『貞子3D2』:2013、日本

安藤孝則と鮎川茜の間に、女児が誕生した。柏田清司の部屋の管理人は、「あの子が産まれた」と呟いた。5年後、1人の女性が電話を受け、相手から「女の子の声がする」と言われる。しかし、部屋には他に誰もいなかった。電話を切った後、彼女は幼女の姿を目撃するが、すぐに消えた。直後、ノートパソコンの画面が異常なバグを起こした。女性はノートパソコンを投げ捨てた後、自分の意思とは異なる力でナイフを手に取った。彼女は自分の腕を制御できず、右目をナイフで突き刺した。
孝則の娘である凪は、ゆうき保育園に通っている。彼女は同じ保育園に通う優菜から苛めを受けるが、まるで反応せずに絵を描き続ける。「ママは迎えに来ないの?死んだの?」と嫌味っぽく告げても反応が無いので、優菜は絵を破り捨てた。凪は無言のまま、彼女を睨んだ。そんな様子を、迎えに来た孝則の妹・楓子が見て困惑する。帰り道に楓子が話し掛けても、凪は何も言わなかった。携帯電話で話しながら歩いている男が前方にいたが、凪は無言で彼に触れた。楓子は男に謝罪し、凪を引き離した。2人が去った直後、男の携帯がバグを起こし、彼は橋から転落死した。
浅川総合病院で警備の仕事をしている孝則は、先輩から携帯電話を持つよう告げられる。凪は楓子から「おにぎりでも作ってあげようか」と言われると、「お母さんの作ったご飯が食べたい」と口にする。楓子は「お母さんはね、もういないんだよ」と告げる。楓子は孝則に電話を掛け、幼稚園での出来事を話そうとする。しかし孝則は凪が食事を取ったことを確認すると、すぐに電話を切ってしまった。凪は楓子のアパートでも、また絵を描いていた。
大学で臨床心理学を学んでいる楓子は、教授の上村文香に凪の絵を見せた。「あの子はお母さんを知りません。産まれた時に亡くなっていて。私なんかが代わりを出来るわけもなくて。だから、こんな絵を」と彼女が語ると、上村は「気にし過ぎよ。貴方、凪ちゃんと自分の境遇を重ね合わせてるんじゃない?貴方も自分の母親を自殺で亡くしている。親を失った子供は、その苦しみから逃げたいがために自分を責めるものなの。貴方は母親のことで、自分を責め続けて生きてる」と述べた。
楓子は授業の間、五十嵐という女性に凪の世話を頼んでいた。凪が無言で不気味な絵を描いているので、五十嵐は「気色悪っ」と漏らす。テレビのニュースでは、柏田の刑が供述の無いまま確定したことが報じられている。幼稚園の課外学習の日、優菜は嫌味っぽい笑みで「なんで凪ちゃんのママ、来てないの?」と凪に告げる。その直後、彼女の携帯電話がバグを起こす。森で園児たちが遊んでいる最中、突如として井戸が出現し、優菜が飲み込まれた。川に入った母親が優菜の遺体を抱いている様子を見た楓子は、それが凪の描いていた絵と全く同じであることに気付いた。
警視庁の垣内貢は、女性の自殺現場へ赴いた。先輩刑事から「大丈夫か、もう少し休んでた方がいいんじゃないのか」と言われた彼は、「いえ、大丈夫です」と告げる。先輩刑事は、「ハサミで自分の目を切って、携帯を叩き割って、ベロを切って自殺した。なんか最近、多いんだよな、変な自殺」と口にする。部屋の窓には、子供の手の跡が無数に残されていた。垣内は先輩刑事に、「呪いの動画って知ってます?」と尋ねる。しかし先輩が「えっ?」と言うと、「いや、いいんです」と話を終わらせた。
五十嵐は用事が出来たので、楓子に早く来るよう電話を掛けてアパートを去ろうとする。電話を切った後、凪がパソコンを触っていたので、五十嵐は怒鳴り付けて取り上げる。その直後、パソコンがバグを起こし、五十嵐は部屋を出て行く。アパートに戻って来た楓子の横に、五十嵐が降って来た。五十嵐は血まみれの状態で起き上がり、楓子の足を掴んだ。楓子は慌てて振りほどき、部屋に逃げ込んだ。すると凪は絵を描いており、小さく笑った。
垣内は刑事の小磯勇吾と会い、「パソコンや携帯の画面で何かを見た人間が自殺する、貴方の担当していた事件と全く同じことが起きています。呪いの動画って何ですか。どうして見た人間は死ぬんですか」と言う。小磯が「貞子。何十年も前に死んだ少女で、人とは違う能力を持っていた。しかし、それ故に恐れられ、生きたまま井戸に捨てられた」と語ると、垣内は呪いの動画との関連性を尋ねる。小磯が「怨念だ」と言うと、彼は「貴方の他に、当時の事件に関わった人間はいませんか」と訊く。「鮎川茜。貞子が肉体を欲した女性だ」と小磯が告げると、垣内は「アンタ、何言ってるか全く分かんねえよ」と声を高ぶらせた。垣内が去った後、小磯の乗っていた車椅子を誰かが押した。小磯は階段から転落し、その現場から幼女が立ち去った。
楓子は上村の元へ凪を連れて行き、1対1で会ってもらう。凪は電車に大勢の人々が集まっている絵を完成させた後、女性の絵を描き出す。「それは誰?」と訊かれた凪は、上村を指差した。描く理由を問われた凪は、「死ぬから」と答える。「貴方は母親のいない寂しさを紛らすために絵を描くのね」と上村が言うと、凪は真っ直ぐに彼女を見据えて「寂しいのは自分。いつも一人ぼっち。仕事に打ち込むのは、その寂しさを紛らわすためなんでしょ」と指摘する。しかし上村が視線を向けると、凪は下を向いて絵を描き続けていた。
凪は上村に「凪が怖い?」と問い掛けた後、「みんな死ぬ」と口にした。上村は楓子の待つ部屋に戻り、平静を装って「いい子じゃない」と告げる。楓子が凪のいる部屋へ行くと、彼女は姿を消していた。地下鉄で携帯を触っていた男は、駅にいる凪に気付いた。列車が出発した後、携帯を触っていた乗客が次々に絶叫して倒れ込んだ。1人の女性は髪が異常に伸び、パニックに陥る他の乗客に襲い掛かった。凪を捜していた楓子は、駅から乗客たちが搬送されて来る様子を見て、凪の絵と同じだと感じる。そこに凪が現れ、楓子の手を掴んだ。楓子は咄嗟に、凪を突き飛ばしてしまった。
楓子は帰宅した孝則に、「お兄ちゃん、分かってるんでしょ。あの子の周りで恐ろしいことばっかり。怖いの、凪が」と訴える。しかし孝則は冷淡な態度で、「怖いのは、そんな狂ったことを言うお前だよ」と告げる。「あの子は何者なの?ホントにお兄ちゃんと茜さんの子供なの」と楓子が詰め寄ると、孝則は突き飛ばして立ち去った。垣内は地下鉄構内の防犯カメラをチェックし、凪の姿に気付いた。その映像は、呪いの動画と化した。
楓子はクローゼットが鉄線で封鎖されているのを見つけ、それを切断する。垣内は仕事中の孝則を訪ね、茜や凪のことを質問する。孝則は「急ぎますので」と告げ、その場を去る。彼が運んでいる黒いゴミ袋の中には、大量の毛髪が入っていた。楓子がクローゼットを開けると、黒いゴミ袋があった。ゴミ袋の中には、「凪は元気か?」という文字で埋め尽くされた手紙が入っていた。それは柏田が孝則に宛てて送った手紙だった。
楓子は刑務所へ赴き、柏田と面会する。柏田は「呪いの動画は見せてもらったの?まだ見せてもらってないんだ。君のこと、気に入ってんのかなあ、凪は」と言う。さらに彼は、「君は救いを求めて、ここに来た。君のお母さんは風呂場で自殺した。本当は君がお母さんを自殺に追いやった。君はお母さんを助けられなかった」と話す。楓子が「凪は何者なの?」と訊くと、彼は「凪は本当に茜の子供なのかな」と口にする。「茜さんじゃなかったら、誰の子供?」と楓子が言うと、柏田は「貞子」と告げた。
柏田は楓子に、「5年前、彼女は絶望の種を地上に撒いた。呪いの動画を使ってね。その種が蕾になり、花を咲かせようとしている。それが貞子の子。僕はその恐怖を終わらせる方法を2つ知ってる。1つ、君が死ね。2つ、その咲こうとしている花を摘め。君が貞子の子を殺すんだよ。でないと恐怖の増殖は止まらない」と語る。刑務所を去った後、楓子は上村からの連絡を受ける。楓子が研究室へ行くと、怪物化した上村が襲って来た。慌てて逃げ出した楓子は、バグを起こしている画面を目にする。その直後、彼女の脳裏に母が自殺した時の映像が飛び込んで来た。「どうして助けてくれないの?」と口にした母は、凪の姿に変貌した。我に返った楓子の左腕には、これまで犠牲となった人々と同じ痣が浮かび上がっていた…。

監督は英勉、原作は鈴木光司『エス』(角川ホラー文庫刊)、脚本は保坂大輔&杉原憲明、エグゼクティブプロデューサーは井上伸一郎、製作は安田猛&永井靖&太田敏郎&岩崎智&原田典佳&中尾公、企画は池田宏之、プロデューサーは小林剛&今安玲子&佐藤満&武井哲、撮影は藤本信成、照明は和田雄二、録音は加来昭彦、美術は中山慎、編集は宮崎努、音楽は川井憲次。
主題歌は東方神起「SCREAM」Lylics by H.U.B Composed & Arranged by hitchhiker。
出演は瀧本美織、瀬戸康史、大沢逸美、平澤宏々路、大西武志、田山涼成、石原さとみ、山本裕典、おぞねせいこ、小柳友貴美、諷加、遠藤瑞季、菊地麻衣、古井榮一、いけだしん、長尾奈奈、山口賢貴、澤山薫、藤澤オリエ、伊東蒼、神農幸、田中雄策、春山怜那、加藤衛、楠美聖寿、竹田哲朗、山口翼、阿河心來、神山心愛、杉本麗奈ら。


2012年の映画『貞子3D』の続編。
前作と同じく鈴木光司の小説『エス』が原作となっているが、内容は大幅に異なっている。
孝則役の瀬戸康史、小磯役の田山涼成、柏田役の山本裕典、茜役の石原さとみ、柏田の部屋の管理人役のおぞねせいこは、前作に引き続いての出演。
楓子を瀧本美織、上村を大沢逸美、凪を平澤宏々路、垣内を大西武志が演じている。
監督は前作に引き続いて英勉。脚本は『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』『ラビット・ホラー3D』の保坂大輔と『アベックパンチ』の杉原憲明。

前作と同様に3D映画として作られており、これまた前作と同様に「飛び出す映像」を強く意識した絵作りが行われている。
また、今回は世界初の試みとして、公開時に「スマ4D」という上映システムが採用された。
これは無料アプリを上映中に起動させることにより、本編と連動した仕掛けが行われるというシステムだ。
例えば、劇中と同じタイミングでスマホが鳴り、相手の声が聞こえて来る。スクリーンを撮影すると、そこに無かったはずの物が写り込む。
他にも様々な仕掛けが用意されている。

ギミック映画と言えば、そのジャンルの帝王と呼ばれたウィリアム・キャッスルが有名だ。彼は『地獄へつゞく部屋』や『13ゴースト』などの映画で、ギミックを用意して観客を楽しませようとした。
キャッスル作品以外にも、『ファンタズム』や『ポリエステル』のようにギミックを使った映画は幾つか存在する。
ただし、ギミック映画に傑作は無いどころか、全てポンコツと断言してもいいのではないか。
なぜなら、「まずギミックありき」になってしまい、ギミックを外すと何も見所が無い作品に仕上がるからだ。

この映画なんかは、3Dという時点で「まずは飛び出す映像」という意識が強くなっている。赤ん坊が目を見開いて黒い霧を吐き出すなど、色々と3Dを意識した映像が盛り込まれている。
それに加えてスマ4Dというギミックを用意しているわけで、そりゃあ「内容はどうでもいい」という仕上がりになるのも当然っちゃあ当然だろう。
シナリオはメチャクチャで、「ホラーとしての面白味を醸し出すための不条理」というレベルを遥かに超えている。
っていうか、そもそも「ホラーとしての不条理」を意識した結果として踏み越えてしまったわけではなく、ただ単にデタラメなだけだ。

前作で茜は、「悲鳴で敵を倒す」という少年ジェットのミラクルボイスなのかと思うような超能力を使って(例えが古すぎるだろ)貞子の分身を全滅させた。
そして孝則がスマートフォンを叩き割ると茜が中の世界から脱出するという、理屈が全く分からない形で全て解決したはずだった。
しかし「何かしらの余韻を残す」というホラー映画の御約束として、井戸から謎の女性が立ち去る様子が最後に描かれた。
今回は、茜は貞子を体内に閉じ込めたまま植物状態になっているのだが、何がどうなってそんなことになったのかは全く説明が無い。
前作の女性が関与しているんだろうけど、繋がりは全く教えてもらえない。

前作で柏田の部屋の管理人は、「作り物?でも、世の中みんな作り物だから」と違和感たっぷりのセリフを何の脈絡も無しに言っていた。
しかし妙に意味ありげなので、何か事情を知っているとか、事件に関係しているとか、そういう設定が後から明らかにされるのかと思っていたが、何も無かった。
そんな管理人は今回、冒頭で登場して「あの子が産まれた」と漏らす。すると室内にある植物の蔓が急に伸びる。
やはり今回も管理人は何か意味ありげで、柏田との面会から去る様子も描かれるが、また謎のままで終わる。

序盤で自分の右目を突き刺すのは垣内の妻の祥子なのだが、それが分かるのは随分と後になってからだ。だから垣内が先輩から「大丈夫か、もう少し休んでた方がいいんじゃないのか」と言われた時も、まだ何のことなのかは分からない。
その関係性を隠しておくことに何か意味があるのか、効果的に作用しているのかと問われたら、答えはノーだ。
むしろ、「妻も死んだので事件について調査している」ってことを早く明かしてしまった方がスッキリする。
ホラーだから謎めいた部分があるのはいいけど、そこの謎は無駄なだけ。

それに、犠牲者が垣内の妻ってことになると、ちょっと整合性に疑問が生じる。
「もう少し休んでた方が」と声を掛けているぐらいだから、先輩は垣内の事情を知っているはず。
それなら、「ハサミで自分の目を切って、携帯を叩き割って、ベロを切って自殺した。なんか最近、多いんだよな、変な自殺」などと無神経なことは言わないだろう。
それと、自分の妻も同様の死に方をしているんだから、そういう人間に捜査を担当させるのも避けると思うぞ。

祥子は食卓に皿やグラスを並べ、その隣でノートパソコンを触っている。だから、パソコンを捨てた後、都合良く隣にあるナイフを手に取るという手順を消化することが出来ている。
そんな祥子は、なぜか夜なのに照明を付けずに生活している。
それは彼女だけでなく、楓子も照明を付けずに薄暗い中で生活している。
後から「実はこういう理由で」みたいな説明でもあればともかく、何も無いので、ただワケが分からないだけである。

祥子が「自分の腕を制御できず、右目を突き刺す」という残虐でケレン味のある死に方になっているのだから、それ以降も犠牲者が出るシーンは全て同様の飾り付けを施せば、「残虐殺人ショー」としての面白味は生じただろう。
しかし、次に犠牲となる男は、ただ単に橋から飛び降りるだけ。
その時の「自分の意思じゃないのに、なぜなのか」という表情さえ見せない雑な処理だ。
地下鉄のシーンはケレン味が少しは感じられるが、小磯の時は淡白だし、そういうトコに全く神経が行っていなかったのね。

凪は優菜からイジメを受けても、何も喋らず、何の反応も示さない。楓子が話し掛けても、やはり無言を貫いている。
だから、「ずっと何も喋らないけど、あるタイミングで重要な意味を持つような台詞だけを喋る」という形にしてあるのかと思いきや、楓子から「おにぎりでも作ってあげようか」と言われると、「お母さんの作ったご飯が食べたい」という言葉を喋る。
あっさりと喋っちゃうのかよ。
そんなインパクトの無い台詞が第一声なら、そこまで無言キャラを引っ張った意味が無いわ。

優菜が死亡するシーンは、何がどうなったのか良く分からない。井戸に飲み込まれた後、楓子が浴槽に湯を溜めている映像が挿入され、カットが切り替わると母親が川に入って優菜を抱いているのだ。
たぶん「川で溺死した状態で優菜が発見された」ってことなんだろうけど、繋がりがメチャクチャでツギハギ状態になっている。
そもそも、今までは携帯がバグを起こした直後に持ち主が犠牲になっていたのに、なんで今回だけは、森へ移動して“かごめかごめ”で遊ぶという手順が入るのよ。
そもそも、園児たちだけで森の奥へ行くことを許している保育園が変だし、わざわざ森へ移動して“かごめかごめ”をやる園児たちも変だわ。

その後、楓子が風呂を沸かしている様子が写し出され、浴槽の中に血まみれの女が現れたので動揺し、カットが切り替わるとテーブルに突っ伏して寝ていた楓子が目を覚ますという様子が描かれるのも、無駄にゴチャゴチャしていると感じる。
どこからが夢なのかも良く分からないし。
その後には、「帰宅した楓子が凪を恐れて寝室に逃げ込み、凪が激しくドアを叩き、ベッドの下に隠れていたら怪物化した凪が入って来るので楓子が悲鳴を上げる」→「それは幻覚で、楓子が正気に戻ると孝則が来ている。孝則は優しい言葉を掛けるけど、突如として怪物化して襲い掛かるので楓子が悲鳴を上げる」→「それも彼女の夢」というシーンもある。
だけど、そういう肩透かしでコケ脅しをやる演出って、面白くも何ともないからね。

五十嵐は用事で出掛けることを楓子に告げて電話を切った後、凪がパソコンを使っているのに気付いて取り上げる。
でも、それを持って立ち去ろうとするってことは、それは五十嵐のパソコンってことだよね。もう帰る準備をしていたのに、なんでパソコンだけは最後まで出しっ放しにしていたんだよ。しかも起動した状態で。
そもそも、凪の面倒を見る仕事にパソコンを持参している時点で違和感があるし。
あと、パソコンがバグを起こした時、怯えて閉じるってのも反応として不可解。なぜ「バグが起きたか直そう」という思考にならないのか。なぜバグを見ただけで怯えるのか。

五十嵐がアパートから地面に転落しても死亡せず、楓子に襲い掛かるってのは、余計なことをやっていると感じる。どうせ「そのシーンで観客をビビらせる」ということしか考えていなかったんだろうけど、それまでの犠牲者との整合性が取れない。
観客を怖がらせるための演出は、もちろんホラー映画だから必要だけど、そのためにルール無用にしちゃダメ。
あと、楓子が逃げた後、五十嵐はどうなったのか。たぶん死んだってことなんだろうけど、どっちにしろ警察が動くはずなのに、その気配が無い。
ってことは、楓子は通報していないのか。だとしても死体が発見されたら警察は動くはずだから、死体が消えたのか。だとしたら、それを楓子は不思議に思わないのか。
五十嵐がどうなったにせよ、何らかの疑問は残るぞ。

垣内は刑事の小磯勇吾を呼び出し、呪いの動画について質問する。ところが小磯が「貞子。何十年も前に死んだ少女で、人とは違う能力を持っていた。しかし、それ故に恐れられ、生きたまま井戸に捨てられた」とか「鮎川茜。貞子が肉体を欲した女性だ」などと説明すると、「アンタ、何言ってるか全く分かんねえよ」と腹を立てる。
いやいや、わざわざテメエから呼び出して質問しておいて、その態度は無いだろ。
しかも、何を言ってるのかは良く分かるぞ。
「異常な内容なので素直に受け入れられない」ということを表現しようとしているんだろうってことは分かるけど、ちょっとギクシャクしたキャラの動かし方になっちゃってるぞ。

地下鉄の事件では、携帯を見ていた乗客が次々に倒れて行く中、1人の女性だけは髪が伸びて暴れ出す。
そうなると、「呪いの動画を見た人間は死ぬ」というルールがブレちゃうでしょうに。
それと、そうやって貞子チックになった女に暴れさせると、搬送されて来る人々が呪いの動画で倒れたのか、そいつに襲われたのか、どっちの被害者なのか良く分からなくなっちゃうし。
あと、怪物が暴れたら、それを目撃して生き残った乗客もいるわけで、「犯人はそいつ」という証言も警察は入手するはず。そうなると、「警察はその女を捜索する」という流れも生じるはずだけど、そんな様子は全く無いのよね。

孝則が真相を隠しているのは分かるけど、それにしても楓子から「あの子の周りで恐ろしいことばっかり。怖いの、凪が」と言われた時の「怖いのは、そんな狂ったことを言うお前だよ」と告げる態度は冷たすぎるだろ。
そもそも、凪を任せていることに対しても、危険を孕んだ真実を隠していることに対しても、申し訳なさそうな態度が皆無だし。
妹まで巻き込んで、自分のせいで怖がっているのに、それに対する苦悩や葛藤も全く感じていない様子だし。
妹が母の自殺に罪悪感を抱いているのに、それに対する配慮も皆無だし。

孝則がクローゼットに鉄線を巻いて封鎖しているのは、ものすごく愚かしい行動だ。
そもそも、本人がクローゼットを開けたくないのなら、開けなければいいだけだ。
そこに入っている手紙を誰にも見せたくないのなら、処分すればいいだけだ。それをクローゼットに残しておいて、鉄線で封鎖するなんて、むしろ「開けて見て下さい」と言っているようなモンじゃねえか。
もうね、こいつが何をしたいんだか、サッパリ分からんよ。どんだけアホなのかと。

楓子は刑務所へ行くのだが、そんなに簡単に死刑囚と面会できるものではない。死刑囚の承認を貰うために、事前の手続きが必要なはず。
まあ、そこはさすがに「映画の嘘」として受け入れるにしても、刑務所も薄暗いってのは何なのかと。しかも、なぜか柏田には看守が付いていないし。
その後、上村が怪物化する展開があるが、またルールを逸脱しちゃうのね。
凪は「死ぬ」と予言していたのに、死ぬんじゃなくて怪物化するのかよ。怪物化する奴と死ぬ奴の違いって何なのよ。

上村に襲われた直後、楓子は呪いの動画を見る。垣内は防犯カメラをチェックするが、それが呪いの動画になっている。
ところが、この2人、呪いの動画を見た後も、かなり長きに渡って生き続けている。
これまでの連中は呪いの動画を見た直後に死んでいるのに、そこもルールが適用されない連中が出現しているってことになるでしょ。
ストーリーの都合に合わせて、コロコロとルールを変えるのね。

楓子が吊り橋から凪を投げ捨てて殺そうとすると、凪が泣き出して「凪のこと嫌い?どうしてみんな凪が怖いの?ママに会いたい。怖いの。みんなが死んじゃうのが見えるの。お姉ちゃん、助けて」と訴える。
だったら最初から、そう言って助けを求めりゃ良かったじゃねえか。
彼女を寡黙&無表情で不気味な存在にしてあるのは、もちろん「凪が犯人かもしれない」というミスリードを狙うためなんだろう。
だけど、そのせいで凪が助けを求めた時に「急にキャラが変わってんじゃねえか」と思わせたらダメでしょ。

楓子が凪を助けると決めた後、孝則は病院の地下室で茜が生きていることを明かす。
5年も植物状態なのに茜の容姿に衰弱が見えないのは「貞子の力によるもの」と強引に解釈するにしても、ちゃんとした設備を使って植物状態の茜を生存させるのに、孝則だけの力じゃ絶対に無理でしょ。
病院の設備を使っているんだし、栄養分を摂取させる必要もあるし、病院の上の方の人間が協力していなきゃ無理でしょ。
でも、病院の人間が協力しているという様子は全く無いんだよね。

凪がママに会いたいと訴えると、楓子は何の迷いも無く茜の元へ連れて行く。
彼女が全く事情を知らないのであれば、「娘を母に会わせてあげたい」という気持ちで行動するのは理解できる。
しかし、その直前、彼女は孝則から「茜が凪と会えば貞子が復活する。それを防ぐために茜は娘から離れざるを得なかった」と説明を受けている。
それなのに平然と茜の元へ連れて行くのは、アホすぎるだろ。貞子を復活させたいのかよ。

「呪いの動画は凪の仕業じゃない」と孝則が断言し、「じゃあ誰が?」と楓子は考えるが、その答えは最後まで明かされないままだ。
ホラー映画だから、ある程度は謎を残したままでも構わない。でも、そこは放置したままでもOKというラインを超えている。
そこは楓子台詞を使ってまで「誰が本当の犯人なのか」という問い掛けをやったわけだから、ちゃんと答えを出すべきポイントだろう。
放置したまま終わらせてしまうなら、せめて台詞を使って観客に「犯人は誰なのか」を意識させるのは避けなきゃダメでしょ。そうしたら、上手くすれば観客には気付かれずに済んだかもしれないのに(っていうか、真犯人を明かさない時点でホントはアウトだけど)。

管理人が柏田と面会しているので、この2人による仕業という可能性も考えられる。しかし、そうだとすると矛盾が生じる。
柏田は楓子に、「凪は貞子の子供であり、恐怖を終わらせたければ始末すべきだ」と告げている。柏田のキャラ造形がレクター博士の安っぽい模倣であることは置いておくとして、その助言に応じて楓子が行動した場合、凪は死ぬことになる。
しかし、もしも呪いの動画を拡散させたのが柏田&管理人の仕業だとすると貞子の復活を目論んでのことであり、それなら貞子復活の鍵になる凪を殺すってのは筋が通らない。
結局、真犯人は謎のままだ。
まさか、3作目に向けて引っ張ろうという企みだったりするのか。だとしたら、安い企みだこと。

前作は貞子が便所コオロギのような形状に変貌するという展開があったものの、滑稽さを含有したキャラとしての扱いは中途半端だった。
そういう開き直りの無さは今回も健在だ。
っていうか前作より増しており、貞子がほとんど出て来ないという内容に仕上がっている。
だが、もはや貞子がマスコット・キャラクター化しているんだし、「貞子が荒唐無稽に大暴れする」という方向性で作るぐらいしか手が無いんじゃないかと思うんだけどね。

(観賞日:2015年3月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会