『貞子3D』:2012、日本

バス停留所のベンチに座ってノートパソコンを開いたサラリーマンは、顔を引きつらせて震え上がった。その直後、どこからか「お前じゃない」という女の声が聞こえてきた。道路に歩み出た彼は、走って来たバスにひかれて死んだ。刑事の小磯勇吾は部下の中村正彦から、目撃者の証言について説明を受ける。中村が「自殺ですね」と言うと、小磯は「多すぎないか。今週で何件目だ」と口にした。中村は、男がパソコンで動画を再生していたらしいと述べ、呪いの動画の噂を口にする。ネットで話題になっており、見た人は呪いに掛かって自殺するというのだ。だが、小磯は「ちゃんと足で捜査しろ」と相手にしない。
女子高の授業中、生徒の森崎典子はスマートフォンで呪いの動画を探し、親友の北山理沙に「人が動画の中で死んじゃうらしいの。それを見た人も呪いに掛かって死んじゃうの」と楽しそうに言う。しかし動画のリンクをクリックしてみると、「404 NOT FOUND」と表示される。ようやく動画を見つけ出したところで、教師の鮎川茜に注意される。みんなが注目する中で茜が再生すると、カタツムリの映像と「のろいのどうだ?」という文字が表示された。偽物だったのだ。
茜は電源を切り、「放課後、取りに来て」と言ってスマートフォンを預かった。放課後、茜が職員室にいると、預かったスマートフォンのバイブ機能が作動して「404 NOT FOUND」の画面が表示される。電源を切っていたはずなので不思議に思うが、茜は取りに来た典子にスマートフォンを返した。茜が帰宅すると、同棲中の恋人・安藤孝則の後輩である榎木が来ていた。彼はパソコンで呪いの動画を探しており、「単なる噂じゃないんですよ」と口にした。
榎木は「ニコニコ動画の生放送ってあるじゃないですか。あれで公開自殺した奴がいて。ニコ動の管理者が、その直後に自殺。しかも、生放送を見た奴も自殺して、まさに呪いの動画。誰かが保存してたのか、今もゲリラ的にアップされてるらしいんです」と語る。彼は動画のリンクを見つけるが、「404 NOT FOUND」だった。典子が自分の部屋にいると、「お前じゃない」という声がした。スマートフォンに近付くと、画面から腕が伸びて彼女を掴んだ。典子は窓に叩き付けられ、ガラスを突き破って転落死した。
茜は電話で典子の死を聞き、激しく狼狽する。彼女が過呼吸になっていると、ポルターガイスト現象が起きた。翌朝、茜は学校で典子の死をクラスメイトに告げる。彼女は小磯から事情聴取を受け、「本当に自殺なんでしょうか」と尋ねる。小磯は「実は彼女、携帯電話を持ったまま窓ガラスを突き破っています。おかしいですよねえ。死ぬ直前まで何か動画を見ていたらしいんです」と話した。
茜は理沙から「どうして典子は死んだんですか。自殺なんかするはずないです。誰かに殺されたんじゃ。呪いの動画を見たんじゃないかな。それで呪いが掛かって」と聞かされる。その会話を、小磯が密かに聞いていた。小磯は中村に電話を掛け、呪いの動画の出所を調べるよう指示した。彼が警察署に戻ると、中村は「呪いの動画はマジです。ニコニコ動画に行って来たんですけど、生放送を見た人間は本当に死んでます。噂の発端は10日前の生放送だったんです。監視していたニコニコ動画の管理者が放送直後に自殺してます。それで、生放送を見ていた5人が全く同じ時刻に死んでいます」と説明した。
茜は孝則に頼んで榎木を呼んでもらい、呪いの動画に関する情報を尋ねる。生放送では男が公開自殺したという噂だが、サーバーに保存されているはずの動画のデータがニコニコ動画には残っていないのだという。中村は小磯に、放送後の10日間で、全国で似たような不審な自殺が20件以上も起きていることを語った。最初の生放送を流したのは柏田清司という男だった。小磯と中村は、彼の部屋に赴いた。管理人によれば、彼はおとなしい人物で、特にトラブルは無かったという。
柏田は全寮制の優秀な高校に通っていたが、両親が死んで自主退学した。ネット上では有名で、エアブラシアートなどをネットにアップしているアーティストだった。少し前に他のアーティストを批判したことが原因で、バッシングを浴びていた。その後、彼は公開自殺している。中村が「やっぱり全ては柏田の呪いのせい……」と呟くと、小磯は「お前は本当に単純だなあ。柏田は生きてるよ。死体が無いんだから。ただ、何をしようとしていたのか」と述べた。小磯は部屋を出て行く時、妙な物音を耳にした。
放課後、理沙は部活に顔を出さず、自習室で呪いの動画を探す。茜は理沙のことが気になり、他の生徒に尋ねて自習室へ向かう。理沙が見ていた「404 NOT FOUND」のモニターが髪の毛に覆われ、真っ黒になった。それから画面が切り替わり、どこかの部屋で椅子に腰掛けている柏田の姿が写し出された。彼は画面に向かって「さあ、始めよう」と言い、「僕を排除した世間の奴らに復讐する!彼女が復活したら、みんな終わりだ。Sは人間を全て排除する」と不敵に笑った。
柏田は自分の首を絞め、苦悶の表情を浮かべる。その体は、空中に浮き上がった。いつの間にか画面には髪の長い女が出現し、柏田の首を掴んで彼を持ち上げていた。女の姿が消え、柏田が床に倒れ込んだところで画面が消えた。突然、画面から長い髪が飛び出し、理沙の首に巻き付いた。その髪の持ち主である女が画面から這い出そうとしているところへ、茜がやって来た。茜が悲鳴を上げるとモニターが割れ、女は姿を消した。理沙は「来ないで、先生がやったんでしょ」と茜を怖がって逃げ出した。
理沙が病院に運び込まれ、茜は小磯と中村から事情説明を受ける。茜は強張った表情で「分かりません」と告げる。小磯が柏田の写真を見せて「知りませんか」と尋ねると、彼女は「いえ」と述べた。帰宅した茜は、孝則に「パソコンの中から髪の長い人が出て来て襲ってきた。あれ、サブリミナルとかじゃなくて、この世の物じゃなかった。きっと森崎さんも、あの動画のせいで死んだんだと思う。お願い、もうパソコンとか使わないで」と語った。
孝則が「分かった。でも呪いの動画とか嘘なんだな。だって、茜はちゃんと生きてる」と微笑すると、茜は沈んだ表情で小学校時代を短く回想する。小学生の頃、彼女は悲鳴を上げて学校のガラスを割ったことがあった。翌日、茜は榎木からの電話で、「新情報が入ったんです。「動画は、誰かを捜してるらしいんですよ。動画を見た後、お前じゃないっていう声が聞こえるらしいんです」と聞かされた。
茜が電話を切った直後、学校で停電が起きた。茜がパソコンルームに行くと、全てのモニターに「404 NOT FOUND」が表示されている。茜はバニック状態に陥り、生徒たちに「みんな逃げて!」と喚いた。男性教師が「ただの停電ですよ」と茜を落ち着かせる。茜は教頭から注意を受け、「北山さんのことも心配しています。先生を怖がっているんじゃないですか。とりあえず一度休んでください」と言われる。帰宅途中、茜は大型スクリーンから大量の髪が襲ってくる幻覚を目にした。
孝則は帰宅した茜を元気付け、自分の部屋に入った。するとパソコンの電源が勝手に入り、呪いの動画が再生された。柏田の声を耳にして部屋に入って来た茜は、孝則に「早く消して!」と叫ぶ。孝則はキーボードを適当に叩くが、動画は消えない。モニターから出現した女は、孝則を弾き飛ばした。彼女は茜を捕まえ、モニターに引きずり込もうとする。孝則が茜に駆け寄り、女を引き離した。女は「お前だ」と言い、茜に腕を伸ばす。茜が悲鳴を上げると、モニターが割れて女は消えた。
茜と孝則は家を飛び出し、しばらく走って息を整えた。そこに、古本と中古DVDショップの店頭に置かれている12のモニターの前だった。するとモニターに12人の女が出現し、外へ這い出そうとする。茜と孝則は逃走し、今度は側面にディスプレイを設置した宣伝トラックの前で立ち止まった。トラックの運転手がエンジンを掛けると、ディスプレイに巨大な女が出現し、孝則を引きずり込んで消えた。
警察署を訪れた茜は、小学校時代を回想する。ある日、学校にカッターナイフを持った精神異常者が乱入した。生徒たちが逃げ惑う中、茜が悲鳴を上げると廊下のガラスが割れ、犯人は吹き飛んで倒れた。犯人を撃退した茜だが、その能力を気味悪がったクラスメイトからイジメを受けるようになった。飛び降り自殺を図ろうとした茜だが、同級生だった孝則だけは優しく声を掛けてくれた。
茜は小磯に事情説明してトラックを調べてもらうが、不審な点は無かったという結果だった。茜が「呪いの動画は本当です。あの動画は生きていて、移動しているんです。動画から出て来た髪の長い女が動画を操っています」と訴えると、小磯は呆れながら「動画から出て来て人を殺したりさらったりする女がいたとしてだ、柏田はどうやってそんな化け物を作って、何をやろうとしてる?」と尋ねる。茜は「動画の中で柏田が言っていました。Sの復活。たぶん、あの女を復活させようとしているんです」と説明した。
小磯が「柏田は、その化け物のエサのために動画を使って人を殺してるってことか」と訊くと、茜は「いえ、きっと器を探してるんだと思います。あの女はまだ実体を持っていないんです。だから柏田が女に合った器を探すために動画を作ったんだと思います。それが、私」と述べる。だが、小磯は「俺には分からん」と顔をしかめた。小磯がデスクに戻ると、そこへ中村がやって来た。だが、中村の顔は長い髪に覆われていた。彼は「俺、見ちゃった。ホントでした。呪いの動画」と言い、拳銃で自殺した。
帰路に就いた茜の前に榎木が現れ、「遅いよ。孝則さんを捜しに行かないの?」と高笑いを浮かべた。彼は「孝則さんが戻って来なくてもいいの?死んじゃうよ」「のんびりしてると、他のみんな死んじゃうよ。次ね、入院してる、理沙ちゃんっていう生徒らしいよ」と嘲笑い、その場から逃走した。茜は後を追うが、見失ってしまう。「こっち」という声で振り向くと、榎木が首を吊って死んでいた。
柏田の部屋を訪れた小磯は、壁の模様が気になった。触れてみると、それは模様ではなく、真っ白の蝶が何匹も張り付いていたのだった。蝶が一斉に飛び去った後、小磯は壁を埋め尽くすように記されている柏田の文字を目にする。それは柏田が貞子の復活計画を記したものだった。彼は貞子を復活させるため、何人もの女性を拉致して殺害した。そして貞子の遺棄された古井戸に放り込み、彼女に捧げていた。茜は病院へ駆け付け、貞子に墜落死させられそうになっていた理沙を救出する。茜は小磯と共に、古井戸へ向かった…。

監督は英勉、原作は鈴木光司 『エス』(角川書店刊)、脚本は藤岡美暢&英勉、脚本協力は伊藤和典&藤平久子、製作は椎名保&[竹かんむりに旗]啓祝&内藤静治&松世弘&山道秀樹&武本慎一郎、エグゼクティブプロデューサーは井上伸一郎、企画は池田宏之、プロジェクト統括は安田猛、プロデューサーは小林剛&今安玲子&佐藤満、撮影は藤本信成、照明は和田雄二、録音は加来昭彦、美術は原田恭明、編集は阿部亙英、音響効果は柴崎憲治、音楽は川井憲次。
主題歌はシド『S』作詞:マオ、作曲:御恵明希、演奏:シド。
出演は石原さとみ、瀬戸康史、田山涼成、山本裕典、橋本愛、高橋努、染谷将太、高良光莉、喜多陽子、平祐奈、鈴木宗太郎、おぞねせいこ、中山克己、清水宏、井手規愛、中島真一、Velo武田、叶雅貴、川本直人、二木咲子、辻本修作、伊藤俊輔、中井愛梨、高木正晃、那奈、市瀬治尚、佳代、伊藤梨沙子、團遥香、佐倉美貴、市村望、岸紗保莉、黒木未有、榊夏海、鈴野里奈、長谷川美月、吉田美里、渡邊彩乃、楠本奈美、野貴葵、渥美えりか、小川智子ら。


『リング』シリーズの第5作に当たる作品。
鈴木光司の書き下ろし小説『エス』を原作としているが、内容は全く違ったものになっている。
茜を石原さとみ、孝則を瀬戸康史、小磯を田山涼成、柏田を山本裕典、最後に登場する貞子を橋本愛、中村を高橋努、榎木を染谷将太、理沙を高良光莉、典子を喜多陽子、中学時代の茜を平祐奈が演じている。
監督は『ハンサム★スーツ』『高校デビュー』の英勉。
脚本は『富江 最終章 〜禁断の果実〜』『ボディ・ジャック』の藤岡美暢と英勉監督による共同。

茜の恋人は安藤孝則という名前だが、こいつは『らせん』に登場した安藤満男の息子である。厳密に言うと、安藤の息子は事故死しており、その毛髪を使って貞子の力によって作り出されたクローン人間だ。
でも、シリーズの熱烈なファンじゃないと、『らせん』との繋がりには気付かないだろう。
しかも、安藤の息子であり、貞子が母親のような存在であるということは、この映画では全く意味のあるものとして使われていない。
原作から名前だけを拝借した結果、「安藤孝則」という名前の持つ意味が消えてしまったのだ。

続編3本はともかくとして、少なくとも第1作の『リング』に関しては、「何かがそこにいる」という雰囲気でゾクゾクさせようとする演出になっていた。
また、貞子だけを恐怖の対象とするのではなく、「呪いの伝染」というところに恐怖を感じさせるような作りになっていた。
そんな『リング』を始めとして、主に一瀬隆重プロデューサーが携わったJ−ホラーは大きなムーブメントを巻き起こし、その作風はハリウッドにも影響を与えるほどだった。

既にJ−ホラーのブームが終焉を迎えている中で、製作サイドは『リング』シリーズを復活させた。
ただし、そこで彼らは、かつての「J−ホラー」を感じさせるようなテイストを受け継ぐのではなく、まるで異なるアプローチで新たな作品を生み出した。
きっと彼らは、「貞子を登場させて、今までのようなテイストで普通にホラー映画を作っても、たぶん観客を怖がらない」と考えたのだろう。

そこで製作サイドがどういうアプローチをしたのかというと、貞子というキャラクターを前面に押し出し、スラッシャー映画、もしくはショッカー映画として作るというやり方を選択した。
「ジワジワと怖がらせる」という手法を完全に放棄し、「ドーン」という音を出して怖がらせるという手法を多用した。
とにかく「ドーン」だらけで、その音で怖がらせようというやり方だ。
ただし、だんだん「ドーン」の鳴るタイミングも分かるようになってくる。

さらに3D映画ということで、「飛び出す映像」を意識した絵作りが顕著に見られる。
冒頭、柏田が殺した女を井戸へ落とすシーンからして、画面のこちら側へ女が落ちて来るという、明らかに「飛び出す映像」を意識した作りになっている。
ガラスが割れるシーンが何度も登場するが、これも「ガラスの破片が飛び散るのを3D映像を見せよう」ということだ。
そして何より、画面から貞子の髪の毛や腕が飛び出すというシーン。
ようするに製作サイドは、「飛び出す貞子」ってのをやりたかったんだろう。『13日の金曜日PART3』や『ジョーズ3』と、基本的な考え方は一緒だ。

この映画の公開前、貞子に扮した女性がプロ野球の始球式に登場したり、大勢の貞子が渋谷の街を歩いたりというプロモーション活動が行われた。
もはや、そんな風に存在をアピールしているキャラクターに、「不気味さ」を感じることは難しい。
ほとんどマスコットキャラのような扱いなのだ。
最初は恐怖の対象だった『13日の金曜日』のジェイソン・ヴォーヒーズや『エルム街の悪夢』のフレディー・クルーガーが、シリーズが続く中で滑稽さを含有したキャラへ変貌していったことを見習ったのか、製作サイドは、貞子を「怖くないキャラクター」に仕立て上げたのである。

ホラーというのはコメディーと紙一重であり、過剰に表現して見たり、少しズラしてみたりするだけで、ホラー映画は笑いを生み出す。
で、だったらスパッと割り切って、純粋に怖がらせることは諦め、「バカバカしさを突き詰め、突き抜けたせいで笑えるモノに昇華した作品」として作ってしまえばいいものを、そこまでの潔さは無いんだよね。
開き直りが中途半端なせいで、単なるヌルいホラー映画になっている。
怖くないだけでなく、笑えるホラーにもなっていない。
まあ嘲笑や冷笑は誘うかもしれないけどさ。

柏田はネットでは有名な画家であり、炎上事件も起こしていたという設定だ。
ところが、そんな人物であるにも関わらず、ニコニコ動画の生放送を見ていたのは、たったの5人。
どういうことだよ。
で、まさか「バッシングを受けただけで逆恨みして」というチンケな理由による犯行なのかと思ったら、ホントに「僕を排除した世間の奴らに復讐する!」とか言い出している。
そんなチンケな奴の犯行に、貞子が利用されちゃってんのかよ。

柏田の部屋を訪れた小磯が「変わった部屋ですね。何かが足りない。いや、なんだか作り物のような」と言うが、特にそうは感じなかったけどな。
まあ家電が全く見当たらないのは変わってるなあと思ったけどさ。
で、管理人が「作り物?でも、世の中みんな作り物だから」と言うが、すげえ違和感のあるセリフだな。
こいつが何か知ってるとか、事件に関係しているとか、そういうことならともかく、そうじゃなくて、単なる管理人に過ぎないのに、そこだけ急に意味ありげなセリフを吐くのだ。

茜が悲鳴を上げるとモニターが割れて貞子が消えるというシーンが、何度も用意されている。
ようするに、茜は超能力者という設定なのだ。
超能力を持つ女性と殺人鬼の対決って、もはや完全に『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』へ寄せていっているよね。
『13日の金曜日 PART7 新しい恐怖』『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』で超能力者のヒロインが登場しているよね。

茜と孝則は家から飛び出した後、古本と中古DVDショップの店頭に置かれているモニターの前で休憩する。
で、モニターから貞子が出現する。
次は、ディスプレイを設置したトラックの前で休憩する。で、ディスプレイから貞子が出現する。
なんで、よりによってモニターやディスプレイの前でばかり休憩するんだよ。
ディスプレイやモニターなんて、そんなに町のあちこちにあるわけでもないだろ。

あと、なんで貞子は孝則を連れ去るんだよ。器として使いたいのは茜なんだろうに。
「超能力で撃退されちゃうから」ということかもしれんけど、孝則を拉致したところで、古井戸へ茜が来てくれるとは限らんぞ。茜を古井戸へおびき寄せたいのなら、それなりの罠を仕掛けないと意味が無いぞ。
で、茜は孝則が拉致された後、小磯に「器を探してるんだと思います。あの女はまだ実体を持っていないんです」と語っているけど、実体は無いのに、普通に典子や孝則の腕を掴んでいるのね。
それって「実体」じゃないのか。

さて、「貞子の長い髪に覆われて襲われている」という姿のはずが、実際には貞子のヅラを被っているようにしか見えない中村のマヌケな拳銃自殺などもありつつ、場面は古井戸のある廃墟へと移る。
ここで井戸から貞子が出現するんだが、まるで巨大な便所コオロギの如き姿をしている。
貞子って、「人間の姿をしているけど、動きが人間っぽくない」というところに不気味さがあったはずなんだけど。
今回は完全に、人間とは異なる姿をしたモンスターになっているのね。

そんな便所コオロギ貞子は、壁に引っ掛かって出られなくなるとか、棒で殴られただけで倒されるとか、愉快な姿をさらす。
ちなみに、貞子が消える時は無数の黒い蝶が飛び去るのだが、壁の真っ白な蝶と共に、どういうことなのかは良く分からない。たぶん飛び出す無数の蝶を見せたかっただけだろう。
で、貞子が数を増やし、何十匹も現れたところで、茜は悲鳴を上げる。すると、1匹を残して貞子は全滅。
だったら、茜は最初からその力を使えば良かったんじゃないのか。
最後は孝則がスマートフォンを石(なぜか都合良く近くに落ちている)で叩き割ると、その中の世界に引きずり込まれていた茜が戻って来る。なぜ携帯を破壊すると戻れるのかは、全く分からない。

(観賞日:2012年11月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会