『桜の樹の下で』:1989、日本

辰本菊乃は、京都で料亭を営んでいる。彼女は店の常連客である東京の編集者社長・遊佐恭平と付き合っているが、彼には妻も子供もいる。菊乃には大学を卒業したばかりの娘・涼子がおり、料亭で見習いとして働き始めている。
菊乃は銀座のグランドホテル内に店を持つことになった。彼女は桜の樹と墓地が隣にあるマンションを借りる。仕事が忙しい母に代わって開店やマンションの準備ために東京に行くことになった涼子は、遊佐に連絡してデートの約束を取り付ける。
以前に「桜を一緒に見に行く」という約束を涼子と交わしていた遊佐は、彼女を秋田に連れて行き、桜を見る。ホテルに宿泊した2人は、肉体関係を結ぶ。そんな2人の関係に、やがて菊乃は気付いてしまう。それでも菊乃は、強がって知らないフリをする。
遊佐と涼子は関係を続け、心労のせいでメニエール病になってしまった菊乃は、京都に戻ろうと考えた。彼女は東京の店を涼子に任せ、遊佐に監督役を頼んだ。そんな中、涼子は自分が妊娠したことを遊佐に告げるのだが…。

監督は鷹森立一、原作は渡辺淳一、脚本は那須真知子、企画は三堀篤、プロデューサーは瀬戸恒雄、撮影は林淳一郎、編集は西東清明、録音は柿沼紀彦、照明は山口利雄、美術は今保太郎、衣裳は増田和子、きものデザインは小泉清子、音楽は小六禮次郎。
出演は岩下志麻、七瀬なつみ、津川雅彦、寺田農、十朱幸代、二谷英明、山口果林、志喜屋文、山本緑、大場順、西田健、久保菜穂子、野坂昭如、早川雄三ら。


渡辺淳一の小説を映画化した作品。
ぶっちゃけて言ってしまえば、純文学を装ったソフトポルノであり、上品ぶったエロ映画である。「悦楽と背徳の美を描く恋愛劇」という建て前はあるが、エロオヤジの妄想を映像化したモノだと思うと分かりやすい。

どうやらタイトルの通り、桜の樹が物語の核になっているようで、「桜の樹の下には死体が埋まっている」という言葉が何度も登場する。しかし、桜の怪しさや恐怖をどれだけセリフで訴えられても、この作品を見ている限りは何も感じない。

遊佐の妻は心臓が弱かったり、夫の浮気に気付いている様子だったりという設定が序盤で出てくるのだが、それ以降は全く物語に絡んでこない。
エロを描くのには、彼女の存在もキャラクター設定も、全くの無意味だったようだ。
メインとなる菊乃、涼子、遊佐という3人以外の登場キャラクターは、色付けのために顔を出しているだけで、特に深い意味は無いってことだね、たぶん。

母が岩下志麻で、娘が当時は新人だった七瀬なつみ。
2人が奪い合う男が、津川雅彦。
岩下も津川と下を絡め合うような場面はあるが、脱ぐ役目は七瀬なつみが受け持っている。スッポンポンになって、津川とのセックスシーンを演じている。
まあ、岩下志麻のヌードに対するニーズがどれほどあるかを考えれば、そうなるのも当然だわな。前述したようにエロ映画なんだから、そこが一番大事なトコロだ。

ワザとらしい芝居に、ワザとらしいセリフ回し。心で思っていればいいことも、全て口に出してしまう登場人物。終盤に待っているのは、おそろしく唐突な展開。どうにか文学的にまとめようとしているが、あまりに浅いので笑いも出ない。
白けてオシマイ。

 

*ポンコツ映画愛護協会