『セーラー服と機関銃』:1981、日本

星泉は女子高生。ある時、彼女の父親が亡くなった。貿易会社の社員だった流志は、海外から戻ってきた際、空港の近くでトレーラーにひかれて事故死したのだ。既に母親は亡くなっており、泉は一人ぼっちになってしまった。
そんな彼女の元を、父の愛人だったマユミという女性が訪れる。父はマユミに手紙を渡しており、自分に何かあった時には泉と一緒に暮らすようマユミに頼んでいた。突然現れた父親の愛人に戸惑いながらも、泉はマユミと暮らし始めた。
ある日、泉の通う高校に目高組の組員達がやって来る。彼らは泉を迎えに来たのだ。彼らの組長は最近亡くなったのだが、自分の甥に後を継がせるよう遺言を残した。その甥が泉の父親で、彼が死んでいるため、その娘である泉に新しい組長になってくれるよう頼みに来たのだ。
もちろん断った泉だが、組員は対立する松の木組に殴り込み、組を解散しようと言い出す。殴り込みを止めるため、泉は組長になることを承諾。しかし佐久間真を始めとして、たった4人しかいない目高組。松の木組は目高組を潰してしまおうと、攻撃を仕掛けてくる。
泉は黒木という刑事に声を掛けられ、喫茶店で話を聞く。泉の父親は事故死ではなく、誰かに突き飛ばされた疑いがあるという。泉の父親はヘロイン密輸に関わっていた可能性が高く、それに絡んで殺されたのではないかというのだ。
さらにマユミを手配写真で見たことがあると告げる黒木。泉が自宅マンションに戻ってみると、室内が荒らされており、マユミの姿は消えていた。一方、目高組では組員のヒコが殺されるという事件が起きていた。しかし松の木組の仕業ではないようだ。
佐久間は“太っちょ”と呼ばれる三大寺組の組長、三大寺一を疑っていた。彼が泉の父親のヘロインを狙って泉のマンションを探したが見つからず、ヒコを拷問してヘロインのありかを聞き出そうとしたのではないかというのだ。
佐久間の元を三大寺の手下、萩原が訪れた。ヘロインを渡す以外に目高組が生き残る道は無いと脅迫する萩原。やがて萩原達の手によって組員の明が殺された。さらに泉が連れ去られ、三大寺に捕らえられてしまう…。

監督は相米慎二、原作は赤川次郎、脚本は田中陽造、製作は角川春樹&多賀英典、プロデューサーは伊地智啓、助監督は森安建雄&榎戸耕史&大谷康之&黒澤清、撮影は仙元誠三、編集は鈴木晄、録音は紅谷愃一&信岡実、照明は熊谷恒一、装飾は浜村幸一&藤井悦男&太田哲&榎本高一&谷口元一、美術は横尾嘉良、衣裳は山田実、音楽は星勝。
主演は薬師丸ひろ子、共演は共演は渡瀬恒彦、風祭ゆき、三國連太郎、柳澤慎吾、林家しん平、寺田農、酒井敏也、岡竜也、光石研、柄本明、北村和夫、佐藤允、藤原釜足、円広志、杉崎昭彦、奥村公延ら。


赤川次郎の原作を映画化。
渡辺典子、原田知世と並ぶ角川三人娘の一人で、当時17才だった薬師丸ひろ子が主演。彼女の主演作で相米慎二監督がメガホンを取るのは、相米監督のデビュー作『翔んだカップル』に続いて2度目となる。

配給収入22億8000万円の大ヒットとなり、1981年の邦画作品では最高の観客動員を記録した。薬師丸ひろ子が初めて主題歌を担当し、こちらもヒット。ただし、映画と同名のタイトルと、歌詞の内容が全く合っていないという、かなり奇妙な歌ではある。

話のリアリティは全く無い。
それは別に構わないが、もっと上手く嘘をついてほしいものだ。
あまりに無茶な展開が多く、しかし強引に突破するだけのスピード感やノリは無い。
やたら長く感じるし、リズムも単調なので退屈になってくる。

かなりモッチャリした展開が続く。ハラハラドキドキは無いし、盛り上げようとする演出も無い。どうやら相米慎二監督、そういうドラマ作りは下手なようだ。イージーリスニングのように淡々と流れる作品が、彼の得意分野なのだろう。

長回しが全て悪いわけではないが、あまりにも無駄にカメラを回している場面が多すぎる。声にエコーを掛けたり、スローモーションを使ったりして、妙にアートっぽい演出を見せている。それが効果を生めば良いが、むしろ娯楽性の邪魔をしている。

拷問を受けて死んだヒコの姿を見てもビビったりせず、いきなり怒って殴り込みに行こうとする泉。普通はビビるだろうし、悲しむだろうと思うが。
で、ヒコの時は全く泣かなかったのに、明が死んだときは泣いている。
同じ組員なんだから、差別するなよ。

“太っちょ”と呼ばれる三大寺を演じるのは三國連太郎。
よって、ちっとも太っちょではない。
三大寺は両足が義足で、怪しい宗教を主宰している。
十字架があるのに、仏像もあるという奇妙な館に住んでいる。
どういう宗教なんだろうか。

で、彼は泉を十字架に張り付けるという珍妙な行動に出る。
さらに、動くとダイナマイトが爆発するという台に乗せるが、仕掛けは不明。
その後、泉に成金マダムのような衣装を着せて一緒に食事をしたリする。
まるで007の悪役のようなキャラクター。
で、なぜか泉を人体解剖しようともする。

セーラー服で機関銃を撃ちまくって、「カ・イ・カ・ン」と言う場面が有名だが、あれはラストシーンではなく、浜口物産に乗り込む場面。
しかし、殴り込むのにセーラー服に着替える意味は無く、ただ「セーラー服と機関銃」という組み合わせの面白さを出すためだけに着替えたのだろう。
必然性は無い。

ハッキリ言って駄作である。
角川の宣伝と薬師丸ひろ子のアイドル人気がヒットをもたらしたと言っていいだろう。
同じような、「トーシロの女が組長になる」という映画なら、井筒和幸監督の『二代目はクリスチャン』の方がよっぽど面白い。

 

*ポンコツ映画愛護協会