『ザ・ディフェンダー』:1996、日本

孝は秋葉原の路地裏でデジタルデータの修復屋をしている。ある日、良美という少女が破損したCD-ROMを持ち込んでくる。その状態を見て修復が難しいと考える孝だが、いつの間にかCD-ROMを残したまま良美が姿を消してしまう。
良美を探して外に出た孝は、大男が彼女を襲っている現場に遭遇する。彼女を助けようとした孝は、大男と格闘になった。その途中、孝の体に変化が起こり、隠されていた力を覚醒させる。孝は大男に勝利するが、またも良美は姿を消してしまう。
孝は良美に自分を紹介した友人の高橋から、彼女がウィザードと呼ばれる伝説的ハッカーを探していたことを聞かされる。その日の夜、昌美と名乗る良美にそっくりの少女が孝を訪れる。彼女もまた、ウィザードを探しているらしい。
孝は良美と昌美が同一人物だと見抜くが、彼女にその意識は無いようだ。彼女と共にウィザードを探すことにした孝は、黒マントの男や中国拳法を使う女に襲われる。2人とも、昌美を守る孝を倒すのが目的らしい。襲われる度に、孝は力を覚醒させて撃退する。
やがて孝は、自分の頭の中に謎のチップが埋め込まれていることを知る。ウィザードに会って良美の持ち込んだCD-ROMを修復してもらうと、そこには孝の脳の映像が入っていた。そして孝は、自分の中に埋め込まれたチップが、人間の脳を操作するためのインプラントだと知る…。

監督は小中和哉、原案&脚本は小中千昭、企画は石井和彦、製作は市村将之&石川博&酒井俊博&鈴木ワタル、プロデューサーは井手正義&五十嵐智之&吉田晴彦&河合伴明、撮影は越智宏亮、編集は松竹利郎、録音は芦原邦雄、照明は神村裕二、美術はいしいいわお、モンスター造形は若狭新一&宗理起也、デジタル・エフェクトは古賀信明、コンピュータ・グラフィックスは永見康明、ファイティング・コーディネーターは佐々木修平、音楽はメカノ、音楽監督は笠谷文人。
主演は柳葉敏郎、共演は菅野美穂、佐野史郎、高野拳磁、田口トモロヲ、椰野素子、平賀雅臣、松尾貴史、エド山口、武野功雄、牟田将士、深井由美子、榎原大輔、渡辺浩人、阿部能丸、牧口元美、中沢青六、山田明郷、西尾由貴子、高土新太郎、村山剛、中村篤、高橋卓也、小中明子、小中沙恵ら。


秋葉原を舞台にしたアクション・ムービー。特殊脚本家の小中千昭と映画監督の小中和哉、小中兄弟がコンビを組んだ作品。孝を柳葉敏郎、良美を菅野美穂が演じている。しかし、つくづく菅野美穂というのは作品に恵まれない女優だなあ。

孝と昌美が初対面なのにいきなり「孝」「昌美」と呼び捨てにし合う部分で不自然さを感じてしまったのだが、それ以降も不自然さが目立つ。
大きい部分でのホラは構わないが、それを成立させるためにも、細かい部分で不自然さを感じさせない配慮が必要だった。

謎を解読していく流れが、ボンヤリ&ドンヨリしていて冴えが無い。
例えバカバカしい説明であろうとも、理由付けをハッキリしてくくれば受け入れることが出来た。しかし、多くの疑問を提示しておきながら、それに対する答えをほとんど示そうとしていない。

内容は薄いしキャラクターも薄い。孝に襲い掛かってくる敵にしても、見た目はそれなりに凝っているのだが、中身が全く伴なわない。単純明快にバカバカしさを突き詰めればいいものを、なぜだか分かりにくい方向へ持っていこうとする。
そのくせ、雑な説明でウヤムヤにしてしまう。

おそらく、この作品の最大の、そして唯一のセールスポイントは、何度も行われる格闘なのだろう。しかし、そのシーンには全くスピード感も重厚感も迫力も感じられない。
バトルは何度も繰り返されるが、基本パターンが一緒なので飽きてくる。

そもそも設定からして荒唐無稽な話なのだから、その荒唐無稽ぶりをトコトンまで追及してくれれば良かったのだ。それなのに表面だけをなぞって済ませてしまうから、コケ脅しのような状態で終わっている。
中途半端にするなら、最初からやらなきゃいいのに。

 

*ポンコツ映画愛護協会