『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』:2017、日本

連続殺人鬼のアンジェロこと片桐安十郎は、杜王町のアパートで住人の夫を殺して妻を縛り上げていた。そこへ警官の東方良平たちが来たため、アンジェロは窓から逃亡した。すると虹村形兆が立ちはだかり、持っていた弓を使って矢を放った。矢に頭を貫かれたアンジェロが倒れ込むと、形兆はブツブツと呟いてから「仲間、おめでとう。お前は選ばれた」と口にした。大量に出血したアンジェロだが、何事も無かったかのように立ち上がった。警察署へ連行されたアンジェロは、不思議な力で刑事を始末して立ち去った。
高校2年生の広瀬康一は、3日前に杜王町へ引っ越してきた。彼は町で起きている連続殺人事件のニュースをテレビで見てから、学校へ向かう。その途中で彼は不良グループに絡まれ、金を出すよう要求される。そこへクラスメイトの東方仗助が通り掛かり、康一たちを無視して去ろうとする。不良たちが因縁を付けると、彼は丁寧に謝罪した。しかし髪型を馬鹿にされると突如として激昂し、不良たちを不思議な力で吹き飛ばした。それだけでなく、彼は傷付いた不良や壊れた自転車を元の状態に戻す能力も見せた。
ぶどうが丘高校に着いて教室に入った康一は、クラスメイトの山岸由花子から個人的な宿題を渡される。彼女は康一の世話係を指示され、強い使命感を抱いているのだ。その頃、町では友人の吉沢と話していた平田が急に血を吐いて死亡した。吉沢はに何かに操られたようにコンビニへ入り、商品を食べ始めた。気付いた女性店員が近寄ると、吉沢はナイフを突き付けて外へ連れ出した。下校途中の仗助と康一は、その様子を目撃する。仗助は吉沢に髪型を馬鹿にされて激怒し、不思議な力でナイフを腹に入れ込んだ。吉沢は口から謎の生物を吐いて絶命し、警官が駆け付けたので仗助は逃亡した。吉沢を操っていたアンジェロは、邪魔をした仗助への憎しみを募らせた。帰宅した仗助は、祖父の良平から危険な行動を叱責された。その夜、形兆は憎しみを抱く男に矢を放つが、死亡を確認すると「残念だ。お前には、その力は無かった」と吐き捨てた。
翌朝、仗助は空条承太郎の訪問を受け、ジョセフ・ジョースターと浮気相手である朋子の息子だと告げる。彼は自分がジョセフの孫で仗助の甥に当たること、昔の浮気が露呈してジョースター家が騒ぎになっていることを語る。承太郎が何気なく髪型に触れると、怒った仗助は体から霊のような人型の物体を出現させて攻撃する。承太郎は仗助に、それがスタンドと呼ばれること、スタンド使いにしか見えないことを教えた。仗助はスタンドの存在を認識していたが、まるで興味を示さなかった。仗助は帰宅し、母の朋子と良平の3人で夕食を取る。朋子は仗助から結婚しないのかと問われ、「男なんて興味ないわ。私の男は、お前の父さんだけよ」と述べた。
次の朝、康一は登校途中で由花子と話している時、少しだけ瞬間移動する現象に見舞われた。彼が振り向くと、虹村億泰という男が背中を向けて立っていた。承太郎はアンジェロがスタンド使いだと知っており、事件が必ず水場で起きていると気付いた。アンジェロは東方家の場所を確認し、一家皆殺しを企てる。仗助は朋子が飲もうとした水に違和感を抱き、スタンドを使って瓶に回収した。彼は承太郎に電話を掛け、スタンドを捕まえたことを話す。承太郎は捕まえておくよう指示し、東方家へ向かった。
仗助が目を離した隙に、スタンドは良平を欺いて抹殺した。東方家へ駆け付けた承太郎が室内を調べていると、アンジェロがスタンドのアクア・ネックレスで攻撃する。承太郎はスタンドのスタープラチナを使って、反撃に出る。仗助はアンジェロに罠を仕掛け、スタンドをゴム手袋に閉じ込めた。彼は壊れた物を元に戻すスタンドの能力を使って、良平を蘇らせようとする。しかし良平は蘇生せず、承太郎は「生命が終わった物は、もう戻せない」と説明した。
承太郎は仗助と共にアンジェロのいる公園へ赴き、スタンド使いになった経緯を尋ねた。痛め付けられたアンジェロは、名前も知らない男に矢を刺されたと白状した。仗助はスタンドのクレイジー・ダイヤモンドを使い、アンジェロの姿を岩に変化させた。形兆はアンジェロが仗助に殺されたことを知り、弟の億泰に話した。帰宅した仗助は良平の資料を読み、16年前に起きた杜王町一家惨殺事件を知る。朋子は彼に、殺された女子高生がいつも交番の良平に挨拶していたことを語った。
良平の葬儀に参列した仗助は形兆に気付き、後を追って古びた屋敷に辿り着いた。そこへ康一が来て、屋敷に興味を示す。形兆は2階から康一に矢を放ち、仗助を倒すよう億泰に指示した。億泰はスタンドのザ・ハンドを使い、空間を削り取って億泰を攻撃する。形兆は瀕死の康一を屋敷に引きずり込み、矢を引き抜いた。形兆がスタンドのバッド・カンパニーを使うと、軌道に入った億泰が怪我を負う。形兆は弟を「無能で役に立たない」と罵り、仗助は怪我を負いながらも億泰を助けて彼の傷を治した。
億泰は借りを返すため、ザ・ハンドで康一を仗助の近くに引き寄せた。仗助は康一の傷を治療した後、バッド・カンパニーに襲われる。康一もバッド・カンパニーが見えていると知り、仗助はスタンドを出すよう促した。康一は卵を出現させるが、使い方が分からず困惑する。仗助が危機に陥ると卵が孵化し、スタントのエコーズが飛び出した。それは大した能力を発揮しなかったが、仗助に時間の余裕を与えた。彼はクレイジー・ダイヤモンドでバッド・カンパニーのミサイルを元に戻し、形兆を攻撃した…。

監督は三池崇史、原作は荒木飛呂彦(集英社ジャンプ コミックス刊)、脚本は江良至、企画プロデュースは平野隆、プロデューサーは源生哲雄&坂美佐子、共同プロデューサーは前田茂司&岡田有正&刀根鉄太&阿相道広、ラインプロデューサーは今井朝幸&善田真也、アソシエイトプロデューサーは諸井雄一、撮影は北信康、照明は渡部嘉、美術は林田裕至&佐久嶋依里、録音は中村淳、編集は山下健治、キャラクタースーパーバイザーは前田勇弥、スタントコーディネーターは辻井啓伺&出口正義、VFXスーパーバイザーは太田垣香織、音楽は遠藤浩二。
出演は山崎賢人、伊勢谷友介、山田孝之、神木隆之介、小松菜奈、岡田将生、新田真剣佑、國村隼、観月ありさ、水橋研二、柳俊太郎、平埜生成、島ゆいか、指出瑞貴、松川星、出合正幸、榎木薗郁也、福山翔大、鈴木龍之介、曽原義智、音月桂、森田愛蓮、岩田琉聖、伊東星羅、嶋田翔平、若林久弥、藤井佳代子、Daniel CAO、Ji WON、Andy FUKUTOME、Tamotsu KAMATA、Akihiko SERIKAWA、Adam K他。


週刊少年ジャンプで連載されている荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部を基にした作品。
監督は『テラフォーマーズ』『土竜(モグラ)の唄 香港狂騒曲』の三池崇史。
脚本は『タイガーマスク』『劇場版 媚空-ビクウ-』の江良至。
仗助を山崎賢人、承太郎を伊勢谷友介、アンジェロを山田孝之、康一を神木隆之介、由花子を小松菜奈、形兆を岡田将生、億泰を新田真剣佑、良平を國村隼、朋子を観月ありさ、虹村兄弟の父を水橋研二が演じている。

タイトルに「第一章」と付いているのは、最初からシリーズ化を想定して製作されているからだ。
後にピンで主役を張る番外編が作られた岸辺露伴も、最強の敵である吉良吉影も、キーパーソンと言える杉本鈴美も登場しないまま物語は終わっているが、今後のシリーズで登場させる計画だったんだろう。
しかし本作品が興行的に惨敗したので、続編の製作はかなり難しくなったと言える。
仮に続編を作っても、またコケるのは目に見えているしね。

原作を読んでいない人からすると、かなり説明不足で分かりにくいんじゃないだろうか。
また、原作を知らない人にとっては第4部までの流れもゼロの状態なので、承太郎の存在がいびつになっている。
「仗助にとって年上の甥に当たる」というキャラ設定も、「無駄に捻っているだけ」という状態になってしまうし。ジョセフ・ジョースターの存在にしても、「誰だよ」ってことになっちゃうし。
原作ファンの怒りは買うかもしれないが、いっそのことジョセフや承太郎の存在を排除した方が作品としては整頓されるんだよね。

原作漫画の登場人物は、大半が外国人だ。そんなキャラを日本人の役者が演じたら、それだけで陳腐になってしまう恐れがある。
なので実写化に当たり、日本が舞台になっていて登場人物が日本人ばかりという第4部を選んだのは理解できる。
ただ、どこを選ぼうと、根本的に実写化は無謀と言わざるを得ない。
ジョジョの実写化ってのは、普通に考えると、ハリウッド映画ぐらいの予算が無いと厳しい。日本でどれだけ「大作映画」としての予算が投じられても、ハリウッドとは桁が違う。

そんな無謀なチャレンジに挑んだ監督が、三池崇史である。
彼は基本的にオファーを断らない人だし、無謀と思われる企画の方が燃えるタイプだ。だから今までも多くの無謀な企画にチャレンジし、失敗を繰り返してきた。
三池監督のフィルモグラフィーを表面的に見れば、彼にオファーしたくなるのも分からなくはない。何しろ、これまでに様々な漫画原作の映画を手掛けているからだ。
しかし1つ1つの作品をちゃんと鑑賞すれば、「よりによって三池監督か」と感じるはずだ。

アンジェロが形兆の矢を受けてスタンド使いになるシーンを冒頭に配置しているのは、時系列順で考えれば当然だ。
しかし全体の構成を考えると、まず仗助を登場させた方がいいんじゃないかと。最初に違和感を抱かせるキャラクターは、形兆よりも主人公である仗助の方が望ましい。
これが「ジョジョのシリーズ第4部」としてスタートしているなら、アンジェロのエピソードから入ってもいいだろう。
しかし映画のシリーズ1発目としては、「ジョジョ」を先に出す方がいいんじゃないかなと。

康一が登場すると、モノローグで自己紹介したり町の環境を説明したりする。
彼を語り手として使うつもりなら、それは理解できる。実際のところ、ずっと彼の視点で物語を進めるわけではないので使い方は上手くないが、そこは譲るとしよう。
ただ、吉沢の犯行を仗助が阻止した後、近くにいたアンジェロを写して「よくも邪魔してくれたな。次はお前だ。お前を破壊してやる」というモノローグが入るので、それは不恰好だと感じる。
さらに承太郎も、仗助と初めて会った時に「やれやれ、こいつマジであぶねえ奴だ」とか「この帽子、直ったということか」というモノローグを語るのだが、ホントに不細工だわ。

これが漫画であれば、複数のキャラがモノローグを語っても、全く気にならない。
しかし同じことを実写映画でやるのは、かなりリスクが高い。そして、やはり失敗している。
あと、アンジェロにモノローグを喋らせるなら、せめてアップで表情を捉えようよ。
フードを被った彼の後姿を遠目から捉えるショットは、モノローグを入れる時の絵じゃないでしょ。そういうショットで演出するなら、モノローグは無しにしておかないと。

シリーズ化を想定して作っているから仕方がないけど、由花子が無駄にクセの強いキャラになっている。
彼女は最初から康一にベッタリで色目を使い、「私が守ってあげる」などと言う。だが、実際に彼女がピンチの康一を守るようなシーンは、全く訪れない。そもそも彼女は、本筋には全く絡んで来ない。
今回はスタンドを使うことも無いので、意味ありげなくせに全く存在意義の無い邪魔者と化している。
彼女がネイルを強調するのも、次回以降への伏線なのは分かるけど、今回は全く関係ないので「アピールが無駄にデカい」と感じる。もっと控え目でいいのよ。

それが形兆の目的だから仕方がないんだけど、彼と仗助の対決が終わった後、「怪物と化した虹村の父を仗助と康一が発見する」→「形兆が自身の目的について説明する」といった展開がダラダラしているように感じてしまう。
そこに多くの時間を割くことによって、スタンド対決でクライマックスを作っていたはずなのに、盛り下がってしまうし。
一応は家族愛のドラマってことで感動的に演出しようとしているけど、全く効果が見られないし。

山崎賢人にしろ伊勢谷友介にしろコスプレにしか見えないが、きっと誰が演じても同じようなことになっただろう。
それはミスキャストという問題ではない。それに、コスプレになっていても、バカバカしいことを大真面目に振り切ってやり通せば、面白いマンガ映画になる可能性は充分にある。
むしろ、普通の人間を演じている國村隼や観月ありさ、妙にリアルな「猟奇殺人鬼」の手触りを感じさせる山田孝之の方が、この映画には合っていないと言ってもいいぐらいだ。
ただし残念ながら、滑稽さを突き抜けさせて、プラスの魅力に繋げることは出来ていない。

漫画的な表現を中途半端に持ち込んでいるから、そこに引っ掛かっちゃうんだよね。やるならやるで、もっと徹底的に突き抜けないとダメだわ。もっと誇張しまくって、狂ったエナジー&パワーを爆裂させないと、ジョジョの世界観は表現できないよ。
もしも「原作と同じことをやろうとしても無理だから別の色を出す」という狙いを持ったとしても、それはそれで狂ったエナジー&パワーを使わないと、原作には絶対に勝てないし。
三池崇史は雇われ仕事だからなのか、なんか「置きに行っている」という印象なのよね。
原作の面白さには独特な言い回しやオノマトペ、ポーズといった要素が挙げられるが、それらの持ち味が完全に失われているのも大きな痛手だ。

スタンド使いが能力を発揮するシーンは、予算を考えれば、かなり健闘していると言っていい。
ただ、それが「超常現象」として描かれている間は問題ないのだが、実際にスタンドが姿を現すと、一気に陳腐さが増すという困ったことになっている。
それと、「変化の経緯」の描写が雑なのもマイナス。アンジェロ岩のシーンなんかも、「カットが切り替わるとアンジェロが岩に閉じ込められている」という表現なので、その面白さが伝わらない。
とは言え、スタンド関係の描写は、そんなに悪くない。
でも、それって監督の手腕じゃなくて、VFXクルーの技術力だからね。

(観賞日:2018年7月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会