『cfガール』:1989、日本

流葉爽太郎は若手のCFディレクター。数々のコンクールで入賞した売れっ子ディレクターだが、スポンサーの意向を無視することも多く、石油会社のCF撮影ではプロデューサーの山下を怒らせる。撮影を終え、早朝に海辺で休んでいた流葉は、バレエの練習をしている少女を見掛ける。流葉は彼女に声を掛けるが、逃げられてしまった。
CFの編集作業をしていた流葉は、広告代理店からクビを宣告された。そんな流葉の前に、1年ぶりに元恋人の門倉洋子が現れた。流葉は洋子の仲介で、スミス&ウィルソン・エージェンシーの氷山と、使い捨てだがギャラは2倍という条件で手を組んだ。
流葉は、かつて名プロデューサーだった熊沢を復帰させ、ピザ屋のリョウも引き入れて仕事を開始した。流葉は、海辺で見た少女のことを思い浮かべながら、CFの絵コンテを描いた。そのアイデアが、自転車会社のCFで使われることが決まった。
流葉は海辺に行って少女を見つけ、スカウトした。だが、少女の保護者代理を名乗る須貝という男が現れ、彼女の起用を中止するよう要求する。須貝の横には、熊沢の昔の仲間で、撮影中の事故をきっかけに落ちぶれた黒川の姿があった。
少女は長谷久美子という名前で、長谷商会の会長で経済界の大物・長谷周一郎の孫娘だった。長谷商会では博通堂の田島らと手を組み、久美子をキャンペーン・ガールに起用したCMを作ることが決まっていたが、直前になって彼女が家出していた。
流葉は須貝の要求を拒否するが、その直後、リョウが命を狙われて重傷を負う。流葉は家を現れ、脅迫電話を受けた。様々な場所に圧力が掛けられ、流葉は苦境に立たされる。それでも流葉は諦めず、カナダに渡ってCFを撮影することにした…。

監督は橋本以蔵、原作は喜多嶋隆、脚本は中本博通&橋本以蔵、製作は松橋邦芳&斉藤佳雄&太田一夫、企画は垣田律子&藤家和正、プロデューサーは藤田光男&岸本一男&大上典保、撮影は柳島克己、編集は菅野善雄、録音は本田孜、照明は安河内央之、美術は望月正照、アクション監督は足立伶二郎(二代目)、音楽は世良公則&羽田一郎、主題歌は世良公則。
主演は世良公則、共演は中村久美、我王銀次、高岡早紀、岡田眞澄、三船敏郎、浅野ゆう子、長塚京三、アンリ菅野、室田日出男、角野卓造、河原さぶ、斉藤洋介、新井康弘、浜野博子、栗田芳廣、大谷一夫、高野史郎、清水信介ら。


喜多嶋隆の小説“流葉シリーズ”の第2作を映画化した作品。
流葉を世良公則、洋子を中村久美、リョウを我王銀次、久美子を高岡早紀、熊沢を岡田眞澄、周一郎を三船敏郎が演じている。
当時15歳の高岡早紀は、これが映画デヴュー。

主演は世良公則だが、新人タレントの高岡早紀を大々的に売り出そうという意識も強く伺える作品だ。何しろ、彼女がCMに出演していたマドラスシューズが製作協力としてクレジットされているし、そのCMで共演していた岡田眞澄も出演している。
ただ、高岡早紀のプロモーション・フィルムとしては、あまりにも彼女の出番は少ないし、ほとんど魅力をアピールできていない。少なくとも、主人公が様々な困難に遭いながらも、命を賭けてまで執着するほど、魅力のある人物には見えない。

さて、内容だが、何というか、珍妙な作品である。まず、流葉が初めて久美子と出会うシーンからして、笑わせてくれる。彼女は、早朝の海辺でバレエの練習をしているのだ。それ、思いっきり不自然でしょ。そんな時間に、そんな場所で練習しますか。
不自然と言えば、久美子の登場シーンなんてノープロブレムだと思えるシーンが他にある。薄暗い部屋の中、流葉が上半身裸で銃を構えてポーズを決めるというシーンが、何度も挿入されるのだ。だが、別に伏線でも何でもない。ただのイメージカットだ。

流葉は、ヤクザと戦うというアクションシーンもある。銃(ニセモノだけど)をカッコ良く構えて、人に向けて狙撃するシーンもある。カーチェイスも見せてくれる。いやいや、アンタはいったい、何屋さんなのかと。これはいったい、何の話なのかと。
他にも、大爆発のシーンとか、カークラッシュのシーンとかもある。だけど、アクション映画なのかと問われると、返答に苦しむ。アクション映画として作るなら、流葉と長谷商会一派の対立があって、そこでバトルがあるという形にするのがふさわしい。

ところが、前述したようなアクションシーンは、流葉と長谷商会一派の対立とは、全く無関係に発生している。つまり、話の流れ(それもあるような無いような感じだが)とアクションが、完全にバラバラになっている。だから、アクション映画と呼ぶのは難しい。
終盤、流葉はカナダに渡るが、そこへ行く必然性は無い。どうしてもカナダの景色が必要だとか、そういう理由は無い。「とりあえず海外へ行こう、他は色々あって無理だから、じゃあカナダに行こう」ということだ。カナダである意味はゼロだ。
もしかして、アーパーな映画を作ることで、アーパーなCM業界を皮肉ろうとしているのだろうか。

 

*ポンコツ映画愛護協会