては成立しなかったと思わせるだけの存在感がある。
決して芝居が上手いわけではないし、不器用だから、やれる役柄の幅は狭いだろう。だが、真っ直ぐでバカ正直で熱血漢という主人公のキャラに、彼はピタリとハマっている。
やたら泣きたがる主人公だが、これも照英だから共感を誘う。アナクロ満開な物語、2004年という時代においてはファンタジーのような内容に説得力を持たせているのも彼だ。
関西弁のイントネーションがおかしい役者が大半だが、それは大して気にならない。
まあ、他に気になる点が多すぎるから、ということもあるだろうが。
そしてセリフ回しはともかく、役者は皆、この暑苦しくて古めかしい映画の中でちゃんと「昭和の姿」を見せており、 「昭和の芝居」を熱演している。映画はダメだが、役者には1ミリの責任も無いことはハッキリ言っておく。
むしろ、彼らの頑張りが、ダメな映画を何とか引き上げようとしていると言ってもいい。

最初にオールブラックス(もどき)のウォー・クライから入ったり、ドキュメンタリー・タッチのナレーションが中途半端に入ったりと、 滑り出しからギクシャク感が否めない。
山上が教壇に立って、初めて生徒の荒れた様子に触れるという描写も違和感がある(学校の校門をくぐった段階で分かるんじゃないのか)。
その後も細かいアラは色々と気になるが、とりあえず目をつぶろう。

ラグビー部は、3年生がグレて下級生を脅しているという図式になっている。
ってことは、3年生が卒業すれば問題は解決するわけだ。
実際に、2年と1年は最初から頑張って練習に取り組むし、3年が卒業することによって「部が荒れている」という問題は解消されている。
そりゃ山上は彼なりに努力しただろうけど、時が過ぎれば何もしなくても解決する問題だったってことね。

惨敗の後に主人公が部員を殴るという有名なシーンを中盤のハイライトに持って来るのは、構成としては悪くない。
ただ、ドラマ版では主人公が自ら殴っていたのに、この映画では生徒に「殴ってくれ」と頼まれてから手を出しているのは気になった。
バカな保護者層からの体罰批判を恐れたのだろうか。あるいは、力に頼っていた山上が変わっていき、自ら暴力を振るうことはやめるように なるということを意識して演出しているんだろうか。
ただ、山上は後半でリンチを受けた信吾をいきなりビンタしてるしな。どうしたいんだか。あまり深く考えずに改変したんだろうか。
どうであれ、どうせドラマ版をなぞったような展開なのだから、そこは変に手を加えず、自ら殴る形のままでいいと思う。
そりゃあ試合に負けた奴らを「今からオレはお前たちを殴る」と言ってグーパンチしていくのは、メチャクチャな行為だ。
だが、常識とか教師としての正しさとか、そんなものを超越したところに、この物語の主人公は位置すべきだと思うのだ。
そうなってこそ、主人公はスクール・ウォーズにおけるヒーローと成り得るのだと思うのだ。

望月は登場してすぐにミスを連発し、その場でマネージャーを志願して転向する。
で、その後はしばらくアンサンブルに埋もれてしまい、終盤に入ってドラマ盛り上げのために病気になるところで再びスポットが 当たるという、ぞんざいな扱われ方。
彼だけでなく、小渕や荒井も途中からアンサンブルに埋もれて存在感が薄くなる。

原作を『落ちこぼれ軍団の奇跡』でなく山口良治の著書にしており、より事実に近付けようという意識はあったのだろう。
ただし、その一方で、TVドラマの影響から抜け出すことは出来なかったようだ。
主題歌をTVドラマと同じ『HERO』にした上、タイトルにまで付けているのは、明らかにTVドラマを見ていた層を当て込んでのことだ。
TVドラマへの意識を捨て切れなかったこと、開き直れなかったこと、吹っ切ることが出来なかったことが、この映画を駄目にした最大の要因だろう。
ドラマの人気に貢献した要素をあれもこれもと全て取り入もうとした結果、「TVドラマを焼き直したダイジェスト版の映画」と化してしまった。
あまりにも駆け足で話が進んでしまうのだ。
だから、感動的に盛り上がるべきシーンも、そこまでの助走が充分に取れず、弱いものとなってしまう。

この映画には、思い切って捨てるという作業が必要だったのだ。
例えば望月の場面は、こんな粗い扱いにするぐらいなら、完全に削ってしまった方がいい。
つまり望月というキャラ自体を出さない方がいいということだ。
府大会で劇的な逆転優勝に喜ぶ一方、望月が病院で息を引き取るという構成も、試合途中で山上に連絡が入っているわけでもないし、 その効果には首を傾げてしまう。
望月が死んだ後、決勝の試合があるという構成なら、まだ分かるんだけど。
優勝して大喜びした後、死んだ望月の所へ赴いてシンミリするというのも、締まりが悪いんだよな。
歓喜と高揚感の中で話を終わっておけばいいのに。

その後、説教臭い教育論を語る1982年のエピローグも要らないよ。
なんで最後になって「教育とは云々、先生とは云々」みたいなウザい教材チック映画としてまとめるかね。
熱血ドラマとして盛り上げたまま終幕しろって。
今さら言っても仕方の無いことだが、こんなに慌ただしいダイジェスト版映画にするぐらいなら、TVドラマとして製作すれば良かったのではないか。
これがフジテレビや日本テレビなら放送枠が難しいだろうけど、テレビ朝日なら何とかなりそうだし。
ただ、扱っている題材がラグビーであることを考えると、大阪のMBS製作の方がいいかな。

ところで、ラグビーの試合シーンで気になったことが1つ。
迫力が云々という演出としての部分は、とりあえず置いておこう。
で、最後の決勝戦、スローで主要な部員の姿を1人ずつ見せるシーンで、小渕や荒は明らかにボールを持っていない選手を押さえ付けて 動きを妨害しているんだけど、あれって反則なんじゃないの?
ボール保持者以外を掴んで押さえるのって、OKなんだっけ?
いや、ラグビーには詳しくないんで、ハッキリしたことは分からないんだけど。

(観賞日:2007年2月18日)


第1回(2004年度)蛇いちご賞

・男優賞:照英

 

*ポンコツ映画愛護協会