『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』:2016、日本

療養中の少女はベッドから起き上がり、窓の外を眺めた。すると4人の子供たちが、楽しそうにボール遊びをしていた。転がったボールを拾うために四葉のペンダントを下げた女の子が窓へ近付き、少女に気付いた。2人の少女は窓を挟んで、じっと見つめ合った。女子高生の秋山亜美は1ヶ月後のコンクールに向けて、ピアノのレッスンを受けていた。彼女が途中で手を止めてしまったので、講師を務める音大生の沢村雪絵はミスタッチを気にせず続けるよう促した。
亜美は落ち込んでいる様子を見せ、「もう弾きたくない。優勝なんて無理」と弱音を吐いた。雪絵は「貴方には才能がある」と励まし、爪やすりで亜美の爪を磨いてやる。亜美は「なんで才能があるからって、やらなきゃいけないの。自分の夢を私に押し付けないでよ」と声を荒らげてスタジオを飛び出した。夜道を自転車で帰路に就いた雪絵は、苦しそうに座り込んでいる白いワンピースの女に気付いた。雪絵が「大丈夫ですか」と声を掛けると、その女は突如として襲い掛かった。
「マイティ丸山」の芸名でお笑い芸人として活動する丸山竜司は、営業先である夏祭り会場の控室で借金取りのヤクザたちに詰め寄られていた。ここのギャラで払うと釈明した丸山は、出番が来たのでステージへ赴いた。彼は商店街や観客を扱き下ろして笑いを取ろうとするが、まるで受けなかった。担当者がステージから引き摺り下ろし、丸山はヤクザたちから逃亡した。その様子を、会場を訪れた亜美が目撃していた。
丸山は所属プロダクションの社長である峠久美子から、契約解除を通告された。丸山は撤回を懇願するが、峠は冷たく拒絶し、事務員の唯川ひな子も引き留めようとしなかった。そこへ亜美が現れ、「マイティーズの2人に力を貸してほしい」と言う。雪絵がマイティーズの大ファンなので、亜美も彼らのことを知っていたのだ。かつて丸山は仙石和彦と共にマイティーズというコンビで活動し、観客の思念を読み取るパフォーマンスを行っていた。丸山が観客から所持品を借り、残留する思念を仙石が読み取って秘密を暴くのだ。
しかし宣言はしていないが実質的には解散しており、丸山も「あんなキワモノ芸、二度とやらねえ。どうせまた叩かれるだけだ」と吐き捨てる。仙石が逃げ出したため、マイティーズの続行は不可能になっていた。亜美は人を捜してほしいと依頼し、30万円の報酬を約束する。峠は丸山の意思を無視して引き受け、仙石を見つけて連れ戻すよう要求した。仙石はネガティヴで人間嫌いな男で、現在はマンションの管理人をしていた。
丸山は亜美を連れて仙石の元へ行き、嘘をついて玄関のドアを開けさせる。亜美は失踪した雪絵の捜索を要請し、手掛かりとなる幾つかの所持品を渡す。仙石は「客は仕込み。全部やらせ。インチキなんだよ」と言うが、亜美は「雪絵さんはそう言ってなかった。私も信じることにしたんです」と真っ直ぐな目で告げる。仙石が依頼を断ると、亜美は「雪絵さんは自分から消えたりしません」と告げる。丸山と仙石は互いを批判し、「インチキと言われたままで悔しくないのか」「お前のせいだろ」と言い争った。
丸山たちが去った後、部屋を掃除していた仙石は亜美が置いていった爪やすりを手に取った。その瞬間、残留思念が脳裏に流れ込み、彼は雪絵が亜美を励ます様子を見た。雪絵の姿が頭から離れなくなった仙石は、仕方なく調査を開始した。仙石は失踪現場の道路に触れるが、猫の思念を読み取ってしまう。そこで大学へ赴いて雪絵の自転車に触れるが、思念は読み取れない。読み取った思念を初期化するのに時間が掛かるため、今日は無理だろうと丸山は亜美に告げる。
その様子を見ていた伊藤忍は、親友の雪絵が不思議なぐらいマイティーズの能力を信じていたことを語る。すると仙石の脳内には、雪絵が女に注射を打たれて白いバンに押し込まれる映像が流れ込んだ。仙石は美術部の学生に犯人の似顔絵を描いてもらい、それを亜美は地元の警察署へ持って行く。しかし担当警官には相手にされなかったため、丸山は警視庁捜査一課へ送り付けるよう勧める。捜査一課の野田直哉と新人の佐々部悟は似顔絵を見て驚き、仙石の元へ赴いた。
仙石と丸山を連行した野田は、情報を得た経緯について尋問した。捜査一課は2人の男性が立て続けに殺された事件を捜査しており、それに関する情報と、送られてきた手紙の内容が一致していたのだ。野田はスキャニングで読み取ったという説明を信じなかったが、仙石と丸山は解放される。丸山は佐々部たちが言っていた事件の記事を調べ、仙石に知らせた。1月には会計士の平野俊樹、4月には建築業者の高柳優也が殺されていた。
同一犯なら犯人の情報が分かるかもしれないと考えた仙石と丸山は高柳の実家を訪れ、母親の許可を得て証拠品に触らせてもらう。残留思念を読み取った仙石は、丸山と共にレインボーブリッジの見える埠頭の倉庫へ赴いた。倉庫の壁に触れた仙石は、犯人が平野と高柳を捕まえて拷問したこと、もう1人の標的として雪絵の名前を聞き出したこと、雪絵を拘束してナイフを突き付けたこと、名前を問われて「エリカだよ」と答えたことを読み取った。
丸山が疲労困憊となった仙石を車に乗せると、後ろから大型トラックが突っ込んで来た。車は海に落とされるが、丸山は仙石を引き上げて何とか脱出する。倉庫は爆破され、犯人は別の車で逃亡した。丸山は軽傷で済んだが、仙石は面会謝絶で入院を余儀なくされる。野田は佐々木に、使えそうな情報だけ仙石たちから引っ張るよう命じた。峠は亜美に、仙石には11歳までの記憶が無いこと、町を徘徊していて警察に保護されたことを語る。彼は政治家の仙石隆則と佳美夫婦に養子として引き取られるが、支持者の獲得が目的だったこと、自分を全く愛していないことを読み取った。
仙石は養父母の家を出たが、どこへ行っても人間関係が上手く行かずに職を転々としていた。たまたま仕事で事務所へ来た時に峠が拾い、丸山と組ませた。しかし醜い思念を多く読み取ったことで嫌になり、逃げ出したのだった。丸山は亜美に、「ここで手を引く」と告げた。コンクール前日、退院した仙石は亜美の元を訪れた。彼女と話した仙石は改めて倉庫へ赴き、エリカと名乗る女が雪絵を拘束している様子を読み取った。エリカは4人目の女性について聞き出すため雪絵を脅し、「約束したんだから、みんなで遊ぶって。香澄高原で」と話していた。仙石は雪絵の殺された記憶が無かったことから、まだ彼女が生きていると確信した。
彼は丸山に会い、犯人は4人目の女を捜していること、霞高原が手掛かりになること、犯人が子供に見える時があることを話す。しかし丸山は「もう手を引いたんだ」と調査の続行に難色を示し、佐々部の名刺を仙石に渡した。仙石は警察に情報を提供し、佐々部と会った。佐々部は霞高原のネット掲示板で、「2004年に一緒に遊んだ当時、小学校高学年だった男女四人を探しています」という書き込みを発見していた。書き込んだ人物は、エリカというハンドルネームを使っていた。
掲示板には何度も同じ内容が書き込まれており、今年になって平野が「音楽教室の合宿で霞高原に行きました」と返事をしていた。エリカと名乗る人物の正体は、まだ分かっていなかった。佐々部が入手した参加者の名簿には、忍が含まれていた。しかし仙石と佐々部が会いに行くと、忍はキャンセルして合宿に参加しなかったことを語る。佐々部は霞高原に城戸恵里佳という人物がいたことを仙石に話し、車で一緒に出向いた。
廃墟と化した別荘に到着した仙石たちは地元の松下巡査と合流し、もう城戸恵里佳が住んでいないことを聞かされる。体の弱い恵里佳は保養のために別荘へ来たが、いつの間にか家族と共にいなくなったらしいと松下は説明した。残されていた絵を拾い上げた仙石は、恵里佳がボール遊びをする4人の子供たちを眺める様子を読み取った。ボールを取りに来た子供時代の雪絵は、最年少の少女に「行くよ、亜美」と呼び掛けた。最後の1人が亜美だと知った仙石は倒れ込み、松下から恵里佳が10歳で病死したことを聞かされた。
その直後、佐々部は野田からの電話で、「犯人が分かった。ネットに書き込んだエリカの正体が分かったんだ。伊藤忍だよ」と告げられる。彼女は合宿直前で選抜メンバーから外され、代わりに雪絵が入っていた。忍は亜美のコンクール会場に来ており、花束を抱えて出番が終わるのを待っていた。しかし亜美が演奏を終えて拍手を浴びる中、野田たちが駆け付けて忍を連行した。意識を取り戻した仙石は新たな残留思念を読み取って「エリカだ」と呟き、丸山を呼ぶよう慌てて松下に頼む。彼は丸山に、「肉体が滅んでも、強い思念は残り続ける。強烈な思念は時に、取り込んだ人間の精神を駆逐する」と語る…。

監督は金子修介、脚本は古沢良太、製作は多田憲之&平城隆司&木下直哉&間宮登良松&渡邊耕一&沖中進&浅井賢二&樋泉実&笹栗哲朗、企画は須藤泰司、エグゼクティブプロデューサーは林雄一郎、プロデューサーは川田亮&高野渉、キャスティングプロデューサーは福岡康裕、音楽プロデューサーは津島玄一、ラインプロデューサーは石川貴博、撮影は釘宮慎治、美術は福澤勝広、照明は田辺浩、録音は高野泰雄、編集は大畑英亮、音楽は池頼広。
出演は野村萬斎、宮迫博之、安田章大、杉咲花、ちすん、木村文乃、高畑淳子、風間杜夫、梶原善、嶋田久作、福本愛菜、岩田さゆり、北島美香、峯村リエ、絲木建汰、青山草太、望月章男、山口岳彦(タケタリーノ山口)、松本妃代、高島豪志、篠原悠伸、佐野代吉、前野えま、横山幸汰、飯塚理珠、岩崎未来、丸山歩夢、芝本麟太郎、麻亜里、小川あゆ美、西郷豊、湖木信乃介、大久保圭祐、マユ・ソフィア、奥村アキラ、山本啓之、小出奈央、飯田まさと、軍司眞人、大友和彦、古谷朋弘、中島美紀、橘家二三蔵、吉田幸矢、冨田じゅん、井上肇、なかじままり、上野淳ら。


『寄生獣』『エイプリルフールズ』の古沢良太が脚本を手掛けた作品。
監督は『ジェリー・フィッシュ』『少女は異世界で戦った』の金子修介。
仙石を野村萬斎、丸山を宮迫博之、佐々部を安田章大、亜美を杉咲花、忍をちすん、雪絵を木村文乃、峠を高畑淳子、野田を風間杜夫、松下を梶原善、隆則を嶋田久作、ひな子を福本愛菜、里奈を岩田さゆり、佳美を北島美香、久恵を峯村リエ、孝を絲木建汰、松田を青山草太、川野を望月章男が演じている。

ザックリとした事前情報を知った時には、「いかにも原作付きっぽい映画だなあ、それも漫画が原作っぽいなあ」と感じていた。
しかし原作付きではなく、オリジナルの企画だった。
脚本の古沢良太と企画の須藤泰司は『探偵はBARにいる』でも組んだコンビでおり、彼らの中には「原作付きの作品が多い邦画界だけど、オリジナルで勝負したい」という強い思いがあったのかもしれない。
だとすれば、その志は大いに評価する。
ただし残念ながら、この映画はハズレだと言わざるを得ない。

まず、「元お笑いコンビの2人が事件を捜査する」というアイデアからして、すっかり機能不全に陥っている。
マイティーズは「観客の思念を読み取るパフォーマンスをやっていた」という設定なのだが、それってお笑いコンビの仕事じゃないでしょ。
そりゃあ最近の芸人は、お笑い以外の分野で才能を発揮し、それを仕事に繋げるケースも多いよ。だけど映画として「お笑い芸人コンビ」を描くのであれば、やっぱり「お笑い芸人であること」に意味を持たせる必要があると思うのよ。
この映画だと「スキャニング能力」という部分だけが必要なのであって、元お笑い芸人という設定は全く要らないでしょ。

「元お笑い芸人コンビ」という設定を活用するために、真っ先に考えられるのは「バディー・ムービーにおけるコンビネーション」だろう。2人のやり取りがボケとツッコミになって、まるで漫才のように見えるという形にすれば、それなりに意味が見えるかもしれない。
だが、仙石と丸山り会話劇には、そういうノリなんて全く見えない。
っていうか、「会話劇の面白さ」「コンビネーションの妙」を見せるにしても、「お笑い芸人」という設定は要らないのよね。むしろ、それは無駄に観客のハードルを上げることにしか繋がらない。
そんな設定を排除した上で「コンビネーションの面白さ」「テンポの良い会話劇」を見せた方が、絶対に効果的なはずで。

そんな「元お笑い芸人コンビ」を演じる両名も、まるで合っていない。
まず野村萬斎は、ちっとも「元お笑い芸人」には見えない。喜劇としての芝居はしているけど、それと「元芸人に見えるかどうか」ってのは全くの別問題。
狂言ってのは喜劇だけど、それと「お笑い芸人」ってのは全く違うしね。
っていうか、時代劇ならともかく現在劇の場合、野村萬斎の合う役柄ってのは、ものすごく狭いと思うのよね。それこそアテ書きしたキャラじゃないと、ハマらないんじゃないかと。

その相方を務める宮迫博之は、現役でお笑いコンビをやっているんだから、そりゃあピッタリだと思うかもしれない。きっと製作サイドも、そういう意図で彼を起用したんだろう。
ただ、お笑い芸人がお笑い芸人の役を演じるってのは、むしろギクシャクしたモノになる可能性が高い。っていうか実際、そうなっている。
芸人として活動している時は、バラエティー番組なら自分の言葉で喋り、漫才やコントならコンビの間やテンポで演じる。でも映画の場合、用意された台詞を演出に合わせて喋らなきゃいけないわけで。
だから「売れない芸人」としては正解なのかもしれないけど、かなり寒々しくて痛々しいことになっている。
仙石と丸山が「元お笑い芸人のコンビ」という設定じゃなかったら、それだけでも大きく印象は違っていたはずだ。

導入部の段階で、色々と不自然さが目立つ。
まず冒頭、少女がベッドから起き上がるが、まるで自宅や施設という印象を受けない内装になっている。舞台劇のセットのような印象だ。
そういう家具の配置になっている家が実在しないのかと問われたら、そりゃあゼロとは言い切れないだろうけど、どうにも違和感を抱かせる家なのだ。
そのシーンの状況が後から説明された時に、ますます不自然さが強くなってしまう。子供たちは音楽教室の合宿で来ていたらしいが、なんで保養中の少女がいる別荘の庭で遊んでいるのか。それって、どういう状況なのよ。
「たまたま入り込んでしまった」ということならともかく、普通にボールで遊んでいるからね。

続くシーンに関しては、まず「雪絵が一度は走り去ったものの、気になって舞い戻り、白いワンピースの女に声を掛ける」という行動を取らない限り、犯行は成立しないという問題がある。
つまり犯人は計画的に行動しているはずなのに、偶然に頼る部分が大きいのだ。
また、犯人が立ち上がった時に雪絵が無言のままで後退しているのも、かなり不自然な行動だ。犯人を見て驚いたというリアクションも乏しいし、何も言わないってのも変でしょ。
あと細かいことかもしれんけど、殴られた時の倒れ方も変だよ。その直後のタイトル文字に合わせて流れて来る音楽も含めて、テレビの2時間サスペンスみたいな雰囲気を感じるわ。

亜美は仙石に雪絵の捜索を依頼する時、「1週間前、学校の帰り道で行方不明になったけど警察は真剣に捜してくれません」と説明する。
だが、それは不可解だ。
そりゃあ、実際の警察だってボンクラは少なくないし、初動捜査が遅れたせいで犠牲者が出るケースも良くある。たぶん映画の設定としては、「もう雪絵は大人だし、ただの家出か何かだと警察は軽く見た」という設定だったりするんだろう。
だけど、雪絵は単純に「姿を消した」ってだけじゃないのよ。自転車が転倒した状態で放置され、行方不明になっているのよ。
そんな状況なのに警察が事件として捉えず真剣に捜査しないってのは、どう考えても不自然でしょ。

「元お笑い芸人コンビ」という設定を活用したいという狙いからなのか、前半はコミカルな描写が多くなっている。
仙石は調査に出る時に異様な厚着で武装し、オロオロした弱々しい様子を見せている。道路に触れて思念を読み取った時は「トラックにひかれた」と言うが、丸山が雪絵のことかと思っていたら、それは猫の思念というオチが用意されている。
でも、そういうコミカルな描写の数々は、ことごとく外しまくっている。
演出と脚本のどちらに問題があるのか分からないが(両方という可能性が濃厚)、古臭いという印象が強い。「ここはコミカルなシーンですよ」とアピールするために使われるBGMも、むしろ逆効果になっている。

それと、そういうコミカルなテイストを入れている一方で、仙石のキャラ設定は陰気で暗いし、発生する事件は凶悪なのよね。そこのアンバランスは、どういうつもりなのかと。そこに「アンバランスの妙」みたいな面白さなんて無いぞ。
「最初はコミカル強めから入って、少しずつシリアス路線へ」という展開になっているんだけど、まるで上手く行っていない。
殺人事件に関しては、既に殺されている男子2人は「良く知らない連中」だから、まだ良しとしよう。でも完全ネタバレだけど、雪絵も殺されているのよ。
だから事件が解決しても、まるで救いが無いし、ちっともスッキリしないのよね。

後半に入り、別荘で残留思念を読み取った仙石は、犯人の最後の標的が亜美だと知る。その直後、彼は松下に質問し、恵里佳が10歳で病死したことを知る。
でも、そこで重要な情報が2つ立て続けに判明するのは、ミステリーとして上手くないでしょ。
そこは1つずつ小分けにしてネタを明かしていった方がいいでしょ。
一気に片付けることによって、せっかく「最後の標的は亜美」と判明したのに、そこが本来なら持っているはずのサプライズ効果が「エリカは既に死んでいる」という情報によって打ち消されてしまう。

仙石はエリカが死んでいると知った途端、犯人について「エリカに取り憑かれた別の女」と呟く。カットが切り替わると、コンクール会場にいる忍の姿が写し出される。
つまり「犯人は忍」と観客に思わせようとしているのだが、「いやいやいやいや」と全力でツッコミを入れたくなる。
「犯人はエリカじゃない」から、「犯人は忍」への飛躍が酷すぎるだろ。
その直後、野田が佐々部に電話を掛け、ネットに書き込んだエリカの正体が忍だと明かすが、ここで初めて忍が犯人だと思わせるための情報が提示されるのよね。そこまでは、忍を犯人だと断定するための根拠なんて、何一つとして提示されていなかった。
だから忍が犯人というミスリードは、上手く行っていない。
しかも、その直後に真犯人が明かされるので、ほぼ無意味になっちゃってるし。

完全ネタバレだが、真犯人は佐々部だ。彼はエリカの兄で、妹が4人の子供たちのせいで死んだと思い込み、復讐に乗り出した。エリカの死で両親に責められた彼は、妹の代わりになろうとして女装するようになった。そのせいで虐待を受けるようになり、彼は警察官僚の家で引き取られた。
そういうことを仙石がベラベラと喋って一気に説明し、佐々部が感情を吐露する。
その後、今度は残留思念を読み取った仙石が、佐々部は「4人と遊ぶ約束をしたエリカが雨の中で出掛けたせいで死んでしまった」と思っているが、それはエリカの嘘を信じたせいであり、実際は放置されていたボールを拾っただけでエリカは4人と遊んだことも無いという事実を教える。
そういう解決篇の手順が、ものすごく長くてダラダラしちゃってる。
あと、追い詰められた佐々部は自殺するのだが、亜美は雪絵が死んじゃうし、目の前で犯人は死ぬし、深い心の傷を負ったまま生きて行かなきゃいけなくなっている。そこまで陰気な話にするメリットを感じないわ。

(観賞日:2017年11月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会