『呪怨2』:2003、日本

ホラークイーンの異名を持つ女優・原瀬京子は、婚約者・石倉将志の車で自宅へ送ってもらう。カーラジオの調子が悪くなると、彼女は 「いいから止めてよ」と不機嫌そうに言う。「今日はどんな番組だったんだ」と将志に訊かれ、「心霊番組のゲストなんて。いつから私が ホラークイーンになったわけ?」と彼女は不満そうに言った。将志は「ウチのお袋なんて、お前の出てる番組、ぜんぶチェックしてるぜ」 と告げ、彼女をなだめる。
京子は妊娠しているが、まだ事務所には話していなかった。「もし式の日取りまで決めたんだし」と将志が言うと、京子は「分かってる」 と声を荒げる。突如、何かの激突音がした。将志は「なんか跳ねたかも」と口にして、車を停める。車を降りた彼は、猫が死んでいるのを 発見した。死体を放置し、将志は車に戻って出発した。しばらく走っていると、2人は少年の幽霊・俊雄がハンドルの死体にいるのを目撃 した。将志は動転して運転を誤り、道を外れて事故を起こす。フロントガラスに幾つもの手形が付く中、京子が意識を取り戻すと、将志は 額から出血して気を失っている。京子も怪我を負って流産し、悲鳴を上げた。
[京子]
京子は入院せずに済んだが、将志は意識不明となった。将志の母・薫は京子に「ごめんなさいね、貴方の赤ちゃん」と言って泣き崩れた。 京子が将志の病室に入ろうとすると、俊雄が現れて制止するが、すぐに姿を消した。京子は主演映画の撮影現場に入った。撮影の途中、 エキストラとして参加していた女子高生・千春が、セリフには無かった悲鳴を上げた。千春は異様に怯えた表情で京子の腹部を見つめ、 失神してしまう。病院を訪れた京子は、妊娠3ヶ月だと告げられて驚いた。
実家に戻った京子は母・亜紀に妊娠のことを話そうとするが、言い出せなかった。しばらく自室で佇んだ京子は、居間へ向かう。コタツで 眠っている亜紀の元へ行った京子は、開いていた窓を閉めようとする。すると、コタツに座っている俊雄の姿が窓に写っていた。母に声を 掛けて起こそうとすると、コタツの中に俊雄の姿があった。京子は母の体を揺さぶるが、反応が無い。亜紀は死んでいた。
[朋香]
夜、マンションの部屋にいたタレントの三浦朋香は、何度も壁を叩く物音を耳にした。翌日、楽屋でヘアメイクの大林恵と会った彼女は、 レポーターとして出演するシリーズ特番のことを話す。「今度のゲストって誰か聞いてる?」と恵に問われ、「原瀬京子って人」と朋香は 答えた。そこへ特番のディレクターを務める大国圭介が現れ、「練馬で噂の幽霊屋敷を見つけたんだ」と言って台本を渡した。今回の特番 は「呪われた家の真実 謎の怪死事件に迫る!」というタイトルだ。
その夜、朋香の部屋に恋人の山下典孝がやって来た。朋香は典孝に物音のことを告げ、「いつも12時半ぐらいに鳴っている」と語る。その 日も12時27分に音が鳴った。角部屋なので、隣の音ではない。特番の収録日、朋香は京子と同じ車で現場へ向かう。典孝は朋香の携帯に メッセージを入れるが、途中で妙な声が入った。その夜、典孝が部屋に行くと、朋香が背中を向けて座っていた。その時、朋香から「今、 ロケが終わったから」という電話が入った。
電話が切れた後、典孝が部屋を見ると、朋香の姿は消えていた。いつの間にか、電気も消えていた。その時、彼の背後に天井から加椰子が 現れた。帰宅した朋香は、典孝の首吊り死体を発見した。首を吊っている道具は、天井にビッシリと張り巡らされ、そこから伸びている 加椰子の髪の毛だった。朋香の眼前で死体が揺れ始め、その両足が壁を叩いた。見ると、俊雄が死体を揺らしているのだった。その時、 天井から加椰子が現れ、朋香の首に髪の毛を巻き付けて吊り上げた。朋香は典孝の隣で首吊り死体となった。
[恵]
心霊特番で京子のヘアメイクを担当した恵は、出演した映画を全て見ていると告げる。圭介は京子に、「基本的にはリポーターが話を 振りますので、気楽にやってください」と告げる。撮影中、録音技師の相馬は、京子のマイクから変な音が聞こえたと言い出した。休憩の 時間、京子と2人になった恵は、彼女が妊娠していることを見抜いた。恵は、持っていた安産祈願のお守りを京子に差し出した。
特に大きな異変も無いまま撮影が進んだため、「ちょっと拍子抜けしちゃったな」と圭介は口にする。クルーが外で休憩している時、室内 には怨霊になる前の加椰子と俊雄が出現したが、誰も気付かなかった。京子と恵は、控え室代わりに使っている部屋の床にある、大きな 黒いシミがあることに気付いた。夜になって撮影が終わり、忘れ物を取りに戻った恵は、黒いシミが気になった。一方、圭介は床に落ちて いる写真と日記に気付いた。日記には「加椰子」という名前が書かれていた。
テレビ局のメイク室に戻った恵は、複数のカツラをセットした。並べたカツラの一つからどんどん髪の毛が伸びていくが、彼女は全く 気付かなかった。圭介は撮影した映像のチェックに入った。相馬が指摘した箇所では、確かに変な音が入っていた。その時の映像では、恵 の隣に加椰子が立っていた。しかしチェックの最中に居眠りした圭介は、それに気付かないままだった。メイク室の畳で、恵は黒いシミを 発見した。その時、手に持っていたカツラが動き、彼女は慌てて投げ捨てる。するとカツラは畳の上を這い、彼女に迫って来た。髪の毛は 加椰子となり、恵に襲い掛かった。
[圭介]
京子は居間に佇み、亜紀の遺影を眺めた。コタツで寝転ぼうとした京子は、眠っている母の姿を目撃する。しかし触れようとすると消えた 。将志の見舞いに行くと、彼が腕を掴んだ。京子は意識を取り戻した将志を車椅子に乗せ、まだ話すことの出来ない彼に「どうしたらいい と思う、私たちの赤ちゃん?」と喋り掛ける。彼の手を取ってお腹に当てると、将志は腕を引っ込めて震え出した。
病院に圭介が現れ、朋香の死と恵の失踪を京子に伝えた。2人だけでなく、カメラマンの渡辺や録音の相馬とも連絡が取れないという。 京子は、自分の母もロケの後に亡くなったことを話す。圭介に自宅まで送ってもらった京子は、何かを見て恐怖におののいた。京子と圭介 の眼前で、恵がドアを開けて家に入っていく。京子と圭介は、家に入って恵を捜す。圭介は居間にいる恵を発見した。すると彼女は日記を 差し出した。あの家にあったものだ。
圭介が電気を付けると恵の姿は消え、日記だけが残された。居間に来た京子が日記を拾い上げると、その下に黒いシミが出来ていた。圭介 は京子を連れてテレビ局へ行き、番組のために作成した惨殺事件の記事の切り抜きを見せた。「明日、もう一度あの家に行ってみる」と彼 は言う。京子が去った後、圭介が作業をしていると、勝手にコピー機が動き出した。そこから次々に出てくる紙には少しずつ何かが 浮かび上がり、それは加椰子の顔になった。
京子がコタツで居眠りをしていると、畳のシミから恵の幽霊が現れた。恵は腕を伸ばし、京子に近付いた。その時、亜紀の腕が現れて 「京子」と呼び掛けた。恵の幽霊は手を引っ込めた。京子が目を覚ますと、居間には誰もいなかった。翌日、京子が呪われた家を訪れると 、千春が玄関のドアを激しくノックして「開かないの、宏美、助けて」と叫んでいた。腹部が異様な動きを示したため、京子は怯えた。 そんな京子の前に、階段から加椰子が出現した。
[千春]
千春は呪われた家にいた。勝手にドアが開き、黒いシミを見つけた。壁を這いずって落ちるような物音が聞こえ、階段を下りるところで 悪夢から覚めた。登校する途中、彼女は友人の宏美から映画のエキストラのアルバイトを紹介される。ロケバスで待機していた千春は、 また呪われた家にいる悪夢を見た。加椰子が階段の上から現れたので、玄関のドアを開けようとしている悪夢だった。
出番が来て撮影現場に入った千春は、京子のお腹に触る俊雄を目撃して悲鳴を上げた。気が付くと、彼女はまた呪われた家にいた。ドアの 向こうから宏美の声が聞こえ、千春は必死でドアを叩いて「開けてよ」と叫ぶ。そこへ加椰子が迫る中、チェーンが繋がれたままのドアが 少しだけ開く。千春は手を伸ばして助けを求め、宏美のネックレスを引き千切った。目が覚めると、ロケバスの中だった。千春が右手を 開くと、そこにはネックレスがあった。
彼女は宏美に「あの家に行っちゃダメだよ」と告げると、ロケバスから飛び出して公衆トイレに駆け込んだ。千春は個室に閉じ篭もり、 追い掛けてきた宏美に、「私の傍に来ちゃダメ」と言う。その時、千春は天井に加椰子を発見し、絶叫して外に飛び出す。転倒した彼女は 、転がってきたサッカボールが俊雄の生首になるのを見た。起き上がった千春は、その背後で意識の無い自分を起こそうとしている宏美を 目にした。千春は宏美の肩に手を置く。だが、宏美に千春の姿は見えなかった。加椰子は千春を上空へと連れ去った。
[加椰子]
呪われた家を訪れた圭介は、そこで倒れている京子を発見し、病院に運び込んだ。既に破水している京子の体から、医師たちは赤ん坊を 取り出そうとする。赤ん坊の泣き声が響いた直後、分娩室の照明が異常に点滅した。体を起こした京子は、「お母さん」と何度も繰り返す 子供の怨霊を目撃した。圭介が分娩室まで様子を見に行くと、医師たちが倒れていた。声に気付いた彼が視線をやると、京子の子宮から 加椰子が出現した…。

監督・脚本は清水崇、製作は熊澤芳紀&川上國雄&沼田宏樹&江川信也&松下晴彦、プロデューサーは一瀬隆重、撮影は喜久村徳章、編集 は高橋信之、録音は小松将人、照明は才木勝、美術は常盤俊春、視覚効果は松本肇、サウンドエフェクトは柴崎憲治、音楽は佐藤史朗、 音楽プロデューサーは慶田次徳、主題歌は推定少女『間違い』。
出演は酒井法子、新山千春、堀江慶、市川由衣、結城しのぶ、葛山信吾、斎藤歩、山本恵美、黒石えりか、水木薫、藤貴子、尾関優哉、 秀島史香、影山英俊、戸田比呂子、ジーコ内山、眞島秀和、伊藤幸純、中村靖日、山上賢治、田邊年秋、寺十吾、野島千佳、嘉川澪、 松川尚瑠輝、鎌田悠、鎌田咲良ら。


ビデオ映画から始まった『呪怨』シリーズの劇場版第2作。
千春役の市川由衣は、前作から引き続いての出演。
伽椰子役の藤貴子、俊雄役の尾関優哉は、ビデオ版からの続投。京子を酒井法子、朋香を新山千春、典孝を堀江慶、薫を結城しのぶ、圭介 を葛山信吾、将志を斎藤歩、恵を山本恵美、宏美を黒石えりか、亜紀を水木薫が演じている。
監督&脚本は、もちろん清水“呪怨マスター”崇。

時系列をバラバラにする構成は、ビデオ映画の1作目から引き続いて行われている手法だ。
今回の話を時系列順に並べ替えると、まず朋香が壁の物音を聞く。
心霊特番の撮影があった夜、典孝と朋香が死ぬ。
同じ夜に将志の車は事故を起こし、恵はメイク室で失踪する。京子は映画の撮影に参加し、千春が悲鳴を上げる。
撮影後、千春は公園で死亡し、京子は妊娠を知る。
亜紀が死亡した後、京子は圭介から朋香の死や恵の失踪を知らされる。
京子は佐伯家を訪れて失神し、それを圭介が発見する。
そういう流れだ。

千春の章に関しては、ちょっと良く分からない。
公園で転んだ時に幽体離脱したのは分かるんだが、夢と現実が交錯する中で、宏美のネックレスが現実世界で2個存在する状況が生じたり して、ワケが分からなくなる。
ただ、そこで整理を付けようとしても、あまり意味が無いような気がする。
どうせ、そこで話を整理して上手く説明が付いたとしても、何がどうなるってわけでもないし。

っていうか、前作でも思ったことだが、時系列をバラバラにする構成には、それほど重要な意味は無いんだよね。
このシリーズは「伽椰子と俊雄の幽霊が出現して脅かす」という作業を延々と繰り返しているだけであり、そのワンパターンで話が単調に なることを避けるために、時系列をシャッフルして、話を複雑化させているだけに過ぎない。
最後の章になって謎が解き明かされるとか、それまでバラバラだったピースが集まることで意外な真実が見えてくるとか、張り巡らされた 伏線がキレイに回収されるとか、そういうわけじゃないし。

京子は今回のメインのヒロインのはずなのに、冒頭から嫌な態度を見せてしまう。
こいつが殺されるためだけに出てくる雑魚キャラなら、感情移入を拒否するような造形でも一向に構わない。
ハリウッドのホラー映画、例えば「13日の金曜日」シリーズなどでは、雑魚キャラがアーパーな行動を取った後に殺されるというパターン が使われている。
ただ、ヒロインに関しては、ハリウッドのホラー映画でも、ちゃんと感情移入できるようなキャラ造形にしてあるはずだが。

正直なところ、「もう飽きた」というのが私の感想である。
私はビデオ版を見ておらず、前作の次にハリウッド版の第1作を見て、そして本作品を観賞したのだが、3本目にして、もう飽きた。
っていうかハリウッド版は日本の劇場版1作目をトレースしただけなので、実質的には2本目だけど。
で、なぜ飽きたかっていうと、恐怖表現としては、前作と同じことを繰り返しているだけなのよね。

話の方は、そもそも前作からして、そんなに面白いわけではないし。
まあホラー映画なんて怖がらせてナンボだから、ストーリーを重視しないアプローチがあっても別にいいんだけどさ、恐怖描写の邪魔さえ しなければ。
ただ、殺される人間について、ちょっと引っ掛かりを覚えたなあ。
亜紀も典孝も、佐伯家とは何の関連性も無い。
そりゃあホラーってのは不条理なんて珍しくないかもしれんが、ここまで無関係で理不尽な殺人が繰り返されると、恐怖よりも不快感が 沸いてしまう。

恐怖表現では、前作との違いを出そうという意識が全く感じられないわけではない。
ただし、それが恐怖の喚起に繋がっているかと言えば、むしろ逆効果。
俊雄は、なんか可愛くなっている。
典孝の死体を揺らしている姿とか、圭介がチェックしているカメラに興味を持ったように出現する様子とか、なんか妙にキュートだぞ。
あと、サッカーボールが彼の生首になるってのは、完全にギャグだ。

一方の加椰子は、もはや妖怪と化している。
髪の毛を天井に張り巡らせ、その髪の毛を伸ばして吊り上げるってのは、完全に妖怪だ。
幽霊が妖怪になったことで、怖さはグッと落ちている。
あと、カツラが畳の上を這って恵に迫るのは、ほとんどコメディー的なモノを感じる。
終盤、京子の子宮から加椰子が出現するのは、もちろん怖がらせようとしているんだろうけど、やっぱりギャグだよな。

(観賞日:2010年11月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会