『最終兵器彼女』:2006、日本

10月1日、晴れ。北海道小樽中央高等学校。高校3年生のシュウジは、無人の体育館で、1週間前に付き合い始めた同級生・ちせへの 交換日記を書こうとしていた。言葉が浮かばずに困っていると、親友のアツシが現れた。からかわれたシュウジは、「俺だって好きで 書いてるわけじゃねえんだよ」と口にする。ちせが見ていたので、シュウジは気まずい表情を浮かべた。
翌日、シュウジはちせ、アツシ、アケミの4人で札幌へ出掛ける予定だったが、ちせは来なかった。シュウジは彼女へのプレゼントを購入 した。デパートの入り口付近で人々が集まり、空を見上げていた。行ってみると、無数の戦闘機が飛んでいた。爆撃が開始され、シュウジ たちは逃げ出した。人とぶつかって足を挫いたシュウジは、動けなくなった。そこへ、迎撃された爆撃機から落ちた翼が迫ってきた。その 時、背中から金属の翼を生やしたちせがシュウジを救った。「ごめんねシュウジくん、黙ってて」と、彼女は言った。
翌日の新聞を見ても、札幌での事件は全く掲載されていなかった。小樽の街も、いつもと変わらない。アツシは「俺らが知らないだけで、 他のトコではすげえヤバいことになってんのかな」と口にした。シュウジはちせに会い、購入したプレゼントを渡した。それは小さな犬の ヌイグルミだ。シュウジはためらいつつ、「あれってさ、戦争とか、なんだよな」と告げた。「あん時のお前の体って」と言うと、ちせは 「私にも良く分からないの。気が付いたら、ああなってたの」と告げた。
ちせは「記憶が無いの。後から自衛隊の人に色々と説明してもらったんだけど、難しい単語が多くて」とシュウジに語った。「私にしか 出来ない大切な仕事だって言われたの」と彼女が言うと、シュウジは「なんでお前なんだよ」と苛立ちを露にした。ちせは、自分が兵器に なったことは親にも内緒で、本当は誰にも言ってはいけないのだとシュウジに説明した。
ちせは自衛隊の基地へ赴き、研究員のムラセと会った。ムラセは「現場に出る度、戦闘能力が確実に上がっています。学習能力も飛躍的に アップしているようです。貴方は我が国の国土防衛の要です。どうか、そのことをお忘れなきよう」と述べた。シュウジがビデオショップ へ行くと、テツ先輩の妻である店長・ふゆみから手伝いを頼まれた。ふゆみはテツのことを「勝手に自衛隊入って、戦争行っちゃって」と 語った。約束していたちせが来たので、シュウジは一緒に店を出た。
シュウジはちせと付き合い始めたが、特に何をするわけでもなく、展望台でボンヤリと過ごすだけだった。シュウジはちせに、「やっぱ やめよう」と書いた交換日記を差し出した。「いきなり交換日記なんて言われても、何書いていいんだか」とシュウジは言い、「なんで俺 なんだよ。ほかに男なら幾らでもいるだろ」と告げる。ちせが「どうせ断られると思ってた。なんで断らなかったのよ」と言うので、 シュウジは「断れるわけねえだろ。だって、お前、可愛いじゃんよ」と言葉を返した。
シュウジはちせに、「俺だって、お前みたいな奴と付き合えたらいいなって、ずっと思ってた」と本音を明かす。ちせに「シュウちゃんの したいようにしてくれたら、それでいいの」と言われ、シュウジは彼女にキスをした。翌日、ちせから報告を受けたアケミは、「この先は 悩んだらダメだからね、勢いが大事。次はエッチでしょ」とアドバイスした。ちせは下手なおにぎり弁当をシュウジに渡し、「練習して 上手く握れるようになるから」と告げた。シュウジは彼女に「交換日記、やっぱやろうぜ」と告げた。
その時、ちせは自衛隊からの呼び出しを受けた。「どうなってんだ、この国って?今、ヤバいことになってんのか」とシュウジが問うと、 ちせは「この街は大丈夫だから。あたしがいるから、手ぇ出してこないと思うから」と告げた。ちせはウォークマンを落とし、その場から 走り去った。戦地で戦っていたテツは、仲間に「引き上げるぞ、撤退だ。ちせ様のお出ましだよ。モタモタしてたら味方に殺されるぞ」と 告げた。ちせは激しい空爆を行い、敵を倒した。テツは「化け物が」と呟いた。
翌日、ちせは何事も無かったように登校した。彼女はアケミと共に、陸上部を引退しても練習しているシュウジの姿を見た。アケミは 「悔いが残っているのかもね。ずっと上にテツ先輩っていう人がいて、その人の記録をもう少しで破れそうだったのにダメだった」と説明 した後、ちせに「シュウジのこと、絶対離しちゃダメだよ」と告げた。シュウジはウォークマンをちせに返し、「最初に入ってた曲、何て いうの?すげえいい曲だった」と告げた。
シュウジは「今度の休み、どっか行かねえか」と、ちせを誘った。2人は初めてデートらしいデートに出掛け、水族館を歩いた。その最中、 ちせは急に厳しい顔付きになって、水族館の外に走り出す。シュウジが追い掛けると、ちせは「来ないで。狙いは私一人だから、シュウ ちゃん、早くここから離れなきゃ」と言う。シュウジは近くにあった自転車にまたがり、「離れればいいんだろ。早く乗れ」と告げる。 シュウジはちせを後ろに乗せ、自転車を漕ぎ始めた。
ちせはヘリを攻撃して、爆発させた。「もう終わった。あの人たち、水族館ごとアタシを」と彼女は言う。「そいつら、敵ってことか」と シュウジは言い、ヘリの墜落現場へ向かう。だが、そこに転がっている死体を見て、シュウジは顔を引きつらせた。「こうしなかったら、 みんな殺されてたの」と、ちせは言う。「分かってる、分かってるよ。戦争、なんだよな」と、シュウジは息を飲んだ。ちせが触れようと すると、シュウジは思わず身を引いてしまった。
翌日、ちせは自衛隊からの出撃命令を受けた。だが、シュウジの怯える顔が頭をよぎり、出撃をためらった。遅れて基地へ行くと、大勢の 死者が出ていた。テツは「なんで敵の攻撃が始まる前に来なかった。お前が遅れたせいで、こっちはこのザマだ」と、ちせを激しく非難 する。ちせが謝ると、彼は「それで死んだ仲間が生き返ると思うか。さすが化け物だよな。どうせ俺たちが何人死のうが屁とも思っちゃ いないんだろう」と激しく罵った。
次の日、シュウジは落ち込むちせに優しく接した。ちせは「シュウちゃん、あたしのこと、怖いのかな」と漏らし、逃げるように走り去る。 シュウジは追い掛け、「お前がしてること、やめるわけにはいかないのか」と訊く。「無理だと思う。それがあたしの役目だって」とちせ が答えると、シュウジは「お前は俺の彼女で、ただそれだけで」と強く抱き締めた。 シュウジはちせを押し倒し、セックスしようとする。抵抗するちせの服を破くと、胸に大きな傷があった。呆然とするシュウジに、ちせは 「ごめんね、こんな体で」と悲しそうに告げる。シュウジは無言のまま立ち上がると、「あああ!」と感情のままに吠えた。ちせは彼に 「アタシたち、クラスメイトに戻ろう。きっとそれが、一番いいんだよ」と持ち掛けた。自衛隊で検査を受けた彼女は、ムラセから「貴方 の判断は賢明でした。本来、異性との交際はお勧めできませんでした」と言われる。
2人が別れたことを知り、アケミはシュウジに「どうしてそんなことになったの」と激しく詰め寄った。シュウジは苛立ち、「お前は俺の 何なんだよ。いちいちお前に言う義務があんのかよ」と言う。するとアツシが「アケミはお前らのこと心配して。アケミに謝れよ」と怒り を示した。立ち去るアケミを、アツシは追い掛けた。「なぜ僕は何も出来ないのだろう」と、シュウジは考え込む。
自衛隊の陣営で、ちせは沈み込んでいた。隊員のナカムラが、「なんか羽の感じ、変わりましたよね、キレイになったっていうか」と声を 掛けた。ちせは「この前、メンテナンスだったから」と言った後、「意味ないのにね。生きてたって何の意味も無い。楽しいことなんて何 も無いのに。いっそ、消えて無くなっちゃった方がいいくらいなのに」と漏らした。ナカムラは、テツがちせに銃を向けているのに気付く。 テツは「生きてたって、意味ないんだろ」と言い放ち、引き金に手を掛けた。
ちせは「やめて」と泣き出し、「今まで人を殺してきたけど、勝手だと思うけど、生きていたいの。好きな人がいるの」と告げた。テツは 彼女をジープで送り、「俺にも惚れてる女がいる」と言う。ちせが「あたしはもう、別れちゃったから。兵器の彼女なんて、きっとイヤだ と思うから」と口にすると、テツは「兵器じゃねえだろ。お前は普通の女だ。グジグシしてんなよ」と励ました。ちせは「もう一度、 きちんと話、してみようと思います」と告げた。
翌日、ちせは下校時間に校門の前で立ち、シュウジが出て来るのを待った。その日はシュウジの誕生日で、ちせはプレゼントを用意して いた。そこにアケミが現れ、「シュウジは帰ったばかりだけど、追い掛ければ間に合うよ、行こう」と手を引っ張った。ビデオショップの 前にいるシュウジを発見し、ちせは駆け寄ろうとする。その時、ふゆみが店内から現れ、シュウジの自転車の後ろに乗った。その様子を 目にしたちせは、プレゼントを落として走り去った。
アケミはシュウジを呼び出して「もう次の彼女がいるんだ」と嫌味っぽく言い、ふゆみとの関係を指摘した。シュウジが「自分でも、良く 分かんねえんだ」と漏らすと、アケミはちせのプレゼントを渡して去った。中身はカセットテープだった。その時、近くで爆撃が始まった。 シュウジは「逃げろアケミ」と叫び、駆け寄ろうとする。転倒したアケミは、爆風に巻き込まれた。
ちせは自衛隊で検査を受け、ムラセから「成長の最終段階を迎えようとしています。間もなく貴方は完成する。完全な兵器として」と説明 を受けた。「それって人間ではなくなるということですか」と尋ねるちせに、ムラセは現在の彼女のレントゲン図を見せた。既に彼女の体 は、中身が機械だらけになっていた。ちせは出撃し、激しい空爆を浴びせて任務を果たした。帰還した彼女に、テツは「何かあったのか。 人が変わったみたいだぞ」と声を掛けた。ちせは淡々と、「私は人じゃないから」と告げた。
シュウジは、重傷を負って入院したアケミの見舞いに訪れた。アケミは「あたし、あの時まだ死ねないって思ったんだ。あたし、シュウジ のこと好きだった。ずっと前から」と告白する。それから彼女は「けど、ちせだから諦めたんだよ。ちせのこと、ちゃんと見てあげて」と 告げた。アツシはシュウジに、「俺、戦争行く。アケミのこと守りたいんだ」と言う。彼は、アケミがシュウジを好きだと知っていたが、「」 「俺はアケミが好きだし、なんかしてやりてえんだ」と述べた。シュウジは「頑張れよ」と彼を見送った。
出撃しようとするちせを発見したテツは、「前線には負傷した隊員が取り残されている。救護部隊が救援するまで待ってくれ」と頼んだ。 だが、ちせは「待ってたら、もっと大変なことになりますよ」と告げる。「仲間を犠牲にする気か」と言うテツに、「攻撃が遅れたら、 もっと犠牲は増えます」と彼女は言い、出撃した。仲間を見殺しに出来ないと、テツは敵の勢力圏内へ向かう。
テツはナカムラの死体を発見した直後、敵の激しい銃撃にさらされた。彼は銃弾を浴びて、瀕死の重傷を負った。そこに、ちせが姿を 現した。「死にたくねえよ。ふゆみ」と呟き、テツはちせに眼前で息を引き取った。基地に戻ったちせは、隊員が「ちせなんていう兵器を 作ったから、日本は世界中を敵に回した。あいつは疫病神だ」と話しているのを耳にした。
シュウジは空襲にやられたビデオショップへ行き、ふゆみの片付けを手伝った。シュウジは、テツの死を知らされた彼女に、どんな風に声 を掛けていいのか分からなかった。ふゆみは「昨日、テツの遺品が届いたの。誰かが直接届けてくれたみたい。その時、不思議なものを 見たの。翼の生えた人みたいな影が飛んでいくところ」と語る。ちせだと確信したシュウジは、想い出の展望台へ向かった。
展望台には、ちせの姿があった。彼女は「逃げてきちゃったんだ。シュウちゃんにだけは、最後に会っておきたくて」と言うと、すぐに 立ち去ろうとする。「どういうことだよ」とシュウジが呼び止めると、ちせは「あたし、いなくなることにしたの。だって、たくさん人が 死んじゃうの、あたしのせいだから」と声を震わせる。「これ以上そばにいると、ずっと一緒にいたくなっちゃう。シュウちゃんの彼女に 戻りたくなっちゃう」と言う彼女を、シュウジは強く抱き締めた。
シュウジは「2人で一緒に、遠くへ逃げよう」と、ちせに持ち掛けた。「そんなことしたら、またシュウちゃんを苦しめちゃう」とちせは 反対するが、シュウジは「今度は俺が、ずっとお前を守るから」と言う。同じ頃、ムラセは部下から、「ちせにシステムエラーが起きて います。このまま成長のスピードが加速すると、ちせは自動的に最終迎撃モードに入ります。全てを敵とみなして無差別な攻撃に出る 可能性がある。もう対処法すら思い付かない状態です」と説明を受け、愕然としていた。
ちせとシュウジが小屋で泊まっていると、ムラセが部下を引き連れて乗り込んできた。2人をヘリに乗せたムラセは、「敵国との停戦交渉 が進んでいる。敵の示した条件は、ちせの抹消だ」と告げる。明後日の朝8時までに抹消しなければ、各国の戦術核ミサイルが、ちせを 標的にして日本に一斉に発射されるという。ちせが核ミサイルを感知して最終迎撃モードに入れば、世界は破滅する。「問題を解決する ためには、ちせを抹消するしか方法がない」とムラセは言う…。

監督は須賀大観、原作は高橋しん、脚本は清水友佳子、脚本協力は笠井健夫、企画は森下孝三&黒澤満&坂上順、企画協力は遠藤茂行 (&堀靖樹&小室時恵は間違い)、プロデューサーは北崎広実&松井俊之&竹本克明&伊藤伴雄、製作総指揮は高橋浩、撮影は藤澤順一、 編集は阿部亙英、録音は湯脇房雄、照明は豊見山明長、美術は中澤克巳、VFX監督は野口光一、VFXプロデューサーは氷見武士 (岡野正広は間違い)、音楽は安西実、音楽プロデューサーは藤田昭彦。
主題歌は『すみか』歌:メレンゲ、作詞・作曲:クボケンジ。
挿入歌は『きみのうた』歌:MAYUMI、作詞:大森祥子、原案:高橋しん、作曲・編曲:安西実。
出演は前田亜季、窪塚俊介、伊武雅刀、酒井美紀、渋川清彦、木村了、貫地谷しほり、川久保拓司、二階堂哲、津田寛治、 充吉修介、奥村勲、原田光輝、中森祥文、田中鈴之助、清水一哉、越康広、田崎敏路、本宮憲二、犬橋哲郎、山崎大昇ら。


ビッグコミックスピリッツに連載され、コミックスの累計総発行部数は400万部を突破した高橋しんの同名漫画を基にしている 実写映画。
ちせを前田亜季、シュウジを窪塚俊介、ムラセを伊武雅刀、ふゆみを酒井美紀、テツを渋川清彦、アツシを木村了、アケミを貫地谷しほり、 ナカムラを川久保拓司、中隊長を二階堂哲が演じている。
監督は『ブリスター!』『恋文日和』の須賀大観。

ミスキャストが甚だしい。
前田亜季は、もちろん不細工ではないし、女優としては可愛い部類に入ると思うけど、この映画のヒロインとしては、残念ながら不適合。
もっと「今が旬で、アイドル的に高い人気を誇っている若手女優」が必要なポジションだ。
前田亜季では華やかさやアイドル性に欠けている。
ハッキリ言えば、地味で落ち着きすぎている。

窪塚は、まず冒頭の棒読みナレーションからしてキツい。
ミスキャストというより役者不足。
そして、髪型も含めて見た目が全く高校生じゃない。すげえ老けている。ほとんど先生じゃねえか。
まだ不良役なら、それでも受け入れられたかもしれないが、そうじゃない。シュウジって、もっとナイーヴなところがある役柄のはず。
木村了も役者不足。この2人の芝居の下手さは、冒頭のシークエンスで分かる。
渋川清彦も芝居が下手だよな。怒鳴る時の台詞回しで分かる。

原作は既読だが、正直、“セカイ系”と呼ばれるテイストは、ちとキツいモノもあった。
しかし、そこを突破してしまえば、悲しい愛の物語として、感動的な内容になっているとも感じた。
で、これを映像化するのであれば、その特異な世界観や、説明を思い切って省いたまま進めていくセカイ系のノリに観客が入り込むまでに 、ある程度の時間を必要とするんじゃないかと思った。
セカイ系に慣れ親しんだ人はともかく、そうじゃない人は、そういうのが厳しいだろうからね。

で、この作品だが、そもそも2時間枠の映画でやること自体に無理があったんじゃないかと。
セカイ系に慣れていない人を順応させるには、1時間ぐらいは必要だろう。
でも、そんなに時間を掛けていたら尺が足りないわけで、ってことはセカイ系に慣れさせるための段階を経ないまま、どんどん話を進めて いかなきゃいけなくなる。
おのずと、付いて行けない人が大勢出て来るだろう。
「戦争の道具として、なぜ人間に翼を生やした兵器というものを選んだのか」「ごく普通の女子高生が、なぜ兵器に改造されるのか」 「日本はどの国と戦っているのか」「どういう経緯で戦争が勃発したのか」など、分からないことは幾つもあるが、それは原作も同じ。
そういう作風なのだ。
だから、そこに引っ掛かったら、もう無理。完全に脱落だ。
ちせがウォークマンを持っていたり、プレゼントがカセットテープだったりするが、時代設定も気にしちゃいけない。

ちせが兵器として登場するのは、映画が始まって9分ぐらい。初登場からは5分ぐらいだ。そこまでに、ちせは1度しか姿を見せて いない。
これって、漫画ならともかく、映画だとキツい。
もう少し「普通の学校生活、日常生活」を見せてから、その非日常な世界観に入っていかないとキツい。
あと、ちせの兵器としての姿が、ただ人間の体にハリボテの翼をくっつけただけといった感じで、すげえチープ。
それ以降は、CGを使って触手的なモノが動いたり、変形したりという演出もあるので、ハリボテ感は無いんだけど。

ちせのドジっ子や性格設定を排除して、おとなしいだけのキャラにしてあるのは失敗だろう。
ここ、原作と同じようにドジっ子にするか、もしくは天真爛漫なキャラにでもしておかないと。
「いかにも荒唐無稽な世界観」なんだから、もっと「いかにも漫画チック」なテイストに染めた方がいい。
これを「地に足の着いた恋愛劇」みたいなタッチで演出しようとしても、そりゃ無理だよ。
ちせのキャラ造形が、このセカイに観客を引き入れる大きな力になったと思うんだけど、そこが「ごく普通の、おとなしい女子高生」に なっちゃってるからなあ。
でも前田亜季を起用している時点で、漫画的キャラにする気は無かったってことなんだろう。

ふゆみって、原作だとシュウジの初体験の相手であり、憧れの先輩テツの妻であり、シュウジは彼女に誘われて不倫関係に至るのだが、 映画版だと、その辺りがすっ飛ばされている。
シュウジとテツの関係にはほとんど触れないし、ふゆみに誘惑されて深い関係に落ちることも無い。
申し訳程度に、シュウジが浮気の兆候を示すだけ。
なので、ふゆみの存在意義がすげえ薄い。

「長い原作を、どうやって2時間の映画にするか」ということを丁寧に考えず、原作の断片を集めてダイジェスト状態にしている。 だから、キャラの心情描写の薄いことといったら半端ない。
話の中身も散漫になっている。
アケミは病院で孤独に死んじゃうし、アツシは自衛隊に入ることを決めて去った後は忘れ去られている。
原作を読んでいないと話が掴めないが、原作の熱烈なファンは深い落胆か激しい怒りしか感じないという、とても困った仕上がりになって いる。

大勢の死者が出ているという感覚、戦争で大変なことになっているという感覚は、全く伝わってこない。
それは正直、漫画でも似たようなモンだったけど、漫画だと、それでも何となく成立しちゃうんだよね。
こういう書き方をすると語弊があるかもしれんけど、「セカイ系の漫画だから」ということで、描写の省略が許されてしまう領域って あるのよね。
場面ごとにおけるキャラの心情や表情、言動などによって、「戦争の悲惨さ」を描かなくても、「ご近所感覚の悲劇性」でOKに なっちゃうトコがあるのよ。

とにかく全編に渡って「安い、薄い、寒い」の三拍子が揃っている。
ちせにしろ、シュウジにしろ、全く共感を誘わないんだよね。
感動させるためのドラマ描写が全く足りていないから、たぶん「感動させよう、観客の心を揺り動かそう」という狙いのあるセリフも、 まるで心に響かず、淡々と通り過ぎていく。
全編に渡って、バカバカしさと空々しさしか感じない。

戦争が始まっているのに愛だの恋だのにばかり気持ちを向けているとか、両親が全く登場しないとか、そういう特異な世界観や、キャラの 浮世離れした言動も、とにかく全て「この世界観に観客を巻き込む強引なパワーが決定的に欠けている」というのが、致命的欠陥 だろう。
原作と違って(っていうか原作だと両親も登場するんだけど)、淡々と描くのでなく、そこにはデタラメでもいいから激しいパワーが あった方が良かったんじゃないか。そうでもしないと、この原作を実写化するというのは、「原作を出来る限り忠実に」とか、「原作の テイストをできる限り壊さずに」とか考えても無理だと思う。
だって、いかにも一部のオタクにしか受けない話だもん。
こんなの一般向けじゃねえよ。
もし一般向けの商業映画として考えていたのなら、思い切って原作から逸脱する開き直り、覚悟が必要だった。
しかし、これは中途半端に少しだだけ踏み出している。
だから、原作ファンからも原作を知らない一般の観客からもそっぽを向かれるような、ただ単純につまらない作品になっている。

(観賞日:2010年2月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会